消えた幼馴染:11
それから数週間後のこと、
「どうぞ、あがってください」
両親に出迎えられ、少年は複雑な思いで玄関で靴を脱ぎ、
招待されたからとはいえ、未だ見付かっていない幼馴染の家にあがるなど、どんな顔をすればいいのか解らないままだった。
ソファーに腰を落ち着かせ、出された麦茶に視線を落としつつ、少年は肩を小さくして
「そう
父親が
「綾子の日記なんだ」
静かに父親がそう語り、少年に中を見るよう
彼女の死が確定した訳でもない今、勝手に
「あの……」
「キミに、預かって欲しいんだ」
そう告げる父親の目には、涙が
「ダメです。これは綾子が帰ってきたら、また続きを書く為のモノです」
少年がノートを差し戻すも、両親は手に取ろうとしない。その意思は固く、無言のまま。
「これは彼女の部屋に戻しておいて下さい、無かったら驚く筈です」
「達也君」
「僕は見てないことにするので、彼女にも今日の事は黙っていて下さい」
「達也君、もういいんだ」
その先の言葉が何なのか想像できた少年は、さらに首を振り、力を込めた声に己の意地を貫いた。
「彼女は必ず帰ってきます! もう少し、待ってあげて下さい!」
最後の方は
ここまで
だから笹倉綾子の両親がとった行動は、
もう娘の事は諦めてもいいと――そう告げているのだ。
結局、少年はこの日、幼馴染の日記を受け取ることもなく、その足で再び捜索に出かけて行った――。
× ×
町を出て
「もう二
慶郎は巫女と鶴にそう語り、悪夢祓いとして街を見守る定期報告をしていた。
「そう」
巫女は
「可哀想ね、あまりにも……」
「そうっスね」
慶郎も鶴と思いは同じだ。帰らぬ恋人を待ち続ける少年の
この町を
「綾子さんのご両親は、どうやら村田君との関係を一度落ち着かせたいみたいですね。先日そんな話をしていました」
慶郎の報告に鶴が頷く。
「そうなるのが
「本人以外は」
「…………」
慶郎も鶴も、少年の姿を見る限り、己の人生など
せめて少年だけでも幸せを
慶郎達は少年に声かけることはせず、霊体のままその場を後にした。
少年・村田達也は、この先もずっと幼馴染を探し続けるのだろう。プレゼントで貰った手袋は常に肌身離さず、少年の
× ×
笹倉綾子は悪夢に
「彼女は最期に、キミの名前を呼んでいたよ」
その想いを少年に伝えてくれた事で、魂のみの存在となってしまった笹倉綾子は最期の最後で
笹倉綾子が魍魎へと
身近に居る
そのような未来にならなかっただけでも、幸いと言えるのか。少なくとも、村田達也は生きている。彼の命は、笹倉綾子の信念によって救われたと言っても過言ではない。
そしてまた、どこかの街では再び魍魎が
第一話:消えた幼馴染 了
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