第26話  アタッシュケースの中身  大地の話

《ダイチ視点》


「これが、危険度の高いウィルスの入ったアタッシュケースかぁ……」


 黒くて、四角くて、固い鞄をリッセルドが持って来てくれた。

 竜だというが、姿を見せてくれなかった。

 見たかったのだが……


 後は、南方にあるマラ山にこのかばんを捨てればいい。

 それで、俺の旅は終わる。

 ん!?

 ちょ、待て!!

 鞄をよく見ると、鍵が開いてるじゃないか!!!

 この世界に転移した時に、ショックで鍵が壊れたのか!?


 俺は恐る恐る、アタッシュケースを開いてみた。

 頑丈に固定された、ガラスの中に何とも言えないような色の液体が2本並んでいた。

 これが、メッチャ恐ろしいと言われるウィルスか。


 そんな俺のもとに、二日酔いで宿屋で二日も寝ていたテオと、シベールがやって来た。


「ダイチ!? どうしたの?」


「シベール!! 大変だ!! 鍵が壊れてた!!」


「とりあえず、からくり箱の中に入れて、火と水の封印をしてきたんだ。僕たちはその箱に触っちゃいないから、安心しろ」


 テオドールが、冷静に言った。


「見せて、箱の中身!!」


 シベールは、興味津々で、言ってくる。

 事の重大さが分かってないな。


 俺は、アタッシュケースを45度ほど開けた。


「なに!? このドドメ色の液体!!」


「この中に、数万人を死に至らしめるウィルスが入ってるんだ。こういうのを俺の世界では、化学兵器というんだ。手を汚さずに人の命をたくさん奪えるからな」

「怖いわね~~その箱、テオの水の結界に入れて、からくり箱に入れておきましょ。もう一回、厳重に封印の言葉をかけるわ。テオもお願いね」


 なんか、また仲良くなってるお二人さん。

 特にシベールが優しくなってる気がするのは、俺の気のせいじゃあないぜ。


 シベールが封印の言葉を言った後、テオドールも同じことをした。

 次にテオが水の大きな袋を出してきた。

 その中にアタッシュケースを入れ、からくり箱の中にそのまま、仕舞ったのだ。


「からくり箱の中が、水浸しにならない!?」


 俺の素朴な疑問をシベールは鼻で笑った。


「あんたねぇ、テオは水の王子を従えた魔法使いよ。この世界じゃあピカ一なの!!」


「はぁ、そうですか……」


 シベールは、少し考えて言った。


「念には念を入れて、からくり箱ごと捨てましょう」


 それがどんな意味なのかは俺には分からない。

 ただ、テオドールが言っていた。


「からくり箱なんて、そう滅多に貰えるものじゃないだろ!?」


「良いのよ。引退した冒険者に貰った中古品だし、容量も無制限てわけじゃないし。Aランク冒険者になれば、新しいのを貰えるわ」


 へ~~ そうなのか~~

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