第十四話『バカばっか』
「よぉパール!入っていいか」
「……うん」
「じゃ、入るぞー」
うわぁっ荒れてる!部屋が凄い荒れに荒れまくってる!あーあどうするんだこれ!掃除するのはこっちだぞこの野郎……。まぁ気持ちは分からんでもないが。
「まぁなんだ、前のアレは、そうだな、うん」
「……私の実力不足」
「それはある!確かにそれは言えている!けどな!俺はその専用機にも問題があると思うんだよ!」
「……。なんで?」
「お前の今の機体じゃ、実力の三分の一程度も出せてはいない!だが俺にはどういうBAを作ればいいのか分からない」
「……ダメじゃん」
「そ・こ・で!俺の地元であり故郷であり、鬱陶しいバカばっかのBA職人がいる街に行こうと思うんだが着いてくるか!?」
「……」
大丈夫かな?今のところはちょっとしょぼくれてるけど、どうなんでしょこれ。いや行きたくないって言ったら連れて行かないだけだから。俺とヒスイで行くだけだから。
「分かった。行く」
「マジで!?よっしゃじゃ行こうぜ!」
「で、いつ?」
「今すぐ」
さてと。バスで移動する訳なんですけど、その間暇なんでちょっとパールの専用機がどうなってるか確認したんだけどさ。こりゃ酷いよマジで。こっぴどくやられたなぁ……って感じ。
「こりゃ修復は無理そうっすね。新しく作った方がいいよ」
「そうデス!多分ですけど、それは凄い前に作った機体じゃないんデスか?」
「……五年前に。これは両親の形見。もう全部壊された」
「そうなんだ」
余計なことを聞かない方がよかったかもな。けど聞いておいた方がよかったかね!だってどうせ壊れるよそんな古株も古株のBAなんて。俺だって毎日整備したのに瑠璃の攻撃一発で壊れたもん。あっ一発で壊れたッ。って感じ。
「正直それ合ってないですヨ。弱いデス」
「ッそんなの分かってる!……分かってる」
「ちょっとバスだから収めて収めて……な?」
パールを怒らせちゃった。五年前に何かあったんだろうか?ちょっと検索してみましょう。何か出るかな。
「あっこれか?」
五年前に謎の失踪を遂げた一家がいる。その一家の失踪原因ではないかと言われているのが、BAを作っている小中規模会社の買収事件である。葛実と呼ばれる男がこの買収を強行し、その結果甚大な被害がその小中規模会社に発生する事になった。そのカラクリは、まず安い金で備品やら何やらを全部購入した後、高い金でわざとBAを作らせ、作れなかったら全てを差し押さえると言う外道極まる方法。
「はー……。お前の両親も元BA制作者だったのか」
「……そう。これを私に装着させて、逃げるように指示した」
「両親は?」
「多分今強制労働させられてると思う。……もう戻ってこない。だからこれしかないの」
「そうか。……悪かったな、聞きたくないだろう話を聞いちゃって」
「ううん、いいの。これは私の思い出。ここからは……私が決める」
なんだかんだパールは先に進む覚悟を決めたようだ。なら俺はそれに答えるだけだ!さぁそろそろ懐かしい故郷に付くぞ!
「……なにこれ」
「ここが俺の故郷。『七ヶ丘』だ」
まぁもう既に丘切り崩されて機械化が進んでるんだけど。もう一ヶ丘だと思うんですけど。しかも工業地帯だから全然人いねぇし。さーて俺たちが行くべき場所は第一BA制作工場……。Rの野郎がBAを作ってる場所だ。
「だーっ違う!もっと切れ込みを鋭くしろよバカか!?」
「バカとは何だあぁ!?第一なんだこのハイレグはよぉ!お前の趣味だろ!?」
「あ?死にたいらしいな」
今日も怒号が飛んでいる。凄いなぁホント。毎日こんな感じでうるさく喋ってるからなぁ。ボコボコにしてやりたいなぁ……。顔面崩壊させてやりたいなぁ……。
「よぉR。また殺すぞ」
「っるせぇ!って白銀か、なんだ?BA着れるようになったから自慢しに来たのか?あぁん?」
「それもあるがな」
うおっ何か言う前に殴りかかってきやがった!?この野郎俺に勝てるわけが無いだろう!食らえ卍固め!
「ぐわぁーっ!この野郎離せ!」
「うるせぇ!まぁいいやこのまま話を聞いてもらおう」
「……いいの?」
「大丈夫デス?」
こいつは普通に話を聞いてくれないからなぁ。という訳でボコボコにしてから話を聞かせるのだ。うん。だからこれは重要なことなのだ。
「この野郎!」
「まぁこれでも見てくれよ」
「おっなんだこれ、設計図か?」
「そうだ。でまぁこれの解読をしてくれないかって話だ」
まぁうん。単純にヒスイが発見した物がこれだったんだよな。銀はこれは専門外だって言ってたから、こいつの方がいいだろうな。だってコイツ変態だもん。
「なんだこの変態機体?」
「俺の爺ちゃんの考えた機体だ」
「お前の爺ちゃんヤバい奴だなおい」
「それはそう」
けど爺ちゃんバカにしたんでもっとキツく卍固めを締め上げますねぇ。うーん骨が軋む音が聞こえるなぁ。
「痛い痛い痛い!?」
「で作ってくれるよなぁ?」
「この野郎脅迫かよぉ……!」
脅迫?俺は丁寧にお願いしているだけだよぉ?けどなー。このままどっちつかずだと割とひどい目に合うって言うかなぁ。
「うおぉ分かった分かった!やる!やってやる!」
「ありがとうね」
「うわぁ」
「ありゃヤバいデスね」
という訳で卍固めを解いてやってね。この紙を奴に与えてですね。
「これが俺の爺ちゃんが開発しようとした機体」
「なにこれ……」
「……全裸?」
おっと全裸じゃないぞ。これは全裸じゃなくて特殊なフィルターで覆ってるから全裸に見えるだけだぞ。しかも汎用機より硬いフィルターなんですけどね。
「はー。これでいいのかこれで」
「そうだな。実際爺ちゃん変態だし」
「そう言えばお前の爺ちゃんって誰だよ」
「まぁまぁ、それは別にいいだろ?」
さてと。とりあえずついでにパールの専用機も作ってほしいけどなぁ、その辺はパールにやらせないと意味ないし。俺が出来るのはとりあえずこの機体を作ることを依頼するだけ!
「じゃあ俺は先に帰ってるわ」
「おぉ?!じゃさっさと帰れよ」
「で、パールはどうするんだ?」
「ん。私は残る。どうせ帰ってもBAが無いから」
「じゃあ私も帰りますネ!」
よーし早速帰るとするかな!ここバス結構出てるから帰りやすくていいよ。まぁ結局バス停前から学校へ歩かないといけないんだけど。
「そう言えば知ってマス?」
「なんだ?」
「ハイ、単純に言えばですネ、学校で大会が行われるらしいデスよ?」
「マジで?」
何だってこの時期に大会なんかするんだ?と言うか人集まるのか?
「色々大丈夫なのか?それ」
「さぁ……分からないデスけど、面白そうなので参加しますネ!」
「あっそう……。俺はどうするかな」
色々疑問が出るところはあるが、まぁ大丈夫だろう。よーしなら俺も参加するかなぁ!
「とりあえず学校帰ってから考えるかな」
「まー色々ありマスからね。ところで学園が凄い事になってマシたが、何があったんデスか?」
「ん?あぁ、気にすんな。……そんなに重要な事じゃない」
「デス……か?」
「そうだ」
あの事件の顛末は、あの後知った。結局あのダストと言う男が起こした事件ではあるが、あのダストと言う男はスラムに生まれ這い上がった男だったらしい。あの会社も、ダストにとっては命より重要な場所だったんだろう。
「……」
でも、だからって人に迷惑をかけて良い理由にはならないし、それを聞いたからって許せる訳でも無い。けど、あいつはあいつなりに守りたいものがあったんだと思う。
「……俺はどうなんだ?」
「何か言いましタ?」
「いや、何も」
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