21.支援役ロベル+3聖女 キズナを深める



【支援役ロベル視点】




『ワンズ王国』の入り口近くで。



「はじめまして! あたしサミーって言います! お兄様とは、小さい頃からの幼なじみでーす!」



「わたしはアンリと申します。20年間とらわれの身でしたけど、ロベル様に助けていただきました」



「私はトウナ。このお方とは、元パーティー仲間」



3人は互いに自己紹介をしている。表情はにこやかだ。



「やれやれ。最初はあせったけど、うまくやっていけそうな感じだな」



「わたしたちがここに集まったのは、運命にちがいありません」



「ん? アンリ、どういうことだ?」



「状況が、大陸の伝説と一致していますので」



大陸の伝説……あれか。




『再び魔王が世界を危機にさらすとき、ひとりの男が立ち上がる。ひとりの男は聖女を伴い、魔王を滅ぼし世界を救う』




ってヤツだな。



「伝説ではこう語られています。『再び魔王が世界を危機にさらすとき、ひとりの男が立ち上がる。ひとりの男は『3人』の聖女を伴い、魔王を滅ぼし世界を救う』と」




あれ? 『3人』の聖女? この伝説、聖女の『数』に触れてたっけ?




「アンリさんの言う通りです! 『3人』の聖女がそろうのが大事ですもんね!」



「『3人』の聖女が集まらないと意味がない」



サミーとトウナも同意する。どうやら、俺のカン違いだったみたいだ。



「と、なると。確かに3人そろったのは、偶然じゃないのかもしれない」



「アンリさん! トウナさん! これからよろしくお願いしますね!」



「こちらこそ、よろしくお願いいたします! サミー様! トウナ様!」



「よろしく。サミー、アンリ」



3人はうれしそうに笑い合っている。この短時間で、ここまで仲を深めるとは。



「うん! 3人の相性はバッチリみたいだな!」






【『太陽の聖女』サミー視点】




「はじめまして! あたしサミーって言います! お兄様とは、小さい頃からの幼なじみでーす!」



なんて、あいさつしながら。あたし、頭の中が真っ白になっちゃった。




どうしようどうしようどうしよう!




清楚で品があるアンリさんに、知的でクールなトウナさん! あたしとはレベルが違いすぎる! とてもかなわないよぉ! 



もしも。もしも「やっぱり聖女は3人もいらない」なんて話になっちゃったら。追放されるのは、100パーセントあたしに決まってる!



どうしようどうしようどうしよう!



あたしが頭を抱えていると。



「わたしたちがここに集まったのは、運命にちがいありません」



「ん? アンリ、どういうことだ?」



「状況が、大陸の伝説と一致していますので。伝説ではこう語られています。


『再び魔王が世界を危機にさらすとき、ひとりの男が立ち上がる。ひとりの男は『3人』の聖女を伴い、魔王を滅ぼし世界を救う』と」




アンリさん……! 




あたしには、アンリさんのやさしさが痛いほどに伝わった。伝説は、聖女の数にはノータッチ。アンリさんはあたしがパーティーに残れるように、気をつかって『3人』って言ってくれたんだ! あたしもたたみかけるしかない!



「アンリさんの言う通りです! 『3人』の聖女がそろうのが大事ですもんね!」



あたしがアンリさんに乗っかると。



「『3人』の聖女が集まらないと意味がない」



すぐに、トウナさんもあと押ししてくれたの! なんてすてきな人たちだろう! 知り合ったばかりのあたしを、こんなに気づかってくれるなんて! やっぱりお兄様はすごいや! 人を見る目が違うんだ!



「と、なると。確かに3人そろったのは、偶然じゃないのかもしれない」



お兄様が納得したようにうなずいた。あたしは心の中で2人に手を合わせる。



ありがとうアンリさん! ありがとうトウナさん! これであたしはパーティーにいられます! ご恩は一生忘れません!



「アンリさん! トウナさん! これからよろしくお願いしますね!」



「こちらこそ、よろしくお願いいたします! サミー様! トウナ様!」



「よろしく。サミー、アンリ」



アンリさんとトウナさんが、あたしにやさしくほほえむ。お兄様といっしょなだけでも最高なのに、こんなにすてきな人たちとも冒険できるんだ! 



あたしは感じた。心がしあわせでいっぱいになるのを……。






【『光の聖女』アンリ視点】




「わたしはアンリと申します。20年間とらわれの身でしたけど、ロベル様に助けていただきました」



などと、あいさつしながら。わたし、頭の中が真っ白になってしまいました。




まずいですまずいですまずいです!




明るくてほがらかなサミー様に、冷静で神秘的なトウナ様! わたしとはレベルが違いすぎます! とてもかなわないです!



もしも。もしも「やっぱり聖女は3人もいらない」なんて話になってしまったら。追放されるのは、100パーセントわたしに決まってます!



まずいですまずいですまずいです!



どうにかしないと……そうです!



大陸の伝説! 聖女の人数をごまかした上で、サミー様とトウナ様に話を合わせていただく! これしかありません!



「わたしたちがここに集まったのは、運命にちがいありません」



「ん? アンリ、どういうことだ?」



「状況が、大陸の伝説と一致していますので。伝説ではこう語られています。


『再び魔王が世界を危機にさらすとき、ひとりの男が立ち上がる。ひとりの男は『3人』の聖女を伴い、魔王を滅ぼし世界を救う』と」



うまく言えました! あとはサミー様とトウナ様の意識へ、交信を飛ばしてお願いを――。



「アンリさんの言う通りです! 『3人』の聖女がそろうのが大事ですもんね!」




え? サミー様?




「『3人』の聖女が集まらないと意味がない」




トウナ様まで……!




わたしには、おふたりのやさしさが痛いほど伝わってきました。おふたりはわたしがパーティーに残れるように、心を配ってくださったのです! 交信を飛ばす前に察していただけるなんて……。



ああ、なんてすてきな方々なのでしょう! 知り合ったばかりのわたしを、これほどまでに気づかってくださるのですね! やっぱりあなた様はすごいです! 人を見る目が違います!



「と、なると。確かに3人そろったのは、偶然じゃないのかもしれない」



あなた様が納得したようにうなずきました。わたしは心の中でお2人に手を合わせます。



ありがとうございますサミー様! ありがとうございますトウナ様! これでわたしはパーティーにいられます! ご恩は一生忘れません!



「アンリさん! トウナさん! これからよろしくお願いしますね!」



「こちらこそ。よろしくお願いいたします。サミー様、トウナ様」



「よろしく。サミー。アンリ」



サミー様とトウナ様が、わたしにやさしくほほえみます。あなた様といっしょなだけでも最高なのに、こんなにすてきな方々とも冒険できるのですね! 



わたしは感じました。心がしあわせに包まれていくのを……。






【『月の聖女』トウナ視点】




「私はトウナ。このお方とは、元パーティー仲間」



と、あいさつしながら。私の頭の中は真っ白だった。




あああああああああああああああ!




元気でかわいらしいサミーに、清らかで可憐なアンリ! 私とはレベルが違いすぎる! とてもかなわない! 



もしも。もしも「やっぱり聖女は3人もいらない」なんて話になったら。追放されるのは、100パーセント私で確定!



あああああああああああああああ!



私があっぷあっぷしていると。



「わたしたちがここに集まったのは、運命にちがいありません」



「ん? アンリ、どういうことだ?」



「状況が、大陸の伝説と一致していますので。伝説ではこう語られています。


『再び魔王が世界を危機にさらすとき、ひとりの男が立ち上がる。ひとりの男は『3人』の聖女を伴い、魔王を滅ぼし世界を救う』と」




アンリ……! 




私はアンリのやさしさを痛感した。伝説は、聖女の数に触れてない。アンリは私がパーティーに残れるように、配慮して『3人』と言ってくれた! 私も急いで追撃を! 



ところが。



「アンリさんの言う通りです! 『3人』の聖女がそろうのが大事ですもんね!」



私より先に、サミーが援護してくれた! なんてすてきな人たち! 知り合ったばかりの私を、ここまで気づかってくれる! やっぱり主様はすごい! 人を見る目が違う!



「『3人』の聖女が集まらないと意味がない」



私がダメ押しでつぶやくと。



「と、なると。確かに3人そろったのは、偶然じゃないのかもしれない」



主様が納得したようにうなずく。私は心の中で2人に手を合わせた。



ありがとうサミー! ありがとうアンリ! これで私はパーティーにいられる! 恩は一生忘れない!



「アンリさん! トウナさん! これからよろしくお願いしますね!」



「こちらこそ、よろしくお願いいたします! サミー様! トウナ様!」



「よろしく。サミー、アンリ」



サミーとアンリが、私にやさしくほほえんだ。主様といっしょなだけでも最高なのに、こんなにすてきな人たちとも冒険できる! 



私は感じた。心がしあわせで満たされていくのを……。




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