第3話 効果
私の記憶では、
しばらくは沈黙が続いていたような。
私は、窓が開いて涼しい風が吹くのに、何故か強張った。
先生に指名されて、正しく答えられたら、絶対的なセーフだと思う、変な自分の偏見というか、そういう感じで…緊張して一言も発することができなかった。
ただ口を開けて、吐く息を求めていた。
「コーヒーでも飲む?」
彼はゆっくり立ち上がって、一室にある棚を開け始める。部室にコーヒーなんて置いてるのか、この学校。
「俺、今日最後にバンドやった山河。
見ててくれた?」
ガチャガチャ、ガチャガチャと音が聞こえる。小さなキン、キンとした音も聞こえた。
多分コップの音、そうだきっと。
「…」
「…」
「はー…ぃ」
半分、息を吐いただけの返事が出た。
恥ずかしい。
「…そ、ありがと。
あ、コーヒー期限切れてる、
みて、賞味期限2年前」
「ぶっ…」
思わず吹き出した。
「ふふふ…
なんで、そんなものがあるんですか…」
笑いが堪え切れない。
「先輩方の戦利品」
山河さんは、とボケたような顔をしてくる。
「なんですかそれ…」
「…飲みます?」
「…飲んだ方がいいやつですか、それ」
「いい味ですよ、きっと」
知らないはずのコーヒーの味を、
今知ったような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます