第二十九話『俺のアバラが!』


 今俺はベッドで眠っている。病院ってやる事が何にもないと言う事に気が付いた。いやマジで、何にもないよ。完全安静だからどっかに行って~とかが一切できないんだよね。んで医者から言われたのを簡単に言うとだな。


「えー……。アバラ骨がバッキバキです」


「ですか」


「全治二週間、完全安静でお願いします」


「分かりました」


 って感じだ。マジで。俺の肋骨がボドボド!!医者からはよくこれで壊れなかったなと言われてしまった。まぁその辺はまだいいか。とりあえず心配かけないように、誰にもこの事は言っていない。


「まさかこんなことになるとはなぁ……」


「私に出来るこどありゃ何でも言ってけれな!私のせいでこうなったからな!」


「とりあえずリンゴ買ってきてくれない?」


「分かった!」


 とりあえずあの大屋って奴は、俺の看病をする事になっている。と言うかそれでもまだ足りんだろって感じではあるが……。まぁ言わんでいいか。BAあるから大丈夫だろうと慢心したのは俺のミスだし……。


「はぁ……」


「大丈夫?」


「よぉ絵夢……。今さらだが、助けてくれてありがとよ」


「ま、多少はね?」


「しかしやる事が無いと暇だなぁ」


「じゃあ暇つぶしになりそうなもの持って来たぞ」


 マジ?たまにはいいところあるじゃん。で、何を持って来たのかなっと。


「これは?」


「さぁ?」


「なんだこれは」


 なんだこれは……。ちゃんと説明してくれよ。なんだこの……。なんだ?この良く分からない何かは……。液体?にしちゃ無駄に硬いし……。なんなんだコレは。


「何?」


「分かんない」


「分かんないなら寄越さないでくれる?」


 返すね。いやこんなもん貰っても逆に困るって言うか……。ねぇ?お前が処理しろよこんなもん。ってかこれだけかよお前の用事は。帰れよ。もう帰れよ。


「あぁ~じゃなくて本当はこっち」


「はぁ。……パールと戦った時に飲んだ奴?」


「まぁ回復薬だな。ウチの企業とは別の会社が作った物でさ、あの時飲ませたのは試作薬なんだって」


「へー……。ん?じゃあ俺モルモットって事?」


「そう言う事。まぁ治れば御の字、治らなくても二週間でしょ?」


「……。じゃあ飲むか……。治らなくとも何とか!」


 ラッパ飲みだぁ!……うーん美味しくない。何とも言えない味だ、いやまぁ世間一般の回復薬ってイメージではあるが。……さて体の方はと。


「まぁ効力に関しては日を改めてって感じだな」


「そりゃねぇ」


 ……なんか随分大人しいなこいつ。こいつが大人しい時って、決まってロクな事が起きない前触れ、って感じだから嫌なんだよなぁ……。何を言ってくるかわかりませんよ。


「なぁ白銀」


「なんだよ」


「治ったかどうか俺で試してみないか?」


「……やってみるか?」


 なんか知らんが今の俺は、既に直りかけてんだよな!じゃあ一発ぶちかましてやろうかぁ!?この手で!お前の顔面によぉ!ぶっ壊れた肋骨も直ったみたいだしなぁ!


「全力だぞ絵夢!受け止めて見ろよ!」


「さぁ来い!白銀!!」


「何やってるんだべ!?」


 あっ、いい所なのに帰ってきちゃった。まぁでも出した拳を引っ込められないって言うか?うんうん。ちょっと威力を抑えて……!殴りぬける!


「フン!」


「コ゚ッ!!」


 いい音がしたなぁ……。こいつじゃなけりゃ、骨の五本くらいへし折ってるぞ?まぁこいつ相手なら一本でも折れないんだけどなぁ……。コイツ固すぎだろ。


「フゥ……。最高だよ親友」


「うるせぇよ。もう帰れよ」


「分かった!」


 素直に帰るのか……。なんかお前、今日随分機嫌がいいな?さてと……。


「絵夢さんと友達なんだべか?」


「まぁ中学からの腐れ縁って感じだよ。……クソマゾ野郎だが、悪い奴じゃない」


「ま、それは私も理解はしてんけども……あ、リンゴ買ってきたべ、剥くから食うてけれな!」


「おう、ありがとよ」


 しかし肋骨は直った……とは、思えないな。まだ痛いところは痛いし。それでもぶっ壊れた骨は直ったらしい。マジで何を飲ませたんだよ……。とりあえず歩けるくらいには直ったし、パールに会いに行くか。


「ちょっと散歩してくるわ」


「あ、私も一緒に行くべ!」


「そうか。じゃあ一緒に来てくれ」


 さてパールの容体は……どんな感じ?一応起きてはいるらしいけれども……。と言うかこの言い方は悪いんだけど、あの状況でダメージがデカかったのは俺の方だし、全治一か月ってマジ?って思っちゃったり。


「おーいパール。起きてるかー」


「……白銀」


「まぁ何と言うか……。大丈夫だった?」


 うおっ、抱き着いてきた!てか動いて大丈夫なのか!?


「……あー」


「ひどい」


「いや悪かったって……。あの時はああするしか方法が無かった」


「そこじゃない」


「?」


「私にキスしたこと」


 そっちかぁ……。いやまぁ確かに、普通ならそっちの方が問題だよなぁ。あの時はもう死にかけてたのと、脳内麻薬ドバドバで正気じゃなかったしなぁ……。


「悪かったよパール。……いい訳じゃないけど、あの時は本当に正気じゃなかった」


「……正直、今でも男は嫌い」


「まぁ、あんなのと一緒に生きてたらなぁ……」


「だけど、白銀は好き」


「……ん?」


「だから、私と一緒にいて」


「え、まぁ良いけど」


 ……ん?なんかとんでもないことになってきてないか?なぁ大屋、何とか言って……いや大屋に言ってもチンプンカンプンか。えっ、別に一緒にいるって事自体は別に構わないんだけど、どういう感じの何?


「部屋はもう一緒だし、今度家に行く」


「マジでぇ?」


 ~葛実視点~


「ふぅ……」


 黒いナノマシンについて調べてたら夜が更けてしまった……。なんだこれは?少なくとも我々の会社で作られたものではない。いったい誰が作ったんだ?


「まぁ良い、使えそうなら使うだけだ」


 セーフティーロックすら貫通させる性能、作った奴は間違いなくクソだろうが、相当いい腕をしている。だがまぁ、こんなものを作る時点で人間性は相当クソの部類に入る、間違いなく、ゲスだ。


「とは言え、実際に使ってみたところを見て分かったが、機体の自動修復機能に使えるところはある、そう考えれば……」


 しかし、あの時黒いナノマシンの浄化設計図を送って来たのは誰だ?明らかにこちらの事を知っているような書きぶりだったが……。っと、それを考えている場合ではなかったな。


「入れ」


「はい!僕が来ましたよ!」


「うるせぇ!琥珀!まぁいいや、今回呼びつけた理由……。分かるよな?」


「はい!裏口入学の事ですね!」


「お前言うなよ?まぁ別にいいんだがよ、来月から、白銀と言う男に接近してもらう。分かるな?」


「なんでですか?」


「……いいから近づけ!それでいいから!」


 白銀は、この前確認した時、親父が作ったBAではなく、誰かが作ったBAを着ていた。となると、俺の会社にある技術を平気で作れる、そういうレベルの高い技師が奴の近くに存在すると思われる。


「んで今日はもう帰れ!いいな!」


「はーい!」


 ったく、うるせぇ奴だな……。まぁ別に期待はしていないのだが。そもそも大屋が来るまでの代わりと言うだけで、どう使ってもどうでもいい相手なのだがな。


「……分かったら帰れ!


「分かったー!」


 ふぅ……。よし。さて、せめてもの手向けだ、奴の専用機でも作ってやるとするかな。

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