第3話~えっ、マジですか?パート2~

「喜三郎、そこで待て!!そちらに行く!!」


 声の主がそう言って、城壁から姿を消しまもなく、城門が開かれた。

 城門から現れたのは、長身の女性だった。

 ド派手な着物に荒縄の帯を絞め、豊かな双丘にさらしを絞めて左肩をはだけて、城之内と同じ銃を担いで近づいてきた。

 真弥の身長が160㎝前半に対して、麗奈は少し低く150㎝後半。

 城之内は180㎝前半ほどあり、長身の女性は170㎝半ばであると思われる。

 その女性に対して、城之内は恭しく頭を下げ礼を尽くした。


「殿、それがしの為に出迎えまでしていただき、ありがたき幸せにございます。」


「なに、喜三郎のためというより、お主の後ろに居る者達の方が気になったからな。」


 そう言って、女性は真弥達に視線を移す。

 鋭い視線が、真弥達に突き刺さったかと思えば、すぐに柔らかなものに変わった。


主等ぬしらの名を聞きたいのだが、何と言うのだ。」


「人に名前を問うのであれば、まず先に自分から名乗るのが筋ではないですか?」


 女性の問いに対して、真弥はそう答えた。

 真弥の膝が小刻みに震えていたのは、ご愛嬌。


「フッ、生意気な小僧であるな。だが主の言う通りかも知れぬか。よかろう、小僧、耳の穴かっぽじってよく聴くがいい!!ワシの名は、織田 信長である!!」


 真弥も麗奈も、キョトンとした顔で『信長』と名乗る女性を、見ていた。


「んっ?聴こえなんだか?ならば、もう一度言おう。ワシが、織田 信長である!!」


 二度目の名乗りをしたにもかかわらず、先ほどと変わらない状態の真弥達に、信長は苛立ちを隠さず肩に担いだ銃を腰だめに構え、威嚇をして見せた。


「ワシは名乗ったのだから、次は主等の番であろう?さっさと答えねば、主等に鉛玉をくれてやるが、どうする?」


 信長の眼が据わった。

 真弥の頭の中で『鳴かぬなら、殺してしまえ、ホトトギス』の句が思い出され、あわてて名乗った。


「ぼ、僕は、桐妙院 真弥で、彼女は桐条 麗奈です。」


「真弥に麗奈か、二人とも良い名であるな。それで、主等はー」


 ―カンカンカンカン― 


 信長の話を遮るように、物見櫓から鐘の音が聞こえてくれば、


「殿、早く城門の中に!!奴らが襲って来ますぞ。麗奈殿達も急がれよ!!」


 城之内が、信長達を急かして城門内へと誘導する。

 全員が城門を潜ったのを確認すると城門はピタリと閉じられた。


「喜三郎、城壁に上がるぞ。奴らを、打ち砕く。真弥、麗奈、主等も共に来るがよい。」


 そう言って、信長が城壁に向かって走り出せば、城之内、真弥、麗奈が続いて城壁に上がった。


「奴らの数と距離は!!」


「はっ!!数は100ほど、距離はおよそ300。犬頭種と思われます!!」


「犬頭種か、よし!!大手筒用意!!」


 信長は物見からの報告を受け、すぐ様迎撃準備を整える。

 何人かの兵士が、細長い筒を担いで敵の方に向ける。

 真弥は、兵士の持っている細長い筒を見て、「(えっ!!あれってRPG-7!?AK-47の次は、ロケットランチャーですか!?)」そんな感想を覚えながら、目を丸くして見ていると、


「照準、敵犬頭種!!1番から5番、撃て―!!」


 信長の号令のあと、五人の兵士が引き金を引く。

 パシュ。

 発射音とともに、弾頭が尾を引いて敵の集団の先頭付近に着弾。

 そして、爆発。

 兵士達は、口々に喜びの声を上げているが、信長だけは険しい顔で爆発を眺めていた。


「次弾装填!!」


 信長から指示が飛ぶ。

 兵士達はすぐ様行動に移る。

 物見から、報告が入る。


「数50に減少!!距離およそ150にまで接近!!」


「第二射、撃て―!!」


 再び発射音とともに、弾頭から尾を引いて敵の集団に着弾し爆発した。

 しかし敵の数があまり減っていない。


「あいつら、味方の死体で防壁を作ってこっちの攻撃を防いだのか!?」


 真弥は、「(コボルト(仮)のくせに意外と頭が切れる。)」と、思い驚いた。


「ちっ!!なかなかしぶとい奴らだ。ならば、回転機銃用意!!」


 信長が悪態をつきながら、次の行動を指示する。

 RPG-7を担いでいた兵士が下がり、別の兵士が布を被せた大きな物体を押してきた。

 布を取り払うと、砲身が6本も環状になっている機銃が現れた。

 いわゆる『ガドリング砲』である。


「回転機銃掃射!!」


 いつの間にか、城門を挟んで4基のガドリング砲が用意され、敵目掛けて発射された。

 コボルト(仮)の集団は、瞬く間に掃討された。

 信長は、満足そうな顔で真弥達に向き直った。

 真弥は、今まで疑問に思っていたことを、信長にぶつけてみた。


「信長さん、なんであなた方はRPG-7やらAK-47、はたまたガドリング砲なんてものを所有しているんですか?それに、コボルトみたいなあの化け物は何なんですか!?」


「桐妙院殿、不敬であるぞ!!殿の御前である。場をわきまえよ!!」


「よい喜三郎。真弥の質問を許す。」


 城之内が真弥を咎めれば、信長が城之内を制した。


「真弥、お主の問いに答えてやりたいが、ここでは兵達の邪魔になる故、城に戻る道すがら答えようと思うが、それでよいか?」


 真弥は、素直に頷く。


「ならば、城に戻るとしよう。者共、あとは任せる!!」


 兵士達は、信長に敬礼し作業に戻る。

 城壁を降りて城下町へ向かう道すがら、信長は真弥達に問いかけた。


「ところで、お主達はこの辺りでは見かけぬが、いったいどこから来たのだ?」


 真弥と麗奈は顔を見合せて、「(さて、何と答えようか?)」と、考えはじめた。

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