第41話

「ギギ、魔王は何処にいると思う?」


 階段を上っている最中に、俺はギギに話しかけた。


「そりゃ。俺みたいになっているに違いないだろ」


 誰かとギギとイヴのような関係を結んでいるということだろう。だが、イヴのような存在は珍しい。探し出せないものではないだろう、と思いかけて止めた。


自分のなかに違う自分がいるというのは、隠そうとすれば隠せることだ。その上、現在は魔王の魂が逃げているかもしれないとうことしか分からない。


 まずは、フライニー先生に相談することにしよう。


 フライニー先生は魔法の先生だし、ローのこともあわせて相談できると思ったのだ。


フライニー先生には、この問題は重すぎるかもしれない。コネでもあれば校長に直接直訴することも出来るかもかもしれないが、残念ながら俺にはコネも何もなかった。


 外に出た俺とギギは、分からないようにローがいた部屋に続くドアに土をかけて、的をしっかりと立てた。たったそれだけなのに、ひどく疲れたような気がした。


それもそうかもしれない、朝日が昇っていたのだ。


「て……徹夜になってしまった」


 俺は、足から力が抜けた。


 ギギも欠伸をしながら、俺の肩を叩いた。


「じゃあ、俺は寝るから」


 さわやかな朝日を浴びながら、ギギはイヴと入れ替わった。イヴは、眠そうに目をこする。ギギのなかで眠っていたイヴだったが、肉体の疲れは精神を蝕むのだろう。ギギは戦っていたし、俺より疲れているのかもしれない。


「夜の記憶が全然ない。これはギギが何かしたのね」


 はぁ、とイヴはため息をつく。


 そして、次の瞬間に俺がいることにイヴは初めて気が付いた。びっくりしたような顔で、イヴは眼を丸くしていた。


「どうして、キロルが……」


 イヴは混乱している。俺は、笑ってみた。イヴは顔を赤くして、俺から離れた。


「あの……ギギが何か変なことした?あと、頭のそれはなんですか?」


 イヴは恐る恐る、俺に聞いてきた。


「変なことはなかったけど」


 ひたすらに次のドア目指すために、ギギが一人で戦い続けていただけである。その際に、ギギが大胆にも足を見せて戦っていたことを思い出した。ローを圧勝したあの足技は、淑女がおこなう行動ではない。いや、その前に淑女は竜と戦わないのだが。


「ギギが竜を倒したんだよ。それで、竜になつかれた」


 とりあえず、色々と端折ってギギとローの戦いを告げた。ギギの令嬢らしからぬ行動を察してか、イヴは恥ずかしくて両手で顔を隠した。


「それとこっちは、ローっていう竜」


 イヴは両手を顔から離して、ローのことをしげしげと見つめた。


「なんと言えば、いいのか……その……カエルとトカゲの子供みたいな外見をしてるわね」


 イヴの言葉に、ローはショックを受けていた。ローは自分は可愛いと思っているらしかったが、イヴの言葉は残酷だった。カエルもトカゲも女性に好かれる外見ではない。


「キロル、早く着替えないと。二人とも埃と土だらけよ。このままでは授業に遅れるわ」


 イヴの言葉通りだ。一応汚れないように注意していたが、俺たちの制服は汚れていた。俺たちは着替えるために、それぞれの部屋に戻った。

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