第六話『専用機VS専用機』


「どうする白銀」

(少なくとも。奴のBAは遠距離ユニットは持っているはずだ。しかしなぜか使おうとしない。戦闘バカなんだろう。接近戦なら恐らくあのカイネの方に軍配が上がる。間違いなく。対して白銀の方はと言うとなんと言うか、よく言えば万能、悪く言えば器用貧乏だ)

「接近戦じゃ勝てない」


 さて既に一分も経ってるんだよなぁこの状況から!いや不用意に近寄れないってホント。しかしそろそろチャージも完了するし……。このまま、ぶっ飛ばす!


『チャージ完了』


「なんだ今の声」


「えっ動く気!?」


 周りがなんか言ってるけど……。気にするな!足の裏にある飛行ユニットを爆発的に使う事で超スピードで飛べるって訳だ!まぁいわゆる時速と秒速の違いなんだが。普通は時速だが、今回のは秒速30キロ!切れるもんなら切ってみやがれ!


「俺の最高速度を食らいやがれ!」


 爆発……と、同時に頭部に感触を感じる。そして足に何か突き刺さったような嫌な痛みを感じる。明らかに、切られたのだろう。ただそれでも、お前の剣は少し届かない。俺の体には届かない!


 勢いよく吹っ飛んだらしいな!


「で、勝ち負けは!?」


「……あ、はい!しょ、勝者白銀!」


 ま、足パーツはぶっ壊されたけどな。しかしアレだけやって機体の全壊だけで済むとは。流石に専用機持ちは伊達じゃないと。命に別状は無さそうだが、かと言って俺が行くと余計に拗らせそうだし……。逃げましょ。


「はー勝った!」


「アレが専用機。確認させてもらった」


「そうだな。ま、ちょっと壊れたけどな」


「そう」


 おーい。そっちから話しかけてそれは無いんじゃないんですかねぇ。まぁあっちの方が明らかに重症だからしょうがないか。俺は一人で教室に戻ってますかね。にしてもなんか自分のクラスの前がなんか騒がしいと言うか?


「白銀ェ!」


「えっちょっ瑠璃か!?」


「死ねやぁ!」


 いやその、お前の専用機体で殴られるとちょっと厳しいと言うか、そもそもなんで専用機を今着てるんだって言うかうーわ凄い威力。多分一発で俺の体全部ぶっ壊されたなぁこれ?ん?あっ地面だ。


「グワーッ!」


「どの面下げてここに来たぁ?!白銀!」


 ……。あー。これどうしよ。真面目に。直すって言ってもねぇ、何も無いよねぇ。と言うか瑠璃よ。そりゃ言いたいことは分かる。そりゃお前の機体を作るって約束したもんね。どの面下げてはごもっともだよね。でも機体全損はやりすぎじゃない?出せるのが両腕のパーツしか残ってないんだけど?


「なんで着れるって言わなかったんだよ!?」


「いやそもそも着れるのが分かったのが最近だよ瑠璃ちゃん」


「なんで私の機体を作ってくれなかった?!」


「ねぇ、ちょっと落ち着こうよ瑠璃ちゃん」


 と言うか二階から落ちたけど無事だったんだなぁ俺。機体はぶっ壊れたけど。どうしよこれ。いや真面目に。瑠璃の友人が今は止めてくれているが、しばらくすればこっちに来るだろうなぁ。


「ふー……落ち着いた」


「本当に?ねぇ凄い青筋立ってるよ?」


「怒ってない」


「と、とりあえず一回見てあげたら?」


 おっと、降りてきたなぁ。ぶっちゃけあいつの言う事も理解できるよ。要は『俺サッカー出来ないからお前のコーチになるわ!』って言った奴が『悪い俺サッカー出来たわw後コーチにならないからなw』みたいな感じでくればそりゃ殴るよ。その上平気な顔をして入学してきたんだからなぁ。ぶっちゃけるけど俺でもぶん殴ってる。


「機体壊してごめん」


「いや。俺も悪かった、だますつもりは無いんだが」


「知ってる。それが見つかったのも最近ってのも知ってる」


「だから一つ謝っておく。この五年間、何も連絡の一つも無しで……本当に悪かった」


「……私も。ついカッとなって、ごめん」


 許してくれたか。さてと。こっからどうするかなぁ。腕パーツ以外粉々だもん。治す事出来るかなぁ……?修理は無理じゃないこれ?少なくとも爺ちゃんレベルのBA製作者がいないと駄目だな。


「……壊したお詫びじゃないけど。ウチの学校の屋上にBAを作れる奴がいる。それが一点物なのはわかるけど、多分似たような物は作れるかもしれない」


「えっホント?じゃあちょっと行ってみるかな」


「連れてってあげる。殴っちゃったし」


 うーん。この瑠璃の専用機。凄いね。まず凄い赤さと硬さよ。何がヤバいって、触って分かったが、こいつの機体は恐らく特殊なナノマシンを使っているようだ。恐らく自作だろう。それでこれだけの硬度があるってのは凄いよ。


 でももうちょい改良できると思うんだけどなぁ。このナノマシン、ちょっと欠陥があるけど……。今言っても聞いてくれなさそうだからやめよ。うーん凄い肌触り。滑らかだぁ。


「ねぇ着いたんだから離れてくれない?」


「おっとすまん。つい見とれてな」


「あんたホントBAバカだよね。それよりちょっと言っておくけど」


「なんだ?」


「あの中にいる奴。凄い面倒だから気を付けなよ?」


「はぁ」


 まーBA作れる奴ってどこか狂ってるのが一般的だからなぁ。俺とか爺ちゃんとか。今メチャクチャブイブイ言わせてるBA製作者の『アール』もハイグレフェチだし。まぁ爺ちゃんも同じようなもんだし……。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか」


「何か用か」


 ワァデカい女が来たぁ。BAの大きさから見て、大体二メートル程度の大きさかねぇ。やっぱ変な奴多いってBA製作者!どいつもこいつも頭おかしい奴ばっかりだ!まぁ一応聞くだけ聞いてみるか。


「あのー。聞きたいんですけど、コレ直せます?」


「嫌だな。私は作りたい機体を作るだけ、貴様の機体がどうなろうが知った事ではない」


「あー。そうですよね、んじゃ今日は帰りますんで」


 職人枠かぁ。やっぱ変人ばっかりだよね。でもああいう奴は腕がいいんだ、俺の爺ちゃんも同じような奴だったし。そこから考えるに……、奴に対しては上辺だけのお世辞やおべっかは通用しないだろう。


 根気よくここに来よう。どっちかが折れるまで続けるって感じだ。……にしても、なーんかこの辺の設備見たことあるんだよなぁ。どこかは覚えてないが、少なくともどっかでは見たことがあるんだ。


「で、どうだった?」


「ダメだなありゃ。根気よく粘るさ、いずれにせよ俺に出来るのはただ待つだけさ」


「一応腕は使えるんだよね?むしろよく腕パーツ残ったね」


「……やっぱりお前壊す気で殴って来たんだなぁ?」


「まぁね」


 まぁねじゃないよね?そのせいで俺の機体粉々なんですけど?しかもこれしか着れないから、もし直らなかったらお終いだよ?本当に。いや腕だけでも戦ってやるけどよ。


「そう言えばあいつ名前は?」


「あー、実は誰も知らないんだよね。とりあえず皆『ナナシ』って呼んでる」


「名前ないから?」


 はぁ。ナナシねぇ。多分この名前は彼女嫌いそうだけど。人間誰でも名前は大事だからね。名前っていうか呼び名っていうか。


「んじゃ私は寮に帰るから」


「え、午後から授業あるのにか?」


「あぁ、私もう授業今日は無いんだ。だから寝るの。お休みね」


 帰ってっちゃったよ。まぁいいや、とりあえず俺も授業受けないとなぁ。何?お前二階から殴り降ろされてよくピンピンしてるなって?まぁ鍛えてますんで。この程度じゃへこたれません!


「おい」


「ぬおっ何奴?!」


 ってさっきの奴か!なんだいきなり出てきて。文句でもいいに来たのかな?


「お前男か」


「いや分かってなかったの?」


「すまない、常にBAを着ているもので」


 あー、それBAなんだ。……BAなの!?ほぼ人間じゃんこれ!マジか専用機なんてレベルじゃねぇぞ!肌の感覚から血液のような物まで完全一致じゃねぇか!人間そのもの!


「おい触るな」


「あっ悪い、俺BAに目が無くてさぁ」


「……ならば、この位は答えられるだろう?」


 む、どうやら奴は俺を試そうってんだな。よーし受けてやろうじゃないか!何が来ようがどんとこいじゃい!


「最初に戦闘用に作られ、今なお現役なBAはなんだ?」


「『ブロック・ディクタス』」


「救助用に作られた」


「『メディカル・レフト』」


「……まぁ、この位は答えられて当然か。重要なのは次だ」


 そりゃね。基礎どころか誰でも知ってるってのこの程度は。少なくとも五歳以上の奴なら答えられるっての。さて次の問題は何だ!?


「私の叔父、それが残した遺作と言うべきBAはなんだ」


「……知ってるのか?」


「答えられるのかと聞いただけだ」


 ……もしかして、カマかけられてる?けどね、ここで嘘をつくなんて事はしないよ、俺は!


「今俺が着ている機体……こいつが、お前のお爺さんが作った機体だろ?」


「……正解だ」

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