第7話
ギギが俺の頭を撫でようとした瞬間に、ギギの気配が消えた。男っぽい雰囲気が消えると、元の少女の人格が顔をだす。
「キロル様、あの……」
ギギの気配が消えたイヴの顔は、赤かった。ギギがやらかした色々を思い出したのかもしれない。ギギの態度は、間違っても令嬢らしい行動とは言えなかった。今も俺の頭に手をおいており、イヴはそれを気が付いて「すみませんっ!」と頭を下げた。
「ギギが色々とすみません。お見合いの最中は、いつも寝ているのに……」
イヴは、恥ずかしそうに謝罪する。
イヴの父親は、ため息をついた。
「ギギは、一度決めるとしつこいからね。撤回はしないだろうね」
イヴの父親は、俺を見た。
威張れることはではないが、俺の容姿と身長は平均である。赤茶色の髪に茶色の瞳。四兄弟でもまれて育ったので度胸はあるかもしれないが、それは外見を見ただけではわからない。
ギギに子ども扱いされているところを見られたので、イヴの父親には情けなく思われているかもしれない。俺を見つめて、イヴの父親はこう言った。
「君にイヴの婚約者になってもらうけどいいかな?」
その言葉は、俺には予想外だった。
俺とイヴでは爵位に差があるし、俺は将来公爵の家を背負っていくような気概もない。そう思われていると思っていたのだ。
俺は、そうイヴの父親にそのことを伝えた。
情けないことに見合いに来たくせに、今更になって将来背負うものの大きさにおののいていた。
「家を背負う気概は、次第に生まれてくるものさ。それに戦を経験したギギが、イヴの婚約者に今まで口を出すことなんてなかった」
案外、気も合うかもしれないよとイヴの父は暢気そうだ。イヴの別人格と俺が仲良くなっても仕方がないことだと思うのだが。
「あの……俺は大したことはできませんし」
魔法も中途半端なら、兄や母が教えてくれている勉強も中途半端である。とてもではあるが、公爵家を背負っていける人間になるとは思えない。
「大丈夫だよ。心配なら、我が家で教育してあげるよ」
イヴの父親は、そういった。どうやら彼のなかで、俺が娘の婚約者になることは決定事項のようだった。男爵家である俺には断ることはできなかった。
「明後日、保護者と一緒にうちにおいで。正式に書類をかわそう」
イヴの父親は、そう言った。
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