第3話
いい年になっても出仕せず、気ままにその日暮らしをしている。愚鈍なのかと思うとそうではなく、政治・宗教・文学、何を議論させても人に負けることがない。
荀粲の才能は誰もが認めているのだが、なにぶん性格に難があって、彼とつきあっていける人間はほとんどいなかった。
そんな変わり者の妻となった曹回の方は、
とはいえ末子同士の婚ゆえ、儀式は小規模なものであった。しかし常識と離れた婚礼の様子が人づてに伝わり、二人のことは何かと世間の噂になった。荀粲の変人ぶりは元より有名であったが、曹回の美貌と、その様子の変わりぶりも特に、人々の好奇の目を集めた。
曹回は父・曹洪が五十を過ぎてから産まれた娘で、周囲から大変かわいがられ、まるで
そのため世間のことは何も知らず、料理や洗濯という、嫁としての勤めは何一つできない。幸い荀家には使用人が大勢いるため、嫁が直接手を出さずとも、なんとかなる。しかし使用人が女主人に判断をあおいでも、どうにもはっきりした答えを得られない。困り果てる使用人に、曹回はただ、にっこりと美しく微笑するだけなのだという。
「少し阿呆なのではないか」
そんなことを言う人もいた。
世間では口さがない噂も流れていたが、荀家の邸の内では、荀粲と曹回の明るい声が響いていた。二人は
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