いじめの結末:9
短剣を
数秒足らずして、大きな何かが
物音からして分厚いブロック
「つかまって!」
出合いがしらにその体を
敵はすぐ
壁を蹴り上げ、母親を抱き上げたまま空転する。ギリギリのところで攻撃を
「背中に隠れて!」
城壁の上へと
今回の魍魎も一段と大きい。毎回だが、体格で上回る相手に
その背後に現れたのは、悪夢に突入したばかりで白藍の光に身を包んだままの
「背中は心配しないで」
その鶴の声に振り返る事なく、慶郎は短剣を振るい続ける。魍魎による猛撃は激しさを増し続け、いつこの身を
やはり正攻法で勝ち目は無い。魍魎の圧倒的なパワーは慶郎の力量を上回っている。
回転する敵の動きに備えた矢先、大蛇のように太い
鶴のクチバシに
現実味の無い
悪魔と呼ぶに
こんな
次第に、慶郎の
板野麻実の目には、そう映っている。無理もない。敵は魔獣の
命を削る激しい攻防は
はたして、どれ程の攻防が繰り返されたか、激しさを増す衝撃に耐えられなくなったのは慶郎の体ではなく、短剣でもない。分厚く頑丈に
落下する互いから目を離さず、魍魎は目を光らせ、慶郎は
落下の衝撃で
「やっぱりこの瞬間は、妙に緊張するね」
ぼそりと
迫り来る魍魎の胸板に突き刺さる弾丸。悪夢を祓う必勝の一撃。
小さな穴とは裏腹、魍魎の背中へ突き抜けた弾丸は破裂したように内部を破壊し、黒く散らばる魍魎の臓器が宙に弾け飛ぶ。
されどその勢いは止まらない。慶郎を
手榴弾が投下されたような衝撃が突き抜け、
通り過ぎていった魍魎へ振り返ると、その体は黒い霧を巻き上げ、徐々に
「いやぁ、ちょっと危なかった」
間の抜けた慶郎の声が緊張感を
「……えっと……」
何かお礼を言うべきなのか、それとも、得体の知れない男と鶴のコンビも危険なのか、思考が定まらない板野麻実が二の足を踏んでいる。
「安心しなさい。ワタシ達は敵ではないわ」
鶴の言う敵ではない、という表現は、味方でもない、という意味も込められているのだろうか。
なにせ、娘を育児放棄する
鶴は身動きをとることなく、背後に真っ赤な鳥居を出現させた。その中の
「ワタシは先に行くわよ。あとは、貴方の好きな
そう言って鶴は羽ばたくと、鳥居の中へ消えて行った。
残された慶郎はやれやれと言いたげに、板野麻実へ歩み寄る。
「いや、まぁ、その、何て言うんですかね。この事はすぐに忘れるので気にしないで下さい」
「……え?」
立ち尽くす板野麻実は、呆気にとられたまま動けないでいる。
「ですが、あなたにはどうしても言い聞かせなければならない事があります」
真剣な眼差しを向けて来る男を、ただ黙って見つめ返す。まさか自分の
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