恋愛ゲーム…?
どうやら、なるせりんがいるチームも無敗らしい。
ほかのチームはもう全部試合をやり終わったらしく、私たちが試合をするコートに集まっている。
「どっちが勝つと思う?」
「身長的に清水の方じゃね?」
「いや、速さで言ったら成瀬だろ」
できることなら私も観客側で試合を楽しみたい。こんな本気のゲームをなんで恋愛ゲームでやらなくちゃいけないんだ。
「これが最後の試合だ。疲れもたまってきてるだろうからケガするなよ」
そういって、ジャンプボールから試合が始まった。
試合は五分五分。点を決めては入れられ、防いだら防ぎ返された。あきとりんの勢いに感化されて、周りの動きもだんだん速くなる。例に漏れず、私も今までこんなに動いたことがあっただろうかというスピードで走り回っていた。
どちらのチームも、一歩も譲らずに後半まで時間が進む。好感度なんて今は気にしている余裕はない。全力でコートの端から端まで走る。役に立っているかはわからないけれど、走らなくてはいけない気がした。
試合の終了間際、私たちのチームがディフェンスをしていた時。私はその時集中しすぎていたのかわからないけれど、奇跡を起こした。
コート全体を見て気づく。
―あ、ここの人だけフリーだ。
迷わずそこに走りこむ。直進にその人に向かって走りこんだから、ボールは見えていない。でも、ここにボールが来るんじゃないかっていう確信があった。
でも、ここでボールを見て走ればよかったんだ。走りこんでその人の前に立ち、やっとボールに振り返ったタイミング。その瞬間。ボールが目の前にあった。
見事なクリーンヒット。ボールを放ったのはなるせりん。私が走りこむ前までフリーだった人は女子じゃなかったから、手加減なしのパスだったのだろう。もろにそのボールを顔面キャッチした。鼻から、生暖かいものが流れてくる。
みんな、そこで一瞬止まった。全然役に立ってないやつが、急になるせりんのパスを予測し、カットしたからおどろいたのだろうか。でも、止まったのは人だけで、時間は当たり前に進んでいたらしく。試合終了のブザーが鳴った。点数は、こちらのチームが僅差で勝っていた。
ブザーの音で、なるせりんが動いた。やべっという顔で私に近づいてくる。
「だ、大丈夫??」
全力の申し訳ない顔で言われる。
「うん、まあ。鼻血出ただけだし」
「めちゃめちゃ痛かったでしょ。保健室行く?鼻痛い?骨折してるかな。目は?突き指してたりする?」
よほど焦っているのか、顔に当たっただけなのに突き指の心配もし始めた。
「全然、大丈夫ですから」
「ほんっとにごめん」
「あーあ、りん、やらかしたな」
横からあきが茶化し始める。
「あ、ティッシュいる?」
なんで体育にティッシュを持ってきているんだ、と思いながら素直に受け取る。
「花粉症でよかった」
花粉症だからって体育にティッシュは持ってこないだろう…。
「あ、そろそろつぎの授業始まるんで…」
「そうだよね。そのティッシュ持って行っていいよ。あと、痛みが治まらなかったら保健室行ってね」
なんか先生より先生っぽい感じがする。
「はい。なんか、ありがとうございます」
「いや、俺のせいでケガさせちゃったから!お礼なんか言わないで!あ、そろそろ行かないと遅刻するから行くね」
なりせりんが走って体育館を出て行ったあと、ななが私に話しかける。
「球技苦手だって言ってましたよね?なんですか、覚醒しちゃったんですか」
「前世でバスケの天才だったのかも?…」
なながうへえという顔で、
「あ、そうですか」
といった。まだ止まらない鼻血を抑えながら思った。これ、恋愛ゲームなの…?ほんとに。どこかの青春スポーツ漫画とかじゃなくて…?そうじゃなきゃこんな本気のバスケの試合を繰り広げるわけないでしょ…。
でもこれってイベントなのか?一応攻略対象と会話したわけだし。そう思って、ゲームウィンドウを呼び出す。
―成瀬りん 好感度5%
清水秋 好感度3%
お、ちょっとだけだけど好感度が上がっている。少なくとも、知り合いぐらいにはなれただろうか。でも、私の鼻を代償にして5%は少ない気がするけど…。でも今日は印象付けられただけでいいかと、ポジティブに考え、次のイベントに期待することにした。
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