いじめの結末:5
翌日、
彼女にとって慶郎の言葉の数々は、学校の教科よりも心の芯に突き刺さった。
女帝、
同級生の私物を売り飛ばす最低な悪行に手を染めたが最後、その行いはもっと悪い連中の目に止まり、組織的に
半グレに
「お前、なに急いでんだよ」
逃すまいと小走りで追ってきた女帝は独りだった。彼女もまた、悪い連中に目を付けられた事で仲間を失いつつある。
「昨日のオッサン誰だよ、あれが父親か?」
「…………」
横目で女帝の顔を
「テメェ、無視できる立場かコラ」
「この野郎っ‼」
怒りに引きつった顔で追う三枝千春。客商売だった今までとは違い、今後は半グレ組織に売り上げを
――逃げる
――逃げる
由紀恵は全力で走り続けた。追って来る三枝千春の勢いも凄まじいが、それ以上に、慶郎から
人は想いで変わる。
いよいよ由紀恵の家が見えてくる頃合いで、三枝千春は足を止めた。走ること一五分もの間、一度も休まないという異常なまでの
慶郎は実体化した姿で再び由紀恵の家に現れ、少女の帰りを待っていたのだ。
「おかえり由紀恵ちゃん」
少女はそのまま慶郎の背中に隠れ、離れて立ち止まった女帝を覗き見る。慶郎もこの時は由紀恵ではなく、三枝千春を見張る。
「千春ちゃんだね、初めまして。通りすがりのオジさんで申し訳ないけど、少しだけお話できるかな」
真剣な眼差しを送ってくる中年男に対し、三枝千春は
「誰よアンタ、そいつのオヤジ? それとも
どこまでも強気で来る女帝に対し、慶郎は表情を変えず真剣な眼差しのまま声を固くして問う。
「もうヤメにしないか? 君だってこのまま裏社会に潜るつもりは無いんだろう?」
「はぁあ? 説教かジジイ」
慶郎は霊体で調べた三枝千春の現状を通告する。
「実際に君を脅かしてる連中はただのギャングチームだけど、その背後に中華系の組織が居る。少女売春の
「……」
「言ってる意味わかるね?」
慶郎を
「手遅れだ、もう部屋も確保してあるらしい。待ち合わせまでもう時間が無い」
三枝千春の言葉をすぐに理解した慶郎は、さすがに表情が
優しい慶郎も、この時は
「人には人の事情があるんだ、由紀恵ちゃんの気持ちも考えずに勝手なスケジュールを組まないで頂きたい」
「うるせぇよバカ、いいからその女よこせ」
話の通じない少女ではない筈だと確信している慶郎は、折れる事なく説得を続ける。三枝千春は学校の
「足を洗うなら手伝うよ。その待ち合わせ場所にはオジさんが行こう」
「ダメだ、手数料はすでに受け取った。今さら引けねぇ」
慶郎には良く解る。この三枝千春という少女の並外れた
どれも道を
「君がやろうとしている事は完全に強要罪。こんなこと、お父さんが知ったらどうなる」
「
「どういう……」
「まぁいいや。替わりの女に行かせるわ」
一切の
「君の全てを知ってあげられなくて申し訳ない。その通りリサーチ不足だったよ」
三枝千春は聞く耳を持たず、そのまま来た道を戻って行ってしまった。
慶郎の胸に暗い気持ちがこだまする。あの少女を説得できるだけの材料が無かった自分への
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