第6話~那古野は今日も平和?~

 一方その頃、那古野では


「置いて行かれちゃいましたね。」


「これは、運が良いので御座るか。」


「なるほど、『ばいく』なるものはかくも速く走るものなのですなぁ。」


 三者三様の感想をもらしていた。


「景光殿、私はこれで失礼致します。アレを量産できるよう検討しようと思いますので…」


 そう言って、源内は倉庫から離れていった。

 麗奈は、気になっていた事を城之内に聞いてみた。


「城之内さん、信長さんは貴方の事を『喜三郎』と呼ぶのは、なぜですか?」


「『喜三郎』はそれがしの幼名でござる。」


「そうなんですか。」


 気にはなっていたが、それほどでもなかったので淡白な返事になってしまった。


「ところで麗奈殿、先ほども聞いたことなのだが、本当に桐妙院殿とは只の幼馴染みで御座るか?某には、とてもそうは思えぬで御座るが…」


「まぁ、手のかかる弟みたいなものですかね。」


 城之内としては、麗奈と真弥の関係があまり深くない方がいいと思っていたため、麗奈の言葉にホッとしていた。

 麗奈は、なぜまた真弥との関係を聞かれたのか分からず、首を傾げた。

 しばらく城之内と麗奈が雑談をしていると、遠くから一際目立つ鎧を纏った武将が兵士を連れて通りかかった。


「おぉ、そこに居るのは景光ではないか?しかも、なかなかの器量良しと一緒とは相変わらずお主は手が早いのぉ。」


「柴田様、誤解を招く言い方で御座る。」


「景光、そうは言うがいつもお主の周りには器量良しの女子が居るではないか。少しくらい我らに、お裾分けしてくれても良いではないか?」


「ですから、某は何もしてはおりませぬ。勝手に女子がついてくるだけで御座る。」


 『鬼柴田』とも呼ばれる武将ー柴田 勝家しばた かついえーは、城之内を弄る。

 城之内は、頭を左右に振りながら答える。

 モテない男に言わせれば、なんとも羨ましいセリフである。

 実際、勝家が連れている兵士のほとんどが、勝家の言葉に頷き城之内を羨ましそうに見ていた。

 麗奈は、城門から倉庫までの道のりを思い出した。

 確かに、町ですれ違った女性のほとんどが城之内を見て、うっとりとした表情をしていた。


「しかし、殿も大概かぶいた格好をしておるが、景光の連れておる女子もかなりかぶいた格好をしておるのぉ。」


 麗奈は、自身の姿と城之内達の姿を比べてみた。

 確かに髪の毛は自分が好きでライトブラウンに染めてはいるが、バブリーな服装ではなくリクルートスーツである。

 現代日本では見馴れた髪の色や服装ではあるが、戦国時代にない格好のためそう見られるのだろうと麗奈は思った。


「城之内さん、今更ですがあの方はどなたですか?」


「あの方は、柴田 勝家様と申しまして織田家随一の猛将で御座る。」


 そうして、城之内と麗奈、勝家と取り巻きの兵士達と談笑していると城門の辺りが騒然としはじめた。

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