2040年のみなさんに読んでほしいこと

 あまり目立めだたないように、こっそりときます。わたしがいまからくことは、いまはあまり目立めだたないほうがよいからです。


 今日きょうは2022年7月8日。あさってには「参議院議員選挙さんぎいんぎいんせんきょ」があります。

 みなさんがもう学校がっこうならったかはわかりませんが、今日きょうはとてもひどい事件じけんきてしまいました。その事件じけんにはまだ名前なまえがないので、ここでは「8日のこと」といいます。


 30年後ねんごや50年後ねんごの、未来みらいのおとなはとてもなやんでいるかもしれません。

「いまわたしたちがしあわせなのは、8日のことがあったから?」

「もし8日のことがなかったら、日本にほんはもっとひどいくにだった?」


 そんな「もしも」でなやませてしまって、2022年のおとなのわたしは「本当ほんとうにごめんなさい」といいたいです。


 未来みらいのみなさんがなやんでしまうのは、しかたない。

 こんなことがきなければ、そんなことをかんがえなくてよかったのに。


暴力ぼうりょくしあわせをつくることができるの?」

暴力ぼうりょくをつかわなかったら、どうしてもえられないことがある?」

 どっちなんだろう?

 そんなふうにかんがえているひともいるかもしれません。


 2022年は、たとえ兵器へいき暴力ぼうりょくをつかわなくても、できるだけたくさんのひとがしあわせに生活せいかつできるように、わたしたちはまだ努力どりょくをしている途中とちゅうでした。


 戦争せんそうをしなくても世界中せかいじゅうのひとたちと協力きょうりょくしてたすけあっていけるしくみをつくりたかった。おかねはたらくところのないひとがすくなくなって、病気びょうきのひとやお年寄としよりでも安心あんしんしてのんびりとくららせて、だれかのちいさななやみごとをみんなでかんがえて、みんながみんなをたすけてあげられるようなしくみをつくる、その途中とちゅうでした。


 もちろん、まだまだゴールはとおかったけれど、それでも選挙せんきょへいくことはできます。技術ぎじゅつがすすみ、インターネットでさまざまな活動かつどうびかけもできるようになってきました。わたしたちにはまだまだ希望きぼうがあったのです。


 けれど8日のことがあって、未来みらいのあなたたちに「本当ほんとうこまったとき、暴力ぼうりょくをつかったほうがいいの?」となやませてしまうことになりました。

 ながいあいだむずかしい問題もんだいがなくならないとき、ひとはそういうことをついかんがえてしまいます。

 だんだん「きっとそうするしかない」とおもうようにもなるかもしれません。


 あなたたちがそんなことをなやまなくてよいようにする方法ほうほうを、わたしはひとつだけおもいつきました。


 2022年のおとなのわたしたちが、うんと努力どりょくすることです。


 暴力ぼうりょく武器ぶきをつかわず、これからも昨日きのうまでのように「もっとよい生活せいかつってどんなふうだろう?」とかんがえて言葉ことばにしてみること。近所きんじょのひとやこまっているひとにはできるだけ親切しんせつにすること。日本にほんじゅうのひとがどんなことでこまっているのかを、できるだけたくさんること。それをひとつずつよくすること。こんどの選挙せんきょにかならずくこと。


 そしていままでどおり、すこしずつ努力どりょくつづけながらふつうにらすこと。まるで8日のことなんてなかったかのように、です。

 だからいまは、こっそりこれをいています。20年か30年後ねんごに、あなたにつけてもらえたらいいんです。


 もしもあなたのそばに「暴力ぼうりょくをつかわないと問題もんだいはなくならない」となやんでいるひとがいたら、こんなふうにおしえてあげてください。


「いまの日本にほんしあわせで平和へいわなのは、8日のことがあったからじゃないんだよ。2022年のおとなが7月9日からずっと、武器ぶきたずにがんばったからなんだって」


 あなたがむねをはってそういえるように、わたしたちは明日あしたからがんばります。あなたがウソつきにならないよう、かならずしっかりとがんばります。


 じつは、未来みらいのみなさんが

「8日のことがあったから日本にほんはよいくにになったんでしょう?」

と、おもっているかもしれない……それが、わたしたちはとってもこわいのです。

 だってそれでは、8日のことは悪いことではなく、いのちをうば暴力ぼうりょくただしかった、ということになってしまいますから。


 でも、あなたたちはこんなにがんばらなくてもいいように、暴力ぼうりょくをつかわないほうがいい。武器ぶきをつかうのは8日のことを最後さいごにやめる。


 暴力ぼうりょくだれにとってもこわいものです。だから「わたしのそばにも武器ぶきがあるかもしれない」とおもうと、どうしても無口むくちになってしまいます。どんなにあたまのよい政治家せいじかも、やさしい先生せんせいでも、だれでも。

 だから武器ぶき暴力ぼうりょくがあるのって不便ふべんなんです。

 みんなが無口むくちになったらはなしあいはすすまないし、大変たいへんなときにだれも「たすけて」といえなくなってしまいます。しずかな場所ばしょでひとりだけこえをあげるのは、おとなでも勇気ゆうきがいりますから。


 あなたが「絶対ぜったい武器ぶきをつかわない」とめたら、もっとべつのことをがんばる時間じかんとパワーがあまるはず。

 ワクワクするようなたのしいことをがんばれる時間じかんえますから、そっちのほうがよいでしょう。



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