第14話
「俺でもネミリに追いつける方法があるのか?」
「はい。【
レイネの体が光に包まれ、そして立派な白虎へと変化した。
第一形態は猫、第二形態は虎か。
「ご主人様、どうぞ背中にお乗りください」
「いや、でも」
「いいですから。早くしないとネミリに追いつけません」
「わ、分かった」
おそるおそる、白虎レイネの背中にまたがる。
思いのほかふわふわもふもふしていて、乗り心地はすごく良い。
「しっかり掴まっていてください」
俺がレイネにしがみつくと、彼女は勢いよく駆け出した。
速い速い。
木々の間をすり抜けながら、猛スピードで駆けていく。
俺は振り落とされないよう、いっそう強くしがみついた。
「方向はあってるのか?」
「この形態では嗅覚も強化されています。ネミリの匂いを辿っていますので、ご心配には及びません」
「なるほどな」
それにしても、ネミリは何で急に走り出したんだろうか。
直前に聞こえると言っていた音なのか声なのかに関係あることは、間違いないと思うけど。
「匂いが強くなってきました」
「ということは近いな」
「はい」
「何かの敵がいる可能性もあるから、ここからは慎重に行こう」
「かしこまりました」
レイネが走るペースを落とす。
俺も彼女の背に乗ったまま、辺りを見まわしてネミリの姿を探した。
「……っ!今、何か聞こえました」
「よし、向かってくれ」
俺には何も聞こえていないけど、レイネの耳の方が頼りになるのは確か。
ここは彼女に任せて進む。
「ご主人様!」
ふと、レイネが大きな声を上げた。
その右腕というべきか右前足というべきかが指し示す先に、地面に転がったネミリがいる。
それも小さな女の子を抱きかかえて。
いったい何をやって……
「おらよっとぉ!」
「「……っ!!」」
目の前で起きた光景に、俺とレイネは息を呑んだ。
ネミリが思いっきり蹴り飛ばされたのだ。
どうやら相手は盗賊のようで、こん棒やら剣やらを持っている。
「抵抗しねえってか!」
ネミリが抱きかかえる女の子を狙った蹴り。
それもネミリが体を動かし、背中で受け止める。
「グルルルル……」
気が付けば、白虎姿のレイネが唸り声をあげていた。
今にも盗賊どもへ飛び掛かっていきそうな勢いだ。
「ご主人様、行って参りま……」
「待て待て」
動き出そうとするレイネを、俺は静止した。
「ですがネミリが!」
「どうしてネミリが反撃しないか分かるか?あんなクソ野郎ザコ野郎ども相手に。反撃したら、あの女の子まで巻き込んでしまうからだろ?」
「そ、それは……」
「俺が行く。今のネミリに必要なのは俺だろ?」
「……そうでした」
レイネは一度大きく呼吸すると、俺を乗せたままネミリの元へと駆け寄った。
急に現れた虎に、盗賊たちは不意を突かれる。
「よく頑張ったな、ネミリ」
「あっははー。1人で駆け出すべきじゃなかったね」
笑ってはいるが、顔には血がにじんでいる。
ひどいことするもんだな、まったく。
「リミッターをかけてやる。さあ、反撃の時間だろ」
「普通こういう時はリミッターを外してやるんだけどね」
「俺らは特別だからしょうがない」
「そうだね」
ネミリから女の子を預かる。
幸い、彼女に傷はないようだ。
「あそこの木陰に隠れておいで。全部終わったら、迎えに行くから」
「うん」
さすがに怒り爆発モードのレイネとネミリを、あの小さな子供には見せられないよな。
それにデバフに耐えられるかも微妙だし。
女の子が隠れたところで、俺は特性を発動する。
俺と盗賊たちはその場に膝をつき、立っているのは最強の2人だけ。
盗賊たちの額に脂汗が浮かぶ。
「何だ……動けねえ……」
「正直、もともとできない手加減が一層できなくなる気がするから、デバフ何重にもかけといて」
「了解」
ご要望通り、もりもりにデバフをかける。
防御力を下げると軽い攻撃で盗賊たちが死んでしまうので、【
「くそっ……」
「苦しい……逃げられねえ……」
「何でこの2人は平気なんだ……」
盗賊たちを冷たく見下しつつ、レイネが言う。
「どれくらいまでやってよろしいでしょうか?」
「さすがに殺しはするな。街に連行して引き渡せば、お金ももらえるし」
「では半殺しくらいで止めます」
「んー、お前らの半殺しは全殺しな気がするから、半々殺しくらいで止めようか」
「かしこまりました」
「ひっ……!」
「な、なあ冗談だろ」
「金なら払う!何なら大人しく捕まるからさぁ!」
「もう遅いです」
レイネのキックが盗賊の1人に炸裂する。
高く体が舞い上がり、そして地面へと叩きつけられた。
うん。やっぱりあの女の子に見せてはいけないな。
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