第13話  風竜の価値

『おいらの心臓、返して!!』


『これがあなたの心臓だっていうの!?証拠は?』


 シベールは意地悪く、リッセルドに言った。


『おいらの心臓だよ~~自分のものだもん!!分かるよ~~!!』


『でも、私はこれを骨董屋で最高金貨2枚と銅貨15枚で買ったのよ』


『おいらのだよ~~』


『譲っても良いわよ。最高金貨3枚で、どう?』


 金獲る気か!?シベール。


「ぼったくりだろ!! 最高金貨2枚と、銅貨15枚で買ったものを、最高金貨3枚にするなんて!!」


「私は、この結晶石が気に入ったから、持っていたいのよ。風の力も少し使えるし。それに大金をはたいて買ったのは私よ。ただで返せと言われてもね……」


 シベールは、結晶石にキスをしながらこちらを向いて言った。

 悪くなってる……

 性格が……3年前よりもさらに歪んでいる……。


 リッセルドが僕の方をチラリと見て、すがるような目で訴えてきた。

 捨てられた子犬のような瞳。

 3年前にシベールとの約束の場所に行けなかったのも、はとこのアルベール(当時10歳)が初めて自分の力で、風の精霊と契約をしてロイル本家の祝いの席に招かれてしまったため。早めに帰ろうとした僕を追ってきたアルベールは、こんな目をしていたっけ。



 夕方になってやっと、シベールとの約束の場所に行ってみたが、彼女の姿はなく

 銀の森から彼女の姿も消えていた。



「テオ、あんたが払うの!?」


「えっ!?」


 僕はハッと我に返った。

 懐かしい銀の森に思いを馳せて、事態を忘れていた。


 僕は、大金は持たない主義だ。

 だから、必要な時に必要な分だけお金を稼いだら、後は街でのほほんとしていた。

 僕の水の魔法は、砂漠のオアシスでは不可欠な存在だから、重宝されてる。

 今の僕の手持ちは……


「全財産で、銀貨2枚と銅貨が8枚だな」


「貧乏ね~~ それじゃあ、この結晶石は私の物って事で」


 シベールがそう言うと、レトア語しか喋らないリッセルドがワンワン泣き出した。


『僕の心臓だよ~~!! 返してよ~~!!』



「シベール!!ぼったくりは止めろ、俺が後で残りの分を払うから今は銀貨2枚で手を打ってくれないか?」


 シベールは、形の良い唇を片方だけあげて言う。


「あら、それでも良いけど、そんなに待たないわよ。あなたに出来ることなんて、どうせ水呼びだけでしょ!?」


 頷く僕。


「手っ取り早く、お金儲けできる所を紹介するわ。」




 アルテア冒険者ギルド登録所_____


 なんだ!? ここは……


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