第06話 起床

「先輩、起きてください!」


「あ~?」


朝倉に体を揺すられて俺は目覚めた。うっすらと片目を開けて朝倉を見ると、目が合った。どうも緊急事態のような様子ではなく、なにか良いものを見つけたから来てほしいみたいな顔をしている。俺は目を閉じて呟く。


「う~ん、むにゃむにゃ、もう食べられないよ」


「…………」


「オイ怒るなって……起きてるからさ」


「あと一秒遅かったら先輩の首は三回転してましたよ」


「しれっと怖い事いうなよ……んでどうしたんだよ。なんかヤバイって感じでもなさそうだけど」


「いや、ヤバイはヤバイっすけど、なんというか、実際に見てほしいっす」


「なんだよ~サンタさんがプレゼントでも置いてってくれたのか?」


そう言って俺は起き上がって農機具小屋から出た。すっかり朝だ。辺りを見回すと果物を実らせた大きな木がそばにあった。


「ん……?こんなんあったか?」


「先輩、その木たぶん昨日植えた種です」


「は?んな訳ねーだろ」


「まぁアタシも最初そんな感じでしたけど……先輩、昨日種植えて水やりしたとこ覚えてます?」


「……覚えてるよ。まぁ確か……この辺だったわ確かにな」


「そうっすよね」


「いやでも一晩でこんな大きくなる訳ないだろ流石にさぁ」


「でもなってるんすよ実際に」


「なんで?」


「いやアタシも知らないですけど。たぶん先輩が水やりしたからじゃないっすか?」


「んな訳ないだろ流石にさぁ」


「でもなってるんすよ実際に」


「はぁ……夢っぽいからもうひと眠りしてくっかな」


「いやもうそういうのはいいですから!現実を見て下さいよ先輩」


「ええ……イヤなんだけど」


「イヤでもっす!」


「もしかしたらこの果物がむっちゃ成長早いとかそういう事にしとこうぜ」


「まぁその可能性も無くはないですけど、絶対先輩のせいですって」


「俺もそんな気するけどよ、なんかこう……反応に困るわこれ」


「否定はしないっす」


「もし俺の農業スキルとやらのせいだったらバグってるよなこの能力」


「そうですねぇ……まぁ便利なんでいいじゃないですか」


「良いけどさぁ……この世界の農民みんなこんな感じなの?ちょっとこの世界怖いんだけど」


「どうでしょう……早くこの世界の文明水準を知りたいっすね」


「分からん事だらけだよな」


「贅沢は言わないんで、エアコン完備でインターネットの整備された世界であって欲しいっす」


「メチャメチャ贅沢じゃねーか」

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