第2話  チビ竜のリッセルド

この時代、権力者が子竜をペットとして飼うことは珍しくない。

成長すれば、今度は国の守りになる。

心臓を奪われた竜は、飼い主の言いなりになっているしかない。

このチビ竜の場合、事もあろうに心臓がない上に、ラ・ムゥ・オアシスの族長も竜の心臓の事は知らなかった。


「それは、即位記念にどこかから貰ったプレゼントの中にあったものだ」


「何処からのプレゼントですか!?」


僕は、嫌がるチビ竜を背負って、水の路を開きラ・ムゥ・オアシスへとやって来た。


到着地点は、族長の接見の間の水桶で、水桶から、いきなり大男の僕と竜が出て来たので、その場にいた者は、少し、パニックになったようだ。

言い忘れたけど僕の年は18歳で、決してマッチョではないけど、身長は高い方なんだな。

その場にいた侍女は失神したし、僕の顔を直視した侍女も失神した。          (僕の顔に見惚れて)


こういうことは初めてではないので、放置という事で。

大体、僕の外見とロイル家の事を関連付ける奴は無視だ。


僕は族長に挨拶して、事の経緯を聞き出した。

この竜が、風竜でちっともここの環境に馴れようとせず、脱走を繰り返して今回も、砂漠への捜査隊が出る直前だったらしい。


「今は、これでもとんでもなく大きくなりますよ!?こんな小さなオアシスで、面倒が見れるんですか!?」


「我がオアシスの水は安定しておらん!!」


「成長したら、オアシスの泉ごと飲み干しますよ。」


僕は少し大げさに言ってやった。

僕の言葉に、族長は顔色が変わった。


「どうすれば良い!?」


「オアシスの水喚びをしてあげます。そこそこ安定させて。その代わり、このチビ竜を自由にしてやってください。」

「そうだな……その竜に引っ掻き回されて、政務もおろそかだ。これ以上の遅れは民の生活にも関わる。そなたがその竜を引き取って行ってくれるなら……」


この時僕は、族長の最後の言葉を聞いちゃいなかった。

それが運のつき!!


族長は僕をオアシスの泉に連れてゆき、満タンになるまでと念を押して、帰って行った。


「くれぐれも、ロイルの神殿に通報しないで下さいよ~~」


「分かった、分かった」


仕事を終えて、ラ・ムゥ・オアシスを出ようとすると、小さな男の子がいた。


『おいらを自由にしてくれて、ありがとう。おいら、リッセルド。

ねぇ、おいらの心臓も取り返してよ』


何だ!? このガキ!?

 

               

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る