第九話『渦巻く悪意』
「うわーっ!」
「キャーッ!」
クソッこのままじゃ横転させられる!ならその前に叩けばいい!よぉし右腕にだけ装着してだな!バレないようにすればいい!まぁバレても問題はそんな無いか!どうせ今度の大会で顔見せするしなぁ!
「ぶっ飛ばしてやるよ」
やる事?シンプルに殴る!ドストレートでぶん殴る!ギリバレない程度に殴る!以上!顔面もボディもがら空きじゃボケ!殴ってくださいってかぁ!?
「っらぁ!」
よし顔面に一発!よしバスからどいてもらったぞ!でどうするここから。少なくとも奴はマジで臨戦態勢だが、俺は戦いたくないんだなぁ。でも流石にこの一発は不可抗力、死にたくないんでね。
「おっなんだ!?」
「今もしかして殴った……?」
ヤッベバレそう。BA持ちの警察ーッ!早く来てくれーッ!このままじゃ俺がBAに乗れる人物であるとバレる!いやまぁ既に嫌と言う程マスゴミに顔を晒されそうになったがねぇ!あの時はねぇ!逆にあいつらの顔面ボコボコにしてやったから顔はギリ晒されなかったけどねぇ!次はないからねぇ!
「ふん!」
「皆さまもう大丈夫です!なぜなら我々が来たから!」
おっそうこうしているとなんか来たぞ!なんだ?っと、あの機体の見た目は……さっき会った奴の会社の社員だな!汎用機にしちゃ珍しいデザインしてるから覚えてたぜ!よし今のうちに逃げましょうかね!
「クッ中々やるね……!」
「こんな時はこの武器!『Dブレーダー』!」
……なんか唐突に宣伝が入ったぞおい。こんなのやってる暇あるの?こんなんでいいのかよ?こんなんでいいのかよ!?あっ普通に倒されてる。何だったんだあいつら。
「流石だぁ……」
「凄いなぁ」
うーん、なんか怪しいなぁ。いや、明らかに俺が殴った時は一応防御するそぶりをしたくせに、こいつらに対しては一切防御なんかしてなかったな。これは怪しいですねぇ。もしかしてやってるんじゃない?八百長。
「ま、帰りますか」
しかし俺一人がそんなことを言ったところで、どうにもならないし意味もない。という訳でさっさと帰って寝ます。いやそもそも帰ろうとしてたのにこんな茶番に巻き込まれた俺に身にもなってくれよ。
「ハァ疲れた……」
「どこに行った?」
「スーパー銭湯。いやスパ銭はよかったよ?けどその後BAに乗ってる奴に襲われてさぁ」
「そ。知らない」
「話しかけてきたなら最後まで話聞けよ!」
何なんだホント……。人に話ふっといて、で結局知らねぇって帰るってなんだよ。傲慢の極みだぞお前。せめて最後まで話さないか?そのうち酷い目にあうぞ。
「あ」
「何」
「そう言えばBAの種類で誰だったか割り出せるな。ちょっと調べるとするかな」
確かにアレは汎用機っぽい感じだけど、それにしちゃちょっと派手だったよなぁ。ああいうのは検索すれば大体わかるからね、便利な時代だぁ……。スマホの無い時代とか考えられないねもう。
「っと、出たぞ」
「……」
「どうしたそんな怪訝そうな顔をして」
「ここ、私が前にスカウトされた組織だ」
「うーわマジかよ」
あーあ!見てほらここ!これ同じところで作られてる機体です!もう黒じゃんこんなの!やってるね!これは自社製品を買わせようとする自作自演です!確定!しかも最近デカい会社に買収されたって!怪しさがさらに上がったんだけど!
「はー最悪……」
「ちなみに多分お前が殴った動画もアップされてる」
「嘘ぉ!?」
「でもコメント欄じゃ、画面外にいた奴が狙撃したって事になってるみたい」
「よかったぁ」
しかし、これで確信したぞ俺は。奴らは俺のBAを知っている。そしてどこから嗅ぎつけていたのかは分からないが、多分俺の……と言うよりは、俺の爺ちゃんのBAを欲しいんだろう。
「これは面倒な事になるかもしれねぇぞ」
「……具体的には?」
「ここを襲いに来る可能性がある」
無いとは思うがな。いくら何でもそれはちょっと顰蹙を買うってレベルじゃねぇ、最悪会社が一つ消えるレベルの暴挙だ。だが絶対と言うモノはこの世に一つも存在しない。だから気になるんだ。
「しかし一体どうする気なんだ……」
~一方その頃税豪ダスト~
偶然とはいえ、あのBA乗りに接触してしまった。……確か奴は我らの会社を買収した奴の従兄弟であるらしい。と言う事はやはり鋼鉄家に関わっているのだろうか。
「で?Dの売れ行きはどうだ」
「はい、やはり多少上がったようですが……」
「まぁ無理だろうな。そもそも皆、あのバスから出てきた奴に目を奪われている。話題もそればかりだ」
「一応こちらでも何とか抑えようとはしていますが……時間の問題かと」
白銀か。名前は知らないがとても強いBAを持っていると聞いて接触したは良いが、まさか腕しか存在しないとはな。この動画で確認出来た。やはり完全に装着するのは無理なのか?
「さて、ここまででいいぞ。後は私が行く」
「ハッ!」
さてと。買収した社長さんとご対面だ。と言っても、奴はモニターの向こうにいる訳だが。疑り深い奴だ。お前に危害なんか加える事なんかしねぇよ。
「で、お前が今回の依頼主か?」
「その通り。まぁ世間話でもしようじゃないか……」
一通り話して分かったが、この男は人の上に立つ男じゃないな。カリスマもオーラも何もない。だがこのBA業界でトップシェアだと言うのだ。それはひとえに利益を牛耳っているからだろう。今やこの男はBAにいなくてはならない人物になっている。
「……それで、我らに奴のデータを盗むように、と」
「あぁそうだ。秘密裏に頼むよ」
「報酬は?」
「前金で五千万、成功報酬として三億でどうだ?」
「ふむ……手を打とう。だがBAは女しか着る事が出来ないはずでは?」
今回、一番聞きたいところがこれだ。あの男は間違いなくBAを持っていた。腕だけとは言えちゃんと着ていた。本当は誰だって着る事が出来るんじゃないか?こいつが女性にしか着れないと言う需要を生み出させ、それで利益を得ているのじゃないか?
「……。分かった、こうしよう。前金ともう一つ、技術提供をしようじゃないか」
「……技術提供?」
「あぁ。私が作った、誰だろうとBAを装着する事が出来る機械のね……」
この男は狡猾だ。おおよそ人の上に立つような人物ではないが、上に立つ方法を知っている。我々の組織には唯一足りなかったものがある。
それは私専用のBAだ。私は今のところリーダーとして、組織に迎え入れられている。だが私がどんなに強くなったとしても、BAを持っている奴らには勝てない。そもそもの力が違うのだから。
こいつはその事を知っている。知っていて、私に交換条件を付けてきたという訳だ。いつもなら断っているだろうが、そんなことは言っていられない。私の会社は奪われ、更には仲間が奪われようとしているのだから。
「……分かった。それで依頼の内容は?」
「あぁ。その前に、この世界で今のところ唯一BAを着れる男がいると言う事は知っているね?」
「えぇ。接触してきました」
「なら好都合だ。そいつのBAから腕のパーツを奪って来てくれ」
「……なぜ腕だけを?」
確かに全身が無いのは知っているが、この男はそれを知っている前提で話している。……腕だけと言う事は、裏を返せばやはり全身装着する事が出来るのか?
「まーね。ちょっと言えないんだなぁこれが」
「では詮索しないでおきます」
白銀。名前も顔も、知っている。と言うかついさっき会って来たばかりだ。そんな奴の腕を切って来いとこの男は言う。……だが、私は既に弱みを握られているような物、ここで断れば二度とBAを手に入れるチャンスはなくなるだろう。
「……。えぇ。回収して来ましょう」
「OK!じゃぁ技術提供するからそこにあるVRマスク被ってよ」
「了解」
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