第二十七話『夏休み、開幕!』


「夏だ!」


 と言う訳で夏休みだっ!……実は予定よりちょっと早いけど、その辺はまぁ……。色々あったし。主にパール関係で。だいぶ騒ぎになってるみたいでさぁ。俺のとこには誰も来なかったんだけど、パールのとこにはいっぱい人が来てるらしいんだよね。


「うーん……。里帰りするか」


 まぁその。実は誰もまともに遊べないんだよね。


 まず銀はなんか全然話聞いてくれないんだよね。なんでだろうねぇ?いやそれは別にいいんだけどね?普通にレイン会話してくれるから。それはそれとして距離を置かれている……。


 パールは……、全治一か月だって、むごいわね。むしろあのケガで全治一か月以内なのがおかしいんだけど……。まぁその辺は、黒いナノマシン君が何とかしてくれたんだろう。


 ヒスイは里帰りでアメリカに帰ってる。で夏休み終わるまで帰ってこないみたい。まぁ仕方ないよねこの辺は。そりゃ普通家族の元に帰るに決まってるわよね……。


 瑠璃は相変わらず。でもなんか修行に行くとの事。……どこに?って聞いたら『うるさいわね!あんたは私が倒すんだから、その修行内容見られたらダメに決まってるじゃない!』と言われた。


「後は誰もいないしなぁ……」


 ……。アレ?俺こうしてみると友好関係少なくない?友達って呼べる友達……。絵夢くらいしかいなくない?もしかして俺、友達少ないのか……?


「でも今更作れって言われてもだがな」


 まぁうん、仕方ないよね!もっと前向きに考えようかね!うん!


「とりあえずカフェに来たわけだが……。なんか、凄い盛り上がってんな」


「お?……。おぉ!?お前白銀か!?」


「なんだって!?」「マジか!?」「おいアレ持ってこい!」


 な、なんか凄い急に集まってくるぞ!?なんだなんだ!?


「とりあえず……。この前の戦い、全部見てたぜ!」


「ファンになったぜおい!サインくれよサイン!」


「おいウォッカ持ってこいウォッカ!」


「えっなにこれは……」


 どういう状況?もしかしてここにいる奴全員俺のファンか何か?


「まぁよぉ、俺らは元々BAに乗ろうと思ったことがあってよぉ。……その夢は、永遠に断たれちまったんだがな」


「けどな!お前って言う俺らにとっての希望の星が現れた!……俺達はお前を応援しているからな!」


 な、なんか概ね喜ばれてる感じだが……!?


「そ、そりゃどうも……」


「にしても、大丈夫だったのかアレ」


「あぁ、腹に穴空いたあの……?」


「いやまぁそこは……えっ腹に穴空いてたのか?」


「えぇまぁ……。あっ心配しないでいいですよ!もう閉じたんで」


「いやそういう事じゃなくない……?それより、ね。こないだ機体見せてもらったけどさ、まだまだ改良の余地があると思わないか?」


「マジで?」


「あぁ。俺らは確かに機体に乗れる訳じゃない!でもな!乗るってことをあきらめたわけじゃないんだよ!」


「そもそも一点物はぶっ壊された時に不利すぎる!もう一機体くらい持っておくべきだぞ!」


「そ、そうか……。確かにそうだな。前に壊れた時にはかなりひどい目にあった」


「だろ!?なぁに大丈夫だ!俺らに任せな!」


 お、おぉ……。よぉし!銀ばっかりに任せっきりはちょっとダメだよな!銀に負担ばっかりかけるのはダメだよな!うん!


「よぉし頑張るぜ白銀!」


「よろしくお願いっす!」


 とりあえずレイン交換してきた。グループレインだった。それは良いんだけど、名前『うっちゃりナンバーズ』って何?ねぇそれどういう気持ちで付けたの?


「さて。家に帰るとするか!」


 ハイ帰ってきましたよ実家!そもそも遠くないから問題ないんだけど。……それにしても、前の試合見てたのかなぁ。


「久しぶりね。白銀」


「久しぶり。母さん」


 俺には母さんがいる。父さんはいない。俺がBAを手にした二年後に失踪した。一応BAを使って飛び回ってみたり、探してみたんだがどこにもいない。母さんは父さんが帰ってくるって信じているが、俺は正直そう思っていない。


 父さんは凄い変な人でなぁ。『どっか行くわ!』って言ってハワイに行ったり、『ちょっと風水見てくる』って言ったらそれ以降凄いいいこと続きになったりと……。


「父さんは?」


「まだ。……連絡も寄越さないで、どこに行ったのかしら」


「まぁ父さんがどこかに行くのは珍しくないし……。そのうちひょっこり帰ってくるでしょ」


「そうだといいんだけどね……。ま、確かにそれもそうね。ところで聞いたわよ」


「え、な。何を……?」


「あなた、この前のBAの大会で腹に風穴が開いたって」


「……それには色々深い事情がありまして……。見てたなら理解していただけるかと……」


「はぁ……」


 呆れられてる……。明らかに呆れられている……。いやまぁ仕方ないっちゃ仕方ない状況だったよ?アレは……。ねぇ?俺がやらなきゃ誰がやる!って感じだったし。


「はぁ……。貴方はいっつもそう。……後先考えないでいっつもいっつも……。それで、どうなの?学校は」


「楽しくやってるよ!……。まぁちょっと今回のは厳しかったけどね」


「その辺は分かるわよ。貴方の顔を見ればね。……それより、体は大事にしてる?」


「……ちょっと出来て無いかもですね……」


 腹に穴空いちゃったのはちょっとダメだよね……。そりゃね……。いやまぁ俺も流石に腹に穴空くとは思ってなかったんだよね。物理的に。どっちかって言うと胃潰瘍的に穴が開くかもって感じだったが、まさか腹に物理的に空くとはね。


「うんまぁ……。腹に穴空いても直ったし……」


「見てる方は心配なの。次からは……とは言わないけど、なるべくああいうケガは少なくしなさい」


「はい……」


 ま、まぁそれは……。分かってるんですけどねぇ。ちょっと事情が事情って感じで……。いや、言い訳はよくないよなぁ……。腹に穴空いたのは事実ではあるし……。


「それと、あの子は何?」


「え、誰?」


「ディープキスしてた子よ、あのディープキスしてた」


「……いやまぁ、キスしたら目覚めるんじゃないかって思って……。ね」


「それで目覚めるのは姫か野獣だけよ」


 悪かったよ……。本当に……。いや俺もキスはやるべきじゃなかったと思ってるよ……。


「ですよね……。あの時はアドレナリンドバドバで思考が普通じゃなかったって言うか……。ね」


「キスしたって事は責任取れるんでしょうね」


「……取るよ母さん。じゃなきゃディープキスなんかしてない」


「なら、そこは気にしないことにするわ」


 いいの?母さん、俺が言うのもなんだけど、そこを気にしないことにしていいの?と言うか母さん、明らかにキレてるよね?間違いなくキレてるよね?


「白銀」


「……ッス」


「私は貴方が何をしても、大体の事は笑って迎えてあげる。でも、その過程で女の子を傷つけたら許さない」


「……。はい」


 母さんは厳しい人だからなぁ……。父さんはまぁ、自由過ぎてどうしようもないってのは分かるけど、それでも母さんに会う前はもっとひどかったって言ってたし……。


「俺は、もう誰も泣かせないよ」


「……誓える?」


「勿論」


「ならいいわ。私の息子が約束を破る訳無いもの。……でも、本当に辛くなったら、いつでも家に帰ってきていいのよ」


「分かってるよ母さん」


 ふぅ……。何とかなりそうだ。さてと……。これからとりあえずBAのジャンクパーツ屋にでも行こうかなぁ~っと……?おや、この腕はなんでしょうか。


「母さん?」


「今日は家にいなさい?アレだけの事があったんだから」


「……はい」


 ま、まぁ……そうなるよね!

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