第23話

「キャー―!!」


 女性の声が聞こえた。


 嫌な予感がした俺は、その悲鳴がした方向に走る。


 案の定、ギギはそこにいた。弓と矢を持った青年もそこにいた。たぶん彼が犯人なのだろう。青年の首には、ギギの足が絡まっていた。ギギは青年の首を足で締め上げているらしく、道に仰向けに横たわっていた。豪奢なスカートからのびる白い足に、俺は思わず赤面した。


「キロルか、ちょっと遅かったな」


 ギギの全く令嬢らしくない格好に、俺はため息をついた。スカートがめくれあがっていて、どこを見ればいいのか分からなくなる格好だ。いや、見てはいけないのだが。


せめて下着だけでも隠そうと、俺はスカートの布を少し直した。だが、足が丸出しになっているのは変わらない。


「……その恰好は、どうにかならなかったのか?」


 俺は、ため息をついた。貴族の令嬢が絶対にやらない恰好である。いくら犯人の動きを止めようと思っても、自分の足で犯人の首を絞めるなど。


「うるさいな。イヴの体だと手の力がたりないんだよ」


 だからと言って、男の首を足で締め上げるのはいかがなものか。普通の淑女ならば、足は隠すものだ。足は、淑女の体のなかで一番恥ずかしい部位である。だが、今のギギはその足を思いっきりさらしている。痴女と思われても仕方がない恰好である。女性の悲鳴は、きっとイヴのことを見てのことだったに違いない。


「さっきの狙撃は貴方がやったの?」


 俺は、気絶しそうな弓使いの男に俺は尋ねた。すると男に目が、怪しい光を帯びた。なにか雰囲気が違う。そうだ、ギギとイヴが入れ替わるときの雰囲気と似ている。


「どけろ」


 男はそう言いながら、ギギの足を退ける。まるで、ギギの力が頼りないと言うかのように。そのことに、ギギは眼を見開いて驚いていた。


 ギギは素早く体制を立て直し、弓使いの男から離れた。ちょうど俺を守るような位置でギギはとどまり、俺は何かただ事ではないことが起こっていることを知る。


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