いじめの結末:2
現実世界の魍魎は人間の目に映らない分、いつ
されどその反面、悪夢祓い達から身を隠すのが下手で、数百メートル離れた場所からでも感知されてしまう。姿そのものが見付かる訳でも、音が響く訳でもない。魍魎が行き来する場所は、空気の色が変わるのだ。悪夢祓い達はこうして、近くに魍魎が居ることを知り、次第にその距離を詰め、確実に狩りを成功させていく。
× ×
「まだあの
鶴が低空飛行し悪夢の異空間を突き進む。江戸時代の
「そこよ!」
鶴が敵の居場所を告げると、
「ナニッ!?」
今この瞬間にも少女に噛み付く直前だった魍魎が、首に刺さったクナイに驚く。
「もう見付かったかッ」
こうなっては戦うか逃げるかの選択となる訳だが、魍魎は両の手から
そこへ迫る忍。短刀で斬り裂かれた襖からその姿が露わになると、魍魎は慌てて
「クソッ! よりにもよってキサマか!」
魍魎が黒炎を発射する。火炎放射の
あまりの速度に驚く少女が目を見開き、自分を抱えて走る男に
そんな少女に対し、忍びは何も語らない。
「特上の獲物だ、そう簡単には渡さんぞ」
「キサマには多くの仲間が
再び黒炎を両手に宿す魍魎に向けて、少女の
「仲間意識なんて無いクセによく言うわ」
鶴の
黒炎が柱を黒く
「
あまりにも速すぎる忍の動きに反応できなかった魍魎が、相手を見失った衝撃で
悪夢祓いが魍魎を識別する能力があるように、魍魎にも悪夢祓いを感知する触覚があるが、忍が背後に居ると認知したとしても時はすでに遅い。
その
弾け飛ぶ魍魎。襖を突き破り、奥にあった無地の
「ぐおぉぉぉぉぉぉおぉおぉぉぉぉおッ‼」
魔物であっても、痛覚がある。斬られた首と、破壊された
辛うじて繋がっている首からは
痛みに
「どこだぁッ‼」
怒りに顔を歪ませたまま、魍魎の首が畳に落ちる――。
半蔵は、音も無く再び背後に回り込んでおり、魍魎は斬られる瞬間もそれに気付かぬままだった。
血液の無い魔物である魍魎は、黒いモヤを全身から放ちながら
× ×
少女が目を覚ますと、気を失った時と同じく公衆トイレだった。魍魎の悪夢から解放された人間は、呑まれた時と同じ場所で覚醒する。
「…………」
しかし少女には記憶が無い。下着を奪われた事までは覚えているが、その後の一連は悪夢から抜け出すと記憶から消えてしまう。
醜い魍魎に襲われた事も、黒装束の男に助けられた事も、鶴の優しい声も忘れてしまう。
少女、板野由紀恵は自分の身に何が起きたのか理解しないまま立ち上がり、いつの間に暗くなっていた外へと歩み出した。
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