5 おもしれー女
伊集院と鬼塚は、走り去っていく早乙女の後ろ姿を、ただ見送ることしかできなかった。
二人とも、そのよく整ったルックスで、女子から言い寄られた回数は両手両足では数え切れず、バレンタインデーなどは、ほとほと憂鬱なイベントでしかない──そんな人生を歩んできた。
女子に好意を寄せられた経験は星の数ほどあれど、わざわざ面と向かって『好きにはならない』と宣言されたのは、初めてのことで──
「なんだ、あいつ……」
と、鬼塚はつぶやいた。心なしか、その口元は笑みを浮かべている。
「おもしれー女……」
鬼塚の言葉に、伊集院が小さく頷いた。
「……ふふ、うん。今日ばかりは、お前に同意するよ」
犬猿の仲の二人だったが──このときだけは、意見が合致したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます