第十話『違法と異常ともう一人』


「さて明日か……」


 思わず早起きした上で走り込みしてきちゃったからねぇ!もう楽しくて楽しくて仕方ないねぇ!あぁ待ち遠しい!ここまで待ち遠しいのは幼い頃にBAに乗れると思ってた時くらいだ!


「何待ってんの。キモい」


「よぉパール!実は明日俺のBAの改良機体が遂に出来上がるんだよ!」


「へー」


 いやもうウッキウキだなおい!マジでぇ!最高だよぉ!だけど爺ちゃんの事だ、どうせ何か変なギミックがあるんじゃないのか?まだなんか隠されてないか?ん?ちょっと調べてみるか?


「あっなんかある」


「何?」


「ちょっとこれ取ってくれ」


 なんで手首の付け根辺りに謎のパーツがあるんだ?これなんだ?一応引き抜く事が出来るが。にしてもアレだな、faxみたいな感じだな。


「まぁいいよ」


「おっなんか出てきた!なんだこれ!?紙!?」


「うわー」


 ん、文字がびっしり書かれてやがる!?なんだこりゃ何語だ!?英語か!?英語だな!俺英語読めねぇよ、しかも汚ったねぇ字!普通に解読は無理だなこりゃ。携帯も通訳拒否してくるんだけど。どうすればこんな字を書けるんだ?


「パール、読める?」


「無理。どっかにいるんじゃないの、英語凄い人」


「それもそうだな」


 この学校、世界各地からBAの装着者が来てるんだ、こんなに汚い字でも読む事が出来る奴もいるだろう。いや、多分だけど。でなきゃ他の学校に行ってでも……!


「しかし誰に見せるべきか……」


「ハァイ?どうしたんデス?」


「うおっ誰!?」


 おっ凄いおっぱい!でっか!胸でっか!と言うか体もでっか!俺よりデカいんじゃねこいつ!?っと、胸ばっか見てるとダメだな、ドン引きされかねないぞ。いややっぱデカいわ。


「オゥ!スマセンデース!私の名前は『ヒスイ・ファンスタイ・リギル』デス!」


「おっちょうどいい。アメリカ出身だな?」


「ハイ!よくわかりましたネ!」


 いや、なんとなくわかるし……。うん、金髪とか高身長とかでとりあえず海外出身なのはなんとなくわかるんだけどさ、そのBAの主張凄くない?星条旗をモチーフにした機体なんですが?


「ところでなんでBA着てるの?」


「試合帰りデース!それよりー……その英語、誰が書いたんデス?」


「やっぱ気になるか。俺の爺ちゃんが書いたものだ。解読出来るか?」


「ハイ!メチャクチャ汚い字デスけど、頑張ってみマス!」


「そうか!もし解読完了したらそのよく分かんない奴の中身を使っていいぞ!」


「分かったデス!ではコピーさせていただきマス!オタッシャデー!」


 既にコピーはしてあるから問題ないけどな。いやホントありがたいなぁ……。さて、俺の方も頑張ってみますかね!今強化パッチ作ってるところだし!ほら前に瑠璃に怒られちゃったからね。作るって約束したからね。


「よぉ瑠璃!これアプデパッチな!使っていいぞ」


「えっいつ作ったの?」


「ほら、俺の最新作作ってる時についでに」


「ついでに?!大丈夫?ソレ」


「一応お前用に整備したから大丈夫!お前に足りない物を追加したぞ!」


 具体的に言えば遠距離ユニットの追加と能力の向上、更に視界サポートに加え、エネルギー効率もよくなったから全体的な性能向上に役立っているぞ!


「という訳でハイ」


「ハイじゃないが。まぁ使ってあげるわよ。あんたと私の仲だもん」


 そりゃよか……ッ!?なんだこの音は!?爆発音!?


「外からか!?」


「何?見たことない機体だね、専用機持ちって事……?」


「全生徒に告げる!我々は『死神騎兵リッパーナイト』!この学校唯一の男BA装着者よ!今すぐに我らの前に出て来るがいい!」


「なっ、なんだぁ!?」


 一体何を言ってやがるんだあいつ?!俺に何か用でもあるのかよふざけやがって!攻めて来るならアポ取ってこいってんだこの野郎!そしたらいつでも受けてやるよ!


「出てこなければ我々はこの学校を破壊する!」


「マジかよ……、よし瑠璃。お前はここにいてくれ、俺はあいつと話し合ってくる」


「ちょっと待ってよ!戦う気?!」


「じゃなきゃここがぶっ壊されるだろ!大丈夫だ俺は強いんだから」


「けど!今のあんたは腕だけの欠陥BAでしょ!?」


「……」


 瑠璃。それは正論だ。多分勝てないだろう。だがそんなことはどうでもいい。俺はここを守りたい。理由?今俺がいる学校だからだし……、あと、銀もいるしな。


「俺、結構女好きだからな」


「知ってるよ!だから何よ!」


「俺一人が行くだけで済むならそれでいいだろ」


 なら俺の命は安いくらいだ。俺一人で沢山の命が救えるって、瑠璃が殴ってきやがったぁ!?


「ふん!」


「うおっあぶねぇ!?」


「そう言っていっつもいっつも強がって!私が戦力にならないって言う訳?!」


「そう言う訳じゃ」


「いい!?私たちはああいうのに対抗する為に今まで鍛えてきたの!……だからあんたはここで待ってなさい。どうせBAの無いあんたなんかその辺の汎用機以下なんだから」


 ……その通りだな。厳しい言葉ではあるが、確かに事実。……それより、銀のところに行ってBAを取りに行くか?……なんにせよ、ここは瑠璃に任せよう。


「……任せて、いいか?」


「任せなさいって!あんな奴、私一人で十分だっての!」


 瑠璃……。よし、あいつは任せるぞ!俺には俺で出来る事がある!この腕だけのBAでも、雑魚くらいなら倒せるだろうよ!


「おい聞いたか!今すぐ戦える奴以外は逃げろ!戦える奴は一人でも多く奴の部下を戦闘不能にしろ!」


「男なんかに命令されるのは癪だけど、死ぬよりましね!」


 大半は反対側に逃げたか。残ったのは……いずれも専用機持ち。相手は数は多いが質は低い。そこを突けば倒せないわけじゃない。


「じゃ、私は残る」


「えぇ。あんなのにこの学校を壊されてはたまったものではありません」


「パール!……と、誰?」


「どうも、カイネです。イメチェンしたんですけどどうですか?」


「そうか!似合ってるぞ!」


 さてと!とりあえず一回銀の元に行って適当な武器貰ってくるか、少なくとも他の奴に襲われても何とかなりそうだしな!一番問題なのはあの専用機っぽい奴だけだ!そしてそれは今瑠璃が止めている!


「銀!」


「うわぁっ!?何ぃ!?」


「敵襲だ!ちなみに俺のBAは残りどのくらいだ!?」


「あとはディテールを付けるだけ!」


「使えるか?!」


「まだエネルギーをチャージしてないから無理!ちょっとかかるから!」


「そうか!ならこの武器は貰っていくぞ!」


「勝手に持ってって!」


 やっぱ俺には剣が似合ってるなぁ!そんな事より既に敵襲が始まったみたいだな、やっぱ瑠璃が行ったから始まったのかな?いやそうじゃないな、元々この学校を破壊する気だったんだろうな。


「あっBAの奴だ!」


「アレを倒せば昇進……!ここでその腕切らせてもらう!」


「うるせぇ!」


 ハイ邪魔!汎用機程度が話しかけてくんな!俺を止めたきゃ専用機持ってこんかいボケ!ちょっと剣でぶった切っただけで即機能停止するポンコツ機械がよ!えぇ!?エナジー・コアさえ破壊すれば誰でも再起不能に出来るんだよ!


「えっ嘘!?いつ機能停止したの!?」


「ちょっと動かないんだけど!あっ走っていくよあいつ!みんなに知らせないと!」


 おっとその携帯潰すわ。銃も一応持ってきたんでね。まだ場所はバレない方がいい、ここは皆が逃げている別棟に近い、誰かが人質にされたら大変だ。機能停止した奴は気にしないでいい!どうせ何もできんだろ!


「うおっ、また爆発音!?どこだ!?」


 うおっ三階が燃えてる!銀は逃げれるだろうから心配無いとして……、一応誰かいないか確認しに行くか!二階には誰もいないし、誰かいたとしても別棟直通の通路がある!


「誰かいるかぁ!?」


「クソッなんだこりゃ……おっ白銀!ちょっと来てくれ生徒がまだいる!」


「了解!」


 ルミナ先生とその生徒たちがまだ逃げてなかったらしい!確かにこの瓦礫は面倒だな!仕方ない、俺のBAも実はエネルギーを充電してなかったからヤバいんだが……。


「ちょっと瓦礫からどいてろ!何とかする!」


 エネルギーをチャージして……発射!よーしぶっ壊したぞ!けどちょっとエネルギー残量がヤバいな、充電……いや、出来る場所がねぇし、そもそも時間が無いな。


「助かった!ありがとう!」


「おう礼は今は良い!とにかく逃げな!」


「そうさせてもらいます!ご武運を!」


 さてルミナ先生には他の生徒がいるか確認してもらいますか!


「ルミナ先生!まだ生徒がいないか確認をよろしくお願いします!」


「あぁ分かった!……死ぬなよ」


「……死にませんよ。大丈夫です」


 さて俺は……、武器も得たし校庭に行くぞ!

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