第十八話『判明!バトルトーナメント』
「さてと」
昨日は何かパールの親を名乗る奴に銀が絡まれてたからなぁ……。思わずボコボコにしてしまった。あんなのがパールの親だと信じたくなかった。そしてパールはまだ帰ってきていない。
「で、トーナメント表が出たのか」
「まぁね。ただ結構特殊なトーナメント表だけどね」
ほぉどれどれ……。ってめちゃくちゃ逆シードやんけ!四人と戦わないとだめなのか!?まぁそこは甘んじて受け入れよう!そのせいでヒスイがほぼ何もしてないのに決勝戦に行っちゃってるんだよね!
「よぉお前ら」
「ちょっとルミナ先生ぇ~。何ですかこのトーナメント表」
「なんだその喋り方は……。あー。それはな、最大限譲歩してそれだ」
「何があったんですか!?」
「そもそも上の奴らはお前を出す事に反対しててだな。そこを前回の敵襲事件の功績と、唯一の男性BA乗りであるって事を引き合いに出してようやくそこに入ったんだぞ?」
「マジか……」
そう言えばここのやつらはそんなに差別的じゃないが、ここから離れれば結構差別意識は高いんだったな。なら仕方ないか。ここは大人しくそのルールに従っておきましょう。
「あっそう言えばそのトーナメントに関して言い忘れた事があってな」
「なんです?」
「お前、負けたら退学な」
「はぁ?!」
ルミナ先生曰く、上に掛け合った結果、俺が負けたら退学でも構わないと言ってしまったらしいのだ。なんてこった、俺が知らないところで勝手に退学を賭けられていた。
「そんなことある?」
「あるんだなこれが。まぁお前が負けるとは思えないし、大丈夫だろ!」
「いやでもですねぇ……」
「なに、負けるのが怖いの?」
「あ?おうおうなんだこの野郎」
……パール?パールかお前?見ない間に何があった?随分……鍛え直したな。機体もよく分からん文房具機体から、メチャクチャ変わったなぁ。以前までの乳白色っぽい色から、凄い黒くなってんじゃん。
「私は負ける気が無い」
「そうか。なら俺がいる場所まで来い!全力で戦ってやるよ!」
「待ってる」
さて、奴がいる場所は俺の隣、二回勝ったらあいつと戦えるって訳だ。準決勝とも言う。それより一回戦の相手、どっかで見たことある名前だなぁと思ったら、来夏ってお前……。初日に出会ったあいつだよな?専用機持ちでもないのに戦えるのか?
「いや、汎用機でも普通に専用機以上に戦える奴がいるのは知ってるだろ。汎用機=弱いって概念は捨てろ俺!」
よし!じゃあまずやることは……。
「寝る!」
最近全然寝ていない事に気が付いた!なんで寝ます!悪いが誰にも邪魔はさせないぞ!どうせまだ一週間程度あるんだ!一日程度無駄にしても知らん!
「ん-。開かないね、鍵」
「あ、あの……。無理やり入るのは……。その……」
「よーし。壊そう」
なんか外で物騒な会話してない?今ここをぶっ壊すって言ってなかった?ちょっと待ってそれは流石にヤバいんだけど?
「おらぁ!」
「だ、大丈夫ですかぁ!?」
「本当にドアを爆破してくる奴がいるかぁ!?」
えっ何!?どういうこと!?なんで瑠璃が来るの!?そこまで俺と戦いたいの!?
「あぁすまん。それより私と戦ってもらおうか」
「えっ明日じゃダメ?」
「じゃあ明日な!」
……何しに来たんだよ!ふざけんな!せめてドア直して行けよ!どうするんだよこれ!あーあもうめちゃくちゃだよ。
「で、銀は何しに来たんだ?」
「えーっと。部屋割りが変わっちゃって、それを言う為に来た」
「……マジで?」
「パールが確か、瑠璃の部屋に変更だって。そう言ってた」
あっ、帰って来たのに部屋にいなかったのはそう言う理由なんだね!ちょっと気になってたから分かってよかったなぁ!……あいつもしかして学校止める気か?この戦いに勝てなかったら、退学する気なのか?
「……そうか」
「そ、それでね!BAの完成品が出来たから、明日でいいから着てほしいんだけど……」
「あぁ、いいぞ」
これは一回パールに会って、話し合う必要があるかもしれないな。奴にその気がなくともな。まぁどこにいるか分かんないんだけどな!どうするんだよこれ。
「とりあえず、今日はもう寝かせてくれ」
「あっうん。……お休み!」
はいおやすみなさい。
~sideパール~
「白銀はどうしてあんなに強いんだろう」
何度考えても、何度試しても。白銀のようになれなかった。私が倒された死神騎兵相手にも、一切怯まず向かって行った。
あの時の傷が、まだ痛んでいる。多分これは心の傷。一般的に言えばトラウマという奴なんだろう。BAを着ているだけで、心が痛くなってくる。
「もう私は負けられない」
もし二度負けたら、私はもう一生BAには乗れなくなるかもしれない。……それは、あのクソ親父の元へ戻ると言う事を意味する。あんな奴の所には二度と戻りたくない。
「……収まってよ、震え……」
何度息を落ち着かせても、手の震えは収まらない。二つの恐怖が、私の心を蝕んでいく。負けるわけにはいかない。でもまともに戦える自信がない。
「……」
だから、これを使うしかない。不正規な装備だけど、もうこれに頼るしか出来る事が無い。何が起こっても知った事じゃない。その結果死んでも構わない。
「最優先はこのトラウマを消す事。仮に死のうがどうでもいい」
私は、もう死んだも同然なのだから。
~side白銀~
「うおっ朝だ」
朝だなぁ。やっぱ変な時間に寝ると体内時計もぶっ壊れるのかなぁ。まぁいいや。今日はしろがねの完成品を装着するんだからな!よーし早速屋上へGOだGOー!
「で、これが俺のBA、しろがねですか」
「そう!どう?」
「最高だな!」
どこか兎を思わせるようなフォルム、エネルギーを放出する時に出る物が、マフラーを思わせカッコよさを増やし、そして何より戦闘向けに作ったであろうこの腕の武装!完璧だなぁ……。
「あ」
「んどうした?」
「そう言えば、言ってなかったと思うんだけど、パールちゃんに頼まれてある物を作ってたんだよね」
「何をだ?」
「お爺ちゃんのメモにあった、強力だけどデメリットも凄い武器」
「なんじゃそりゃ……。どんな奴なんだ?」
と言うかまだあの爺ちゃん作成メモ隠してたのかよ……。もしかしたら俺の体にもなんかメモ隠されてんじゃね?……生きてる人間にそんなことは出来ないか。流石の爺ちゃんでも。
「よく分かんないんだけど……。黒いナノマシン?ってのが出てきて、身体能力から何から何まで強化してくれるんだって」
「そりゃいいじゃん。何が問題なんだ?」
「けど、凄く痛いんだって」
「どのくらい?」
「分かんない。爺ちゃんのメモには『使うな!』ってでかでかと書いてあったけど……」
「……それをパールに渡したのか?」
「だ、だってしょうがないじゃん!渡さなかったら殺すって脅してきたんだもん!」
アイツ……。まぁいいや、何が来ようが俺がぶっ飛ばせば……。でも爺ちゃんがわざわざ使うなって言ってる辺り、絶対にまともな装備じゃない。
「じゃ作るなそんなの。適当に誤魔化せばいいだろ」
「したかったけど……。一応Rからも頼まれたから。けど使わないって言ってたんだよ!?」
「それを本気にするなよ……」
黒いナノマシンか。なんだか嫌な予感がしてくるよ。あの爺ちゃんがヤバいって書くレベルの代物だぞ?あんな化け物みたいな機体を作って平気な顔を出来る爺ちゃんが、倫理的にヤバいって判断したって事だぞ?
……こうなってくると、あいつからその黒いナノマシンを引きはがすと言う事も考えておかないといけないな。
「と、とにかく一回装着してみてよ!」
「おっと、それが本題だったな!」
まぁ今度出会ったときに聞けばいいか!流石にあいつもそんなヤバそうなのは使わんだろ!
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