消えた幼馴染:4
周囲は見渡せど赤黒い岩肌の荒野。ここには文明を臭わせる知的建造物が
「待って」
なりふり構っている場合ではなかった。少年は巫女に追い付くと、その肩を乱暴に
「
今ようやく、自分と
狂暴な魔物を
納得のいかない思いに
「あなたは、知ってるんですね」
少年はもうこの時には判っていた。この巫女が放った言葉の意味を。
要するに、
冷静に事実だけを告げた巫女に対し、感謝に似た感情を抱きつつも、だからこそ引けない想いがせめぎ合う。相手に対する失礼を
「綾子は、今どこに居るんですか」
巫女の肩から手を離し、少年は半ば泣き出しそうな瞳で訴える。自分はまだ、帰る訳にはいかない、と。
その姿を無言で
すると巫女は腕を伸ばし、少年の後方を指差した。
「戻りなさい。あの
その指先が示す先へ目をやると、今まで無かった筈の鳥居が建っていた。
真っ赤に塗られた鳥居は三重に並び、奥へ進む程その中は
魔物から逃げ回っていた時に、あんな鳥居は無かった筈だった。その時に見付けていれば、外へ繋がる出口だと思い走り込む筈だ。こんな広々とした荒野の中にいて、あそこまで眩しい鳥居を見落とすなどあり得ない。
「あれは――」いったい何なのだと訊こうと巫女へ視線を戻すと、そこに少女の姿は無く、
「なにしているの、早くこっちへ」
巫女の声は鳥居の手前から発せられた。いつの間に、いや、一瞬にしてあんな場所へ移動したのか。気配も音もなく、少年の真横に居た筈が、どうやって二〇メートル以上離れた鳥居まで
「帰りなさい、アナタが居るべき世界へ。もうここへは来る事もないでしょう」
ようやく鳥居の所まで
「ここで見たもの、聞いた話は全て記憶から消える。元の世界で、アナタは今まで通りの生活を過ごすのよ。さぁ、帰りなさい」
一瞬、少年は素直に言う事を聞こうとも思ったが、半歩進んだ足を、途中で止めた。
「まだ、話の途中です。あなたは、なぜ僕が探しているものを知っているのですか」
少年が見つめる先は、何も無い岩肌だった。感情を
「無駄な
やはり、巫女の返答は冷たかった。
少年は確信していた。間違いなくこの少女は今の状況を理解し、支配している立場にある。この場所も、斬った魔物の正体も、消えた幼馴染の行方も知っている。
なのに、何も教えてくれないのだ。ひとつだけ答えがあったとするなら、それは、消えた彼女はもう、二度と見付ける事はできないという残酷な事実だけだ。その理由も、
動こうとしない少年に
言うまでもなく、脅迫である。
「わかりました……」
少年は恐さよりも、
自分は何も知らないまま、何も解決しない元の世界に戻るのかと――。
鳥居を目の前にした少年の背中へ、姿の見えない女の声が投げかけられた。
『彼女は最期に、キミの名前を呼んでいたよ』
少年が慌てて振り返るが、その時すでに遅く、鳥居に一歩踏み込んだ事で未知なる力が働き、少年の体は眩い光に包まれ、引き返す事は許されなかった。
最後に少年が見たものは、
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