第12話  シベールの怒り

『おばちゃ~~ん!! おいらの心臓返して~~!!』


 リッセルドは、肩までの金髪のくせ毛の小柄な女の所に突進していった。


「なに!? お前?」


『おいらの心臓!!持ってるでしょ!!」


 僕はリッセルドに近付いて行くと、懐かしい顔に出会ってしまった。

 シベールだ……

 元カノの。

 シベール・ロペス。


 3年ぶりだった。

 東方の銀の森で出会って、半年余り付き合った……。


 僕は懐かしさのあまり、涙が溢れてきた。

 ボ~~ っと立って、シベールを見つめていると、シベールも僕に気が付いたようだ。

 あれ!? あれれ?? シベールの顔の目がだんだんツリ上がっていくのだが……。


「会いたかったよ、シベール」


「私は、会いたくなかったわ!! あんたにも。見たくなかったわ、銀髪も銀の瞳のその容貌もよ!! それから、その口から聞こえる声も聞きたくなかったわ!!」


 ガビ~~ン!!

 僕は、そんなにシベールに嫌われてたのか!?


 シベールはチビ竜のリッセルドに目をやると、


「おまけにまだ、ショタコン……」


 僕の頭には、大きな岩石が二つ落とされた気分だ。


「銀の森で初デートの時に来れなかった理由が、従弟だかはとこだかが風の精霊と契約したからだったかしら!?」


「本家のアルベールが初めて精霊と契約したんだよ。一緒にいてやりたいじゃないか!!」


「あの時の、アルベール様も10歳くらいだったかしらね!?」


「そうだな」


「私は、あなたの神の眷属だという一族も、何でも言う事を聞いて当たり前だと思ってる神殿も大っ嫌いなのよ!!」


「気が合うな。僕もそれで銀の森を出て来たんだ」


 うん、シベールは怒ってても可愛い。


『おばちゃん、おいらの心臓・・・』


「心臓って、何!?」


「シベール、なんか結晶化した石みたいなの持ってない?」


 僕の言葉に、シベールは心当たりがあったらしく、

 懐から、キラキラ光る半透明の拳くらいの大きさの結晶を取り出した。


『あっ!! それ僕の心臓!!』


「えっ!?」


 シベールは驚いたようだった。


「このチビ。これでも、風竜なんだ」


「~~~~」


 シベールの思考が停止したらしい。

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