第07話 探索準備

「じゃあ先輩、新しく実った食料を食べたら探索に出かけましょう」


「そうだな。とりあえず水と食料だけ確保できてて良かったな。一時的とはいえ雨もしのげる場所も手に入れたし」


「そういえば、この農具小屋どうするんですか?またここに戻ってきます?」


「ああ、それについてだが、何とこの召喚した農具小屋戻せるらしいぞ。『農具小屋送還』」


そう言うと、農具小屋は光に包まれてその姿を消した。


「おお~凄いっすね先輩、意味わかんないっす」


「俺だってわかんねーよ何だよ農具小屋送還ってよ」


「あ、ところで先輩、農具小屋に入ってた食料ってちゃんと出しました?」


「あ?やば、出してねーわ『農具小屋召喚』」


「アタシ達の食糧……」


「残ってると良いんだが……」


「あっ、先輩、入れてた食料あったっす!」


「良かったわ食いもん無くなるのは流石に困るしな」


「先輩、これ農具小屋に入れたままどこでも持ち運べるんじゃないっすかね?」


「は?……確かに」


「アイテムボックス代わりですね」


「便利だなおい農具小屋なのに」


「送還してる時の中身ってどうなってるんすかね……」


「朝倉、お前ためしに送還される時入ってみる?」


「イヤですよ!何かあったらどうすんですか!」


「大丈夫だって、何かあってもせいぜい時空の狭間を永遠に彷徨わなきゃいけなくなるくらいだろ」


「どこが大丈夫なのか小一時間は説明が必要だと思うんですけど」


「実際生き物が入ったまま送還したらどうなんだろうな。人体実験はまた今度にするか」


「なんで人間で試す前提なんすか。せめてモルモットくらいから始めて欲しいんですけど」


「でも人間が亜空間に入った時どうなるのか知りたいしさ……」


「なんでちょっとマッドサイエンティスト寄りの思考なんすか……」


「冗談は置いといて、食料を持ち運べるようになったのは楽でいいな」


「そーですよ。手ぶらで探索できるのは便利っす」


「その辺に実ってるやつ全部こん中に保存しようぜ」


「しましょう、しましょう」


「うーん、手でもぐの意外と難しいな、てかむっちゃ沢山実がなってんなおい」


「もともととってきた木より実ってますよこれ」


「手が届く範囲よりもずっと上まであんぞこれ」


「なんかぶわーっと収穫するスキル持ってないんすか先輩」


「そんなもんある訳が……あったわ。いやなんであんだよマジで」


「どんなスキルなんすか」


「いや……収穫だけど」


そう言うと、俺は指を鳴らした。


「へー、先輩、さっそくやって見せてくださいよ」


「いや、もう終わったけど」


「へ?あれ、実がない、さっきまでムチャクチャあったのに」


「俺が収穫したからだけど」


「え?今のフィンガースナップで収穫終わったんですか」


「指パッチンってフィンガースナップって言うんか、知らなかったわ」


「いや先輩そこじゃなくて、収穫メチャメチャ早くないっすか」


「ああ、ムチャクチャ早い。ちなみに別に指を鳴らさなくても出来る」


「じゃあなんで指鳴らしたんですか」


「カッコいいかなと思って」


「別にカッコよくはなかったっすけど」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………謝罪と賠償を要求する」


「いやなんでっすか!アタシ悪くないですって別に」


「俺は心に深い傷を負ったよ」


「絶対深くないですって、大げさすぎっす」


「もう立ち直れないわ……」


「だから絶対大げさすぎですって、機嫌直してくださいよ」


「法廷で会おう。ここから先は弁護士を通してくれ」


「指パッチンをカッコいいって言わなかっただけで法廷闘争させられる先輩の弁護士が不憫すぎるんですけど……」


「……ちなみに収穫した作物はなんか作物倉庫とかいうのに保管されるらしい」


「また新しい単語出てきたっすね」


「なんか農具小屋の作物バージョンっぽいわ」


「そうなんすね、あっ、じゃあ農具小屋が作物でパンパンにならなくて済むんすね」


「そういう事っぽいな。とりあえず意味は分からんがまた便利になったっぽいわ」


「深く考えるのはやめておきましょう」


「そうだな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る