第38話

今日も仕事を終えた俺は、ライト付き自転車でまっすぐ家路についた。


風呂に入り歯磨きをし、寝る前に布団を被りながら、すみれから借りたパラオ旅行ガイドをながめていた。


(最高だよなぁ~)


これでもかと言わんばかりの透き通った海。海中を泳ぐウミガメやエイ。これはこの機会にダイビングの資格とるかな!


ファミレスでも言ったが、アン子は正直言ってダイビングは無理だろう。酸素ボンベが重くて沈んでいくのが容易に想像できる。


すみれはどうやらダイビング経験がありそうな事を言っていたな。


これはバイトが休みの日にスクールに行ってみるか!丁度良いことに初任給が近々入る。


そんな感じで今日から来た近所にあるダイビングスクール。入会申し込みをし、初歩から学ぶことになった。


耳抜きなど色々なテクを教えてくれる。そりゃそうだ、結構な額を払っている。


2日間を終えるとスクールの先生が、今度は実践しましょうと言ってきた。俺はバイトが休みの日に予約を入れ、学校をさぼりながら船に揺られて実践の時がきた!


「決して慌てない事。それ一番大事だからね」


そう言って船の端にもたれて、背中から落ちるように入ってゆく。俺も同じような恰好で海に飛び込む。


耳抜きはすぐにできた。それにしても海の中が汚い。ゴミや海藻などがふらついている。俺は酸素ボンベを背負いながらOKマークを示す。


先生はゆっくりと進んでいく。それにのっとって俺も先生の後を追いかける。そうしてしばらくたったのちに、先生が上を指差した。戻れの合図だ。


俺は怖がらずゆっくりと海面に近づいていった。


海面に浮かぶと先生と俺は船へと戻って行った。


「ナイス!いい感じだったよ。余裕さえ感じた」


「いや~先生のおかげですよ」


「うん、君にはダイビング許可を与える」


早速キタコレ!そんな訳であっさりとダイビングできる身になった。早速すみれにトークで送ると、


「おめでとう!やったわね!」


と激励の言葉を貰えた。アン子には別段伝えることはなかった。落ち込まれても困ってしまう。


激しい疲れが襲ってきたので、家に帰ったら速攻寝てしまった。


次の日はまた学校だ。もうお腹が空いてるが我慢しなければ。


1時限目が終わると、すみれがまたタンバリンを持って教室に入って来た。


「ふぅわふぅわふうぅ♪」 シャンシャンシャン


「恥ずかしいからそれやめろって」


「ダイバーおめでとう!」


「ああ疲れたぜ」


そこへ新聞部の山田が割り込んできた。


「ふたりはどういう関係なのかな?」


「だまってろ」


「黙ってみていられないの、分かってくれてるかな?」


すみれはゴミを見るような目で


「だれ、こいつ」


「新聞部のやつだ。無視しろ」


「変な記事出さないよね!」


すみれは早々に帰っていった。


「すみれ様を慕うヤカラは沢山いるのは分かってるかな?場合によっては暴動がおきるの理解してるかな?」


俺は頭にチョップをしながら


「消えろ…!」


さすがに空気を読んだ山田は消え去った。


「パラオ、楽しみだなぁ…人が少なければもっといいのにな」


1人想いを馳せるのであった。

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