第15話

 数発ずつレイネとネミリの攻撃を食らい、盗賊たちは意識を失った。

 ちゃんと生きていることを確認したうえで、ネミリが【肉球次元ニャニャニャラウ】で収納する。

 彼らを引き渡せば、一定額の賞金がもらえるはずだ。

 もし特別に懸賞金がかけられていたりすると、さらにもらえるお金は多くなる。

 多分、今日の奴らは野良のザコ盗賊だろうけど。


「猫のお姉ちゃん、ありがとう!」


 女の子がネミリに抱き着く。

 ネミリは優しく抱きしめ返して言った。


「大丈夫だよー。怪我がなくてよかった」


「お姉ちゃんは怪我してないの?」


「大丈夫大丈夫。私、頑丈だからね」


 ネミリは強がってるけど、額には汗が浮かんでいる。

 これまでの戦いでは全く汗をかくことのなかったネミリが、だ。

 もしかしたら、これまでモンスターを瞬殺していた分、攻撃の受け方や痛みの流し方が鈍っているのかもしれない。


「お姉ちゃん、名前は?」


「ネミリだよ」


「ネミリお姉ちゃんかー。私はアニだよ」


「アニね。アニの家はどこなの?」


「この近くの農村だよ」


「じゃあ案内して。また襲われないように、私たちが守りながら送って行ってあげる」


「ありがとう!こっちだよ」


 アニがネミリの手を握って歩き始める。

 俺とレイネもその後に続いた。




「本当に何とお礼を言っていいか……」


 アニの住む農村。

 俺たちが送り届けると、彼女の母親は何度も頭を下げた。


「いやいやー、そんなそんな」


 ネミリが照れくさそうに頭をかく。

 ふと、アニが家の中へ入っていった。

 戻ってきた彼女の手には、赤い輪っかが握られている。


「ネミリお姉ちゃんにこれあげる!腕飾りだよ!」


「いいの?ありがとー」


「つけてみて!」


 ネミリは左腕にもらった飾りをつける。

 それから嬉しそうにアニへ見せた。


「大事にするね」


「うん!本当にありがとう!」


「ありがとうございました」


 元気よく手を振るアニと、頭を下げる母親に見送られ、俺たちは農村を出た。

 少し歩いて、ネミリがしゃがみこむ。

 額には相変わらず、いやさっき以上の汗がにじんでいた。

 やはり、確実にダメージを食らっているようだ。


「むー。多分だけど折れてるなぁ、骨。アニを守るのに夢中になって、避けきれなかった」


「猫になれ。そしたら街まで運んでいくから」


「ありがたいよ。【獣化ネデア・第一形態】」


 俺は黒猫をそっと抱きかかえる。

 ネミリはすぐに、俺の腕の中で丸くなった。


「ほんと、よく頑張ったな」


「にゃ」


 小さく一鳴きして、ネミリが眠りにつく。

 出来るだけ振動が伝わらないよう気を付けながら、俺とレイネは並んで街へと歩いていく。


「休暇に入るかぁ」


 俺の呟きに、レイネは黙って頷いた。

 今のネミリでも、戦えば十分強いんだろう。

 だけど彼女のことを考えたら、ゆっくり休んでもらうのがベストだ。


「となると……」


 俺には1か所、休暇を取るのにちょうどいい場所の心当たりがあった。

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