31 何やってんだろ、俺

「何やってんだろ、俺……」

 早乙女が去り、一人残された生徒会室──伊集院は誰にでもなく呟いた。

 ゴミを取るという口実で早乙女の頭を撫でた、自分の右手を見る──早乙女の髪にゴミなんてついていなかった。

 ただ、衝動的に抱きしめてしまった言い訳がしたくて、咄嗟に口をついたものだった。

 空っぽの右手を、握りしめる。

「父さんと話し合ってみろ、か……」

 まだ、早乙女の温もりが残っているような気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る