1-3

 次の日、私は、5時少し前に民宿に行った。案の定、起きている様子がなかったので、部屋まで上がり込んで


「おきろー 起きろー」と、枕で叩くようにしていたんだけど、部屋ん中がお酒臭くて、男の臭いが・・。たまらず、直ぐに外に出てきてしまった。


 二人が、外に出て来た時、短パンにビーチサンダルで・・私は、長袖、長ズボンで来ていたんだけど


「あのねー 海に行くんじゃぁ無いの 山! 虫とか蛇が・・」


「おい! 蛇って マムシいるんかー」と、はじめさんが


「うーん 居るかもね 私は、見たこと無いけどー でもね せめて、サンダルはねー」


 結局、靴だけスニーカーで・・。


「時間遅れたから、走るね 日の出 間に合わないから」と、私は、言ったものの、意外と彼等はどんどん登っていくのだ。遅れ始めた私を見て、巧さんは、手を差し出して、私の手を掴んでくれた。だけど、余計に走りずらかったんだけど、私は、ぬくもりを感じていた。


 山の上に着いた時、陽があがったとこで何とか間に合った。その日の出を見ている時、私達は手を繋いだままだった。というより、私は、指を組むように繋ぎ直していたのだ。その時、私は、その日の出を生まれて初めての感情で見ていた。なんか、訳がわからないんだけど、希望みたいなものが・・この人と・・。


 山を下りてきて、その足で私は、海藻を採りに行った。帰ってくるとき、砂浜に座っている巧さんを見つけた。


「なにしてるの? はじめさんは?」


「うん アイツは寝てしまったよ 朝 早かったから」


「そう それで、巧さんは何してるの」


「朝の海 見てんだー それと、もしかして、君と会えるかもって・・」


「私も 会いたかったの かも・・」


それからは、いろんな話をした。私も、島の生活とか、高校のことも・・。笑い合ったりもした。私も、こんなに笑ったの、いつ以来だろう。


「もう 行くね おばぁちゃん 待っているから」


 その時、私は抱きしめられた。えー えぇー と私は、戸惑っていた、初めてのこと・・だから・・


「好きだよ 昨日会った時から 何か感じていたんだ 結ばれているって」


「私も」って、小さい声で言ったと思うけど、そのまま抱かれていたら、巧さんが顔を寄せてきて、私は、その時・・顔をそむけてしまった。


「ごめんなさい 私 巧さんのこと あんまり知らないのに・・こんなー こと」


「あー そうだよね 昨日今日 知り合って こんなことってな ごめんな 信用できないよなー でも、君のことが好きだ 今日のお昼の便で帰るんだ だけど、もう一度 冬休みに必ず もう一度、この島に戻って来る その時には・・」私をもう一度、抱きしめて言ってくれた。


「やっぱり 帰っちゃうんだ あのね さっきワタリガニ捕ったの お昼 うちに来てね おいしいよ」


「わかった 船に乗る前 寄るよ」


 だけど、お昼、船の時間になっても、来なかった。私は、港に行ってみると、船に乗り込んでいる人達が、その中に彼の姿を見つけた。もう、船も出る所で・・。


 手を振りながら追いかけて行った。そうすると、あの人も私を見つけたみたいで、手を振って何かを叫んでいる。聞こえない。船は離れていくんだけど、汽笛を鳴らしながら・・


 でも「好きだ」って言ってくれているような・・。この時、見えない糸が繋がっているような気がしていた。そして、あの時・・巧さんと・・もっと・・と 後悔していた。

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