第3話 効果


私の記憶では、

しばらくは沈黙が続いていたような。


私は、窓が開いて涼しい風が吹くのに、何故か強張った。

先生に指名されて、正しく答えられたら、絶対的なセーフだと思う、変な自分の偏見というか、そういう感じで…緊張して一言も発することができなかった。


ただ口を開けて、吐く息を求めていた。



「コーヒーでも飲む?」

彼はゆっくり立ち上がって、一室にある棚を開け始める。部室にコーヒーなんて置いてるのか、この学校。


「俺、今日最後にバンドやった山河。

見ててくれた?」

ガチャガチャ、ガチャガチャと音が聞こえる。小さなキン、キンとした音も聞こえた。

多分コップの音、そうだきっと。


「…」


「…」


「はー…ぃ」

半分、息を吐いただけの返事が出た。

恥ずかしい。



「…そ、ありがと。

あ、コーヒー期限切れてる、



みて、賞味期限2年前」




「ぶっ…」

思わず吹き出した。


「ふふふ…

なんで、そんなものがあるんですか…」

笑いが堪え切れない。


「先輩方の戦利品」

山河さんは、とボケたような顔をしてくる。


「なんですかそれ…」


「…飲みます?」


「…飲んだ方がいいやつですか、それ」


「いい味ですよ、きっと」

知らないはずのコーヒーの味を、

今知ったような気がした。

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