第十六話『平穏無事なのだよ』


「よぉ絵夢」


「あっ白銀じゃないかぁ……。何やってんだの?デート?」


「ちげーよ散歩だ。お前はそういや何やってんだ?」


「今地下街の裏闘技場でプロレスしてるのょ。でも白銀より気持ちいいのはいないのよぉ……。今度殴りに来て?」


「ヤダよ」


 どうしてこんな奴と出会ってしまったんだろうか。事の発端は銀の元へ行ったからだったか。あいつが機体の見た目に関して相談したいと言ってきて、それで行ったらこう言われた。


「ま、街に行きましょう!街に!」


「なんで?」


「え、そ、それは……。その、いいじゃないですか!理由なんて!ほら!」


「まぁいいけどな」


 と、ここまでは銀と一緒に街に行くだけだったんだが、ここからちょっと変になってくる。まず二人で歩いていると瑠璃と遭遇したんだったな。んでいきなりこう言ってきた。


「おい白銀。街に行くぞ」


「えっいきなり過ぎない?」


「今決めたからね。って銀じゃん。何、あんたデート?」


「ぴぃっ?!」


 んでまぁ、ここからは不毛な水掛け論が繰り広げられるのでカットする。結局のところ重要になるのは、断れなかったと言う情報だけだろう。という訳でまぁ瑠璃と一緒に行くことになってしまった訳であるが、更にカオスな状況になってくる。


「ヘーイ白銀!ってなんデス?両手にバラみたいな状況デスけど」


「ダブルデートだ」


「?よく分かりませんがジャパニーズデートですネ!混ぜてくだサイ!」


「いや、無理」


「そんな事言わないデー。ほら、ジャパニーズ袖の下」


「それはジャパニーズ付けないでいいんじゃないか?」


 明らかに日本語ペラペラなんだろうが、謎のキャラ付けか若干片言で喋るヒスイも付いて来てしまった。後コイツはRに専用機を作るよう頼んでいるらしく、現在は持っていないのだと言う。


「うーんなんだこの状況。どうなってんだ俺」


 こうして凄まじいトリプルデートとなってしまった俺。そして奴との出会いになる訳だ。俺に彼女が出来たって思ってんのか気持ち悪くくねくねしてやがる。やっぱこいつは一回殴った方がいいんじゃないかなぁ。


「で、どう?誰と付き合っちゃってるの?ついでに突きあってるの?」


「やってねぇよ、そもそもこいつらはまだ彼女じゃねぇし……」


「何!?じゃあ増やすつもりかぁ!?罪な男だねぇ!よっ!」


「よし今お前の願いを叶えてやるからそこに立ってろ」


 顔吹っ飛ばすぞマジで……。一応腕にBA付けてんだからな?お?やるぞ?やらないけど。


「えっマジ?さぁカモン!」


「よーし目をつぶってそこに立ってろ」


「つぶったぞ!さぁ来い!」


 よし行こう。こいつに関わっていると碌な事にならない。あいつはどうせそこで突っ立ってるだろうし気にしない気にしない。ほっとけ。無視しても気持ちよくなれるんだから知らねぇよ。


「あ、あの、いいんです?」


「あいつは変態だから大丈夫だ。そもそもアレに関わってると碌な事にならないぞ」


「ふーん。それよりどこ行く?」


「私は大きい店がいいデスねぇ!」


 うーんこの辺でデカい店……デパートかな。駅前のデパートが凄いんだこれが。マジで。大体五階くらいまであるからなぁ。


「なぁ。ところで何しに来たんだ?」


「まぁ突発的に決めたから全然決めてないんだよね、内容」


「マジかぁ……。じゃぁそろそろ夏だし海にでも行くか!?」


「ただ水着が見たいだけだろお前は。まぁいいけど」


 いいのか!?よーし水着売り場に行くとしましょうかなぁ!俺がおごってやろう!金はあるからな!


「という訳で水着売り場に来ました」


「いいんですかね……。学校の皆は頑張ってるのに」


「いいんじゃない?そもそも大会終わったら夏休みに入るから、人いなくなるし」


「そう言う訳デス!」


 俺は普通の奴でいいとして、いったい皆が何を買うのか気になるなぁ。え?いや入るなって言われたんで店外で待ってますね。それにしても暇だなぁ。


「よっ白銀」


「げっR……お前なんでいるんだ?」


「俺の彼女のデートの下見だよ。お前はなんでいるんだ?」


「まぁデートみたいなもんだよ」


「でもお前外に出されてんじゃん」


 おっ喧嘩か?殺し合いだぞそれを言ったら。流石にちょっとボコボコにしてやろうか?お前ならBA使わないで余裕だからな?あぁ?


「そう言えば大会に関してだがな」


「なんだ?」


「お前んところパールって奴、結構メチャクチャ言ってくる奴だな」


「大会に関してか?」


「普通ならそう言うだろうな。……今回は重量別になってるだろ?お前と同じ重量で出るって言ってきかないんだよあいつ」


「え?」


 大丈夫なのかそれ?あいつにそんな重いの使いこなせるのか?そもそもなんで俺と同じ重量で出るって言うんだよ……。


「あいつがやりたいって言うんだ、その辺に俺がどうこう言う事はしないがな。それよりお前の爺ちゃん何作ってんのアレ?バカじゃね?多分考えた時の技術じゃ作れなかったんだろうけどさぁ」


「オーパーツって奴か」


「あぁ。お前にもやるよ名前は『チャージパーツ』って言うらしい」


「へー」


 ふむ、中々奇妙な作りになってるなこれ。ナノマシンを過剰生成して一瞬だけ超強化するって感じのパーツっぽいな。だがチャージって言ってるのが気になるところではあるが。


「じゃ俺はそろそろ行くからな」


「あっそう。んじゃまたな」


 いい感じに暇を潰せてラッキーだったな。そろそろ誰か帰って来るだろ。多分。


「ヘイ!どうデス?」


「うーんなんだそれ?」


 なんか凄いの持ってきたよヒスイの奴。なにこれ?紐?紐かな?隠す部分が無さ過ぎじゃない?ねぇどういう感じでコレ持って来たの?いや真面目になんで?


「こんなの着て良いのかよ?」


「どうせ白銀以外に見せる気が無いので大丈夫デス」


「そうなんだ……。って待てなんて?」


「あっほら瑠璃が帰ってきマスよ?」


 クソッはぐらかされた……。なんだ今の発言は。で瑠璃はどんなの買ってきたんだよお前。


「あたしはこれね」


「いたって普通のビキニ水着だな」


「うん。無駄に肌なんか出しても意味ないしねぇ」


「おっ?喧嘩デス?」


 おっと一触即発状況だ。銀ー!早く来てくれー!このままじゃ大変な事になってしまうーッ!


「あ、あの、か、買ってきました。けど」


「おっ買ってきたか。で何中身は」


「あっ、ダメです!恥ずかしいのでダメです!」


「えー、いいじゃん今更。どうせ一緒にデートしようって言ってたんでしょ?」


「そ、それはそう、なんですけど……」


 やっぱ瑠璃は人との距離感詰めすぎだって。ほら困ってるでしょ銀が。止めて差し上げろ。


「そこまでにしとけ瑠璃」


「ちぇー。まぁいいや、後で見れるしね」


「さてここからどうするか」


 考えてみればホント適当に来たからなぁ。やることないなぁ。あっそう言えば最近デカいスポーツ系の施設がこの辺に出来たって言ってたな。ちょっと行ってみるか?


「最近出来た店行ってみるか?」


「へー。面白そうじゃん、行ってみよ!」


「ハイ!私も賛成デス!」


「わ、私も……」


「よーし決まり!じゃあ行くぞ!」


 駅から五分でデカい看板が目印だと書いてあったけど……。どこにあるんだか。デカい看板って書いてあるんだから普通に見える場所にあるんじゃないの?


「あっこれか」


 普通にデカいな。見落とすわけないなこんなの。


「へー。こりゃいいね!」


「……。あ、あの、どうしてもここですか?」


「そりゃそうデス。ほーら抵抗しないで行きマスよ!」


「やー!やー!」


 あー銀が駄々こねやがった。ほらそんなところで駄々をこねると邪魔になるでしょ!どうせ部屋でBA弄りばっかりしてるんだからたまには運動しなさい!


「ほら行くぞ!」


「あー!」


「よーし行くよ!」


 えっ一人三千円するんですか!?まぁ払うけど。

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