第25話  元カレ

《シベール視点》


 私は、とっても不機嫌。

 テオドールが、ダイチよりなのも、竜の坊やが私よりダイチに懐いてるってことにも。

 テオが私の事を、今でも好きだったと思ったのは、あの瞬間だけ。

 アルテアの宿屋で、転びそうになった私を、テオは助けてくれた。

 そして、どちらからともなく唇を合わせたわ。

 むさぼるように。

 だって、今の私は成長期の途中。

 これ以上の事は許されてないの。

 魔法使いの家系には時々あるらしいけど、家は陶器を作る窯元の家。

 魔法使いとは、関係ないのに。


 ああ~~!! 腹の立つ~~!!


 私は一人で、酒場に入って一番強い酒を頼んだら、ミルクを出されたわ。


「この店を燃やされたくなかったら、酒を出せ!!」


 この外見のせいでどんなに苦労してきたか。


 ヤバい女と思われたみたいで、今度はグラスに入った酒が出て来た。

 それを横取りして、飲み干す馬鹿がいた。


「未成人だろ!? 酒はダメだ!! ただでさえ酒癖が悪いのに」


 馬鹿はテオドールだった。


「あ、あんたなんか、ただの元カレでしょ!? 知った風なこと言わないでよ!!」


 テオは全くお酒飲めないのに……。


「いいさ。元カレの位置づけでも……そのうち、お前と同じランクになって、堂々ともう一度、告白するんだ」


「そういうことは内緒にしときなさいよ!! それに神殿付属のボンボンが何言ってるの!?」


「神殿は、放置しとけば良い。逃げようとしたりすればするほど、追ってくる厄介な奴らなんだ。僕は、お前を追って、銀の森を出て来たんだ。

 こうしてお前と巡り会えたように、ダイチの旅にも、もう少し付き合ってやろうぜ」


「テオ……」


 テオはいきなり、私に迫って来ると、唇を奪った。

 この人、こればっか!!


 と思ったら、急に眠りこけたわ。

 当たり前ね、この店で一番強いお酒を一気飲みするんだもの。

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