第七話『君と僕との関係性』
「……やっぱり叔父さんの機体は受け継がれてたんだね」
「てことはウチの爺ちゃんの知り合いか?それにしては見た事無いけどなぁ」
「私は祖父の息子の娘。直系の娘って奴」
「あぁ結構血の繋がり濃いんですね……」
モロに直系じゃん。と言う事は鋼鉄家の人って訳だな?俺の従姉妹でもある。そしておそらくは、五年前のあの日にいたんだろうなぁ。あの家の中に。
「誰が持ってたのかは気になっていた。家の親父も探してたから」
親父……誰だ?それに俺の事を探していた?いやそりゃそうか、BAは本来女性しか着れないのに、実際はもしかすると男も着れるんじゃないかってなったらねぇ。少なくとも鋼鉄家はBAの製作会社だ、バレればとんでもない事になるだろうね。
「じゃあ直せるのか?」
「私はただ挑戦したいだけだ。私の叔父がなぜこのような機体を作ったのか、気になっただけ」
「確かに、爺ちゃんが恐らく人生をかけた最強の一作だからな、そりゃ作ってみたくもなるわな」
「違う!私は叔父のBAを越えたいだけだ!それに、お前の持っているソレは未完成!……叔父は妥協してそのBAを作ったに過ぎない!」
「なんだって!?これで未完成!?」
うっそだろ爺ちゃん、これで未完成だったのかよ!?やっぱ異常よ爺ちゃん……。間違いなく俺らがBAを改良することを見越して作ったってのか?そう言えば一つ気になる機能があったんだよなぁ、BAとは全然関係ない奴。
「この金庫っと」
「光った?」
「うおっなんだ?!」
こ、これは……俺の爺ちゃんが残した設計図!しかもこいつの改造案が事細かに書かれている!なんて熱意だ爺ちゃん!まさかとは思うがこいつは壊される前提の機体だったんじゃねぇか?壊されてはじめて、はじめて設計図が浮かび上がるようになっているんじゃねぇのか!?
「設計図だ!」
「そのままにしてくれ!写真を撮る!」
撮った?じゃ消すね、見られると怖いし。まぁ簡単に模倣できるような代物じゃないけど、設計図を売るだけで数億の金が飛ぶ可能性あるし……。という訳でやめようね。
「で、どうなんだ!?」
「作れるだろう。しかし私一人では難しいだろう」
「そうか……。俺の機体だ、当然手伝うさ!」
さて、こうなると忙しくなるぜ!とりあえずナノマシンの装置から準備しないとなぁ。BAを作る時はまずナノマシンの装置から準備しなけりゃいけないからな!さぁ善は急げだ行くぜ!
「とりあえずナノマシンは準備できそうだ、それまで待ってくれないか?」
「あぁ、こちらとしてもそれが手に入らない限りは何もできない。すまないがよろしく頼む」
「よし!とりあえず今日の授業は出れないと言っておくかな!」
さてまずの話だ。人間の体を覆えるナノマシンをいったいどこから生み出しているのか?と思うだろう、当然ながらそれ専用の機械がある。それこそが爺ちゃんが作った『ナノ・エナジー』である。
こいつは電力さえあればナノマシンを無尽蔵に生み出す事が出来ると言う、何とも奇妙な機械である。爺ちゃん曰く、『作ろうと思えば誰でも作れる』らしい。無理だろ、爺ちゃん。
基本的に汎用機は安い装置を使っているのだが、専用機は当然ながらそれ専用にカスタムしたナノ・エナジーを使っている。瑠璃のが分かりやすいだろう。アレだけ赤い機体はオリジナルで作った物でしか生み出せない。まぁアレもまだまだ改良の余地あり、完璧なBAなんて無いんだ。
「と言う訳で作ってみました」
「作れるの?」
必要な物を買いそろえて夜。今この部屋には俺とパールだけ、見られて困る事もないので隠す気は無い。第一多分分かんないだろうし、こいつが見ても。まず下地になるパッチを当ててだな、こいつが無いと始まらないんだよね。
「何それ」
「こいつはな、俺の機体だ」
「へー」
心底どうでもよさそうな声だな。おい。まぁお前も専用機持ちだしね、多分専用機を作ってるって事は理解してるんだろうね。何を作ってるのかは分からないだろうけど。
「壊れたんだっけ?」
「そうだ。代わりの機体を作ってるって訳だ」
「知識は?」
「俺地味に準一級免許持ってます」
当然!この機械を作るのには免許が必要なのです!そして俺はその準一級……、専用機を作る事が出来る免許を持っているのだ!えっ一級?それを受けようとしてここにぶち込まれたんです。
さて現在の状況を説明するとだな、結構出来上がってる感じだ。一日そこらで作り上げてやるぜ。一応両腕が残ってれば戦えないことは無いが、やっぱり全身が無いとねぇ、ダメだよねぇ。
「準一級、凄いね」
「だろぉ?もっと褒めてもいいんだぞ」
「でも、それにしては変じゃない?」
だろうなぁ。爺ちゃんの設計図にはこう書かれてたが、こりゃなんだ?BAなんて生易しい物じゃねぇ、まるで一人で飛行機を作っているようだ。内装からエンジン類まで全部だ。神経も精神もモリモリ消費するぞこりゃ。
「まだ二つ目?基盤多くない?」
「そうだ。一個でもしくじったらお終い、二度と作れないだろうな」
「そんなに難しい?」
「あぁ。基盤一つ設置するのに十分かかるが、精神的には四時間もの集中力を消費してる感じだ。一個付けるだけで死にそうだ」
「みたいだね。汗凄いよ」
頭おかしくなりそう。いやなってるかも。爺ちゃんはよくもまぁこんな頭がおかしくなるくらいのモノを作ってたよ日常的に。今だけは汎用機がうらやましいや。しかし!これを乗り越えてこそ最強の機体を作る事が出来るのだ!何回でもチャレンジしてやる!
「私は寝る」
「はい了解」
そうして俺は何と二週間ほどかけ、ようやく半分程度完成させた。しかし何か奇妙な感じだ。設計図の通りに作っているのに、それがなぜか違うような、そんな違和感を覚えてしまう。
「それコア作ってる感じ?」
「あぁ。けどなんと言うかな、この設計図は恐らく書きかけなんだろうと思っている」
「なんで?」
「うおっ瑠璃か……。いやな、作ってるとわかるんだが、なんと言うか、そうじゃないって思えてくるんだよな」
「え?設計図があるんだからその通りに作れば間違いなくない?」
「それは、そうなんだがな」
なんと言うか、絶対にそうじゃないって誰かが言ってるような気がするんだよ。実際問題、正常に動いてるから問題ないんだと思うが、その辺は断言できるわけじゃない。それにまだ気になるところはある。
「俺の機体腕以外ぶっ壊されたじゃん?なのに正常に動いてるんだよ」
「あー……確かに変だね。普通コアの場所って大体腹部にあるもんねぇ」
考えてみてほしい。攻撃をする場所に、重要な部位を置くだろうか?仮に例えれば腕に心臓が付けられているような感じだ、そんなことはあり得ない。この機体に関して、爺ちゃんは何かを隠している。間違いなく。
「まぁ邪魔しないようにするよっ、直ったらまた戦おう!」
「あぁ。そうだな!」
さて瑠璃と勝負することを約束しつつ、俺は最後のパーツを付けようとしている。だがなぜか手が動かない。このまま置けば完成するはずなのに、体がそれを拒絶している。
「……えぇい!ダメで元々、人生はギャンブルだ!」
なら直感を信じろ俺!別の場所に置かせてもらう!これで完成だ!よーし早速あいつに渡しに行くとしますかね!んじゃぁドアをノックしてだな。って鍵開いてんじゃん、入っちゃいましょ。
「オジャマ…」
……おや、こいつはあいつが着てたBAではないか?と言う事は本体の姿が見れるのだろうか。別にあいつの人間事情に興味は無いけど、どんな顔してるのかくらいは見てみたいな。
「ふぅ……いいお湯だった」
「あっ」
「……えっ」
うーんデカ
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