第三十話『最硬、ただそれだけ』
「とりあえず俺の怪我は治ったが……。お前は?」
「私はやっぱり後遺症があるって医者に言われた。しばらく病院暮らし」
「そうか、大変だな。それでさっき言ってたのってマジなの?」
「マジ」
……。どうやらですね、俺の家にパールが来るらしいんですよ。いや一人増える分には別にいいんだけどね?どうせオヤジの部屋があるし……。母さんも暇そうにしてたし。
「ふぅ……。あっそうだ、遅くなったかもだが、こいつは大屋。まぁ……。夏休みが終わったら学校に来る奴だ」
「そうなんだ、よろしく」
「こ、こちらこそよろしくだべ!」
しかし、そうなると一気に二人も新入生が来るって事になるが……。そう言えば、初日で俺に決闘を申し込んできた奴が自主退学して、んで確か隣のクラスの奴が病気かなんかで来れなくなったって聞いたから……。大丈夫なのか。
「なぁ大屋」
「な、なんだべ?」
「お前もBA乗れるんだよな?」
「まぁ、
「じゃあ俺の傷も治った事だしさ、ちょっと戦ってくれねぇか?」
「え?!」
「まぁ流石に殺し合いって訳じゃねぇよ。ちょっと機体を見たいだけでもある」
まぁお前も専用機持ってんだろ?出せよ……。って事だ。前は断られたが、今なら断られる理由がない。
「ならやります!私の強さ、一度見てけれな!」
「おう!」
と言う訳で早速戦闘訓練所へ!徒歩五分圏内にあるんだなぁ。え?逆じゃないかって?戦闘訓練所があるから近くに病院があるんじゃないかって?その通り。
「いやー……。さてと。しろがねは使えないんで、俺が着るのはサブ機だ!」
しろがねは今、終了中なのです。と言う訳で使うのは通称ゴリラ機体こと『ゴリゴリラ』!……そのまんまじゃねぇかとか言うな。このゴリゴリラは、とにかく火力一点重視機体だ!
「私のBA……名前は『
うーん……。白い!ってか凄い煌めいている!ダイヤモンドか、相当固いんだろうな。きっと。
「まぁルールはグリーンだから、ぶっ壊れねぇよ!全力で殴りあおうぜぇ!!」
「はい!よろしくお願いすます!」
まずは小手調べ……!両手で殴るから行くとしよう!ゴリラなんでな、人の腕と、背中にゴリラの腕が付いてるんだよ!で、この背中の腕を握ってからぶん殴る!
「しゃぁっ!」
「んっ!」
「うおっ固ぇ!」
圧倒的なパワーって奴だ!コレが!……しかし、それを無傷どころか、背中の腕が壊れるレベルの防御力!ただひたすら、圧倒的な防御力!
「確かにこりゃ骨が折れるなぁ……。いろんな意味でな」
「今度は私から行ぎます!」
「来い!」
さぁどう来る?!……成程、顎へのアッパーカットか!動きは素人その物だが、あの機体は圧倒的だ!ダイヤモンドを自称する程の力がある!しかしやり用ならいくらでもあるんだなぁコレが!
「確かに機体の防御力は一番だろう!だがそれだけだ、それだけなら……俺に勝つ要素は一つも存在しない。コレはBAも関係のない、ただひたすらに、技術だ!」
人の内臓に直接攻撃を叩きつける技術がある。瑠璃がやってた空手の技。その一つにこの技がある。名前は『
「
「ぬぎゃぁっ!?」
シンプルに内部破壊!それがこの技の正体!一応吹っ飛ぶだけの火力だが、それでも相当効いた……。
「ふぅ……。危なかったべ!」
「……。あぁ、無傷か」
嘘でしょ……。今ので無傷なの?マジで固いだけなんだな?真面目に……全てにおいて、抜かりが無い防御力!それが奴の機体!
「技術も機体も負けている……。しろがねじゃねぇって所だけが問題点だが、これ以上は無駄だな」
「な、なんだべな!?んだどもまだ決着ついてなか!」
「いや、俺の負けだ。お前に対する決定打が無い以上、このままやれば俺が負ける」
「は、はぁ……」
「だがしろがねじゃ負ける気はねぇ。と言う訳で、帰るぞ」
「勝手すぎんがな!?」
まぁ勝手なのは分かるけどな。そもそも決着を付けるって言う戦いじゃないし……、やっぱお前も俺と同じ、戦い大好き人間なんだな。本能で理解出来るっつーの。
「ま、俺との決着は今度付けようぜ。俺も全力じゃねぇしな!」
「むぅ……。ま、ならよか。次も私が勝つけんな!言い訳考えとけ!」
「あいよ」
さて帰ってきました病院。しかし何やら騒がしい様な……?誰かが救急搬送されて来たっぽいな。まぁ道は開けるけど……、あのおっさんどっかで見たような?
「あ、あれBAカンパニーの社長さんだべ」
「え!あのおっさんが?!」
「んだども……、頭撃ちぬがれとったべ、ありゃ即死さ」
「……そうだなぁ」
一体何があったんだ?
~三人称視点~
白銀らが帰って来る一時間前。BAカンパニーと言う会社の社長である『
「へへ、次はどの女を連れ込むかなぁ……」
何をするにも体目当てで、ダストの会社から女社員をゴッソリ引き抜いたのは、こいつが主導権を握っていたからである。葛実は、あくまでそれで売上が伸びると言われて許可を出しただけ。
「社長!大変です!」
「なんだ!今私は次の相手をだな」
「それが……、葛実社長が、来訪すると……」
「……何?」
だが、業績を確認した結果、なんと昨年比からマイナスになっていたのだ。そして葛実は、下総の元にやってきた。
「こ、これはこれは社長様!ど、どういったご用件で……」
「あぁ。お前。お前は確か、俺にあの会社を買収すれば売り上げが伸びると言って、俺に買収許可を貰ったよな?」
「は、はぁ……」
「だが。確認してみた所……。昨年よりマイナス0.1%も下がっていたのだ。……コレはどういうことだ?」
「お、お言葉ですが社長!マイナス0.1%なんて大した誤差では」
その瞬間だった。下総の片耳を、銃弾が通り抜けた。撃ったのは間違いなく葛実。だが当の本人は、銃を社長室にいた部下に渡すと、こういった。
「あぁ、なんてことだ。下剋上されてしまうとは」
「社長!?な、なにを言っているのですか?!私は今まで、社員の為に一生懸命に」
「別にただ利益が下がる事に文句を言っているのではない。……お前は私に、間違いなく利益が上がると、そう言った事が問題なのだ」
もし仮に、彼が普通にマイナスになっていたのなら笑って見過ごしていただろう。しかし、彼は葛実に『絶対に』と言ってしまっていたのだ。しかし、事実数字はマイナスを示している。
「お前は私に、この私に、利益が下がる事を、させたと言う事だ」
「あ……あぁ……」
「それがどれだけ大罪なのか……、お前も知らない訳では無いな?」
この会社で重要な事、それはただ一つ。ただひたすら、金を稼ぐこと。絶対的な実力主義。ただでさえダストの会社を買収するのに金を使ったのに、それでマイナスになってはどうしようもない。
「と言う訳で……。貴様はクビだ」
「待って」
何を言うでもなく、葛実は先ほど渡した銃を暴発させる。放たれた銃弾は下総の頭を貫通し、銃を持たされた部下は右手が弾けていた。そして葛実は警察に連絡をすると、そのまま帰っていく。
「残念だよ、貴様はクズでもゴミでも金を稼げるから、ここに置いていたのに……。金も稼げないクズでゴミは、もう生きている価値が無い」
コレが葛実。金にならない人間は即座に切り捨てる。なぜそこまでして金を稼ぐのか?そんな事は当の昔に忘れてしまっていた。
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