第四話『オタク共の会合』


「どーしてもさ、お前の着てる機体は一般の物だとは思えないんだよなぁ」


「あー。そうですね」


「どこで手に入れたんだよ?」


 うーんどうした物か……。ここで素直に『爺ちゃんの遺品です』など言おうものならこいつを没収されかねない。それは非常に不味い。とは言えこの状況、どうすれば……。


「実はこれなんですけど」


「ほぉ」


「自作したんです」


 嘘である。しかし俺は案外できるんじゃないかと思っているのだ。自作したBAを着る事が出来るんじゃないかと。うん。何ならジャンク品で一回作った事あったし……、まぁすぐぶっ壊れたけど。


「やっぱり?いいよねその凄いメタリックホワイトカラー!」


「あ、分かります!?ここの塗装メチャクチャ頑張ったんですよ!」


「BAを作るの好きなんだよねぇ私。教師やってなかったらBAの専用工場作ってたけどね」


「いやー。中々大変でしたよこれを作るのはね、けどねぇ!もう俺これで戦うって決めちゃいましたし!」


 うーん話が合う人だなぁ。ちょっと警戒してたけど、これなら大丈夫そうだな。しかし、専用機を持ってる奴は流石に少ないのか。流石に仕方がない事とは言え。


「そう言えばこの学校に専用機持ちって何人います?」


「お?知りたいか?私の秘蔵フォルダが火を噴くぞ?」


「是非!」


「よーしそこまで言うなら仕方ないなぁ!今から教えてあげましょう!まず初めに期待の新人である瑠璃が挙げられるねぇ!」


「瑠璃か。やっぱりな」


 まぁあいつが専用機持ってないとおかしいもんなぁ。確実に強いだろうし。でもどんなのなんだろ。と言うかレイン送ったはいいけど、既読スルーされてるんでちょっとぴえん。


「こいつの名前は『赤色鉱石アンバー・レッド』。とにかく一対一で戦う事だけを目的とした機体だ。防御をかなぐり捨てて作られたこの機体はとにかく強い」


「ガチの戦闘兵器じゃんこれ」


「武装も全てが相手に対して放つ用の武装だからな、恐らく大概のBA装着者が持て余す系のBAだ」


 何これぇ?こんなの普通の人間に使いこなせられる訳無いじゃないの。えっ真面目にこれで戦ってるのかあいつ?バカじゃねぇの?化け物かな?化け物だったわ。


「ちなみに戦績は?」


「とりあえず二回しか負けてないな、数十人と戦って」


「逆にその二回は何があったの?」


「まず一回目はほぼ初見殺しで負けた奴だ。だが既にその対策もしているからな?普通にその次は勝ったぞ」


「やっぱヤバいやあいつ」


 多分この遠距離ユニットは、距離を取られた時用に追加した武装だよね?じゃなきゃこの異常な殺意は隠せてないからね?目の前の相手殺す事しか考えてないよね?あいつらしいっちゃあいつらしいけどさぁ。


「んで二回目の方だが……。こいつは専用機持ちだ、名前は『金剛白金オー・パール』っつってな。持ってる奴はアンダー・ロー・パールだ」


「あぁ俺の同室の奴ですね」


「なんだ知ってんじゃん。まぁそいつは瑠璃に真正面から戦って勝った奴でな。今戦えばどうなるかはわからねぇけど」


「へー」


 結構あいつ強かったんだな。戦った事なんかないから分かんないけど。にしてもこれどう言う機体なんだ?なんか変な機体だが。見た目は……文房具?


「こいつは見てわかりにくいだろうが、遠距離ユニットを動かしてバシバシ狙撃しつつ、近距離戦は腕に付いてるカッターで切りつけると言う遠近両方で戦える奴だ。中々強いぞ?」


「成程」


「ちなみにこいつのモチーフは文房具らしい。よく見ると遠距離ユニットの見た目が鉛筆削り」


「あっホントだ。よくありますよねモチーフ機体」


「そうだな。飛行ユニットの見た目が大体動物の羽のような見た目だし、モチーフを決めると作ることも楽になるからな」


 実際俺も作ろうとしてたからな。ゴリラモチーフのゴリゴリラ機体。流石にバカ火力でゴミ耐久だったんで封印したけどな。アレはちょっとピーキーすぎるんですマジで。あっさっき言ってたジャンク品機体ね?


「んでこの学校にいる最後の専用機持ちだが……」


「ルミナ先生。ここにいたのですか」


「お?なんだ?」


 おっさっきのカイネって奴じゃん。なんで来たんですかねぇ?と言うよりそろそろ授業時間だな、もっと話を聞きたかったんだが……。


「もうすぐ授業時間です。準備は済ませているのでしょうか?」


「……え?ちょっと待って今日は非番だったはずだが?」


「いえ、先程職員室に向かったのですが、その時ルミナ先生に『怪我したからルミナ先生に代役を立てようと思ったんで言って来てくれ』と」


「マジ?ちょっと待て今すぐ準備するからな!悪い白銀!また今度な!」


 さて俺も急がないとなぁ!そう言えば俺も授業だ!急げ!


「ちょっと待ってください」


「っとなんだぁ?」


「次の実践訓練は楽しみにしてください」


 ……何が?ねぇ何が?どういう事?ちゃんと説明してくれない?ねぇおい勝手にいくんじゃねぇ帰るな!あー聞きたいことはあるけど今は授業の方が大事だ!行くぞ!でどの教室だっけ?


「何やってるの」


「おっパールじゃん、どしたの?」


「たまたま来ただけ。教室はこっちね」


 なんだかんだ優しいなぁパールは。しかし外か、もう既にみんなBAを装着してるって事は……、実践訓練かな?まぁ問題は無いか!しかしもうさっき言われた事がおきたなぁ。


「遅いですよ白銀くん」


「すみませんね烏先生」


 さてと……。聞いた通りだ。専用機持ちは俺とパールの2人だけ。他の奴は全員汎用機を組み合わせた物ばかりだ。ハッキリ言って、……弱い。うん、言う事が無い。


 そもそも俺はこの5年間修行に費やしていたのだから専用機を扱えるのであって、実際問題こいつらがいきなり専用機を使っても、恐らくまともに戦えないだろう。まぁそもそも専用機ってのは、そいつしか使えないから専用機なのだ。


「はい全員集まったところで……今回は実戦形式で戦って貰います!」


 実戦形式か、何やるんだろうな?殴り合うのかな?流石にそれは無いか。流石にねぇ……?それはねぇ?


「えーっと、何をするかと言うとですねぇ」


「少し良いでしょうか」


「なんですか?」


 おっ、カイネが何やら提案するようだな。なんだろう?


「今回の実戦形式、イエローレベルで戦いたいのです」


「い、イエロー!?ダメだよ!機体が壊れたら問題になるよ!」


「それは専用機を持っている場合でしょう。我々のような凡庸機は幾らでも替えがききます」


 イエロー……。確かBAの対決形式の一つだったかな。それぞれ機体へのダメージで勝敗が決まる『グリーン』、機体の破壊が許可されている『イエロー』、そして殺しが許可されている『レッド』。の三種類に分けられるはずだ。


 んで今回イエローで戦おうって言うって事は……、もしかして俺の機体を壊せる自信があると?真面目にぃ?汎用機で勝てると思うな!何ならダメージだって与え欄ねぇよ!


「で、でもそれは……」


「いいぞ、許す」


 おぉ?なんか知らない人が出てきた。誰だっけあの人……?てか幼女?でも先生がビビってる辺り、マジで凄そうな奴だぁ……。


「こ、校長先生!なんで来てるんですか!?」


「ま、見学じゃよ見学。それよりも、この『わらわ』が許すと言ったのじゃ、まさか出来ぬという訳じゃぁ……無いよな?」


「い、いえ!それはそうなのですが……」


 うーん、圧を感じるよ。幼女なのに。明らかにやれって言ってるようなものだもんねぇ。とは言え概ね皆納得したらしい。俺も一応は納得することにした。


「じゃ、じゃあみんな二人一組になって!」


「さて俺は」


「私と戦いましょう、白銀」


 ま、そうなるよなカイネ。だってお前は俺を潰そうとしてたもんな。今回の戦いで俺の機体をぶっ壊したいんだろう。この機体、多分壊されたら二度は無い。それくらいは知ってる。


「あぁ。そうだな」


 なら真正面から叩き潰してやるよ。ランクの違いを見せてやる。

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