いじめの結末:11
慶郎が突破した悪夢とは別に、ひとあし
巫女が駆ける。屋根伝いに跳び渡り、異変の場所へ一直線に。
夕焼けが街並みを赤く染め、人々が帰路に向かうまさにその上空に、
魍魎が仕掛ける異空間移動の
「いつの間に」
巫女の疾走を追う鶴が、重たい声で呟く。
「
振り返ることなく、巫女は険しい表情で応える。
「さすがに
鶴が目を細め、
「なぜ今みたいなタイミングで、あんな大掛かりな
鶴が
「さぁな。だがもしかしたら、慶郎の背中を狙うつもりだったのかもな」
「
まだまだ
このように
マンションの屋上から飛び上がる巫女。その動きには
あまりの速度に遅れをとった鶴がその後を追うが、魍魎ともども
されど、これらの行いも、
× ×
「本当に戻って来れるんですね。少し疑ってましたが」
「……えぇ。まぁ」
なにやら上空を見上げたまま固まる男の姿に、不安を感じた母親はその理由を問わずにはいられない。
「なにか、見えるんですか?」
「はい。ハッキリと」
男の視線の先を見上げる板野麻実には当然だが何も見えない。
「僕の正体は悪夢祓いと言いまして、魔物を退治する役割を与えられた者なのですが、その瞬間から見る能力が宿ってるんです」
「それって、私たちがさっきまで居た空間や、あのバケモノのこと?」
「はい」
慶郎は上空を見上げたまま、手短に語る。
「
即座にそれを認めるには
「それで、今、上に居るんですね? あのバケモノが」
「はい。それも複数」
母親の脳裏に、死に直面した瞬間が思い出される。怪物と呼ぶに相応しい姿の魔物が襲って来た恐怖と、その迫力を。そしてその怪物が、今この瞬間に複数いると聞かされて、
「板野さんは当面の間は安全な筈です。貴女を狙っていた魍魎はさっき仕留めた一匹だけだったので、このまま家まで帰っても大丈夫でしょう。
母親の表情を
「この
「……そうですか、それは良かった」
やや
その背中を見送る板野麻実は、しばらくして何事もなかったかのように帰路に足を向けた。
駆けながらも、横目で母親の動きを確認した慶郎は、大きな疑問を抱かずにはいられない。鶴の説明では、悪夢に捕らわれた一般人は、決して記憶を現実世界に持ち
それなのに、あの板野麻実は自然と会話が続いた。悪夢での出来事や話の内容を記憶から失われていない
気にはなるが、今はまず上空の
霊体に身を変換した慶郎はビルを駆け上がる。巫女のように
「思ったより遠いか……」
この
ビルからでは距離が遠く、マンションからでは高度が足りない。どうしたものかと
――この力は、巫女さんか――
このタイミングで、
「遅かったわね、さぁ、私の脚につかまって」
「え?」
とてつもない速度で迫る鶴の言葉の意味を理解する間もなく、慶郎は反射的に腕を伸ばした。まさか、あんな棒切れのように細い鶴の脚を
「あの、脚、大丈夫ですか?」
慶郎は今、あまりにも細い鶴の脚を
むしろ、その体は今の慶郎よりも強度が高い。
「準備はいい? 中は既に戦闘中だけど、あなたも見ておいた方がいいわ」
「は、はい」
慶郎の
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