第24話
ギギは、弓使いの男を睨みつけていた。
いつでも魔法が使えるように、右手を男に向ける。
「お前は何者だ」
ギギは叫んだ。
男は、にやりと笑う。
「喜べ!魔王様は復活した。人間ども、今度こそ魔王様に膝をつけ!!」
男は、そんなことを叫んだ。民衆たちは、ひそひそと噂話をしていた。魔王は五百年も前に滅ぼされた存在だ。そんなものが復活したなど気が触れているとしか思えない。
「お前、前世のほうなのか?」
ギギはそう尋ねる。
たしかにイヴとギギのように、現代人と転生者なら「魔王がまだ生きている」と錯覚していてもおかしくはない。
「あのな、この時代に魔王はもういない。少しは自分で確かめろ。この時代に魔王はいない。……復活していたら、こんな平和な世の中になっていない」
ギギは、ため息をついた。
「俺は魔王に殺されたが、俺以外の誰かに魔王がころされたんだ……」
ギギの言葉に、俺は息を飲んだ。
それを見ていた弓を持った男は笑う。
「バカめ。魔王様も転生なされた」
その言葉に、ギギは言葉を失った。俺も同じだったが、驚きはギギの方が大きかっただろう。なにせ、彼は五百年前に魔王と戦っているのだから。
「言い残すことは、それだけか?」
いつの間にか、ギギは巨大な火の玉を作っていた。その火球がどんな変化をするのかわからないが、俺は思わずギギの腰に抱き着いた。
「そんなの当てたら死ぬ。この時代は罪人をさばく方法は決まっているんだから。私刑はダメだ!」
俺の言葉に、ギギは正気に戻って火を消した。
「めんどくさいな」
ギギは嫌そうに男の顔を殴った。
俺は、頭がいたくなった。
今さっき私刑はするなと言ったばかりである。きっと本人は魔法で攻撃するのは「ダメ」で、殴るのは「良い」と思ったのだろう。両方ダメな行為なので、いい子は真似しないように。
「よし、これで王宮に運べるぞ」
ギギは、顔は満足気だった。
俺は、今日何度目か分からないため息をはいた。
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