第18話  ギルドの仕事をしましょう

「アタッシュケースって何!?」


 金髪のシベールが言う。


「俺の世界の大事なモンを入れとく鞄だよ。鍵をかけときゃ開かないよ」


「鍵なんかで良いの!?」


「俺の世界の鍵は、こんな中世以前の時代より進んでるんだ」


 ダイチの言葉にシベールはカチンと来たらしい。


「そんなに封印の魔法使いがいっぱいあるのね!?」


 皮肉たっぷりに言ってくる。


「いや、魔法使いも剣士もいねぇぞ。大体、竜や半妖とかもいないし。あっ!! 恐竜はいたけど大昔に全滅した」


「随分と、平和な世界からのお客様だこと。それで!? 私たちに何か関係があるのかしら?」


「いや~~ 俺が飛ばされた時に、その危険なものが入ったアタッシュケースもこっちの世界に飛ばされちゃったんだって~~」


 シベールが急にドアップで迫ってきた。

 整ってる顔の配置が、大きく歪んでる。


「はあぁぁぁああ!!?? 何よ!! その危険なものって!!?」


「この都市を死滅させられるほどのウィルスだって」


 ここで皆さん???ウィルスって何?????


「とんでもなくヤバい、たくさんの人を死に至らしめる毒というか」


「ここは、アルテア王国のアデールよ!! ここの死滅させるなんて、どんな危険な毒なのよ!! あんた、とんでもない危険な世界から来てるじゃないの!!」


「ああ、大丈夫!! 俺も鍵は持ってないし。こうして俺が回収担当に寄越されたわけだし」


 ダイチは自信家だな。


「万が一、悪者の手に渡っても、封印といた奴が死ぬだけだぜ」


「この世界を甘く見ないでね、ダイチ。封印の解ける魔法使いなんて五万といるわ。大地の魔法使いにかかれば一発だもの」


「何で出来てるかは知らんけど、特殊な作りの鞄だぞ。水に浮くし、象さんが踏んでも壊れないっての売りな」


 大地の言う事はよく分からないが、彼には彼の目的が分かったようなので、シベールが僕に目配せをしてきた。


「テオ、明日から仕事よ。ギルドに朝一で行くわ」


「そうだな」


 と言って、ダイチの部屋を出て行こうとした時、


「ちょっと待った!!」


 ダイチの情けない声が聞こえた。


「助けてくれないのか~~!? 俺はこの世界に他に知り合いがいないのに~~」


「だったら、仕事をしなさい。その片手間で、捜せばいいでしょう!!」


 シベールは冷たく言い放った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る