第08話 出発

「じゃあ食料も補給したことですし、出発しますか先輩」


「おう、じゃあいくか。つっても明確な目的地があるわけじゃねーけどな」


「そうっすね」


「最寄りの街を見つけるのが最優先課題だな。どこかで人に会えると良いんだが」


「先輩、モンスターがうろついてる森の奥に、そうそう人なんかいませんって」


「そうだよなぁ。探索してたらモンスターと遭遇して襲われてる人とか都合よくいねーかな」


「いないと思うっす」


「そうだよなぁ」


俺たちはそんな事を話しながらしばらく歩いていた。木漏れ日が地面を照らし、緑の葉がそよ風に揺れていた。そんな中、樹々のさざめきに乗って違う音が聞こえてきた。


「先輩」


「俺は悪くない」


「いやまだ何も言ってないっす」


「そうか?『さっき誰かモンスターに襲われてる人とかいねーかなって俺が言ったせいでそれっぽい音が聞こえてきた』、って言おうとしてね?」


「してますけど」


「やっぱそうじゃん」


「だって先輩がそう言ったじゃないっすか」


「言ったけど実際にそのシチュエーションが発生してるっぽいのは俺のせいじゃないだろ」


「そうっすかねぇ」


「そうなんだよなんで疑うんだよ。そんな事より、早く行こうぜ。本当にモンスターに襲われてたら、恩を売るチャンスかもしれん」


「そこは普通に助けなきゃっていう所っすよ」


「普通にモンスターを倒してて普通に遭遇できるのが一番だけどな」


「それはそっすね。急ぎますよ先輩」


「あっ、ちょまっ」


「…………」


「…………はっ、はっ」


「…………」


「…………は-っ、はーっ」


「…………」


「…………はーっ、ぜはーっ」


「…………」


「こひゅーっ、こひゅーっ」


「……先輩?」


「っだ、よ」


「ペース落としましょうか?」


「だいっ、じょ、だ」


「いや全然大丈夫じゃなさそうっすけど」


「っせ、だいっ、じょっ、よっ」


「へー、大丈夫なんすか。じゃあもうちょっとペース上げても良いっすか」


「はっあ?!てめっ、ころっ、ぞっ……!!」


「んふふっ、先輩、何言ってるか分かんないっす」


「あとっ、ぜっ、ころっ……」


「んふ、ほらほら、先輩、音が近づいてきましたよ、あとちょっとっす」


「こひゅーっ、こひゅーっ、ごぼっ」


「おー、やってるやってる、現場に着きましたよ先輩」


「ぜひゅーっ、ぜひゅーっ」


「じゃあ先輩、なんか人が襲われてて劣勢っぽいんで、助太刀して恩売ってきますね」


「…………おう」


「先輩はそこで水やりでもしててくださいね」


「水やりは……はーっ……任せ、ろ」


「酸素足りてなくて混乱してて面白いっすね先輩」


「はよ……いけ」


「じゃー行ってくるっす」

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