いじめの結末:6
深夜、
引っかかるのは、彼女が言い放った慶郎への「リサーチ不足」という発言の意味。すぐに予想はできていた、“父親”というワードを出した
正しい言葉で説得できなった影には、必ず
慶郎が見張る相手は、三枝千春の父親だ。大学講師を
それでも慶郎は確信していた。問題は、この父親にあると。
窓の外から室内を見張る慶郎の横に、白藍の光を帯びて現れたのは鶴だった。
「ご苦労様、と言いたいところだけど」
「こんな所で何やってんだってね」
鶴の思いを察しつつ、慶郎は監視をやめない。
「魍魎の気配が近頃ないんで、つい、こういったお節介をしたくなっちゃうんですよ」
「それが
本来であれば魍魎の
「この家を見張ったという事は、三枝千春を攻略するつもりなのね」
「はい。彼女を救ってあげないと、由紀恵ちゃんを救えないんですよ。色々と調べはしたんですが、まだリサーチ不足だったようで――」
慶郎の真剣な横顔を見て、やや間を置いてから鶴が語る。
「三枝千春の父親は娘の
「んっ⁉」
すでにそこまで
「なぜです。我が子に罪を重ねさせて、黙っている親が居ますか」
「彼も利用者だったからよ。購入者の
「…………」
慶郎は言葉を失った。彼の性格上、精神的なショックを隠せない。
あの子は、父親の
ぶつける先のない
「始まりは
「目的は
「彼女はお金に困ってないわ。それといった
慶郎には理解できよう筈もない感性だった。他者の私物を転売する行為に、金銭以外のなにが目的に
答えの見付からない
「快感なんでしょ。私物を
慶郎は考えるのを辞めた。もはや
しかしそれでも、三枝千春はまだ小学生だ。
「――彼女は今、
「そりゃそうでしょうね。で、慶郎さんはどうしたいの?」
「一刻も早くこんな犯罪行為を辞めさせるべきです」
「ほんとに人が
動物の姿であるが故に表情には現れないが、鶴は嬉しそうに声を
「なら次の取引現場を通報しなさい、
どこか無責任な言い回しではあるものの、鶴の言う通りなのは慶郎も理解できた。
「わかりました」
「自分にできる事だけに集中しなさい。
「――はい」
鶴はいつの間にかクチバシで咥えていた御守りを差し向け、慶郎は丁寧に両手で受け取った。
この御守りは彼のアーティファクト。
「それじゃ、あとは任せたわ」
鶴は挨拶も簡単に、光の玉となって消え去った。
残された慶郎は御守りを背広の内ポケットにしまうと、次に三枝千春が向かう取引き先の調査を続けた。
この行いが、板野由紀恵を救う手立てになると信じて――。
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