第5話

「さ…さあ、皆さん!とりあえず席にどうぞどうぞ!お茶入れますね!」


桃坂先輩、なんだか嬉しそう…本当に私なんかでも良かったんでしょうか…私は未だにちょっと自身がないです…

忙しく私とかな先輩のお茶を用意しているあのきれいな先輩のことを見ているとやはりあんなきれいな人の隣にいてもいいのかって迷ってしまって…だって去年の御祖母様がおっしゃいましたから…普通じゃダメだって…


「お待たせしました、二人共!私の自慢のミルクティーです!」


去年のあの言葉を思い出してしまって少し落ち込んでいた私の前に出された先輩のミルクティー。芳しく香ってくる甘い匂いに少しだけ心が落ち着いてゆくそうな気分…あ…!ありがとうございます…!いただきます!


「あ…!」


一口するだけなのに口の中をずっしりと包んでくるなんという豊富さ…!そしてその後を次ぐ柔らかい甘み…!私、こんな美味しいミルクティー初めてかも…!一体どこの国の高級品なんですか、これ…!?


「美味しい…本当に美味しいです、先輩!」

「そうですかー良かった。」

「ちなみにこれ、ミラミラのミルクで作ったんだ。だからよく味わうんだぞ?」


天然…だったんですね。だからこんな生々しくて豊富な味が…って


「えええええ!?!?ミルクってどういう意味!?」


ちょ…ちょっと待ってくださいよ!?今なんて!?私の聞き間違いなんですよね!?私の聞き間違いだと言ってください!!


「かなちゃん!」

「あははっ!ごめんごめん!冗談よ、冗談!出るわけないじゃん、そんなの!」

「もう!今はまだ出ないだけです!」


まだ!?


な…なんかとんでもないシモネタをぶちかましてくれるんですね、かな先輩って…本当にびっくりしましたよ…うう…でもなんか飲みにくくなっちゃったかも、これ…


「だ…大丈夫ですよ、虹森さん…!私、まだ赤ちゃんとか持っているわけでもないから絶対出ませんよ、そんなの…!」


またまだって言いました!?わ…分かりましたからまずそのでかいおっぱい、どけてもらえますか…?なんか見ていると本当にそっちの牛乳袋から取れたような気がしますから…


「実は私、虹森さんが来るのが遅いから来ないのかなって思ってました。私が余計な負担をかけてしまったかなって。でもこう来てくれて本当に嬉しいです。ありがとうございます、虹森さん。」

「い…いいえ!こちらこそお待たせしてしまってすみません…!入学したばかりでつい迷子になっちゃって…!F館の方で迷っていまいしたから…」

「なるほど。だからそこでかなちゃんと合って。」


高校生になって迷子になっちゃうだなんて…恥ずかしくてあまり言いたくないんですがやはり事情の説明はちゃんとしなければならないですから…


「し…仕方ないですよ!ここの学校って私達が普通に通っていた中学校とは比べないほど広いですから!通過儀礼みたいなものですよ!そうですよね!?かなちゃん!?」

「そうだよ、モリモリ。別に気にしなくてもいいことだから。」

「そ…そうですか…」

「モリモリ…」


ふとかな先輩から言った私のあだ名から何か気になるところでもできたような桃坂先輩。ど…どうかしましたか…?


「い…いいえ…さすがかなちゃんっていうか、もう虹森さんのことをあだ名で呼んでいるんだなって…」


あ…あれ?なんか羨むような顔…も…もしかして先輩もそう呼びたいんですか…?ならお好きに呼んでくださっても構いません。まあ、さすがに小学校のあだ名で呼ばれるのはちょっと恥ずかしいんですが…


「じゃ、じゃあ…!「みもりちゃん」って呼んでもいいですか?その…友達になった記念っていうか…えへへ…」


せ…先輩、可愛いかも…!何でしょう、この初々しさ…!この欲情の塊のような体でこんな初な反応だなんて…!完全に反則ではないですか、これ!?


でも「みもりちゃん」か…そういえばここの学校に来てから最近名前で呼んでくれる人が少なかったんですね。一緒に生活している幼馴染を除けば私のことを「みもりちゃん」って呼んでくれる人はいなかったかも…それだけ私は皆と距離を取っているということです。

ここはいわゆるお嬢様学校だから皆私みたいな普通な子とは似合わない素敵な人だと思って…「芸術文化系」の学校だけど私は普通に成績で入学した生徒だし…


でも私はこの先輩から「みもりちゃん」と呼ばれるのはそんなに気まずく感じられないかも知れません。だってこのきれいな先輩は私が来るまでずっと私のことを待ってくれた人だから。理由は分かりませんが私はこの不思議なおっぱい先輩のことが少し好きになったかも知れません。


「分かりました…じゃあそれで…」

「本当ですか!?」


なんて嬉しそうな顔…そんなに嬉しいのでしょうか…


「じゃあ、改めてよろしくお願いしますね!みもりちゃん!」

「は…はい…こちらこそよろしくお願いします…」


まるで天使の笑顔…!なんと無垢な心の人なのか…!


「本当良かったね、ミラミラ。いい友達ができて。」

「ありがとうございます、かなちゃん!みもりちゃんも私のことを「みらい」って呼んでくださいね?」

「は…はい…」


そして先から私二人をずっと見ながら微笑んでいるかな先輩。私からもお礼を言わなければなりないですね。ありがとうございます、かな先輩。

先輩がいなかったら多分私はそのまま帰ってしまったと思います。先輩が私の手を引っ張ってくれたから先輩と友達になれたんです。

こんな明るい人、少しは苦手なんですがもし先輩の力になれることがあったら全力で協力したいです。


「あ!これは先私が作ってきたお菓子です!良かったら召し上がってください!」

「私、ミラミラのお菓子、大好き!」

「可愛い…」


かばんの中で丁寧に包装したクッキーの袋を出して私達に渡してくれるみらい…先輩。な…なんかちょっと恥ずかしいかな、これ…


一口くらいの大きさの桃の形のクッキー。見た目だけでこんなに可愛いのに味もまたすごくいい…優しさがいっぱい詰まった手作りのクッキー…これはまるで子供のことお母さんが作ってくれたクッキーと似たような味かも…作曲の次はお菓子作りですか、先輩…本当何でもできるんですね。


「本当お母さんのクッキーって感じだよね。そんなに甘くなくて。」

「はい!本当に美味しいです、先輩!」

「そ…そうですか…もっとマミーのことを褒めてください…」


マミー…


それから私は先輩達と一緒にお喋りしました。学校の来たからは幼馴染の子以外は殆ど話し合ったことがなかった私にとっては本当に楽しい時間でした。

好きなアイドルの話、趣味の話やら最近気に入ったドラマのことやら先輩達といっぱいお話しました。みらい先輩もかな先輩も私の話にたくさん笑ってくれて時間の速さすら忘れてしまうほど夢中になっていた私はふと窓の外から日が沈んでいることを気づきました。


「もうこんな時間…話に夢中になってしまってすっかり忘れていましたね。」

「そうね。まだ練習も始めなかったのに。」

「練習…?」


そういえばかな先輩ってこの同好会の助っ人をやっているって言いましたよね?もしかしてライブのお手伝いもしているんですか。


「うん、そうだよ。振り付けとか手伝っているのかな。曲の方はミラミラが全部やっているんだけどあいにく私にはそんな才はないから。だから振り付けの組み合わせとか手伝っているんだ。一応チア部だしそういうのちょっと得意だから。」

「そ…そうでしたね…すごい…」


人は少ないけどちゃんと部活として活動していますね、この同好会…音楽特待生のみらい先輩が曲を、チア部部長のかな先輩が振り付けを…うまくできたら本当にすごい部になれると思う同時に私はただ部員が少なくて実績がないからなくなる事実がとても悲しかったです。もしもっとたくさんの生徒達が興味を持ってくれればこの素敵な同好会が続けられるのに…

そういえば先輩達、本当に私に何も言わないんですね。入部のこととか…それはとても助かりますが一方ちょっぴり寂しそうな気分も少しは…って何考えているのよ、みもり…!


「ごめんなさい、みもりちゃん。せっかく来てくれたのに私達、そろそろ練習に行かなければ…」


っと申し訳ないって顔で謝るみらい先輩。いえいえ、気にしなくてもいいです。私、すごく楽しかったから。私の方こそ邪魔しちゃったようですみません。


「そんな…!とんでもないですよ、そんなの!そうだ!良かったらみもりちゃんも見に来ませんか!?私達の練習!」

「それいいかも!」

「ええ!?」


い…いいんですか!?私なんかが見学しても!?


「もちろんです!いや、ぜひ見てください、みもりちゃん!私達、一生懸命歌いますから!」


すごく張り切っている先輩。でも私はその言葉から少しためらいを感じてしまいました。

きっと私なんかに見せてもいいものでしょうか…私に見せるために先輩達が頑張ったのではないはずなのに…これは先輩達にとてつもない失礼なのでは…


っと言っている私の手をそっと握って目を合わせてくれるみらい先輩。先輩、本当に体温とか高いかも…


「ぜひみもりちゃんに見て欲しいです。先話し合っている間、私は気づきました。みもりちゃんは本当に私みたいにアイドルが好きな子だなって。だからみもりちゃんに私達のことを認められたいんです。アイドルが大好きなみもりちゃんだからきっと私達のことをちゃんと見てくれるって思って。」

「私が…ですか。」


何でこの先輩は私のことを気にしてくれているんでしょうか…明日になったら飽きちゃうかも知れない私になんかにどうして…

でも先輩は決して私のこういう質問に答えてくれませんでした。ただひたすらそのきれいな目で私のことを優しく見ているだけ…先輩は決して私から目を背けず、私のことをちゃんと見ていたんです。


「みもりちゃんはどうですか?」

「私…」


…見たい。ぜひ聞きたいです、先輩達の歌。かつてこんな私だって一度は歩いた道だからちゃんと見ておきたい。先輩達はどんな気持ちで歌うのか、どんな顔で踊るのか、自分の目で確かめたいです。だってこの世界でアイドルのことが好きじゃない女の子だって一人もいませんもの…


でも本当にいいんですか、先輩…?本当に私が見ても…!って


「せ…先輩!?」


い…いきなり私の手を引っ張って抱きしめる先輩!?せ…先輩!?ど…どうしたんですか!?


「見てくれるまで離しませんよ?さっさと見に行くって言いやがれ、このやろう!」


圧…!凄まじい乳圧を感じます…!うわぁ…!私と寄せ合っているところから伝わるこの馬鹿らしい重量…!それより普通に恥ずかしいですよ、これ…!


「早く見に行かなければこのまま家に連れて行かれてミラミラのダッチワイフ になっちゃうかも知れないよ?」

「ダッチ…!」


っていうか見てないで助けてください、先輩…!このままじゃ…!うわぁ…!?もうこんなに胸がはみ出して…!本当人間ですか、先輩!?


「あ…♥なんかちょっと気持ち良くなったかも…♥」


何で!?


「す…すみません…私、ちょっと感じやすいタイプだから…♥特に乳首の方が…♥」


だから何で今そんなこと告白するんですか!?


「わ…分かりました…!分かりましたから…!見に行きます!見に行かせてください!」

「本当ですか!?やった♥」


や…やっと私から離れる無垢なおっぱい魔人…危なかった…危うくなにか別のジャンルになるところでした…!


「モリモリだって意外にグラマーって感じだね。胸だって結構大きいし。」

「そうですね。除毛も良くできているしお肌だってこんなにすべすべでムニムニして。普段管理とかしているんですか。」

「あ、これですね。元から体毛も薄いタイプだし幼馴染の子に管理してもらって…って何で知っているんですか!?」


っていうか何のんきに説明しているんだ、私!


「いいえ…ちょっと触ってみましたから…いいですね…私、こう見えても結構毛深いタイプですからちょっと手を抜けるとすぐもじゃもじゃになって…」

「そうでしたか…ってどこ触っているんですか!?ストップセクハラ!」


い…いくらなんでも親しみすぎんじゃないですか、この先輩!?こんなプライベートな情報、今日合ったばかりの私に言ってもいいんですか!?か…かな先輩も止めてください…!


「そうなんだ。いいな、モリモリ。良かったら私も確認してもいい?」


絶対ダメです!!


もういいですからさっさと行きましょう!!このままじゃ何かもっとひどいことをされる気がします!!


***


「疲れた…」


…まさか夜9時までするなんて…たかが部活の練習だと思ったのはとんでもない誤算でした…

つい先まで一緒に笑って話し合ったのに練習の時はすごく真面目になった先輩達。日頃の練習量を分かるほど一生懸命だった先輩達は部室で言ったとおり私に最高の頑張るところを見せてくれました。


誰もいない空き教室でジャージの格好をしている少し地味な練習でしたが私は多分そのキラキラな姿を一生忘れません!


みらい先輩が作ってきたポップで可愛い曲とかな先輩が考えて来た元気な振り付け!プロのアイドルに比べるとちょっと粗削りの感じもありましたがそれは先輩達の今までの頑張りがずっしり染み込んでいた先輩達の歌でした!

自分達の頭で考えて自分達の手で作った先輩達だけの物語!今でも目を閉じればすぐ見えてくるように鮮明に覚えています!


あの暗くて冷たい教室が一瞬で春に変わるような鮮やかで弾ける歌…でも何より一番最高だったのは歌って踊っている時の先輩達の笑顔でした。

ただそこで誰より楽しく歌っていただけの先輩達の笑顔はどんな宝よりも眩しく輝いていました!歌っていた先輩達の見ながら私はこう思いました。なんてきれいで幸せそうだろうっと…


「すごかったな…先輩達…」


今でも目を閉じて思い出すと胸がわくわくと走る…こんな感情、本当に久しぶりかも…


みらい先輩から


「良かったら明日も遊びに来てくださいね、みもりちゃん!待ってますから!」


って言ってくれた時はちょっと恥ずかしいんですが先輩達の前でニヤニヤな顔までしちゃいました。それほど私は本当にその時間が楽しかったです。


でも同時にズキッとした胸の痛みも感じてしまいました。私はどう頑張っても二度と先輩達みたいなキラキラな人間にはなれないって事実を私自身が知っていたから…

それでも私はもう一度先輩の歌を聞くために期待していた先輩に明日にも部室に来ることを約束してしまいました。

おまけに先輩達とメアドも交換したし…ちょっと嬉しい…かな?


「本当に楽しかったようですね、みもりちゃん。」


まだ残っている興奮を抑えきれない私のことを呼び戻す上品で和んだ女の子の声。私のその声の方に振り向いて


「あ、ゆりちゃん。ごめん。邪魔しちゃった?」


っと言いました。


「いいえ。なんだか今日のみもりちゃん、とても楽しそうだったからそれが可愛くて。」


っと私の横に腰をかけるきれいな女の子。やっと紹介できる異種族の友達が登場しますね!


皆さん、ご紹介させていただきます!

この子こそ私の人生で初めて出会った異種族であり、幼馴染のである半人半獣の「人獣 ビースティアン」、「馬の一族」の「緑山百合」ちゃんです!

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