第35話
「王子とリコって、ずっとあんな感じ?」
俺は、イヴに尋ねた。
イヴは、首を縦に振った。
ルーベルトが座った瞬間から、友達と思われる女子に背中を押されながらリコは王子の隣に座らせられたのだという。
あその後は、周辺を守るかのように平民が座ったらしい。王子の婚約者にもなれるという言葉は、平民たちの心を掴んだらしい。積極的にルーベルトとリコを一緒にしようとしている。
一方で、ルーベルト王子は平民の話が聞けるからか笑顔である。王子として国民の話を直接聞けるのは嬉しいのだろう。だが、もうちょっと周囲に気をくばって欲しい。ルーベルトは、イザベラがなぜ怒っているのかも分からないようだった。
「ルーベルトって、本当に鈍いわね」
イヴまでため息をつく。
「お茶会のときも、あんなに鈍かったかしら」
イヴは真剣に考えていたが、お茶会の時のルーベルトはイザベラから逃げるのに一生懸命だったような気がする。そうこうしているとイザベラが、俺の隣に座った。どうやら座る場所が、ここしか見つからなかったらしい。
イザベラは、あきらかにイライラしていた。ルーベルト王子の隣に座れなかったからだろう。こんな不機嫌なイザベラに話しかけるなど、俺にはできなかった。
「イザベラ、しかたないわよ。ルーベルトだって、市勢のことを知り方だろうし」
イヴはそう言うが、イザベラは我慢ならないようだった。
「そんなの分かっているわ。ただ、あの人には何より私を大事にしてほしいだけよ」
それも結構な我儘だな、と俺は思った。しかし、王子であるルーベルトにイザベラの我儘は叶えきれないだろうと思った。
市勢の人間だって、忙しければ忙しいほど嫁の扱いは雑になる。それなのに、自分を一番にしろというのは単純ながら難しいことだった。
しかもイザベラの場合は、相手はルーベルト王子だ。いずれは王になる男だ。第一に考えなければいけないのは国民のことで、身内の嫁にかまっている暇はないだろう。
そんなことを考えていると、リコは不安そうにきょろきょろし始めた。どうしたのだろうかと思っていると、ルーベルトは微笑みながらリコにペンを渡した。
筆箱を忘れてきたか落としたのか、と俺は納得した。
リコは最初こそ恐れ多いと思って断っていたようだが、最後にはペンを受け取っていた。リコは嬉しそうだが、気弱というか積極的ではない二人は意気投合したらしい。二人で楽しげに話している。イザベラは、視線だけで人を殺せそうだった。
「はい、それでは歴史の授業を始めますよ」
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