第三十二話『最近のオキニ』


「おはようだ白銀!……。あれ、銀はどごさ?」


「銀なら俺が作った機体を見てるよ。あのゴリラの奴」


「あぁ、アレすかぁ。んまぁ確かに火力はまぁまぁだけんども……」


「まぁまぁじゃ通用しねぇからな」


 昨日の夜にゴリゴリラ見せたら、あいつ張り切って改造する!とか言い出して……。それから部屋に朝までこもってやがる。飯一緒に食わねぇと母さんメチャクチャ怒るから起こしに行かねぇとな……。


「おーい、起きろー」


 ……。返事が無い。コレは完全に寝てますね……。しょうがない。ちょっと雑ではあるが叩き起こすとするか……。


「オラ起きろ!」


「みぎゃぁっ?!」


「よし起きた」


「……も、もう朝……?おはよう」


 ノック一発で目覚めたか。もうちょっと粘るかと思ったが……。まぁこんな物だろう。鍵開けろー。こじ開けることになるぞー。


「よっ」


「はい……、おはようございます……」


「んじゃ飯食いに行くぞ」


「分かった」


 既にパールが着席済み。早いっすね。朝食はまぁ、特に言うところのない焼き鮭って感じの飯。旨いね。さて今日の予定は……。特にないんだな、これが。


「今日予定特にないんだけど、なんかやりたいことある?」


「いや、特に」


「ねべさな」


「機体の開発はあるけど、正直白銀はいらないかなって……」


「……」


 アレ?もしかして俺、いらない子なのか?いやまぁ待て待て。なんかあるだときっと、何か。うんうん……。うん。なんもないなぁ、今日は。いやまぁいつもそんな感じではあるんだけどね?


「うーん……」


 機体開発はまぁ完全にあいつに任せてるし、おっさん達の機体もなんだかんだで順調、まぁ調整してるって聞いてたから俺が良く意味は無し、そんでもって真面目にやる事が無いと言う事は……。


「……」


 どうする?俺。


「……お、なんか電話が」


 はいもしもし?で、どちら様?知らない電話番号なんですけど、どちら様なんですか?いたずら電話だったら即切りかましてやるぞマジで……。


「久しぶりだね白銀」


「うわ、瑠璃かよ……」


「うわ、とは何ようわ、とは」


 いやだってさぁ……。どこにいるの?なんか川のせせらぎが聞こえてくるんだけど、もしかして山?山にいる感じ?最終的にどうあっても結局はそこに行きつく感じなの?


「まぁまぁ……。で、用件は?」


「あぁ、手合わせをだな」


 ……。


「それはいいんだけどさ、今どこにいるんだお前は」


「山。てか何なら今すぐ会いに行けるけど?」


 マジで?ってかどういう場所に……。そういや俺の家、山の近くにあったっけな。まさかそこで修業してる訳じゃないだろうなぁ……?いやまさか……。


「ほら」


「あーあ当たっちゃったよ!」


 なぜみんな山に向かうのか!俺も五年くらい山にこもってたけどさぁ!てかお前まさかとは思うが……。よし母さんに聞いてみよう。


「母さん。もしかして……。瑠璃がいる事隠してた?」


「聞かれなかったからね」


「だよなぁ……」


 頭を抱えるしかねぇなぁこりゃ。って事は俺が自転車に轢かれた騒動も知ってるって事か?それは流石に知らなそうだが……。流石にいるならいるって言ってくれよ……。


「まぁ戦闘するってんなら別にいいんだけど、しろがねでやるのか?それとも別のがいいか?」


「しろがね以外にあるか?」


「まぁそうだよなぁ……」


 さてと……。どこで試合するかなぁ。別にその辺の浜辺でも構わないんだが。どうせ殺し合いになるんだからな。特に瑠璃と戦う場合、マジで命の危機もあるだろうし。


「よーし!殺ろうか!」


「お前、新機体に変えた?」


「あぁ。バージョン2って感じだね。あの黒騎士と大会で……、機体の変化を考えた訳。……それがこれだ!名は『深紅宝石ディープ・ルビー』……。まぁ仮の名前だけどね!」


「そうか!なら見せてみろよ。俺のしろがねになぁ!」


 さて何を……。お?遠距離ユニットを外して……。ただの腕を付けたんだな。普通のユニットじゃねぇよなぁそれ!とりあえず……。


「行くぞ!」


 接近してから考えるか!大体避ければ何とかなるだろうが……、なっ!


「へー。今のを避けるんだ」


「そりゃな……。しかし、なんだ?」


 今の一撃で分かったが……。このユニットは恐らく腕だ。腕が……。四本飛んでいる!コレが遠距離ユニットか!成程こりゃ良いなぁ!


「さぁ殺しあおう白銀!」


「そうだな瑠璃!」


 六方向からの打撃とかマジ狂い!だが避けられないなら弾けばいい!しかし腕の一つ一つが何という火力!砂浜に刺さった腕が貫通して出て来た!当たったらヤバいだろうなぁ……!しかも俺の脇腹がさっきから激痛!


「掠っただけでこの威力……。守る隙もない程の攻め!」


「攻撃こそ最大の防御!前の機体に足りないのは防御力ただ一つ!」


「だからこそのこの火力かぁ……!中々やる!」


 マジで攻めの事しか考えてねぇんだけど!一つでも防御をミスったらもうヤバい!その時点で殺されるってレベル!いやなんなら二三回くらい死んでるかもな。


「ぐうっ!」


 あっヤベ思わずのけ反っちまった……!まぁ見逃すわけないよなぁお前が!だがしかし!足にショットガンを作り!その反動で吹っ飛ぶ!ギッリギリ避ける事には成功したが……。足が痛ぇ!


「やっぱり……。やっぱりこうでなきゃねぇ!私が望んだ殺し合いはこうでなきゃ!」


「あぁそうかよ!」


 特に接近してきて殺しに来るのがもうヤバい!たぶんアレ全身にジェット噴射付けて来てるよ!?じゃなきゃノーモーションで肉薄とか出来ねぇっての!


「銃撃を防ぐ防御力もあるのか!」


「まぁね」


 堅さまで一級品とはねぇ!一応ショットガンだぞ!?ほぼ傷一つ無いってのはだいぶ傷つくんだが!いやしかし、その前に……。隙を見つけたぞ、今!


「俺もこいつを使うとしよう……。新兵器、『新円球体まる』を!」


「ただのボールじゃないの?」


「まぁそうだな!」


 だが、新円球は回転を全て伝える。圧倒的な回転を加え、この砂浜に叩き落としたらどうなると思う!?


「確かに、瑠璃は強いよ。とても強い。……けど!それでもどうしようもない物はある!」


「砂塵……、竜巻か!」


 恐らく、瑠璃はアレだけの腕を恐ろしいことに動かしている!だが、それこそが弱点になる!俺はいつでも視界はクリーンだ!そっちはどうだ!?


「砂塵で目視を塞いで肉薄……だけど無駄だよ!そのくらい、軽くよけれる!」


 まぁ周りを覆うように腕を回すよなぁ……!しかし!それが問題!それが一番の問題なのよ!ガン攻めには圧倒的に強いが……!一瞬でも受けに回ったのが敗因と思え!


「そこがお前の弱点だ!」


「四人?!」


 ナノマシンを全部使っての前面だけ複製!ナノマシンが足りないんで前の面だけしか作れなかったけどよ!この四方向からの打撃は受けれないだろ!?


「面倒くせぇ!全員ぶっ殺す!」


「よぉ」


 受けられちゃったよ……。あ、ちなみに。俺は地面に潜ってました。


「何っ!?」


「じゃあな瑠璃!今回は俺の勝ちだ!」


 腰と腕を掴んでのかんぬきバックドロップ!砂浜だからまぁ死なないだろ!


「……うがーっ!負けたーっ!」


「ま、今回は俺の勝ちって事で良いよな?」


「まぁ良いけど!次やったら私が勝つからね!」


 じゃあ帰りますか!飯食ってねぇしな!

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