神界、無限増殖系ダンジョンで埋め尽くされる。

あずま悠紀

第1話


「やばい」

ただその一言しか出てこなかった。

俺こと天原大希はとあるダンジョンから帰還した。しかしそこは地球ではなく異空間だった。しかも神域だか聖域らしい。つまり神が住んでいる場所だな。そこにいた女神が言うには俺は地球に帰れず、その代わりに異世界であるアースラースへと飛ばされたそうだ。

そんな馬鹿なと思ったけど実際にこの世界に転移させられたし女神はどうも嘘をついているようには見えないんだよなぁ。まぁとりあえずはこの世界で生き残ることが先決だけどね。そして何で神域に俺のような人間が呼ばれたのか聞いたところ、何でも地球にダンジョンが発生したせいで崩壊しようとしているそうだ。だからそれを解決する為に俺を呼び出したとのことだ。それならそうと事前に説明してくれればこんなにも困惑することはなかったと思うのだが、もう後の祭りなので今更言っても仕方がないよな? というわけで最初に俺は女神様に連れられて世界を見て回ることになったんだよね。それでわかったんだけど、ここは本当に地球のようでいて地球ではないようだ。地球と全く同じだけど異なる星ということなんだってさ。それにしても地球と似た星があるなんて信じられないよなー。あの女神さまは嘘を言うようなタイプには見えなかったし、本当かもしれないと思い始めているけどそれでもやっぱり現実とは思えない。だって地球と同じような星が存在するなんてありえるわけがないだろう。でもそう思う度にステータスプレートとかいうアイテムに表示されている数字とかスキルが現実だと思い知ることになるんだよねぇ。それにしてもこれじゃ俺TUEEE系の小説みたいじゃないかと思ってしまった。ちなみにこれは他の人間も確認することが出来るらしくてみんな俺みたいなことを言っているらしい。まぁそれはともかくとして俺達地球人は何の為にここに来たのかを聞いたらどうやらダンジョンと呼ばれる魔物が発生する洞窟のようなものを破壊してもらいたいとのことだ。その数は全部で100あるそうな。いやまてよ? 確か地球では世界中でダンジョンが発生しているとかニュースでよく見るな。ということはまさかこれ全てに破壊しろと言うのか!? はははっ!無理だろうそんなの。俺達地球人の力でどうにかなる訳が無い。でもどうしようかな。地球に戻りたいのは事実だしなんとかしたいとは思ってるんだけどね。

それからしばらくしてこの世界の現状を知ることになるのだがそれがかなり厳しいもので愕然としてしまったよ。まず第一に食料不足。次に水問題など。これらの問題をどうやって対処するかという問題があり、それを話し合った結果出た答えはやはりあのモンスターを倒すしかないとの結論に至ったのだ。しかし倒すにしても問題があるわけだ。というのもダンジョンの中にはボスがいる。それも普通のボスではなく階層ごとにいる強敵中の強敵というやつだ。これを一人で倒せというのは無茶というものだろう。だからといって複数人で挑むことも出来ないという問題があったりするんだよね。その理由としては俺達は全員戦闘経験が少ない上にレベルという概念があって、そいつらがあまりにも弱いんだって。だから一人だと殺される可能性が高いと言われてしまうほど弱いらしいんだよね。だからと言ってこのまま放っておくとさらに悪い状況になりかねないというのがまた厄介なのだ。そして何より最悪なことが起きた。それはアースラースにいる人間のほぼ全てが死亡したのだ。死因は全てダンジョン内で死亡しているからおそらくダンジョン内の魔物に殺されてしまったのではないかとのことで生存者がいないため詳しい状況はわからなかったそうだ。つまりこのまま手をこまねいているといずれ自分達も同じ末路を辿る可能性は高いのだということがわかったんだよ。

そこで考えたのはこの状況を打開する方法だった。しかしなかなかいい案は思いつかずに数日が経過してしまった時についにアースラースを救う勇者が現れたんだ。その人の名前はリリアナ。なんとその少女はとても可愛い女の子だった。容姿はかなり優れているうえスタイルも抜群でまるで女神のように美しく見えたんだよねー。正直俺の心の中では女神さまよりも断然美少女だよ!! まぁ見た目だけではなく実力もあるようでその圧倒的な力で瞬く間に周辺の魔物を蹴散らしていったんだ。おかげでダンジョン内部の調査をすることが可能になったんだけどダンジョン内は凄まじいことになっていたよ。何しろ大量の魔獣達が生息していたし、強力な個体まで現れる始末。しかも中には上位種のオーガもいたんだぜ? まぁそれでもリリアナさんには関係無かったようだけどさ。それを見た後だから尚のこと俺は自分の力がいかに弱いかを思い知らされた気分になった。そして同時に思ったんだよ、俺も強くなりたいって。そして願ったんだよ、俺を強くして欲しい、そしてあいつらに復讐を果たしてやろう、俺の故郷を奪ったあの連中に目に物を見せてやりたい、そして絶対に地球に帰りたい、そう強く、とても強く願ってしまったのさ。そうしたら急に強い力を感じ始めたんだよね。それと同時に身体の奥底から何かが湧き上がってくる感じもしたんだ。それを感じた瞬間俺は理解した、これがスキルを得た証なんだな、と。そして何を取得したかを確認してみた結果こうなったんだ。

『獲得経験値上昇』『獲得熟練度上昇』『能力強化』『体力向上』『魔力増幅』

この5つが俺が新たに得たものになる。どうやらこのスキルは取得すると身体能力などが強化されたり、元々の才能などを更に伸ばしたりするようだ。ただ気になったのはスキル名の後ろについていた効果の説明欄の文字数が増えていることだ。普通ならばスキル1つに対して効果が2~3個あるのが一般的らしいんだけどな。

それにしてもこれさえあれば俺は地球に帰る為に大きく近づけたといっても過言じゃないな!何しろこれでレベルを上げることに専念できるし、それにレベルが上がることによってステータスが上昇するわけだしね。

さっそく試しに俺は近くにある森へと向かうことにしたよ。この世界にはダンジョンだけじゃなくて危険な魔物も生息しているらしいし、俺みたいな一般人には危険がいっぱいってわけだ。まぁでもこのスキルがあればきっとなんとかなるはず。そんなことを考えつつ森の中へと進んでいくと、早速現れたんだよ。狼のような姿をした魔物がね。見たところレベル4といったところかな?でもまぁそんなことはどうでもいい。それよりも大事なことが目の前にあるからな。俺のスキルに反応があったからだ。そして俺はそいつに向かって駆け出したのである。その速さは常人の目には捉えることすら困難な速度に達しており、あっという間に魔物の背後に回り込んで剣を振るうと一撃で首を切断していたよ。さすがにこれは驚いたな、今までこんなにも早く動いたことはないし。これってステータスのおかげなんだろうか? それともスキルのおかげで俺が強くなっているってことなのか?でもそんなことを気にしている暇はないんだよなー、すぐに次が来たんだからさ。でも今の俺にとっては大したことの無い相手だなとしか思わなかったんだよなー。実際あっさり倒せたしその後も特に苦労することなく順調に進んで行ったんだよね。それでとうとう一番奥まで来ることができた。ここまで来る途中に何度もモンスターと出くわして戦いながら進んだからかなり時間がかかってしまった。それでもまだ太陽は高く空に浮かんでいるわけだから日が沈むまでには帰れるんじゃないかな。

ただ俺は今非常に焦っている。それはどうしてかって言うと、実はこの辺りの森には俺のような一般人では立ち入ることを許さないレベルの凶悪なモンスターが出現することがあるんだ。それ故にこの森は死地とも呼ばれているわけだが、俺が現在いるところはそれに該当する場所で今まさにその脅威が目前に迫っているんだよ。それも一体や二体なんてレベルではない。ざっと見ても10体は下らないだろう。どうやら俺はここへ足を踏み入れてはならない場所へ侵入してしまったようだな。これはヤバイかもしれない。いやマジで。だって俺の周囲には見たことも無い巨大な魔物がいるんだよ?こんなところで死んだりしたら地球へ戻るどころか死んでしまう可能性もある。それはダメだ!何としても生き延びなければ!でもこんなにたくさんいる中でどうすればいい?逃げるべきか?でもどうやって?この数を相手に?どうしたらいいんだ俺は?!

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

突如響いた雄叫びに驚き声のする方向をみるとそこには金髪で長身のイケメンがいたのだ。もしかして彼こそが噂に聞く勇者リリアナなのか?だとすると俺はピンチを脱することが出来たのかな?だとすると彼には感謝しなければなるまい。いやー助かったよ。しかし彼が戦うとあんなに余裕に戦えるのか。凄いな、俺なら一瞬でミンチになっているだろうに。それに比べたらさっき倒したモンスターは雑魚中のザコだったって訳だ。それにしても本当に助かったよ。これで生きて帰ることが出来れば本当に万々歳だ。後は街へ向かって報告をしよう、この森に異常が起きている可能性がある、とね。そうしてようやく森を抜けて平原に出た。その時にはすっかり暗くなっていたのだが月明かりもあって視界を確保することに困ることはなかったんだよね。

しばらく歩くと遠くの方に大きな町が見えた。あれがきっとアースラースで一番栄えているといわれているラウムの街に違いない。そこに行けば冒険者ギルドというのがあるらしいのでそこで今回の出来事を報告しようと思っている。ただその際に少しばかり問題があるんだ。というのも実はこの異世界に来てからというもののずっと風呂に入っていないんだ。だって考えてみてくれよ、日本にいた時は毎日湯船に浸かるのが基本だったろ? それがここでは水浴びすらも滅多にしないってのだからたまったものじゃないぜ。正直かなり臭うんじゃないのかと心配だったんだけど意外にも大丈夫だったんだよね。多分これも勇者の持つ浄化作用のある聖石の力なんだと思われるけどそれでも臭いに関しては問題無いようで安心だ。しかし流石の俺もこの悪臭だけは耐えられないと思ってしまった。そしてこの世界に来る前から着ていたスーツはボロボロになっていたので着替える必要があったんだ。

それからさらに歩き続ける事半日、ついに目的の町、そしてギルドが見えてきたのだ。ちなみにギルドというのはいわゆる何でも屋のような所で、依頼を受けて仕事を遂行することでお金が貰える、言わば傭兵集団のようなものだな。そのおかげで宿で宿泊費を支払うことが可能になったわけだ。しかし金がないせいであまり高級なものを頼めなかったのでベッドの質は良くなかった。でも野営をしていた時よりかはまだマシだから文句は言えぬだろうな。とりあえず今日は色々とありすぎて精神的に疲労していたのでもう寝るとしよう。明日は早速あの森に何が潜んでいたかを報告するとしよう、そう決め込むと俺はそのまま眠りについた。

次の日の朝、目を覚ますといつものように水浴びをしようと準備をしていたところでふと思った。昨日の報告の際に一緒に討伐した魔物についても詳しく話すべきじゃないかと。そう思った俺はすぐさま支度を終えると宿屋を出てギルドへと向かったのだった。しかし俺がギルドに着くと中は既に混雑していた。何かトラブルでもあったのだろうか?俺は受付嬢に声を掛けて事情を聞くことにした。すると驚くべき事実が発覚したのだ。何と例の大森林で大量の魔物が発生したらしく、それにより多数の死者が出たということなのだ。そのお陰で依頼達成の確認も出来ない状況だったようで仕方なくこうして人が多く集まっていたのだという。

それを聞いていた俺の心中は非常に穏やかではなかった。あの場所には危険な魔物が存在する上に、もしかしたらこの騒ぎの元凶である可能性が高いと考えたからである。これは急いだ方がいいのかもしれない、そして一刻も早くあのダンジョンへと向かい原因を突き止める必要があるのでは、と思うに至ったのである。

そうと決まれば善は急げ、さっそくダンジョンへ向かうとするかな! しかし俺はこの時あるミスを犯してしまっていた。そう、ギルドを既に出て森の中へ向かおうとしていたのだ。当然のことながら、そこで気がつくわけである。俺のレベルは現在3だ、そして森に入るためには最低でもレベル6にしなければならないという制限があった。このままの状態で入ると恐らく魔物の群れに殺られる未来が待っているだろうことは明白だ。だがここで引き下がるわけにはいかない。俺はなんとしてでも地球へと戻らなければならない。その為にはレベルを上げるしかない。そう決意した俺は急いで引き返し、そして朝から夕方まで必死になってレベルを上げることにした。幸いこの森に出現する魔物の弱点が光属性だったのでなんとか倒すことはできたが、やはりレベルの上昇率はかなり悪いものだった。

そして遂に俺はレベルが7へと上がるとすぐにダンジョンへと向かうことにした。しかし残念なことに俺が到達したのはボス部屋と呼ばれる場所であった。本来ならばこの先に行く為に必要なアイテムを手にすることなどできない場所だった。だがそれでも、と諦めずに戦い続けた。何度も死ぬような思いはしてきた。しかしその甲斐あって、ようやく念願の最下層に到達することができたんだ。

そこにはなんとお宝箱が一つだけ置かれてあった。中には武器、防具、アクセサリーなどが収納されているようでかなりの量の財宝を手に入れることができそうだ。この世界にきて初めてといっていいくらいの大当たりだったね。俺もついつい気分が良くなって、大喜びでそれらを全て持ち帰ろうとしたところ、背後から突然強烈な悪寒を感じたんだ。咄嵯に飛び退いた俺はその場から離れると目の前には見覚えの無いモンスターが現れたのである。

そいつは明らかにこれまで出会った魔物とは違った存在であり、一言で表すなら『悪魔』という他に無かった。しかしこいつは魔物じゃない、もっと高位の存在、つまり魔族といったところだな。それもかなり強力な力を秘めているようだ。何せこんなにも強い存在感を感じ取っているんだから間違いないだろう。そして俺は直感的に悟ったんだ、こいつには勝てないってね。だから俺はすぐに逃げ出した。そして逃げている途中で気づいたんだけど、どうやらここはボス部屋のようだ、というよりボスの部屋そのものといった方が的確かもしれないな。何にせよそんなことを考えている暇は無い。

「逃さん!」

すると俺の前に突如として壁が出現し、進路を妨害するとそのまま突っ込んできたので慌てて横へと避けると、今度は炎の渦が襲いかかってきた。その光景を目の当たりにした俺はすぐに理解する、こいつがこの部屋に存在している以上逃げることなど不可能だ、と。

俺は大きく後退しながら距離を取り、それからどうするかを考える。奴の強さから考えればこの辺り一帯は間違いなく消し炭になることだろう。だからそれを阻止する為に俺も全力を尽くさねばならないんだ。俺は腰に下げておいた剣を抜き放ちスキルを試してみることにする。するとなんと不思議なことに剣は青いオーラを放つと瞬く間に刀身が凍りつき始めていく。これはもしかしてと思いつつ構えると案の定俺の動きが目で捉えられない程にまでスピードが上昇していき、気がつけば敵の背後に回り込んでいたんだ。これには流石に驚いてしまうな。まさかこれほどまでに強くなるなんて。しかも剣が放つ青白い冷気はどんどん強くなっていくばかりで全く温度を下げること無く、そしてついには辺り一帯が一瞬にして氷の世界へと変化していったんだ。これこそまさに必殺、【氷河期】と呼ぶに相応しい技だったんだ。

「グォァッ!!」

しかし驚いたことに悪魔は背中に巨大な翼を生やすと上空高く舞い上がり難を逃れようとしていたんだ。俺は即座に空中にいる相手に向かって【流星斬撃波】を放った。すると剣から発せられる極大の光線によって相手の体を切り裂くと遥か遠方へと飛んでいく様子が確認出来た。どうやらこれで終わりみたいだ。俺自身も相当消耗していたのでその場でへたり込んでしまった。しばらく休憩した後に帰り支度をしている最中に、あることに気づいたんだ。それは何故か知らないがこの階層は真っ暗になっているのに視界がはっきりと見えるんだよな。最初はこの暗闇のせいでそう見えてるのかと思ったがそういう訳でも無いようなので少し考えてみたが、結局わからなかったんだ。まぁ気にする必要は無し、と気持ちを切り替えると出口へと足を向けた。

そうして何とか無事に帰還することに成功した俺は疲れ切った状態でギルドへと向かったんだ。そこでまず真っ先にギルドマスターに会いに行った。今回のことを報告する必要があるからね。しかしそこでとんでもない話を聞かされる。あの大森林に謎の黒い物体が現れ、そこから出現した魔物がこのアースラース全域で暴れているというんだ。しかもこの事態を引き起こしたのは全ての元凶と思われる存在らしい。だから俺にその魔物の殲滅を依頼してきたんだ。当然、俺には断れるはずもない。こうして依頼を受けると直ぐに森へ向かう事にした。

しかしここで困ったことがおきてしまったんだ。俺が森の中に入った瞬間にいきなり地面から腕が伸びてきて、そして俺を掴もうとした。その攻撃を咄嵯に避けたが、そのお陰で余計に体力を消耗してしまったんだ。その後も次々に魔物が襲い掛かってきて俺は次第に疲弊していった。このままじゃいずれ殺される。その予感をひしひしと感じ取った俺が焦っていると、ふとある声が聞こえたんだ。

(汝、我を使役することを誓うのであれば助けよう)頭に直接語りかけてくるその声に俺は困惑しつつその正体について聞いてみることにした。

「お前は何者だ?」

(ふむ、我が何者か、か。そう聞かれて答えないというのも無粋よの。ならば改めて自己紹介をしておこうか。私の名は【魔王サタン】である。以後、よしなに頼むぞ勇者よ!はっはっはー!!)

すると目の前に黒ずくめの服を身に纏う少年が現れるとその少年は俺に向けて手を差し出してきたんだ。俺は思わずその手を握り返すが、正直意味がわからない。どうしてこんなところに魔王なんかが存在するんだ?しかしそんな俺を嘲笑うかのごとく目の前の存在は更に言葉を続けた。

(クク、そう怯えるな勇者よ。別に危害を加えに来たわけではないのだからのぅ。そもそも貴様は我を呼び出しおっておいて、今更帰れなどと言うのではあるまい?)

俺はその問いに対して素直に帰るつもりだったと答えたんだ。だけど魔王がそれを良しとしなかった。どうしても付いて来て欲しいと言われ仕方なく同行することに決まったのである。俺は内心、本当に大丈夫なのかとかなり心配していたんだが、どうやらそれが表情に表れていたらしく、そんな俺の顔を見た相手が口を開いた。

「ふん、何を恐れているのだ。確かにこの場所には多くの魔物が出現するが今の其方に恐れるものなど何もないであろう?それに此処は我が作った世界である。魔物も、また然り、であるから何一つ不自由はせぬだろう?それどころかむしろ快適だと思うがな」

「そうなんですかね?それで、俺を呼び出した理由はいったいなんです?まさか俺の力が目的で呼び止めたわけではあるまい?それならさっさと用件を話してもらいたいのですがね」

俺は早く話を終わらせて家に帰りたかったので単刀直入に本題を尋ねたのだが魔王はなぜか俺の言葉を聞くなり笑い出し、俺を指差すと高らかにこう宣言したのである。

「ハッハ!良いかよく聞け、勇者。我の狙いはただ一つ、貴様にこの世界を滅ぼさせようという魂胆だ。つまり、この世界の滅亡だな!」

そして突然わけの分からないことを言い放った。当然、俺は戸惑いながらもその意味を理解しようと頭を悩ませるがまるで思いつかないのである。しかしそこで再び声が響いた。先ほどと同じ声色だったが、どうやら今回は俺だけに聞こえるのではなく周りの人間にもちゃんと届くようになっているらしい。そしてその内容は衝撃的なものだったのだ。

「クフフ、どうやら混乱しているようだな。いいだろう説明してやる。まず、この世界に何故魔物が発生するのか、それは我の眷属を生み出す為のものである。ここまでは理解できておるか?」

「ああ、なんとかな。それとお前の言ってた滅ぼすっていうのはなんだ?」

すると今度は急に真面目になったようで真剣な雰囲気を放ち始めると俺に向かってゆっくりと近づいてきた。どうやら話は長くなりそうだと感じた俺はひとまず魔王の話に付き合うことにしたんだが、これが意外に退屈することもなく、面白かったんだよ。

魔王曰く、地球とアースラースは別空間に存在する世界でこの世界の住人は基本的に地球に訪れることは叶わないのだという。だから地球人は俺達地球人類に力を貸してくれるように要請した時も、この異世界の存在を知らずにいた。

だから俺達が協力する代わりに魔王も地球へ行ける方法を探っていたようで、俺達はようやく見つけたこの方法を実行するために準備をしていたそうだが、その途中で予期しない事態が発生したらしい。実はあの大森林から現れたモンスターというのが問題なのだそうだ。

魔王の予想通り、この大森林のモンスター達は地球のモンスターとは違い、かなりの強さを持っているらしい。つまりあの森から溢れ出てきたモンスターたちは皆例外なく強いということになる。そんなモンスターが一斉に襲いかかってきたら、いくらこちら側に圧倒的な強さがあるとはいえ無事で済まない。しかし俺に助けを求めてきたということは俺の力で対処しろと言っているようなものであり、その為に必要なアイテムは既に俺に渡してしまっている。

「それで、どうすればいい?俺は何をしたらその問題を解決できるんだ?勿論俺に出来ることならやってやるけどよ」

「うむ、ならばまずこの世界に満ち溢れる邪悪なオーラを消すところまで手伝ってもらうぞ。なにせ我が魔力を使って作り出したこの領域に魔物が入ってくるだけで悪影響をもたらすからな。それにこの状態が続くと、我の力が徐々に失われてしまうので早急な対策が必要というわけだ。だが安心するが良い。我が力を注げばそれはすぐに解決されるだろう。さて、これからこの大地にあるダンジョンを全て消し去ってくれれば後は我がどうにかしてやろうではないか。さて勇者、貴様に問おう。我の望みを聞き入れ、力を貸すか?さもなくばこのまま死ぬだけの存在となるが、どちらを選ぶ?」

俺には魔王の問いかけがどういう意図を持って放たれたものなのかはわからなかったんだ。だからとりあえず魔王の指示に従うことを決めた。まぁ他に選択肢が無かったからなんんだけどな。そうして、魔王から貰った武器を手に取ると俺は早速仕事に取り掛かったんだ。そしてその最中に気付いたことなんだけどこの武器を使えばスキルが使い放題になることが分かったんだ。例えばこんな感じだ。

【流星斬撃波】:剣から極大のエネルギーを放つことが出来る技 俺の目の前には数え切れないほどの敵がいた。そのどれもが今まで見たこともないような姿をしており、中にはドラゴンやゴーレムのような魔物もいたんだ。でも、その全てが等しく無に帰っていく光景を見て魔王が俺に声を掛けてきた。どうやら満足したらしく俺がやろうとしていたことを止めてくれたんだ。それから俺は報酬としてこの世界で生きていく為に必要となる道具とこの世界で生活するためのお金を用意してもらったんだ。

そのお陰で俺の懐はかなり潤い始めたので今日からは少し余裕が出来そうだぜ。ちなみに今回の報酬はこの世界でいうと日本円にして一億くらいかな。まぁ魔王からもらったのはこれの数百倍だから結構得してるよね。そういえばあの大森林の異変については魔王がなんとかしてくれると言っていたし、そろそろ帰るかな。そんな風に考えている最中、いきなり地面が大きく揺れ動き、そして地割れが起きたんだ。

「なっ、なんだぁ!!いきなり何が起きてんだよ!!」

慌てて状況を確認しようとした俺にまたしても魔王が話しかけてきた。その声音は相変わらず笑みを含んでいるように感じるものだ。

「ククク、慌てるでない勇者よ。我の世界では良く起こることであるからな。そう心配することもなかろうよ」

「そういうもんかよ!?それで、これって一体なんなのよ。またなんかヤバい魔物が現れたのか!?」

俺は焦燥に駆られながら魔王に尋ねたんだが、魔王はそれを笑って流しながら口を開く。すると、また地面が揺れ始めそして地中に巨大な存在が出現するのを感じたんだ。俺は嫌な予感がして咄嵯に飛び退いた瞬間、凄まじい衝撃とともに大地から腕が出現し、俺を握り潰そうと迫ってくるのをギリギリで回避した。

「クソッ!ふざけんじゃねぇぞおい!なんだこいつはよぉ!」俺は悪態を突きつつ、なんとか魔王に現状を説明してもらえるように頼み込むと、相手もどうしようもないと思ったのか、ため息交じりにこう口にしたんだ。

「はーー、全く。面倒なことになったのぅ」

俺に迫り来る腕は止まる気配が無く、その度に俺も必死になって逃げ回っていた。

「チィ、魔王!!なんか手はないのか!!このままだと俺はマジで死んじまいそうなんだがなぁ!!」

すると俺の声に反応した魔王が俺の方へ近づいてきて、何かをしようとしてきたので俺はそれを待つしかなかった。すると、突然俺の周りを囲むように黒い壁のようなものが発生していき、その壁に阻まれた俺は一瞬のうちに身動きが取れなくなった。しかしそこで終わりではなかった。俺を取り囲んでいた漆黒の結界は徐々に縮小していき、最終的には拳が通らない程度の隙間しか空けられず完全に閉じ込められた形となってしまったのだ。

そこで俺を助けに来た魔王が姿を現し、目の前の腕に向けて指を向けると一言呟いたんだ。そして俺が瞬きした次の瞬間、俺の周囲を埋め尽くしていた漆黒が弾けるようにして霧散していった。そして俺が周囲を確認すると、そこには腕の化け物の姿は無くなっており、その代わりに巨大な人型の生物が佇んでいるのが目に映った。そして俺はそれを視認した直後、その巨体が動いたことで、再びその場から離れることになる。そして気付いた時には先ほどよりも遥かに大きなクレーターが生じており、俺は何が起こっているのかさっぱりわからなくなっていた。すると、今度は魔王から俺に向かって言葉が掛けられたんだ。

「うむ、今の一撃でかなりの量の力を吸い取れたな。どうやらこれであの魔物は暫くの間動くことが出来なくなる筈だ」

「ちょ、ちょっと待て!何が起きてんだよ!!お前がやったのかあれを?」

俺の言葉を聞いた魔王は、何を当たり前のことを、といった顔で俺の質問に答える。

「何を言っておるか貴様。それ以外に我以外誰が出来ると言うのだ。それよりほれ、まだ終わっていないようだぞ?奴が向かって来ておる」

俺はそこでようやくあの巨人が未だに動いていることに驚きを覚えつつも再び意識を前に向けると既に目と鼻の先にその巨体が迫ってきていたのだ。

「やべぇえ!」

俺は叫び声を上げ、その勢いのまま全力で横に跳躍した。その数秒後に俺が先ほどまで立っていた場所に大質量の塊が落下して、先ほどと同様に大地が吹き飛んだのである。

「おい、危ないだろ魔王!!もう少し安全なやり方はなかったのかよ!?死ぬかと思っちまったじゃねかよ!!!」

俺は魔王に対して怒りをぶつけたが、当人はまるで動じずに平然とこう答えたのである。

「ハッハッハ、何を馬鹿なことを言っている。そんな方法があるのならば最初からやっているであろう?そんなことより早く戦わんか。もう時間がないというのに」

そんな風に軽くあしらわれてしまったせいもあって俺はそれ以上何も言わずに再び巨人の方へと目を戻すと、ちょうどその時に腕が振り下ろされる寸前だったことに気付いたので急いで避けようとしたが、それが失敗だった。何故なら振り下ろされる途中で突如として腕の動きが止まり、その場で硬直したのである。

その隙を逃すことなく俺が攻撃を加えるもやはり俺の攻撃は殆ど効かず、次第に追い込まれていく俺を見て魔王は笑いながらも忠告するかのように俺に向かって言い放った。

「おい、勇者よ、このままでは殺されるぞ。だから、これを使うが良い」

俺はそんな言葉を耳にした瞬間、即座に手に持っていた剣を鞘に戻し、魔王から渡された例の武器を取り出すと、すぐにスキルを発動させることにした。そして剣に込められたエネルギーを解き放つと剣先から光が放出され、その光の刃によって俺は目の前に迫ってくる脅威を打ち砕くことに成功した。その結果俺は何とか難局を乗り越えることに成功。だが、そこで安心している暇もなく、すぐに新たな敵が襲い掛かってきたので、俺は今度こそ落ち着いてその対処を行った。しかしそれでも俺の身体には限界が訪れていたようで俺は地面に膝を付いてしまい、魔王から回復アイテムを受け取った俺はすぐさま使用した。そしてどうにか立ち上がることだけはできたものの、俺がまともに動けたのはそこまでであった。

しかし俺を待ち受けている者はこれだけではないらしく、次から次に魔物が現れてきたので、魔王と俺でどうにか撃退するも、遂に体力の限界が訪れたのか俺は力なく崩れ落ちてしまった。それから俺は魔王の肩を借りながら森の中を移動していくことになったのだが、その道中でふとした疑問が浮かんできてしまい、魔王に尋ねると彼女はこんな回答をしたんだ。

それは、どうしてこの世界にこんなモンスターが存在するのかというものだった。そもそもこの世界に転移してくる前に俺がこの世界でのステータスを確認した時のことだったんだけど、俺はレベルというものが存在していたのに驚いたんだよ。だけど、魔王の話によればそれはこの世界の住人達も同じらしいんだ。まぁ俺の場合その数字がおかしいんだけどな。だから俺は魔王にこの世界に存在している人間について説明を求めたんだ。すると彼女から驚くべき事実を聞かされることになったんだ。その話とは俺以外の人間は魔王の創ったこの世界に存在する生命体の中で最弱の存在だということが判明したので、俺には信じられなかった。でも実際に確認するとその通りだったので受け入れるしかないという結論に至るしかなくて困っていたところへ、俺のレベルについての話が浮上したんだ。

魔王曰くそのレベルの基準となっている数値というのは、その世界の文明のレベルで決まるのだという。そして、俺がいた日本と呼ばれる国が、どうやらこの世界で最も高い水準にあったらしく、魔王ですら敵わない程の力を持つ存在がいたんだと。でも魔王はその力を封じたことで俺がその人物と同じレベルになることが可能だということを教えてもらったんだ。でもその話はここで終わらず更に魔王の話を聞いた結果、どうやら俺は地球で死んだことによりこの世界へと転移してきたのだということが判明し、さらに俺はこの世界で最強の存在が扱えるとされる【覚醒】とやらを手に入れたらしく俺はそのことを嬉しく思った。だって俺TUEEEが出来るんだからな。そして【魔装召喚】っていう技を習得したことで俺は今までよりも強力な装備を扱うことが出来るようになり、今まで以上に安定した戦闘が可能になったのも良かったな。

「それにしても本当にここは異世界なんだな。あの化け物共を見た時はマジでビビッたぜ。それで俺に魔王はこんな場所で一体何をさせようって言うんだよ。正直に言ってくれれば俺だってちゃんと協力してやるつもりなんだぜ?」

俺がそう口にした途端に魔王からとんでもない提案を受けたので俺は思わず耳を疑ったんだ。その条件を飲むかどうか悩んだけど俺にとっては美味しい話ではあったので、俺は迷わず了承することにした。しかし、俺の考えていたことはどうやら甘かったようでこの後更なる窮地に追い込まれる羽目になってしまうんだよね。俺が魔王と一緒にやってきた場所は巨大な湖が存在し、そしてその中央から少し離れたところに巨大な神殿が鎮座していたんだ。

そして魔王と別れて俺は一人でそこに向うと、何故か中に入ることができない。そして途方に暮れたその時、急に地面が揺れ動き、俺はその衝撃に耐えきれずその場に座り込むことになったんだ。しかも地面が揺れ動くのが収まることはなくて、そのせいで俺は立つことも出来なくなってしまった。なので仕方がないので俺は座ったまま周囲を観察してみるも、何かが起きるような気配は一切感じられず、俺は不安な気持ちを抱え込みながらその場で待ち続けた。

すると暫く経った頃、ようやく大地が落ち着きを取り戻すと共に周囲の状況が変化した。

しかし、俺が目にした光景は俺を絶望の淵へ突き落とすものであったのだ。なぜならその周囲には見たこともない生物が多数存在していたからである。そしてその数は100体程度はおり、中には全長3メートル近い生物まで存在した。俺はそんな奴らに殺されないように逃げ出そうと試みたのだが足が全く動かない上に呼吸が荒くなり始めたため、仕方なくその生物達の様子を窺うことにすると、そいつらは俺のことを見ると、何かを話し合っていたんだ。俺はその様子を見て嫌な雰囲気を感じ取り、一刻も早くここを離れようと立ち上がったがどうにも体が重くて思うように動けない。俺はどうにか逃げなければと必死に身体を動かそうとしたのだがそれも叶わず、やがて先ほど見かけた生物の一匹が俺に向かって歩み寄ってくると、いきなり俺の身体に触れ、その直後俺の全身に激しい痛みが走り出したんだ。俺はそこでようやく先ほどの生き物に攻撃されていたことに気付き、慌てて距離を取ろうとしたのだけれども俺の体には既に力が入らずその場で倒れ込んでしまった。すると他の生物たちも一斉にこちらへと向かってきて俺はもう駄目だと思ってしまう。しかしどういうわけか一向に攻撃が加えられることもなく不思議に思っていると俺はいつの間にか意識を失ってしまっていた。

そして目を覚ました俺は見知らぬ部屋にいたので混乱してしまった。そして、そんな風にあたふたとしている最中に扉が開かれて一人の少女が現れたことで俺はその人物を凝視してしまう。そして、彼女が俺を治療してくれたということを聞くことになると俺は素直に感謝をすることに。しかしその言葉を口にしたところで俺がこの世界の言語を全く扱えないということを思い知らされ、結局会話をすることはできなかったのである。だが俺は諦めず、彼女に色々と尋ねたことでどうにか彼女の名前は判明した。彼女はどうやらアリスという名を持つ少女であり、見た目通りの年齢でまだ12歳なのだとか。俺がそんな情報を聞いて呆気に取られているうちに、今度は食事を用意してくれたのだ。どうやら毒が入っている様子はなく、また変なものを混ぜられた形跡も見られなかった。そこで俺が遠慮無く食べるとその料理は絶品で俺は夢中で食事をすることに決めた。そこで彼女は、俺の世話をしてあげたいと申し出てきたのだ。俺は最初その話を断りかけたものの最終的には彼女の好意を受け取ってしばらくの間お供してもらうことに決めてしまった。何故なら俺にとって一番の気がかりなのは地球に帰れるか、という点であった。

だが現状ではそれを知る方法が一切無かったので魔王に相談しようと考えたんだけど肝心の魔王の居場所がわからず、俺一人だけで探すのは不可能に近いと判断。よってしばらく彼女に従うことを決め、俺と彼女は行動を共にしながら魔王を探し回る日々を送ったのであった。

それから数日が経過したところで遂に俺と彼女で魔王の所在を探る方法を発見することに成功してしまったんだ。それがスキルを活用すれば良いのだということはなんとなく分かっていたので魔王の居場所を特定しようと念じたところ魔王の現在位置が表示されることに成功した。それを俺が発見したのはついさっきのことだ。

魔王と俺はお互いに相手の場所を探知することが可能らしい。どうやら俺が勇者の力を得た際にそのスキルも習得出来たらしく、使い方次第では様々な効果を発揮してくれそうだ。ただこのスキルを有効利用するためには相手の位置を特定することが大前提となる。

だからといって魔王の居場所を探すのは非常に困難だった。何せ俺はこの世界に転移した直後で魔王がどこに居るのかすら知らなかったからね。でもその心配はすぐに解消された。魔王が突然現れて話しかけてきたんだ。どうやら俺達が話をしているのを見てわざわざこっちにやってきたようで、俺達の目の前に現れた。そこで魔王の口から放たれたのは、俺を地球に帰す方法があるという事実であった。その方法を魔王から教えられたことで、俺は心底喜んだよ。そしてその方法というのは【神界転送】というものを使用するのだということが判明したんだ。そしてそれは今いる場所からは少々遠い場所にあるとのこと。だが問題はない。俺は魔王と相談しながらその場所へ向かうことを決めた。

こうして俺は【魔装召喚】を使いながら空を飛び、【神速】という高速移動を行うことが出来る魔法を使用して移動する。そうすることで移動時間を大幅に削減することに成功したので早速目的地を目指すことにした。ちなみに魔王から貰った剣を装備中の俺の戦闘能力はこの世界で最強の存在と並ぶ程になっているようだ。どうやら魔王は俺のことをそれだけ評価してくれていたらしい。だけど魔王本人は俺に対してそこまでの評価を抱いていなかったようで、そのせいで俺には未だにレベルという概念が存在しておらず、俺にはその辺りの概念を理解できないので実感が湧かなかった。まぁレベルが1の状態でここまで戦える俺が異常なんだけどね。

俺はとにかく今は魔王が俺に与えてくれた【天眼】を使用し、その能力を検証していたんだけど、どうやら俺が魔王が作り出したこの世界に転移してからの行動を監視出来るものらしく、しかもその映像は魔王の元へ送られているらしい。つまり魔王はその映像を確認することが可能で魔王は俺の動向を確認できているということになる。なので、もしかすると魔王が俺のステータスに何らかの細工を施しており、それによって俺がこの世界に来させられた可能性も否めないな。

しかし俺はその事実に気付いていないフリをしながら行動を続けたんだ。するとどうやら魔王に俺のステータスが把握されてしまうみたいだな。しかしそれでも俺がこの世界を救おうと考えていることは見抜かれてしまっているらしく、その事実を知っていて放置しておくという選択をした魔王に俺は驚いたものだ。そして俺達は遂にその目的の場所である場所にたどり着いた。そこは巨大な門が存在り、その奥から何か強大な力を宿した何かの存在を感じたんだ。

そこで俺は覚悟を決める。これから待ち受けるのは死闘だ。俺は自分の力を試してみたくてウズウズとしていたため、すぐに戦いを始めようとしたのだが、どうにも俺よりも早くその扉の中へと突入しようとした人物が存在しており、俺は焦って引き止めることにした。だって俺はその人に勝てるイメージが全く浮かばなかったんだよ。だから必死になってその人物を引き止めたんだけどその人物はそんなのお構い無しで中に突撃してしまったんだ。俺はその後を追うような形でその人物の後を追って行ったんだけど、案の定中に入るとそいつは戦闘中だった。その戦闘相手というのがまたもや人ではないんだよな。俺がそいつのステータスを確認したところ、どうにもそいつの正体に検討がついてきてしまい思わず俺は愕然としてしまいその場に立ち尽くす羽目になったんだ。そう、そこに居た敵の名前は【バハムート(バハムート)】だったのである。

俺も一応その生き物について説明を受けていて知ってはいたが、実際に目の当たりにしてみると思っていた以上に強そうな生き物であることを理解し驚愕せざるを得なかった。しかし俺は、そんな怪物を相手に戦いを挑もうとする人物の姿を見て俺は更に驚かされることになる。

何故ならその人物とは先ほど扉の前で俺を静止させた人物であったからだ。俺はそんな彼に対して声をかけたのだが、残念ながら彼には言葉が通じないのだと知りショックを受けてしまった。そしてその男は自らを犠牲にし、そのバハムートにトドメを刺して勝利したのだ。その結果、男はその場に倒れ込んだため、俺は急いで彼を担ぎ込み外に出ることになってしまったのである。その際に俺と彼が出会ったことで、お互いの名前を交換し合ったのだが俺は彼の名前を耳にしたことで再び驚くことになる。なんとその人物こそ俺が探し求めていた勇者その人だったのである。まさか勇者がこんな近くに存在していたなんて思いもしなかったな。

俺は勇者をどうにか救い出し、その人物と共に魔王が待っている場所へと向かった。そしてそこには魔王だけでなくあの時に助けたアリスの姿も確認できる。

どうやら魔王がアリスを助けてくれたおかげで、アリスもこの場所まで辿り着いたらしい。

そこでアリスは、どうやら俺達二人に何かをしたい様子。しかし何をしたいのかわからない俺と勇者だったが、アリスは俺に近づいてきて手を伸ばすとそのまま俺の手を握ってきた。その直後、急に体が重くなり、俺は意識を失ってしまうことになった。どうやらアリスが俺に何かを施したらしい。しかし一体何をしたんだろう? そこで俺の意識は完全に途絶えた。

そこで俺の意識が完全に覚醒したのだが、目が覚めると目の前に魔王が立っていた。そこで俺は慌てて立ち上がり、その勢いで俺は倒れそうになる。

「おい、落ち着け」

魔王の言葉を聞いた途端に俺はハッとして周囲を見渡すと、自分が見知らぬ部屋のベットの上に寝かされていることに気づいた。そして俺はようやく今の自分が置かれている状況を思い出して、まず初めに俺とアリスが無事であったことを安堵する。だが俺の横で横たわっているはずのアリスの姿を目にした瞬間、俺は驚きのあまり息をするのを忘れて硬直してしまった。何故ならば俺のすぐ傍で眠っていたのは幼い少女などではなく、成人しているような見た目の女性だったのだから。その女性を俺は一目見ただけなのに何故か懐かしい感覚に陥りながらもどうしてこうなったかを考えたんだが、全く理由がわからず困惑してしまう。そして魔王に事情を聞くことにしたんだ。

俺はアリスが実は人間ではなかったということを聞かされた時、俺はあまり驚かずにその話を聞いていた。何故ならばこの世界に来る前から俺も既に普通の人間じゃないことくらい理解していたからだ。だが俺は勇者の力と称号のおかげで今まで生きてこられたに過ぎない。俺自身が最初から化け物染みていたわけではなく、その力は異世界から帰還した時点で身に付いたものになるのだ。だからこそ俺は魔王の話を疑わず受け入れることが出来てしまった。だがそこで疑問が生まれる。何故、彼女は人間のふりをしていたのかというものだ。確かに俺が魔王の言う通り彼女の正体が本当は神だということを知る前ならばまだ良かったのかもしれない。しかし今は魔王の力を借りている俺の方が強い状態になっているので、仮に彼女から攻撃を仕掛けられても返り討ちにできるという自信があるんだよね。だが魔王が彼女に危害を加える可能性は極めて低いだろうと思っているのでその点は安心出来ると思う。

それと、この世界の神は女神では無く魔王なのだとか。そして俺のスキルに新たに追加され、【天魔波旬】という名前のスキルを授けられてしまった。【魔眼付与】と同じような効果が発動でき、対象に様々なスキルを使用可能にするというもの。

この力を使って俺は、【魔視眼】を使用することにした。このスキルは簡単に説明すると俺の見ている風景をそのまま相手にも見せつけるというもの。これを使えば相手の弱点や隠し事が丸見えとなるらしいので俺はかなり楽しみだね。ただこのスキルの効果はそれだけじゃなくて相手の記憶や過去を読み取ったりすることもできるらしい。まぁこの辺の細かい情報はまだ把握しきれていないんだけどさ。でも魔王の話を聞いていればわかるように、俺は今から戦う相手との対話を試みようとしているわけで、その相手に対して俺の持つ切り札の一つとも言えるものを使うつもりでいる。その相手が本当に信用に値する者なのか見極めてみたいから。そしてその会話が決裂すれば、俺は全力で魔王と戦うことになるはずだ。

さて、そんなわけなので早速、俺は神界へと赴く準備を整え、その扉を開くと【天魔の聖域】と呼ばれる神の領域へと繋がる空間に転移することができた。そしてその先に魔王がいた。俺は早速、俺の目的を告げると魔王もそれに快く了承してくれる。これで俺達は共闘することとなったので早速俺はこの世界を侵略している敵を倒しに行くことに決めたんだ。そして俺達の目的のために俺のスキルを使用して敵の情報を入手する。すると驚くべきことがわかった。

その情報というのは俺達が今から向かう場所にいる存在こそがこの世界で暴れまわる悪の元凶だったのである。しかもどうやらそいつは俺が倒したバハムートと同格の存在が他にも存在するようで、しかもそれが3体も存在していることが判明した。そこで魔王が提案したのが、魔王軍による連合組織を設立するというものである。俺はその提案をすぐに承諾することにした。魔王軍の連中とも俺は一度戦ってみたいと思っていたし、何より俺はこれから俺を裏切った者達に対して制裁を与える必要があると考えていた。俺を騙し続けていた連中に対して復讐するつもりだからね。そのための力を俺は魔王のスキルによって得たのだから使わない道理がない。俺にとって魔王軍は利用させて貰うだけのものであり、決して俺の仲間にはならないのだ。

そうして俺と魔王は仲間となり共に行動することになった。そしてその途中で出会った【魔王(マオ)】と名乗る謎の男と行動を共にしたんだ。そいつはどうやら【バハムート】の居場所を知っているらしく、俺達にその場所を教えると、そいつはそのまま去って行ったんだ。その【魔王】の実力を俺は肌で感じることができてしまったために、俺は奴に恐怖を覚えてしまいその場から動くことができなかった。それほどまでに俺は魔王の強さを理解してしまい、そいつに戦いを挑むのが恐ろしいと感じてしまったんだ。

だけどここで立ち止まってしまうことは許されない。何故ならこの世界では魔王の力が弱まる時間が訪れる。つまり、このまま時間が過ぎ去れば、魔王は再び弱体化してしまうため、この隙に少しでも俺が強くならないといけないからだ。その時間を無駄にしないためにも俺はすぐに移動を開始し、この世界を救わなければならないと考えたため急いでいたんだよ。

ただその前に俺にはやるべきことがあった。それは俺を騙し続けてきていた連中に仕返しをしておかなければならなくなったからだ。

そこで俺はその元凶を討伐するために必要な戦力を確保する為にとある場所へと向かう。

俺は勇者と共に旅をすることに決め、勇者と共に魔王軍と手を組むことにした。そして勇者を味方に引き入れ、そのまま俺は勇者が元々暮らしていた世界に戻ろうとする。しかし、そんな時に勇者が俺を引き止めたのだ。勇者がどうしてそのような行動をとったのかは不明だが、勇者曰く俺に着いていきたいのだと。その理由はわからないが、恐らくはあの時に話をした時に俺は勇者のことを気に入りすぎてしまっていたのだと思う。それで俺は少し困ったことになった。もしこのまま勇者を連れて行けば間違いなく勇者は死んでしまう可能性が高いのだから。だから俺は悩んだ末に、勇者にある条件を提示することにした。それは俺と勝負をすること。そして俺に勝てたのならば連れて行くことにしようと決めたんだ。俺は勇者が勝てるとは微塵も思っていなかったので当然俺が勝ってしまったんだが、そのお陰で俺は魔王軍に加担することになったのである。

そんなこんなで俺は魔王に案内されてある場所で魔王軍の面々と顔を合わせる。その集団の中には先ほど別れたはずの魔王が俺に手を振っており、俺もまたそれに応じるかのように手を振る。それから他の人間も集まり出し、その人間達と俺は互いに握手を交わす。その中には先ほど戦ったばかりの【バハムート(バハクト)】の姿があったのである。

こうして俺と魔王軍は新たなる拠点を築くことになる。そこはかつてこの世界を救った勇者の故郷の跡地であり、そこには数多くの建物が並んでいたんだ。その建物の中で俺は俺に着いてきた人間や魔物達を集めて自己紹介を始めることになった。

そしてそこで、俺とアリスに力を与えたあの男と、その男が連れて来たらしい人間が一人いると魔王に紹介された。その男は俺の姿を見て何故か涙を流していた。その涙の理由は未だにわかっていないが、その男の感情から俺に深い思い入れがあることくらい理解できてしまった。だが残念なことに俺はそいつのことがまるで思い出せないんだよね。何故だろうか。もしかしたらどこかで会ったことでもあるのか? 俺と魔王は今後の方針について話合うことにする。その結果決まった方針が、現在俺達の邪魔をしてきている魔王軍を倒すことである。俺はその魔王と協力体制を結ぶためにまずはその目的を共有することから始めることにしたんだ。魔王がこの世界にいる限り俺はこの世界から離れることができないため、魔王と敵対することは非常に危険な行為になるからだ。しかし魔王が何故、その危険を犯したのかは不明だった。そこで俺はそのことについて魔王に質問を投げかけてみるが答えてくれなかったために俺はそれ以上の追及を止めることにした。そこで次に俺が考えた案は、神界の方に行ってこの世界の現状を確認するというものだ。何故ならば魔王はこの世界の情報を何も持っておらず、その知識が欲しいからだ。

そこで俺達はその方法を考えることにしたんだが結論として、その神界とやらに俺達は行けないということがわかり、その方法が見つからずに終わる。そもそも魔王に聞いてみたがやはり知らない様子。ならば神族から神界に繋がっていると言われる門を開けることができる鍵を手に入れるしかないかと思ったのだが、それも難しいだろう。何故ならばその神族の住んでいると言われている土地はここよりもずっと東の方に存在しているようなのだ。そして更に言うならばその場所も既に人がいるようなので行くことは困難だと考えられるだろうな。なので俺の考えはここで完全に行き詰まってしまったのであった。ただ、そこで俺は閃いたのだ。俺は地球に戻りたいと強く願っていたので、その想いが何らかの影響を与えたのではないだろうかと考えるようになる。そこで魔王に地球の情報を教えてほしいと頼む。その頼みに対して快く魔王が応じてくれる。その方法は俺達が神界に行くための扉を開いてから俺の【天魔波旬】というスキルで相手の記憶を覗くというものだった。俺はそれを承諾し、魔王と俺はお互いの能力を使用し合いながら、その神界とこの世界を繋いでいるという扉を探し始めたんだ。

俺は神界へと繋がる扉の気配を感じ取り、その場所に辿り着く。その場所というのがこの世界で信仰されている【女神の祭壇】と呼ばれる場所に俺は立っていた。俺はそこで女神と会い話をすることになる。

そして女神にこの世界を救うことをお願いされるので俺がそれを引き受ける。すると女神は魔王軍と戦う為の俺の力を与えてくれると言い、俺は女神から与えられた力で魔王と戦うことになるのである。そして俺の力によって魔王は倒されたが、まだ魔王軍が残っているので、俺はその後すぐに勇者の元へ駆けつけることになったのである。俺はその勇者と手を組み魔王軍を倒しに向かうことを決意する。だがその時、俺の目の前で突然謎の男が現れ俺に対して戦いを挑んで来たので俺はその男の相手を行うことになる。俺は【神龍眼】でその謎の男を見てみるとその正体に俺は驚いた。何故ならそこに映っていたのは俺が以前、勇者に力を授けた張本人だったからである。まさかそんな相手が俺の前に現れるとは完全に予想外だったので驚きが隠せなかったね。俺は全力を持ってしてそいつと戦っているうちに徐々に俺に有利になりつつあったのでそのまま押し切ることにしたんだ。そうしてそいつを倒してやったがそいつが何者かは最後までわからなかった。

ただそいつを倒した後に俺が勇者の元に駆けつけようとしたら急に俺の目の中に文字のようなものが表示されてそれが消えないことに気づいた。どうやらとてつもなく嫌なものが映し出されていたようで俺の身体から汗が流れ出ていた。その文面を見た瞬間、俺の背筋が凍るような思いに襲われることになり俺は思わずその場に立ち止まってしまう程だったよ。何故ならその画面に表示されていた文章はこうだったんだ。

「あなたには私達と同じ存在になれる素質があります。是非とも我々の同志になって下さい」

正直に言ってこれは脅迫に近いものだと思う。しかも俺にその誘いを断れない理由まで用意されており、それがなんと、俺のステータスにあったレベル表記のことだった。俺はこの世界に来て自分の能力を詳しく調べたんだけど、その結果俺の今のレベルで限界を迎えていることが判明したんだよ。だからそれ以上強くなるためには、【魔導陣】とか【魔獣召喚術】のようなスキルを手に入れなければならないと考えたわけ。だからその申し出を受ければ俺はもっと強い力を使うことができるようになるかもしれないと考えたんだよ。だから俺は魔王軍の連中と共に魔王を倒しに行ったんだ。そうして魔王を倒したら魔王は死ぬ間際に俺に対して呪いをかけてくる。どうやらそのせいなのか俺の頭に謎の頭痛が起こり始め、魔王は最後に意味深な発言を俺にする。そう、その言葉こそが今回の騒動の始まりの合図となったのだよ。その台詞の内容はこんな感じだ。

(貴様は既にこちら側の者なのだからもう逃れることはできん。さあこれから忙しくなるぞ)

そうして俺はその謎に包まれた現象から目を逸らすことが出来ずにその文字が頭から消えることは無かった。そして俺の心の中で何時の間にかにそいつの言葉を信じたいという気持ちが生まれ始めていたんだ。それは俺があの謎の声を聞いたことで何かに導かれたように感じたからだ。そして俺は何故かそいつの仲間になりたいと思い始めてしまったんだよ。その気持ちを魔王に伝えてみると魔王はそれをあっさりと承諾する。そして魔王は仲間になった俺に魔王の加護を授けてくれようとするんだが、その前に一つだけ魔王に確認したいことがあったんだ。そこで俺は【魔王の加護】とは何なのかと尋ねてみる。すると返ってきた答えは驚くべき内容だったのさ。

魔王は【神魔の祝福】と呼んでいる力のことを俺に話してくれた。その力とは簡単に言えば、魔王と同じような存在になれる能力だということだ。しかし魔王と全く同じ姿になるわけではなく、その者の魂の形を反映するものとなるらしくて俺の場合は人間に近い形に変化していくとのことらしい。それはいいんだが問題はそれだけじゃないんだよ。この加護を受けた場合魔王のように寿命という概念が無くなるんだって。つまり俺の今の状態も永遠にこのままということになるんだ。

そんな話を俺は聞かされてしまい俺は内心で少しばかり嬉しく思っていた。だってこれで俺はずっとみんなと一緒にいられるということが確定したようなものだろ? それに俺には地球に帰ろうとしている理由があるのにも関わらず、この世界に残ることを決めたんだ。

魔王に加護を与えられた後は、俺は魔王と別れてから俺はこの世界に勇者として転生させられた俺のクラスメイト達と再会するために勇者達が集まるという場所に向かうことにしたんだ。そこには既に勇者達が集まっており俺と勇者との話し合いが行われたのであった。俺は魔王軍に味方することを表明して勇者達を説得しようと試みた。しかし勇者達は俺の話を聞いても納得できずに結局俺達二人は決裂することになってしまう。俺はそれでも勇者の説得を試みる。そこで俺はあの時の【魔王軍の一員になる】という発言の意味を説明することにしたんだ。俺はあの時はその条件を飲むつもりだった。だけど勇者と再会できたからその話は白紙に戻ったと勇者に説明する。その俺の話を聞いた勇者は俺に対してある提案をしてきてくれた。俺と勇者がお互いに戦い、どちらかが生き残った方について行くというものだったんだ。それで俺はその勝負を受けることにした。それから俺は俺の仲間たちと合流し、【魔王軍】に俺は入ると宣言したのであった。

そうこうして俺と魔王軍は、まず魔王軍に所属する人間の数を一気に増やす為に魔物の集団と戦えるだけの人員を確保する必要があると考えて俺は魔王軍の中でもかなりの実力者と思われる【バハムート(バハクト)】を連れて来ることにしたんだ。そして連れて来た【バハムート】に対して魔王は魔王としての立場をしっかりと理解するように命令をしたんだ。まぁそりゃそうだろう。俺達がここにいることを許しているのはあくまでも【魔王軍】としての存在を認めていたからこそなのだろうしな。

その日以来、俺達の新たなる拠点として作られた街では魔物と人間による争いが激化していくことになる。俺達がその中心となって戦いを始めたからだ。俺と魔王の配下が魔物側に立ちそれ以外の魔王軍と人間は人同士での戦いを始めることになったんだ。

そしてこの世界に来た時に一緒にやってきた俺の部下と、俺のかつての友であり魔王軍の将軍を務めている男が率いる部隊との間でも衝突が起き、最終的には魔王軍の将軍とその部下である魔族たちとの間に一触即発の状況が訪れることとなる。しかし俺はその二人を止めることに成功した。何故ならばこの世界の現状を知る上でも魔族の情報が必要と判断したからだ。

だが魔族たちの現状はかなり悲惨であることがわかった。その現状を知った俺は魔族たちに協力してもらうことを約束させた。その結果俺達は魔族から様々な情報を得ることに成功をする。そしてその中には、魔族の住む土地がどこにあるのかという話も含まれていて、その情報を俺は得て、俺はそこへと向かうことにする。そうして俺達はその場所へと向かい、そこにいた魔族を救い出すことに成功する。そこで俺は魔族たちから感謝されて、この国で暮らすことが許されるようになったのであった。その条件として、その国の長に俺が就くことが決まったのであった。

その日の夜、俺は俺をここまで連れてきてくれた謎の男と話す機会がありそこで俺の目の前に現れた男の名前を初めて聞くことになる。その男は名を【バルバトス】という魔王軍の将軍の地位にいる男だと言う。そして俺はその男が俺に語りかけてきた内容に驚きを覚えずにはいられなかった。何故ならその内容は、その男がこの世界に来るきっかけを作った張本人だと自ら告白したのである。その張本人というのがどういう奴かというと、俺の元友人だった人物なんだが俺はこいつのことが嫌いだったのであまり詳しいことは知らないのだが。俺が元の世界に戻る際にこいつもついてくると言い出してきて、俺と魔王が必死に止めたらやっとの思いでついて来ることを諦めてくれてほっとしていた。

そしてバルバトスにこの世界をどのように変えるつもりなのかと尋ねたところ、この世界は腐っていると言い出したのだ。この世界がなぜこのような事態に陥っているのかをバルバトスは俺達に説明し始める。どうやらバルバトスが魔王になった頃には既にこの状態になっていたらしいが。魔王軍が魔導科学兵器を揃え始めるようになった時から世界のバランスが崩れ始めたそうだ。だからそのバランスを取るために俺達人類を滅ぼす必要が出てきて、俺達を勇者に仕立て上げて魔王に勝てる存在を作ろうとした。ただそれも上手くいかなくて逆に追い詰められて魔王は封印されてしまったらしい。

俺はバルバトスの話を聞いてこの世界に呼ばれた理由を理解する。そしてそれと同時に何故俺は選ばれたのだろうとも考えたんだ。どうやら俺以外の人間がこの世界に送り込まれてこの世界で勇者として活動させられていたということに驚いた。

そうして俺はその後魔王城の地下へ降りて行って俺と同じ転移者だった者と出会ったんだ。その者は俺と同じように元の地球に帰りたいと願い続けていて俺はそれに協力することに決めた。そうして俺は仲間を引き連れてダンジョンに潜り、俺と同じ考えを持っている他の異世界人の者達と共にこの世界を脱出するための鍵を見つけ出そうと決意を固めたのであった。そしてついにその鍵は見つかり俺はそれを手に入れたことで、この世界の仕組みと俺に呪いをかけた張本人を倒すべく動く。そしてその途中で、【魔導陣】と呼ばれる力を手に入れてしまう。その力で俺はこの世界の理そのものを変えることが可能になった。そこで俺は【魔導陣】の力を使い魔王の身体を【魔剣創造】の要領で作り直す。そうして俺はその【魔装】の力と魔素変換能力のスキルを利用して【魔王神化】を行い、俺は【魔王神】となり俺がこの世界で初めて神格を得た存在となった。そうして俺が魔王となった。

魔王となってからの俺の生活はとても楽しいものだったよ。俺は仲間を増やしていきその数を増やしていったんだ。仲間が増えれば増えるほど、俺は俺の目的を果たすために必要なものが増える。そこで俺は【魔王】の称号を持つ俺の部下を作り上げることにした。それは【悪魔召喚術】というスキルを習得した俺のかつての友人だったあいつを呼び出しその配下の【十二貴族】を召喚することに成功した。その者たちには俺の配下に加わってもらうように話をしたところ快く受け入れてもらえて助かった。

そうこうしているうちに俺の部下は俺に忠誠の証を示すことになり俺は俺に忠誠を誓ったその部下たちに名前を与える。まずはその筆頭は魔王軍の四天王を務める四体の強力な悪魔だった。この悪魔の種族名はサタンと呼ばれている。そしてこの四体は、俺に最初に召喚されたあのサタンと瓜二つの容姿をしているが、その実力は段違いに強いらしくこの世界に君臨することになった。その次に俺はこの世界に存在する人間の上位階級に属する人間を部下として招き入れる。まず初めにやって来た人間は女で俺の直属の眷属として任命することにしたんだ。そいつの名前はレイネシアといい【傾国】の異名を持っていた女だ。

しかし彼女は【七大罪】の一つである【嫉妬】の力を宿しており【傲慢】の権能を有する俺の部下になったせいなのかすぐに傲慢な性格になってしまったので扱いが難しくなったのは言うまでもない。だがそんな彼女でも俺は気に入ってしまったのだからしょうがないとしか言えないだろう。ちなみに彼女が持っていた力は【怠惰】だったが、今は【憤怒】に変化してしまっていたりするんだよね。そして俺は彼女のことを【暴食】と名付けた。そして【色欲】の能力は、その者の見た目を変化させることができるので、彼女にはこの世界にやってきた時に手に入れた【魔王の刻印】の力で人間と魔物の融合をさせることに俺は成功した。そして彼女はその融合した魔物たちを統べる魔王に姿を変えることになる。そして残りの三人にはそれぞれ【強欲】【憂鬱】【虚飾】【憂鬱】という名前を与えて【怠惰】と融合させ俺が新たに生み出した魔王【ベルフェゴール】と名付けることになったんだ。

そんな感じでどんどん俺の元に部下たちが集まり始め俺に使えるようになっていく。それからしばらくして俺の仲間達にも変化が起きる。それはこの世界に訪れた時についてきていた俺の仲間たちの数が増えていったからだ。そして俺達はとうとう魔族と手を組み、魔王軍として動き始めた。そしてその時に、俺は新たに俺に加護を与えた【原初の精霊】から【神祖の加護】という称号を与えられた。この加護を受けたことにより俺のステータスは大幅に強化されたんだ。

そのおかげで、俺の部下である魔王軍はさらに強い魔物を生み出すことに成功しているんだが、やはりというか当然のことだが魔王軍の中じゃ俺の配下は魔王軍の中では異質な強さを誇っているから目立つんだ。しかも俺は魔王軍という組織のナンバー2だし、他の組織に所属している連中にも俺は有名だからね。だからこそ俺が魔王軍を抜けたり裏切ったりした時の損害は尋常じゃないんだよ。それに俺に付いて来るって言ってくれている仲間たちのことを考えると、簡単に抜けてしまってもいいのだろうかとも思ってしまうんだ。そうやって俺は少しばかり悩むことになってしまいそうな気がするのであった。まぁでもその時が来た時にはまた考えればいいかな。だって今の俺はもう魔王軍の中でも重要な立ち位置にあるし抜けるなんてできないからさ。そう考えると俺の仲間たちの戦力は凄いことになってるなと思う。そしてこの国を【魔王軍】の支配下に置いて俺は国を支配することにした。そしてこの国は【勇者王国アースラース】と名付けられたんだ。

こうして魔王と【魔導王】と【聖天女王】の俺の三人が協力してこの国を発展させる為に様々な政策を行うことになる。そしてその過程で魔王と俺の配下である部下たちによる戦争が勃発してしまうことになる。

そして俺はこの世界の新たなる魔王としてこの世界に君臨し、新たなる世界を作り出す為に、俺は俺のやり方でこの世界の人々を導いてあげようと思っている。そして俺達はこの世界を平和にしてこの世界の人間全てに幸せな人生を送り続けて貰えるような世界を作ろうと考えているんだ。それがこの俺【魔皇】として、今現在生きている中で最高責任者である俺にしかできないことだと信じているからなんだ。

ただこの世界が滅びないように、俺が全力を尽くすつもりでいるけどね。その為にこの世界に呼ばれたわけだし、俺は俺なりにやらせてもらうだけだよ。そうすればきっとみんなが幸せになるはずだと信じて行動することにしようと思うよ。そう信じたいんだけどどうだろうね?これから一緒に頑張って行こう! --完ーー -----

おまけ: 俺達の国の名前が【勇者王アースラース】となったのはこの国ができてしばらくした後だったんだが。その際に俺はこの国の王族の一人であり俺の友達でもあった男の名前を使うことを決めたんだが。この名前を決めるためにいろいろと揉めた挙句何故か俺は最終的に自分の妻となることになる女性の名前をそのまま採用することになってしまうのであった。そしてこの【魔王軍】という組織が【魔王帝国】と呼ばれるようになる。

この世界ではレベルという概念が存在しているんだが、どうも俺達【勇者】にはそういった概念はないみたいだ。何故なら俺がこの世界に降り立った際に俺に【鑑定】のスキルを付与してきた男がいたのだが、その男はなんとこの世界で最強の存在である魔王様だったのだ。魔王とはつまり神にもっとも近い存在と言われているのだが、魔王は俺がこの世界に現れる少し前に封印されてしまい復活を果たしたばかりで弱体化しているのだという。しかし魔王はいずれ必ず俺の敵として俺の前に立ちはだかるに違いないと言っていたので、俺としてはできるだけ早めに強くなりたいと切実に思っていた。しかし、そんな折にこの世界に存在する人間の勇者の集団の中から、俺の友達が勇者のジョブを与えられてこちらの世界に転移してきたのだ。俺はそのことに驚きつつ嬉しく思い彼に声を掛けることにしたんだ。するとその友人がこの世界に俺が現れたと聞いて飛んできたと興奮気味に語り始めた。なんでも彼はこの世界に呼び出されてからこの世界に生きる者達の理不尽さに絶望してしまい、俺と同じく復讐してやりたいと思っていたそうだ。そこで俺と魔王は意気投合したんだ。

俺は彼とこの世界にやって来たばかりの頃の話をしながらこの世界で生き抜く為の知識を教えていくことにする。そして俺達二人は魔王軍に新しく加入させた【十二貴族】の二人に彼の世話を任せて、彼が一人前になるまでは二人で鍛えてあげることに決めたんだ。そうして俺は彼を【強欲】の力を使って強くしたんだ。その結果、【剣聖(仮)】というジョブを手にすることができたので俺は彼に対して剣術の指南役を務めていくことに決めるのであった。

そしてそれから暫く経つと俺にこの世界を救いに来た異世界の人間たちが続々と現れるようになった。俺はこの世界の【勇者召喚】という技術について知っておりその対策も既に施していた。なぜなら【転移者】として俺は一度元の地球へ戻っているからね。だから【魔導陣】さえあれば再び元の世界へ戻ることは可能だということを知っているんだ。俺はそれを応用して【魔道書庫】を作りその中に俺が知り得る限り全ての【召喚】の技術とその召喚に関する情報を保存している。俺はそれを利用して俺と同じ召喚によってやってきた奴らをこの世界に送り込むことに成功していた。そうすることで召喚された人間を安全に手に入れようと画策したのである。そうすることによって俺はその人間のスキルを手に入れ、その人間の肉体を手に入れることが可能だからだ。

しかし【召喚術】に関しては、俺の知らないスキルだったため完全に習得することができなかったのである。そこで俺は俺の知る情報の中で使えそうなスキルだけを【複製術】のスキルを利用して【複写】を行いそれらをスキルとして習得することにしたのである。これによりスキルを習得することができてしまったのである。それにより俺はスキルを増やすことができ更に強くなることができたのであった。そして俺の仲間となった者達にもスキルをプレゼントし更なるパワーアップを図っていたのである。

こうして俺は俺の大切な仲間と魔王となったかつての友と一緒に楽しく過ごしていきながらも、いつかこの世界のどこかにいるはずの悪逆非道を尽くしている勇者と勇者殺しの魔王を殺すことを目標としながら魔王軍の幹部達を鍛え上げていた。しかし俺達の前に現れたのはその二人だけではなかった。その勇者と魔王を討伐するという目標の他に俺はもうひとつ大きな夢ができた。それは【創造主神アーシャリア】との約束を果たすことである。彼女は俺がこの世界にやって来たときに神としてこの世界に君臨することを望んだが、この世界に俺が来ることになった原因は【原初の精霊】という俺が地球に帰還する際に現れた精霊とあの【原初の魔王】であるサタンの争いが引き金になったからだという話を聞いてしまった。だからこそ俺としてはサタンを許しがたい存在であった。そのせいでこの世界の人々はサタンの眷属に襲われているからだ。そんなこんながあって、俺の夢の中に出てきたアーシャリナは【魔皇帝】となって俺を手助けしてくれるというのだから俺は彼女にお礼の言葉を贈り彼女の力を受け入れることにした。そのおかげで俺のレベルが上がりステータスがとんでもないことになっていたのは言うまでもない。

俺の【固有武装】には様々な種類がありその中には強力な装備や武器なども沢山存在しているので、魔王軍と協力関係を築いた時にそれらの装備を部下に与えている。部下達にもレベルという概念が存在するので俺は彼らに【経験値共有化】という【魔皇専用加護】を与えていたので、俺の部下たちは皆レベルアップがしやすくなっており今では俺よりずっと強大になっていたりする。まぁそんな感じで俺は魔王の友達と協力して魔王軍を強化し、俺はこの世界に蔓延る勇者の集団を打倒するために動くことを決めた。

そしてこの国を作った後俺は魔王にこう告げた。

「お前の部下たちをもっと強化したい。だからお前も一緒に戦ってくれ」

それに対して魔王はこう言った。

「いいぞ!俺はお前に協力していくって決めてるからな!」

俺のお願いを聞いた魔王はとても喜んでくれたようでとても嬉しかったんだ。それでこの日から俺たちは協力体制を築き魔王軍を強くするべく動き始めることになる。まず最初にやったのはこの世界にいる人間の勇者たちの情報を収集することであった。この世界に転移してきて勇者をしている人間は俺を含めて6人いる。俺を含めた5人は全員地球の出身で同じ日本人であった。

その5人のステータスを確認したところ、一番強いのは【勇者勇者】の勇者を職業としているやつでステータスはオール100を超えておりレベルは200を超えていて称号に【最強】というものが付与されていて称号に付与されている能力が異常に強くて【聖剣使い】という特殊な職業に就いており【聖剣】の力が使えたりするという規格外の化け物のような存在なのである。この男だけは別格すぎて俺は戦う前から勝てないんじゃないかと思ってしまうほどだったよ。他の勇者は【聖騎士】【賢者】【魔剣士】と勇者の中では珍しく魔法に特化したタイプばかりだったからそれほど怖くはなかったんだがな。ただ、勇者勇者だけがあまりにも規格外過ぎて俺は恐怖してしまったんだ。

そして次に俺はこの世界に現れた魔王と手を組んで勇者と敵対することを決意したのだ。

この世界に召喚されてから二年ほど経ったある日のこと。俺の元にこの世界に来てから初めて見る人物が現れることになる。その人物はなんと、この国を作り上げた初代の王にして俺の師匠でもある【魔導王マモン】と魔王である【魔皇サタン】がこの世界に俺を迎えにきたのだ。そのことについて彼らは俺を説得するためにやってきてくれたようだ。俺は彼らの気持ちに感謝しつつもこの世界に留まることはできないと告げる。すると【勇者勇者】が【創造主神】の神託を受けたとかで、【魔神王ベルフェゴール】と手を組むことを宣言してしまう。

俺はそれを聞いた時、どうしてこうなったんだろうと思ったよ。だってこの世界で最強の力を持つ魔王はともかく俺は【勇者勇者】には絶対勝つことができないんだもん。俺達は話し合いの末【魔道士魔王軍四天王】として【十二貴族】たちと共に【十二魔王】の一人としてこの国を守る役目を担うことになりました。俺はこの国の宰相という立場で彼らをサポートしていくことに決める。そうして【勇者勇者】を倒すための仲間探しが始まった。【勇者勇者】は勇者の称号を持つ者がこの世界に現れる度にこの世界に召喚されていた。そして俺達はこの世界で最後の【勇者】と相対することになったのである。

そしてついに俺達の戦いが始まる。

勇者と魔皇帝と十二貴族の魔王軍が遂にぶつかり合う。果たしてどうなるのか!? --------

-------

おまけ

魔王:そういえばさー。アースラースって本名じゃないんだよね?

魔王アースラース:ああ、違うけどどうしたんだ?

魔王:いやまぁなんて名前なんだろーと思って気になってさ

魔王アースラース:えっマジか!そうだな俺達の国の名前はあるんだけどまだ国民達に知らせていないんだよな。俺達の仲間にならない限りこの国に住めない仕組みにしているから仕方がないといえば仕方がないことだ

魔王アースラース:じゃあ今ここで教えちゃおうぜ!!実はな【魔王帝国】って国名にしたんだ。俺の好きなアニメの名前から取ったんだ

魔王:へぇ、意外だね。でもその名前聞いただけで厨ニ感丸出しだね

魔王アースラース:おいやめろ 俺達が勇者との戦いを始めてから既に三日が経っていた。

その間の俺達はと言うと、俺と魔王は魔王城にて戦闘を繰り広げていた。というのも俺の【魔剣】の力を使う為には魔王城の最上階に封印された魔族にしか反応しない扉を開く必要があったからだ。しかし、魔王の力を開放すれば俺は魔王城に封印された扉を破壊できる可能性があった。だからこのタイミングを利用して俺達二人はお互いに全力を出して戦い、そして俺はこの世界に来てしまった際に得た俺だけの特別な力【原初の精霊】との対話を始めていた。

俺がこの世界に転生してきてからは色々と大変だった。【魔道図書館】を作ってその中に大量のスキルを記録したことでレベルを上げる必要がなくなり、更にはスキルの【複製】の応用技によってスキルを覚えられるようになった。俺は【原初の魔王】が遺してくれたスキルを使えるようになったんだ。【複写】というスキルはその名の通り【魔導陣】で覚えられるスキルを自分の魔力を消費しコピーするスキルだ。これにより俺の持つ【魔道書庫】にスキルを記録していき【魔道書庫】のレベルを上げたりスキルのレベルを上げたりしている。

更にはスキル以外にもレベルがあるということも理解できた。【原初の魔王】を倒したことによって手に入れた【原初種スキル】をレベルを上げてみたら、【複写】というスキルが進化して新たに【複製術】というスキルを習得していた。【複写】が【複写】でなくなったというわけだ。俺はそれをスキルレベル最大で取得して、さらにそれをレベル限界まで成長させたので俺は【複製術】の【極位技能】である【複製之主】を使用できるようになっていた。

しかし俺のレベルが高ければ複製することができる数の上限があがるのだが残念なことに俺の今のステータスだと複製可能な数は2が上限となっている。

俺にはもう一つこの世界にやってくる原因になった【原初】というスキルが未だに習得できずにいた。これはレベルが足りないのではなくて条件を満たしていないため習得できないということだ。なので今はこの二つの力を同時に使うことができるような状況ではない為俺も本腰を入れてレベル上げに取り掛かることに決めた。

魔王:魔王であるこの僕がここまで押されるとはね、流石と言っておこうか 魔王が何かを言い終える前に俺の攻撃が迫っていく

「これで終いだ」

俺の手に持つ【真滅の獄炎】と【破滅の聖魔砲剣エクスカリヴァーン】は魔王に向かって放たれ、その攻撃は見事魔王に命中した。

魔王は【固有武装】である巨大な魔杖を構えていた。しかしその構えている武器は既に破壊されてしまっている。何故なら先程俺が魔王の武器を破壊したからである。

俺が持つ武器の二つは神殺しの力を持つ剣と神の権能を行使することのできる槍であった。俺は神界の神殺しの武器を手に入れるために【神界門】の試練に挑戦し【聖龍】を倒そうとしていたのだ。【神刀羅刹神雷】を手に入れてからは俺のレベルも大幅に上がり今ではレベル500を超えていた。俺はそのレベルを活かして俺は【魔皇】の種族レベルの限界であるレベル99999まで上げて【聖魔皇帝】の職業レベル100まで上げることに成功する。【皇帝専用加護】により俺は職業レベルを最大にまで上げた状態ならば魔王が相手だろうと勝てる自信があった。実際その通りに勝ってしまったのだから。だが、魔王を殺さなかったのには理由が有る。それは【魔王帝国】に勇者の軍団が攻めてきた時に魔王には俺のサポートに徹してもらうつもりだったから。だから殺すことはしなかった。

「お前は確かに強かった。だけど俺の方が強かったみたいだよ」

-------

勇者達は【魔神王ベルフェゴール】が作り出した【異次元の牢獄】の中に捕らえられており身動き一つ取れずにいた。

【魔神王ベルフェゴール】の【大罪魔術】は七つの系統に分かれているのであるがその中でも【傲慢大魔皇ベルフェゴール】は大魔王の中でも最強の存在である。そんなベルフェゴールが作り出した結界に閉じ込められてしまえば例え最強の力を持つ勇者であっても抜け出すのは難しいだろう。しかもこの中に入れられれば【全耐性無効】の効果によって外部からのダメージは完全に遮断されてしまうのである。いくら勇者でもダメージを受けないというのはかなりまずい話であろう。

「クソッ!!一体いつまでここに閉じ込めておくつもりなんだ!!いい加減ここから出せ!!」

【魔剣士】勇者はそう言って【勇者剣グラムドライヴ!!】を発動させようとするものの剣に纏わせようとした光属性魔法すら使うことができなくなっていることに気が付き驚く。

他の四人も同じように魔法を使うことができなくなっていたようであった そうこうしてるうちに五人の目の前に一人の男が現れた。彼はかつて魔王に殺された男、そうこの世界の人間でありながらこの世界では無い異世界からこの世界にやってきた男である。この男の名は【勇者魔王】天宮寺 健斗 。そして彼が手に持っていたものは魔王を封印した【原初の魔王】が残した武器の一つである

「な、何でこんな所に!?まさか、貴様の仕業か!?早くここを解け!!」

そう叫ぶ魔導師。

その問いに対して勇者達は【魔剣士】勇者の言葉に反応しない、というよりかは全く耳を傾けていなかったのである。勇者達はその【勇者魔王】を目にすると恐怖を感じ始めていたのだ。それもそのはずである。【勇者魔王】とは勇者の称号を持つものだけが戦うことを許されると言われている化け物のような存在なのだから。

「なぁ君たち、少し話をしよう。この【魔導王マモン】の名にかけて俺の話に答えることができた者だけを外に出すことを約束しよう。もしそれができなかった者は全員この【異空間牢】の中で永遠の時を過ごすことになってしまうけどそれで構わないんだよね?」

【勇者魔王】の【魔剣原核剣ソードマスター】の能力、【異空間の魔城】は範囲内に入ってきたもの全ての能力を強制的に低下させてしまうというもの。この効果は範囲を広げようとすれば広げるほど強力になる。故に勇者達にはもう逃げることはできない

勇者:うっ

【魔道士魔王軍四天王】の一人である魔道士の勇者が答えてしまった 勇者:わ、私は 【魔戦士勇者】勇者も答えてしまった そしてついに【勇者】も【魔騎士勇者】も答えてしまい、この世界に残された【魔王軍四天王】が最後の【勇者】だけになってしまった 魔導士魔王軍四天王最後の一人、その名は【賢者】の【勇者】。彼は魔王軍の中では参謀的な役割を担っていた。その為この中の誰よりも賢くこの【異次元の牢獄】の攻略法を導き出した。

彼は魔王が作り上げた【原初の魔王】を封印している【原初の魔王】が作った扉に辿り着く。しかしそこで扉を壊そうとしたのだがこの【異次元の牢獄】の扉を開けることができないのだと理解し、扉の破壊を諦めて仲間達に情報を伝えた。

「どうやら扉を開く方法はこの中にいる誰かが開ける必要があるようだな」

そう言い残して【賢者】の勇者は他の二人を脱出させる方法を探しに向かった。【勇者】は自分が扉を開く為に扉に触れようとする。しかしその手が扉に触れることはなく空振りする。その光景を見た魔道王の勇者は自分の手を見ながら呟く

勇者:やっぱり触れることができなかったか

魔導王の勇者は諦めきれずに再び扉に手を伸ばすが、今度は触れられるどころか弾かれてしまった 勇者:ダメだったのか、クソッ この勇者の【原初の魔王】によって作られた特殊な鍵、この中には魔王以外に誰も入ることはできなかったのである。つまりこの場にいるものでなければ扉を破壊することは不可能ということになる。そして魔王を封印されているこの部屋は【神域結界】という魔王を守る為に作られた結界で覆われているためこの部屋の外からの干渉は不可能になっていたのである。この部屋の作りは魔王城の地下に存在するため地上の者達はこの部屋に気が付くことはなかった。それに【魔族】が外に出ると自動的に感知するようになっていた為【勇者魔王】もこの部屋に入るまでこの存在に気が付かなかったのである。この事実を知っているのは魔王本人だけであり、その事実は【魔王】にも伝えることはないだろう。

魔道師の勇者が言う

勇者:このままじゃ私達は一生ここにいることに

魔道兵の勇者:それは流石に嫌ですね

魔道騎士の勇者:そうだよ、流石にそれは勘弁願いたいかな

「皆の者がそういうなら仕方あるまい、我が【勇者魔道術式魔法剣】の全力を使ってみるしかないか。我が奥義の全てを開放せよ【聖滅絶剣エクシリオンセイバー】」

【勇者】は全身から膨大な量の魔力を放出すると、それを【原初の魔王】によって与えられた【聖滅の剣エクスカリバー】の柄部分に集中させると、剣先に向けて【聖滅絶剣エクスカリバー】を突き刺した 剣先が突き刺さった部分から【聖魔粒子】が大量に放出され始め、それを浴びた三人の勇者はその身に力が溢れていくのを感じた

勇者:これは凄いな

魔道将軍の勇者:流石です。これならばきっといけますね

魔道王の勇者:ああ、やってやるぞ!!

勇者:いくぜ

「おおー!!!!」

その雄叫びと共に【勇者剣グラムドライヴ!!】を使い【異次元の牢獄】を破壊していく しかし【異次元の牢獄】の耐久値は高くすぐに壊れるようなものではないのだが、それでも徐々にではあるが破壊できていった。

「もう少しだ。みんな頑張ってくれ」

【魔道】の勇者は勇者達が限界を超えて更に威力を上げていこうとしたその時、急に【勇者剣グラムドライブ】の力が落ち始めると同時に体が重くなるのを感じていた

勇者:こ、こんな時に!?なんでだよ!? 魔道将軍と魔導将軍の勇者もその力の低下が始まっていたようで勇者達と同じ状況に陥っており動けなくなってきているようであった

「すまない。私の【聖魔粒子】も残り少なくなってきたのだ」

そう言った魔道軍の勇者の剣には先程まで放出していたはずの魔力が無くなっていたのである 勇者達も自分の剣を確認してみるとその剣に宿っていた魔力がほぼほぼ無くなってしまっており【聖魔粒剣エクスカリバー】を纏わせることすら難しい状態にまで陥っているのである

「くっ、俺のもダメみたいです。でも何とかしてみせます。まだ【魔剣】があるんです。これを使おうと思います」

勇者達の持っている武器は神殺しの力を秘めている武器ばかりである そして勇者達の中で唯一神殺しの力を持っている【勇者】は【勇者魔道王】へと転職したことにより神殺しの武器が扱えるようになった。だがこの武器を使えているということは【勇者】の称号は未だ勇者のままで、称号効果により神殺しの力を持つこの武器を扱えるようになっているということである。

「よし!!俺はもう大丈夫だ」

そういって再び動き出そうとする【勇者】。その動きに合わせて他の勇者達も動き出す

「【勇者】様、今こそ我等四人の力を合わせるときかと思われます。私が【大魔将剣ラグナロク】を発動します。それで扉を破壊するのです!!」

【賢者】はそういうと剣を構える。【勇者魔王】との戦いでも使った剣であり、魔王の持っていた剣でもある

魔道将軍の勇者:俺もそれに乗るぜ!!

魔道王の勇者:任せたぞ!俺達はこの剣に集中しよう

魔道兵の勇者:私は魔法に集中するわ。だから貴方達は【魔騎士勇者】の事をお願い。私はもう体力が残っていないから。

「「「分かった!!」」」

そうして四人は一つの剣のように一心同体となり【勇者剣グラムドライヴ】を起動させる

勇者:俺の命、あんたに預ける

魔道兵の勇者:頼んだよ

魔道将軍の勇者:いくぞぉ 魔導士魔王軍四天王最後の一人、その名は【賢魔導師マモン】のジョブを得た魔道騎士の【勇者】。彼は魔道軍に所属していた時から参謀として様々な策を考えていたがこの世界での戦いでは殆ど役に立たず【賢者】や【勇者】の称号が欲しいと思ってしまっていたのである。しかし今回のことでそんな考えを捨てることにして今はただ【勇者】がこの部屋を開けてくれることを信じることにしたのである。そうしているうちに【勇者】達はそれぞれのスキルの効果を高めていきその準備を完了させたのだった

「これで終わりにする、いくぞ【勇者魔王合体技魔皇撃】!!」

そう叫んだ瞬間【勇者魔王】の必殺技である【勇者魔王剣クロスブレイド】と同じようにして十字状に放たれた巨大な光の斬激は扉を破壊することに成功する

「はぁ、はぁ、や、やったぞ。皆のおかげだよ。本当にありがとう」

「いえ、お礼を言わなければならないのはこちらの方ですよ。ここまで私達を引っ張ってくれたのは紛れもなく【勇者】なんですから」

勇者の肩に手を置く【勇者】に話しかけてくるのは【勇者魔王】を倒したことにより新たに現れた職業【魔導剣士マモン】のジョブを会得し魔道将軍の勇者のジョブを手にした魔導兵の勇者だった

魔道兵の勇者:そうよ、私たちなんて【勇者】の足引っ張っちゃっただけだもの。【勇者】が来てくれなかったら死んでたんだと思う。本当に感謝してるわ

魔導士の勇者:私もだよ、まさか私が魔道騎士になれちゃうとは思わなかったけどね

魔道兵:それは確かに驚いたよね。でも良かったじゃないの

勇者:そうだよ、これからよろしくね。そして改めてありがとな、【魔導王】

こうして五人が協力することにより遂に【異次元の牢獄】を突破することに成功した。だがここから脱出する為には【魔境樹海】という場所に行く必要があり、そこはこの世界に存在する魔物の巣窟となっているらしいのだが【異次元牢内転移陣】という魔道具を使えば一瞬のうちにその場所に移動することが出来るということだそうだ。ちなみにこの場所ではレベルというものは存在しないそうで【魔王】がいると思われる【魔王の間】に近ければ近いほど強くなるそうなのだ。

「じゃあ早速だけど、行ってきなよ。【魔王】が待っているんだろ?この世界の為に頑張ってきなよ。私達もこの世界のどこかで頑張るとするか。またそのうち会えるといいんだけどね」

魔道師の勇者:うん、きっとまたすぐに再会できるはずさ

魔道王の勇者:そうだよ、だって俺達仲間だもんな

「ああ、そうだったな。また会おう。【魔導師】【魔道士】【賢者】そして魔道王の勇者もありがとう。君達がいなければ俺はこの世界にたどり着くこともできなかったかもしれない。それくらい大事な出会いだったと思う。それを忘れないから必ずまたこの場所で、いつか絶対に会いにくるから待っていてくれ」

魔道将軍:はい、楽しみにしていますね

「「「「いっけー!!勇者!!」」」」

その言葉を最後に【勇者】と四人の仲間たちの姿は消えてなくなっていた 魔道の勇者は目を覚ました。するとそこには心配そうな顔をした仲間の顔があった。

魔道将軍の勇者:やっと目が覚めたのか。ずっと眠り続けていたからどうしたのかと思ったぞ そう言うと安堵した様子の魔導師の勇者が近づいてきて手を握ってきた

魔道兵の勇者:全く心配かけさせんじゃねぇっての。まぁ生きててよかったぜ

「みんな。ごめんな。なんかすごく変な夢を見ていてさ。それにしてもあれはなんだ? あんなファンタジーな展開があるわけがないよ。でもあれが本当の出来事だとしたらもしかするのかもしれませんね」

賢者の勇者:あの時【魔】の勇者は何を思っていたんだろう

勇者の呟きに対して魔道の勇者は不思議そうにしていた 魔道将軍の勇者:どういう意味だいそれは

魔道の勇者:ん、いや実はだね。僕たちが【魔境樹海】に行って帰ってきた後のことを話してもいいかな

勇者:おお!そりゃ気になる!!頼むぜ!!魔道の勇者

魔導師の勇者:いいぞ!魔道の勇者!早く教えてくれ

「分かりました、話しましょう。まずは俺達のことについてですが」

そう言った後に俺達は順番に話をしていった。俺は自分のステータスを見ながら自分が覚えている限りのことを全て伝えた。そうすることで何か役に立つのではないかと思っていたのだ。そして【勇者】が魔王を倒した後俺たちのところへ戻ってきたこと、そしてこの世界を救うために戦っているということを。それを最後まで聞いてみんな黙ってしまったのだが最後に賢者の勇者さんが自分の持っている情報を開示した。

賢者の勇者:俺は【魔導将軍】になって新たなスキルを覚えていました

賢者:私は【魔剣士】に転職し【魔刃】と言う新しいスキルを手に入れたわ

賢者:【勇者】も【勇者魔王】になった時に【聖魔剣士】のジョブを手に入れていてね。それと【勇者魔王】の時に得たスキルが進化して新しく【聖魔魔刃】っていうスキルを覚えたみたいなの

勇者:俺のは【魔剣聖剣】っていう【剣聖剣】の進化したやつですね。あと【勇者魔王】の時の力も使えるみたいですよ

「なるほどな。やっぱりお前たちは俺の想像を超えた存在になっていたということか」

魔導将軍の勇者:【勇者魔王】の力ってそんなに凄いものなのか?

「【勇者魔王】は勇者の称号の効果に加え神殺しの力を持つ【勇者魔道王】という上位職への転職を果たしたことにより【勇者王】の固有能力、【聖魔粒子】を使用できるようになっているのです」

魔導将軍の勇者:なんで【魔】の勇者が知っているんだよ。それに【勇者王】ってなんだよ

「これは今となっては分からないのですが【勇者王】がこの世界に現れてすぐのことらしいです。俺は直接その光景を見た訳じゃないんですけど。確か【勇者王】がダンジョンに入っていったという話が伝わっていたんですよ。そしてその翌日にダンジョン内で【勇者王】の死体が見つかったとか何とか」

賢者:え、マジ!?そんな事あるんだ。てか【勇者王】は殺されたの

魔導の勇者:嘘だろ

賢者:そんなことってあり得るんですか

魔道軍の勇者:あり得るだろう、この世界の現状を考えれば。もしかしたら他の勇者の中にいるかもしれないしな

魔道の勇者:でもよ、この世界に来てからのことを考えてみると俺も少し思うことがあるんだ

「ほう、一体何が思い当たるのでしょうか?」

魔導の勇者:それはな、ここの世界は恐らく【異世界召喚された勇者達】によって作られた世界だと思うんだよ

賢者:つまり作られたってことですか

「どうしてそう思うのか聞かせてもらえますか」

魔導の勇者:【魔境樹海】の話が出た時点でおかしいなと思ったんだよ。あそこは俺達のような特別な力を持っていなければ攻略できないはずの場所だからだ。それに【勇者】が一人で【魔境樹海】に入ったことが不自然に思えるしな

魔導将軍の勇者:それは確かに

勇者:でも確かにそうかも。【魔境樹海】は普通の勇者なら絶対にクリア不可能な所だからね

「確かにそうですね。でもそれが何故俺が【勇者王】だということに繋がるんですか。【魔王軍四天王】を倒す為に俺が呼び出されたのではないですか」

賢者:【魔境樹海】を一人で抜けることのできる【勇者】だからこそ魔王討伐を任せた。そういうことでしょう

「ふむ、確かに一理ありますね。では他になにかないですか」

魔道軍の勇者;魔王は倒されたはずだよな。ということはもしかして魔王はまだどこかで生きているのかもしれないな

勇者:なにそれ、怖っ

魔道軍の勇者:あくまで可能性だよ。でも【勇者魔王】が倒した魔王は間違いなく魔王本人だよな

勇者:ああ、間違いないと思うよ。【魔王城】で会った魔王だしね 勇者の言葉で魔道軍の勇者は確信してしまった。【魔王】がまだこの世界を滅ぼそうとしていることを。それもまだ復活できていないのかもしれないが。だがそれを知っていながらこの世界に【魔】の勇者が呼ばれた理由がわからなかった

魔道の勇者:でも【魔境樹海】を攻略したことで強くなれたわけだろ。これからも【勇者】が魔王を倒した方がいいんじゃないのか

魔道の勇者は【勇者】の職業を持つ者に全ての望みを託して【勇者魔王】を倒した方がこの世界の為になるんじゃないかと本気で思ったのだが。【勇者】の職業を持つものにはそれだけ強い意志が宿っていたのだ 魔導兵の勇者:【勇者】はこの先【勇者】のままなのだろうか

勇者:わからない、だけどもしかするとまた【勇者】がこの世界に現れるような予感がするよ

魔道将軍の勇者:どういうことだ?

勇者:いや実はさ、【勇者魔王】に殺される寸前にね【勇者】の声が聞こえた気がしたんだ。その時【勇者魔王】が言っていたんだけど【魔】と【闇】と【勇者】の魂は共鳴しているらしく、この三つが揃ったときに【魔王】は完全復活すると言っていたんだ

賢者:じゃあもしかすると近いうちにまた現れるかもしれませんね。でも【勇者】もいずれは限界が来るはず。その対策もしないとダメかもしれませんね

賢者:あーあ、早く俺も強くなりたいなぁ。この世界に来てからずっとレベルを上げようと思って頑張ってきたのになぁ

勇者:それは仕方ないだろ。俺は元々この世界で暮らしていた人なんだからさ

「まぁまぁ。そんなに気を落としていないで。それより俺はもっと君たちと仲良くしたい。みんなとは長い付き合いになるような気がするから」

魔道将軍の勇者:はは、嬉しいこと言ってくれるじゃないか

勇者:そうだね、俺達だってそう思っているよ。魔道将軍の勇者、君だってきっといつか俺たちの仲間になれるさ

勇者と魔導の勇者、そして賢者と魔道の勇者はお互いに手を出し合って誓い合うように固く握手をした 勇者:とりあえず今は【勇者魔王】について情報を集めてみないか?なにかわかることがあるかもしれねぇ

勇者:そうだね、この前戦った時はそこまで詳しく話さなかったからね。魔道の勇者は何か知らないの?

魔道の勇者:うぅん。実はよくわかってなくてさ。あいつらはなんか自分のことは言わないしさ。ただ一つ分かることといえばあいつらがこの世界をどうにかしようとしているっていうのは分かったぜ

勇者:そうなのか。でもどうするんだよ

勇者は少し考えて一つの結論に至った 勇者:まぁ俺達がなんとかしてやればいいんだよ

「まぁ【勇者魔王】に関しては今のところ俺達にできることはなさそうですね。それに魔王軍は俺に任せて欲しいし。なので勇者は残りの魔王軍をお願いしますね」

魔導将軍の勇者:おいおい!魔王軍が攻めてきてるって言うのにのんきに話をしてる場合か!早くみんなを集めろって!!

「え、今魔王が来てるんですか」

魔導将軍の勇者:当たり前だろ!お前は俺に何をさせる気だったんだよ!

「えっと。そういえば俺魔王を倒しに行く途中で目が覚めたんですけど。それからは【勇者魔王】が倒してくれて。それで【勇者】の称号に新たな力が追加されたんです」

魔導将軍の勇者:え、マジで。それってどういう力なんだ

「確か【魔剣士】が【剣王剣聖】、【聖騎士】が【聖魔魔剣士】、そして【魔道王】の称号に【魔刃聖魔刃】が追加されました。その三つの力は今までのどのスキルよりも凄まじいものになっています」

魔導の勇者:なんとまぁ。それなら俺達は必要ないか

魔導の勇者:それにしてもそれだけの力をたった一人で手にいれたのか、やっぱり凄いな

勇者:うん、確かに

「いえ、俺の力ではありません。全て【勇者魔王】が力を貸してくれたんです。それに俺は一人の力で勝てたわけじゃない。俺以外のみんなの協力があったおかげですよ」

勇者:そっか、それなら次はみんなで力を合わせてこの世界を救おう。俺達はもう仲間みたいなもんだろ?

賢者:確かにね、【魔境樹海】の件は本当に申し訳なかったと思っている 魔導の勇者:あれは完全に俺が悪かったんだ。まさかあんな事になるなんて思ってもいなかったんだ

「ははは。確かにあのダンジョンは異常すぎるくらいの強さでしたしね。まぁ【魔王軍四天王】を倒したのなら【勇者】の称号を持つ者は今後【勇者】のままという可能性も高くなりますね。ですがそうなったら今度は俺があなた達の敵としてこの世界に呼ばれるのかもしれないですよ」

賢者:あ、確かに

賢者は少し残念な顔をしていた。賢者にとって勇者とはライバルであり共に切瑳琢磨していくべき存在であると思っていたのだ。だがそれは自分が勝手に思っているだけに過ぎないという事を思い知らされてしまったのだ 勇者:でも俺は【勇者】の方が戦いやすいかも。なんというかこう。上手く言えないんだけど勇者って感じしないよね

賢者:ははは、確かに。でもその気持ちはよくわかる。俺もそう思うし。【勇者】はなんとなく俺には合わないかな

「そうですか、それではもし俺と戦うことになってもお互い全力でいきましょうね。俺も本気でいかせていただきますから」

賢者:え!?もしかして本当戦うの!?俺勇者と戦いたくないんだけど

勇者:大丈夫だよ。この【魔王】様がいる限り勇者には絶対負けることはあり得ない

賢者:はは、それもそうか。よしわかった、それじゃあ俺も全開で相手になろう 勇者の言葉で【勇者魔王】に対する警戒心が一気に解けていく。そして三人は再び固く手を握り合うとその固い絆を確認したのであった。そしてこの日をきっかけに【勇者】たちは【勇者魔王】との決戦に備えて準備を進めていったのである

ー【勇者魔王】が仲間になりたそうに見ています。仲間にしてあげますか?ーー 名前:レイ(人間)男

(20歳)

種族:人族

体力:502/505 +100

(レベル40相当×10倍アップ+200補正=1000補正+2000補正)

攻撃:801+132

防御:759+164

魔攻:793

魔防:786

速さ:867運:921

魅力:884

状態:通常

耐性:火、水、風、土、雷、氷、光、闇、麻痺、眠り、石化、毒、呪い

称号:《無謀なる者》、《武の心得のある者の強き想い》、《生ける屍》、《龍殺し》、《獣殺の担い手》、《精霊使いの素質あり》、《契約主》、《神界への扉を開きし者》、《死地からの生還者》、《悪魔の討伐者》、《魔王軍討伐成功者》、《神の裁きを下された咎人》、《魔を極めし者に近づきし人》 ーーーーーー

「あ、そういえばさっき俺【勇者】に殺されかけて死にかけたんですよ。それで【魔境樹海】から【勇者魔王】に助けられまして。そしてその【勇者魔王】に【魔剣】の使い方とか色々教えてもらいましたよ。だから俺の実力も少しは上がっているはずなんですけど、どうですか?【勇者魔王】に認めてもらえるような成長はできていましたかね」

魔道将軍の勇者:【魔】の称号を持つ者が認めただって!?しかもそれをこの短期間でか

勇者:はっはっは、こいつはすげぇ。【魔】の称号を持つものに認められるということは【魔】の職業を持つものにとっては名誉なことなんだよ

魔導将軍の勇者:うわ、なんか嫌味に聞こえる

「へぇ。【勇者魔王】はそこまでのものだったんですね。ところで【勇者魔王】の居場所ってわかりません?」

魔道将軍の勇者:ああ悪い。さすがの【魔魔王】も魔王城に居たみたいだけどその魔王城は崩壊してしまったらしい

「あーそうですか。そうですよね。さてどうしたものでしょうか」

賢者:んー、じゃあさ俺に考えがあるんだが

「はい、どうぞ賢者さんの考えを聞かせてください」

賢者は顎に手を当てながらしばらく考えてある答えに至った

魔導の勇者:おっ!何か良い案でもあるのか?

「ふむ、これはちょっと面白いかもしれませんね。でもまぁ【魔境樹海】で試すよりこっちの方がいいか。それじゃあとりあえずその方法を実行に移してみようか」

そして【勇者魔王】はこの世界へとやってきたのであった

魔導の勇者:それで結局どんな方法でいくことにしたんだよ

「まぁ、それは実際に見てもらった方がわかりやすいと思います。なのでまずは移動しましょう」

賢者:了解 賢者はレイに言われるがままについていった。そして辿り着いた先は魔の森の更に奥に存在するダンジョンの入り口前であった。そこには以前訪れたことのあるダンジョンがそびえ立っている

魔道将軍の勇者:うおおお!!懐かしいな!!まさかここに戻ってくることになるとは思わなかったぜ

勇者:そうだね。俺達がこの世界に召喚されてから随分と経つね

賢者:なんかあっという間だったような気がするな

魔導の勇者:ははは、でも楽しかっただろ?

勇者:そうだね、みんなありがとう

勇者達は【魔導魔王】によって救われたことをとても感謝しているようだ。その言葉にはどこか重みを感じる 魔導の勇者:よし、そんじゃ早速入ろうぜ!

「えっと【勇者魔王】が来ないんですが。どうしますか?」

魔導の勇者:お、そうだった

勇者:もう、早くしてよ

賢者:【魔魔王】様、待っていますよ

【勇者魔王】:はいはーい。いま行きまーす

するとどこからかそんな声が聞こえてきた 勇者:今、何か変な音しなかったか?

賢者:え、何が

魔導の勇者:おい、これまさか

「ええ。【魔境樹海】に潜っていた時に偶然手に入れたスキルがあります。この【空間転移】を使えば簡単に魔の大陸へ行くことができるというわけですよ」

勇者:マジか!!すげーじゃん

魔道将軍の勇者:お前、やっぱりとんでもない存在だよな

賢者:本当に助かった、この恩はいつか必ず返すよ

「いえ、俺こそみんなに命を救ってもらいました。それにまだ俺はこれからの【勇者】との戦いに備えなくてはならないのです。まだまだ力不足だと感じています。ですので今回のことは気にしないでください。それでは【魔境】へ向かいますか。ちなみに【勇者魔王】も一緒に連れて行っていいですか」

魔道の勇者:もちろんだ

勇者:俺達は仲間みたいなものだろ?

「はい。そうですね」

賢者:そうそう、もっと俺達を頼ってくれよ

「それでは改めて、よろしくお願いいたします」

こうしてレイ一行は魔の大陸へと向かうのだった。

そして【勇者魔王】を連れて魔の大陸に到着したレイは目の前に広がる景色を見て愕然とした。何故なら魔の大地は至る所が荒れ果てていたからだ。

【勇者魔王】は辺りを見渡してから口を開いた

「なんだここは。まるで【魔王軍四天王】が暴れた時のような有様じゃないか」

勇者:まさか【魔王】まで現れてしまったなんて

賢者:嘘だろう、【魔王軍四天王】は俺が倒したんだ

魔導の勇者:まさかここまで酷いとは思っていなかった。この光景を見る限り恐らくこの魔の大地に住む魔物は全て殺された後だと思う。だがどうしてこんな事になってしまったんだ?一体ここで何をやったっていうんだよ

「【勇者魔王】、ここって元々どういう土地なのか知ってますか」

【勇者魔王】:あーごめんね、実はこの世界にくる前からあまり記憶がないんだよね

「はは、そうでしたか。そういえばこの魔の大地で一体どんな戦いが行われたのかもわからないんですよね。俺も全く覚えていないんです。でも何故か凄く強いやつと戦っていたという感覚だけはあって。多分その相手と戦ったことで俺は【魔境樹海】に行くことができたと思うんですけど」

魔道の勇者:そうなのか、じゃあこの荒れ果てている状態を作った【魔王】の力を封印したとかかな

勇者:そうかも。そういえば魔王城の跡地に【大罪の遺跡】が出来たらしいけど、もしかしたらそこに行けば【勇者】の【聖武具】が眠っているかもね

「そうかもしれないですね。【勇者】の称号を得たのに【魔剣】しか使えないし。きっと俺に足りなかったものがそこにあるんでしょう。ただ【魔王軍四天王】がいた場所にいきなり入るというのはリスクが大きいし、とりあえず【魔王城】跡地に向かいますか。もし何かしらの反応があったらすぐに【魔境樹海】に戻りますし」

勇者:うん、そうした方がいいね

【勇者魔王】:そうだな

魔導の勇者:俺もそれで構わない

賢者:よし、そうと決まれば早速向かおうぜ

「【魔境】にいた時の感じだと、この【魔境樹海】のさらに地下深くにダンジョンが存在しているんです。そのダンジョンをクリアすることで次のステージへ進めるようなんですけど。その先が気になりませんか?だから【魔族領域】へ行くのはまた次の機会ということでどうでしょうか?」

勇者:俺は全然問題無いぞ

賢者:ああ。俺も同じだ

【勇者魔王】:俺も別に構わんぞ こうして方針が決定したところで魔の大陸の地下へ向かうための準備を整えた

「【魔道具収納袋】を起動します。準備はよろしいでしょうか」

賢者:いつでもいけるぜ

勇者:大丈夫だ

【勇者魔王】:よし、こっちもいいぞ

「ではいきますよ。魔の大陸【深淵】の魔獣よ我に集まれ【魔道具吸収】」

するとレイ達の体が淡い緑色の光に包まれていった

魔導の勇者:おお!!なにか力がみなぎってくるぜ!!

賢者:本当だ。これはすごいな

「さすがに俺一人じゃ全員分の【魔石】を回収することはできないからな。これで一気に戦力が整っていくはずだ。とりあえずまずは【魔王軍四天王】を倒したあの場所に行きましょうか」

勇者:ああ

魔道の勇者:よし、いこう

賢者:楽しみすぎるな そしてレイ達が【魔王】の力を手に入れた場所で【魔王】の力を手に入れるべく再び足を踏み入れたのだった 【魔境樹海】のさらに下へと潜り込んだ【勇者】一行 【魔導の勇者】は【魔王】の魔力の気配を感じた

「この下に誰かいるみたい。でも様子がおかしい」

「ええ、確かに変ですね。何というべきか違和感があるような」

「あぁ。どう考えても人間じゃないぞあれは」

「うん、魔素を濃く感じる」

「どうしますか?様子を見に行ってみますか?」

「でも魔の大陸に入ってからは【勇者】は俺達を殺しにかかるつもりは無いんじゃないかって話だったろ?なら様子だけでも確認しよう」

勇者:そうですね

魔導の勇者:まぁ、とりあえず進んでみようぜ

そして勇者達は歩みを進めた。その先に見えたものはあまりにも信じられないものだった 魔導の勇者:な、なんだよ、これは

勇者:おいおい冗談きついぜ。なんだよあいつ

「おい、ありゃ何だよ。魔族なのか?」

賢者:いやいやまさか。なんでここに【勇者】がいるんだよ。しかも二人も

勇者:これは、ちょっとまずい状況になったんじゃ

魔導の勇者:落ち着け。まずは状況を整理する必要があるな

「勇者様、ひとまず俺に考えがあります」

勇者:わかった

賢者:頼むぜ【魔道勇者】

「ええ、それじゃあ作戦を説明させてもらいますね」

【勇者魔王】はレイの話を聞き終えると口を開いた

「なるほどね。それで俺はどこにいれば良いんだ?できれば近くで見たいんだけど」

「それは勿論【魔導勇者】と一緒に行動して貰います。それと、ここから先はかなり危険になる可能性があります。【勇者】はできるだけ戦わず、俺のサポートに徹してください」

勇者:それは【勇者魔王】も同じだと思うが。というより【勇者】一人でも勝てるだろう?

賢者:【魔導勇者】はどうするんだよ

「俺は俺でなんとかしますよ。最悪、死ぬことも覚悟しています。【勇者】にはなるべく怪我をして欲しくないので。それでは向かいましょうか。まずはあの二人がどんな戦いをするのか、しっかりと見極めないとな」

こうしてレイ達は慎重に二人の元へ向かった 【魔道勇者】と【勇者魔王】と合流したレイ達は魔の森の最奥部に存在する【勇者軍四天王】と戦った地点にやってきた。そこはかつて【魔王軍四天王】と【勇者】の戦いが行われた場所で現在は見る影もなく荒れ果てていた。

そんな荒れ果てた場所に立っているのは【魔道勇者】ともう一人の男。見た目は普通の人間に見えるのだが、明らかに纏っている雰囲気は常人のそれではなかった。それによく見ると男の体はところどころが変色しており、体からは魔のオーラを溢れ出していた。おそらくこの男は人間ではない。そう確信できるだけの力を持っているように感じた。

そんな時、突如として異変が起こった。今まで荒れ果てていたこの場所が突然静まり返り、まるで世界が凍りついたかのように静かになった。そんな不気味な光景の中、【勇者魔王】はゆっくりと【魔道勇者】の元まで近づいて行った

「おい、これってもしかしてお前の仲間か」

「あ、ああ」

「それって魔の種族だよな。俺達と同じように。でもお前の仲間なんだろ?なら助ける方法はあるはずだ」

「あ、あぁ。一応、その方法はある。でも正直俺にもこの状態をどうにかする方法はよくわかってないんだ。そもそも魔の属性を持つ生物は魔人族だけなんだ」

「そうなのか、じゃあそいつらは魔族でいいのか」

「ま、魔族でいい」

【勇者魔王】の問いに対して動揺しながらも返事をしている【魔道勇者】は心の中で考えていた。どうして【勇者】がここにいて、しかも二人もいるのか。いやそれよりもこの状況が異常だ。一体何が起きているのか理解が追い付かない。【勇者】はこの世界を崩壊させるために動いているはずだ。だからこそ俺はこの世界に転生した。それがどういうことかわからないがこの二人はこの世界で暴れているわけでもないらしい。だが魔族は魔族。ならば滅ぼす必要がある。なのに【勇者魔王】がこの場に現れた。勇者:一体どういう事ですか?

魔導の勇者:さっぱりわかんねぇな。でも一つわかることは

勇者:俺達に敵対するつもりが無いってことですか?

魔導の勇者:そうだ。俺達にとって魔の大陸はいわば敵地でしかないからな。その敵を味方にしたいと考えている以上俺も戦うつもりはない

賢者:ははは、やっぱりこの世界のやつらも魔族とは戦いたくないって思ってるのか。こりゃ面白いな

魔導の勇者:そうそう。特に【魔道勇者】なんかは【大罪遺跡】を造れるほどの力を持っていやがる。敵対しなくて正解だぜ

賢者:そうだよ、こいつは【勇者】の力を【魔剣】にした張本人だからな

「お、お前たち何を話している!?」

【魔導勇者】が何かに気づいたらしく急に声を上げた。そして目の前にいる【勇者魔王】に剣を向けた

「俺のことを、俺のことをなぜそこまで知っている。いったいなにが目的だ」

勇者:え、【勇者魔王】のことを知っているんですか?

「当たり前だ、俺が知らないはずないだろう。だって、ずっと見ていたんだからな」

「ん、な、なんだ。体が重い」【勇者魔王】は何かに気づき自分の体に目線を移した

賢者:ど、どうしたんだ【勇者魔王】の奴いきなりうずくまって、大丈夫かよ

「ぐぅ、ああ、熱い、痛い、苦しい」

「くそっ、なんだよ、なんだよその力は!!」

【魔道勇者】の額に汗が流れ始めた。それと同時に【勇者魔王】は苦しみ始めていた。その光景を見て【勇者】は自分の体を抱きしめながら怯えだした 勇者:あ、ああ、どうなっている。【勇者魔王】は無事なのか

賢者:ま、まずいぜ、どうしたらいいんだ?こんなの初めてだぜ

「【魔道勇者】は早く治療してあげてください。その間に俺はあの二人を説得してきます」

勇者:え、ちょ、待ってください。【魔道勇者】の治療なんてどうやってやるのか。【魔石】がないのにどうすれば。それにあなたに出来るとは思えないんですけど。というより俺達が信用できない

賢者:そうそう。俺たちが信じられると思ってるのか

「大丈夫ですよ。すぐに終わらせてくるので【勇者魔王】を頼みますね」

「いやいやいや。俺達のことを誰だと思っているんだ。勇者の力を持った人間が何人も集まっている集団が簡単に納得できると思うな」

勇者:いや、ちょっと、ちょっと、本当に【勇者魔王】は大丈夫なんですか

「問題ありませんよ。それよりもお願いしますね」

そしてレイは【勇者魔王】に向かって【勇者の祝福】を使用した。するとレイの手が光を放ち始め、【勇者魔王】を優しく包み込んだ

勇者:これは

「安心していいですよ。少しばかり痛みを取り除いただけです。それより早く行ってきますね」

レイはその場から離れると再び【勇者魔王】の元へ戻った

「さてと、あの二人にはとりあえず俺達のことを話しますか。それで【勇者魔王】が回復してから俺が説得してみます」

「そうしてくれるとありがたいが。あんたが言うなら任せるぜ」

「はい、それでまずは名前を教えてくれませんか」

「俺か?【勇者魔王】だけど」

「わかりました【勇者魔王】。それであなたの本当の名前は」

勇者:な、名前が二つ。それにこの反応。【魔道勇者】の言っていたことが本当なのか?だとしたらまずい

「いや、その名前はやめとこうぜ。俺の名前は、俺だけのものだからな」

「そうですね。それでは改めて自己紹介をさせていただきましょう。俺はレイと言います」

賢者:な、なんなんだこいつ

「俺は魔王軍四天王が一人【魔王】様の右腕。【魔王四天王】の【魔道勇者】様だ」

賢者:え、なに言ってんだこいつは

勇者:えええええええ、四天王ってなんだよそれ。聞いたこと無いぞそんなの

「俺が言った通りだろ?【魔道勇者】は【勇者】であり【魔王四天王】でもあるんだ。【勇者】として魔王軍と戦う【勇者】、それが【魔道勇者】」

勇者:【魔導勇者】が四天王?

魔導の勇者:おいおいおいおい。嘘をつくんじゃねえぜ

「【魔道勇者】は【魔王四天王】の一人【勇者魔王】である」

勇者:あ、ああああ

賢者:おいおいおい。マジでどういうことだ。こいつも【勇者】だってか

「俺達は【勇者】の力と知識を共有している存在なんだ」

賢者:【勇者魔王】の話はもう終わりで良いよな。で、次はお前の話だよ

「はい、そうですね。じゃあ俺達の話をさせてもらいましょうか」

「おう、頼むぜ」

こうして俺は自分が体験したこと。それに魔王軍と人類との戦いについて【勇者魔王】と賢者たちに話を始めた。

賢者:なるほど、そういうことがあったのか

勇者:魔王軍は人類の敵

賢者:それじゃお前が魔王軍の四天王ってのも、その【魔剣】っていうのが魔王軍の幹部だったのも全部事実なのか

勇者:じゃあそもどうして【魔剣】がここに?そもそも【魔道勇者】はどこからきた?まさか最初からここに居たとか

賢者:それはあり得るかもな

「残念ですが違う。確かに【魔剣】の人格は俺が作り出したものだったが、俺の肉体はこの世界に存在していたんだ」

勇者:どういうことですか?【魔道勇者】は元からここに存在していて。【魔剣】の体を持っていた?

「あぁ。俺は一度死んでいる」

賢者:死んでいて生きている。いや違うか

勇者:この世界にはそういうことが出来るんですか?

「さぁ、どうだろうな。でも俺の場合は死んだ後で意識があった」

賢者:つまり転生ってやつか?

勇者:なにそれ

賢者:あぁ、異世界転生のことだよ。最近流行ってんだろう。俺も読んでるんだぜ

「その言い方じゃ俺が【勇者】みたいじゃないか。ただの普通の日本人だ」

賢者:いやいや、この世界に来ている時点で普通じゃないだろ。でも、転生したなら元の世界での記憶が残っているのか?

「もちろんある」

勇者:じゃあその体を使って好き勝手してたんですか。許せない。その男は今どこにいるんですか

「え、いやいや、俺は別に好きで転生したわけじゃないからな。むしろ俺が聞きたいくらいなんだが、まぁ俺の世界にいたはずだ」

賢者:なんで言い切れないんだよ。自分のことだろ?覚えてないってことは無いだろ。それに【勇者】に恨みでもあったのか?でもなんのために

「ま、まぁ色々とあるんだ」

賢者:は?どういうこと?意味わかんねぇ

「ま、まぁとにかく。この話は終わりだ。【勇者魔王】の方はどんな具合だ?」

賢者:ん、ああそういえば。あいつの傷も治ったようだしそろそろ行くぜ。またな【勇者魔王】。次会うときは容赦しない

勇者:え、えぇえええ、ちょ、え、えええええええ 賢者の言葉と共に【勇者魔王】の体は一瞬にして霧散した

「えっと。結局どうなったんだ」

俺はその場にへたり込みながらも【魔剣】に質問を投げかけた

「なに。俺様が力を貸せばあれぐらい簡単に倒せたのさ」

勇者:なに、今の、消えたよね。なんで消えて。え、これどういう事

「なに慌てふためいてるんだか、全く仕方の無い奴らだな」

「ま、【魔剣】様の力を持ってしても倒すことは出来なかった訳だね。勇者君たち弱いよねー」

「なんだと。もう一度俺様の偉大さを理解させる必要がありそうだな」

【魔剣】は不機嫌そうな声を上げつつ地面に突き刺さっていた。そしてゆっくりと引き抜かれた【魔剣】からは禍々しい力を感じ取ることができた

勇者:いや、え、待ってくれよ。ちょっと状況を整理したい。

賢者:そうだな、整理しよう。まずは【魔導勇者】のことから教えてもらおうかな

勇者:ああ。【魔導勇者】は元は【勇者】であり。その知識を共有することで強くなっていたんだね

賢者:それなのに俺達と戦った時は【勇者魔王】の姿にはならず【魔道勇者】のまま戦い続けたということだね

「【勇者魔王】を俺が【勇者魔王】にした。だからこそ俺が【勇者魔王】になることは出来ない」

勇者:いやだから【魔導勇者】ってなんなんすか?その【魔剣】が関係しているのか。それにあの二人はどこ行った?

賢者:勇者君は本当に混乱中なのか。それとあの二人のことは心配する必要はない。なぜならもうここにはいないからね

勇者:は、え、いや、待てよ。なにいっているんだ。そんな馬鹿なことがあるはずがない。そんな簡単に死ぬような人間じゃ

「そうか、貴様には話していなかったな。【勇者魔王】が殺されたときの話を」

「【魔道勇者】が俺達の仲間を裏切り、殺したとき。俺達の中に【勇者魔王】は殺されてしまった。そう認識されていた。そうすることであの【魔剣】を封じることはできたんだけど。まさか【魔剣】に殺されるとは思ってなかったよ。いや、俺が油断していたのかもしれない」

勇者:そんな

「俺様は何度も警告をしていたのだぞ。お前達が気づけば回避できていた問題だ」

勇者:うぐ

賢者:でも今は【魔剣】のことについて知りたいかな。あの二人が死んだって言うのは事実か?それとどうやって殺されたんだ。【魔導勇者】が俺達と戦わず、俺達と行動を共にしている理由と、そもそもなぜお前はこの世界にきた?

勇者:俺の疑問はそれだ。そもそも、どうしてお前は俺と一緒に行動する道を選んだ?なにも俺なんかよりも強い奴は他にもたくさんいるはずだ。それこそこの世界最強なんて言われている男がいるじゃないか。【勇者】は他にもいるってことだろ?それにお前なら他の世界へ行くことも簡単なはずだ。どうして

「あぁそれは。俺の魂はこの世界の【勇者】と【魔道勇者】が作り出したものだからな。それに俺は【勇者魔王】の魂に惚れたんだ。俺が認めた唯一の男の魂にな」

賢者:なるほど。それで?俺達のことは?

「まぁいいだろう。俺はお前たちのことを気に入っているんだ。少しばかりサービスだ」

賢者:そう、か

勇者:それなら良かったよ

「それで俺はお前たちに頼みがある」

勇者:頼み?

賢者:俺達にできることなら

「簡単だ。俺はこれからこの世界を旅することになる。その間は勇者、お前の肉体を貸して欲しいんだ」

賢者:は?どういう意味だ?

「俺は元々別の人間の体を乗っ取って活動していたんだ。俺の世界じゃそれを【憑依転生】と呼んでた」

勇者:【憑依転生】って。それならなんで今になって?

「その体の持ち主はもう死んでしまったからだよ」

勇者:死んだ。じゃあ今その体にいるのは?もしかして

「ああ、【勇者魔王】を殺した奴さ」

勇者:え、あ、え、いや。どういうことだ?死んだ奴に乗り移ったって。じゃあその【勇者魔王】の死体は?どこにある?

「【勇者魔王】の死体は俺が持っている」

勇者:持ってるって。それじゃあ、そいつは一体?

「お前達の味方さ。ただそいつと話をするためには俺に力を借りる必要があるんだ」

賢者:なにを言っているんだか。まぁわかった。そういうことなら協力しよう

勇者:でもそれだと【魔剣】もそいつも、いなくなってしまうんじゃないのか?【勇者魔王】が【魔剣】を倒すつもりなんだろう?そうなると【魔剣】だっていなくなることになる

「安心しろ、【魔剣】はまだしばらく俺様の中で生き続ける。そしていずれ俺様の力を解放できる時が来れば、また【勇者魔王】に戦いを挑むだけだ」

勇者:いや、そういうことじゃなくて。でもまぁいいか。その体の持ち主のことは知らないけど、俺達は構わない。【魔剣】はどうだ?その、この世界は

「構わん。元々俺は暇を持て余しておったんだ。【魔剣】の力を開放するまではこの世界を見て回るのもいいだろう」

賢者:決まりだな。それじゃあ、俺は一度帰るとするよ。あ、そういえば俺って【賢者】だったな。よし、勇者、お前も一旦帰ってこい

勇者:了解。でもどうやって戻ればいいのかな

「そうだな。それじゃあ今から俺の力を解放してやるから目を閉じていろ」

賢者:じゃあ俺は一度宿に戻っておくぜ。また明日の晩にでも来ることにする

勇者:じゃあ俺はとりあえず家に帰ろうかな。今日中に荷物とかまとめたいし

「ふむ、俺様の体もあることだし、その必要はないがな」

勇者:じゃあ、【魔剣】。頼むよ

「あぁ。【勇者召喚】【帰還】」

俺が【魔剣】の能力を行使して元の世界に【勇者】を呼び戻すと、彼は自分の体を確かめるように手を握っていた

勇者:あれ、俺の手だ

「そうだな、この体は元に戻った。では次は【魔王城】に戻るぞ」

勇者:【魔王城】?なんで

「この世界に用事が済んだからな。後は元の世界で色々と準備をしてこようと思ってな」

勇者:そっか、そうだね。俺も帰らなくちゃ

賢者:まてまてまてまて、勇者。お前はここに残ってくれ

勇者:賢者、何言ってんだよ。俺も戻るんだ。【魔剣】も早く行こうぜ。色々と聞きたいこともあるしな

「それもそうか。だが残念ながら俺はここから出ることは出来ないんだ」

賢者:どうしたんだよ急にそんな事言い出して

「俺はここの魔力を使って生きていると言ったはずだ」

賢者:そういえば聞いたような

「その証拠を見せないといけないようだ」

というと突然目の前の景色が変わった。そこは見覚えのある場所であった

勇者:ここは俺が賢者と出会う前に住んでいた町だ。なんでここに

「これが俺の力の一つだ。俺の意識は【魔剣】の中に存在する。つまり今の俺にはあらゆるものを自由自在に操ることができる」

「例えばこの空間と外の時間を入れ替えたり。俺が許可すればお前たちをこの場に閉じ込めることだってできる。もっとも今の俺には出来ないんだがな」

賢者:な、なるほど

勇者:それって俺達の力を使えばこの世界を滅ぼすことも可能ということか?

「そうだな。俺が全力を出せば出来るだろう」

勇者:マジか

「そうだ。俺は【勇者】を殺すことができる。お前達のような人間には絶対にできない力を持っている。そんな俺は魔王と呼ばれているんだ。その意味は分かるな?」

勇者:え、それってもしかして魔王の本当の目的って

「そう、俺は世界を滅ぼそうとしていた。この世界を」

勇者:ちょっ、ええええええ

賢者:えぇえええええええええええええ 【魔道勇者】から真実を聞き出した俺たちは急いで街へと戻ったのだった。しかし街の中は既に騒がしくなっており、あちこちを兵士が巡回していた。その中をかき分けてギルドの中に入ったのだが既に人が多く集まっていたのだ。一体これはどういうことだ?

賢者:まさか【勇者魔王】が死んだのが広まったのか?

「恐らくな。それにこの感じはそれだけじゃない。俺達が倒した魔物の大群が発生したらしいな」

勇者:なんでそれを先に言わなかったんだよ!ってそんなことは後回しだ。すぐにこの街を離れるんだ。このままだと俺達が疑われちまうだろ

「いや、俺達の目的地はここだ。それにお前たちと一緒に居た方が安全だろう」

勇者:なにいってんだ?

「おい貴様達。何をしている」そこに現れたのは兵士の中でも偉い人だった

「貴様は確か。【勇者】ではないか」

「ああ、そうだよ。だからなんだ」

「【魔導勇者】様はどこにいる。それと、そこの男はいったい誰だ」

賢者:【勇者魔王】は俺達が殺した。そして俺の名は【魔剣王サタン】。この男こそ【勇者魔王】だ。【勇者】を殺したのはこの俺だ。それとそいつは仲間であり、俺と同じ【勇者魔王】の力を持つ存在だ

勇者:ちょっとまってよ!!そんな話いきなりされても信じれるわけが

「ほう、それは興味深い」勇者:なっ!?

「どうだ?俺と一緒にこの世界を支配しないか?【魔道勇者】と二人で世界を我がものにする。面白いとは思わないかい?勇者」

勇者:いやいやいや。待てって、そもそも【魔道勇者】はどうするつもりなんだよ。あんたの仲間だったろ?それに、もし仮にそれが本当なら、どうしてこんなところにいるんだよ

「確かにあいつが死んだことは間違いがない。それにあの時は奴の肉体を使っていたからな。奴の意識はこの世にいないだろう」

勇者:ならなんで

「奴を死に追いやったのは、俺だよ。俺はあの時奴の体を乗っとったまま【勇者魔王】の力を発現させてしまった。それによって奴の魂は消滅してしまったんだ」

勇者:どういうこと?

「簡単に言うと、俺は肉体だけでなく魂ごと乗り移ってしまったんだ。そうして、俺の中で奴の魂が目覚めた時。俺の中の力が覚醒してしまったんだ」

賢者:それで

「ああそうだ。この力は俺にしかない特別な能力でもあるんだ。そのおかげで俺は【魔剣】と融合した【魔道勇者】の魂と一体化することに成功したんだ」

勇者:え、じゃあ、じゃあ本当に、えええええええ

勇者:【勇者魔王】の魂って

「俺だ。俺が奴の本体だ。俺は奴の人格に成り代わり今まで行動してきた」

勇者:でも、でもそれならなんで【魔剣】が【勇者魔王】を殺したいなんて言っていたんだ?それじゃあ、それじゃあ、意味がわからないじゃないか!!!なんで俺にそれを説明してくれなかったんだ。なんのために、俺は

「すまない、俺にも分からんかったんだ。俺は【魔剣】と【勇者魔王】を戦わせたくはなかったんだ。俺はもうあんな悲劇を繰り返したくはなかった。それを避けるためにこうして俺自身が【勇者魔王】になり【魔剣】を殺そうとしていたんだ。ただ、結果的にはこうなってしまった」

勇者:そんなの。でも俺は、お前の気持ちを考えれば

「もういい、今はそれよりも優先することがあるだろう」

勇者:そ、そうだ。そうだよな。【勇者】の件が片付いた今、俺達は元の世界へ帰るべきだよな

「そうだ。だがその前にお前たちはやることがあるんじゃないか」

勇者:やること?なにかあったか?

「この世界を救うんじゃないのか」

賢者:はぁ?救う?一体なんのこと?

「お前達は元からそのためにここにいたんじゃないのか」

賢者:いやいやいや、違うって。俺は元から【賢者】で、この世界に来てからは色々大変だったけど、俺のやるべき事は、この世界を救うことで、でも、なんで【魔剣魔王】が知っているんだ

「簡単な事だ。俺もかつてお前たちと同じようなことをしようとここにきたことがある。だが、それは失敗に終わった」

賢者:それじゃあ

「俺にはお前たちの考えなど手に取るようにわかる」

勇者:それじゃあ。どうすれば良いんだ?

「決まっているだろう、今起こっている大森林のモンスターの異変の原因を突き止める。そしてその原因を排除するんだ」

賢者:原因の排除って、一体どうやって?

「まずは大森林に行くのがいいだろう。この騒動は大精霊によって引き起こされた可能性が高い」

賢者:え、マジで

「【勇者召喚】は俺の魔力とこの世界での【勇者魔王】の能力の一部を使って行える術式だ。俺の力でこの世界に歪みが生じている可能性だって考えられる」

勇者:ちょ、まてよ。それって、俺が、俺が

賢者:えぇ、そんなの急に言われても

「お前が気にする必要は無い。【魔導勇者】だって元はお前と同じ立場だ。いずれこの事態も解決できるはずだ」賢者:そ、そうなのか?

「俺もかつてはこの世界に来るまでこの世界にいた。だからその辛さも、この世界の楽しさも、俺にはよく分かる。【勇者魔王】になった今でも同じことが言えるんだからな」

勇者:そうなのか

賢者:うぅーん。そう言われるとその、あれだな。分かったぜ

「ふむ、それならば話は早いな。俺の力を少しばかり貸そう。そうすればすぐに問題を解決できるはずだ」

賢者:ちょ、ちょっと待ってくれ

「どうした」

賢者:俺はどうしたらいいんだ

勇者:そうだぞ【魔道勇者】。それに俺は一体何をすればいいんだ?俺達だけそんな話を聞いてずるいだろ。俺たちを蚊帳の外にする気か?俺たちを仲間外れにするつもりかよ。そんなのは許さないぜ

「そうだな。悪かった。俺がこの世界でやろうとしていたことは【魔剣】の体を使って行うべきことだ。それに、お前達には、この世界を好き勝手させるつもりはない。俺もこの世界を、俺自身の手で滅ぼすために、この【魔王城】を作り上げている。俺はお前たちに危害を加えるような存在じゃない。だから、俺を信用してほしい」

勇者:ああ、わかったよ。俺は信じるよ。【魔導勇者】を。だけど他のみんなはどうなんだ

「そういえば【賢者】、【剣豪】と【騎士】には伝えておいたが」

賢者:【剣聖】と【神槍の騎士】のことか?そういえばまだ会ってないんだよな。あの二人ならきっと力になってくれる。俺の大事な友達なんだ。それに、多分あいつらも俺たちのことを待っているはずだ

勇者:そうなの?

賢者:そうだとも。あの二人は俺よりももっと強い心を持っている。そして【勇者】も、あいつらになら全てを託せると思えるはずさ

「なるほどな。そういうことなら安心してもいいだろう」

勇者:おう、まかせてくれ

勇者:それじゃ、行こうぜ

賢者:ちょっ、待て待て待て。どこ行くんだよ?俺達がどこに行けば【剣魔】と【神槍】に会えるんだよ?場所を知らなきゃ会いようが無いだろ?「問題ないだろう。俺についてくればいい。俺の案内なしには辿り着けんだろうがな」

「いやぁ~助かったわね」と俺は呟きながら、目の前にある光景を見つめていた。それはまるで地獄絵図のような状況だった。魔物に喰われる人、その魔物を殺す人、さらにそれを遠くから見ている人、そしてそれを見捨てるように走る人達。まさにパニックだ。そう、現在俺たちがいるのは街中だ。そして先程街に入った時とは違いこの周辺は混乱状態に陥っており逃げ惑う人たちの叫び声などで大変なことになっていた。だからその中をかき分けてここまで来るのにも一苦労だ。というか正直に言って、俺はこの場所にたどり着くのを諦めかけていたんだ。だけどそこで、俺はこの国最強の冒険者である男と出会うことができた。彼の名前は【剣魔】というらしいのだが、この男のお陰でどうにか俺と【勇者】とで目的の場所であるこの街の領主の住むお城にたどりつくことができのだ。

しかしそこにはすでに敵が入り込んでいたようで、既に何人もの人間が血を流し倒れており、今尚必死の形相でこちらに向かってくる者達がいた。彼らは【魔道勇者】の仲間であり【剣魔】の友人である【賢者】が言うところの、【勇者】と【魔剣魔王】を探そうと行動を起こした者たちであった。しかしそれは失敗だったようだ。なぜならば彼らがいくら頑張ったところで結局【魔剣魔王】の居る場所はわからないからだ。そして彼らからすれば【勇者】と【魔剣魔王】の居場所さえ分かればよかったらしく、それがわからなかったせいで、この惨状になってしまったということだろう。俺と【勇者】と【魔剣魔王】は【賢者】が作り出した空間へと避難していた。その場所は簡単に説明すると巨大な部屋だ。そしてその部屋の四方にはそれぞれ四種類の武器が置かれていた。この武器こそが俺たちをここへ運んだ手段なのだが、俺と【勇者】がその部屋に入ると、【魔剣魔王】と【賢者】がそれぞれ自分の愛用していた武器を手に取った。【勇者】は自分の愛剣である剣を手に取り。そして【魔剣魔王】の手にしていたのは俺の剣だった。

この場に揃った俺を含めた七人がこの国の最高戦力だ。ちなみに残りのメンバーは別行動しているそうだ。なんでも、この【魔王城】にたどり着いた時にはすでに誰もいなかったそうだ。ただ、それでも俺が心配することはないので、俺はそのメンバーに任せることにした。それに俺のやることはこの場で起こっていることを調べるだけで、後は彼らにお願いしようと思っている。なので俺がすべきことはこの場にいるメンバーの能力を確認することだった。幸いなことに【賢者】は既にこの世界に来たことがあるそうなので、俺は【魔剣魔王】と【勇者】と三人であれこれ話し合って決めたんだ。それでまずは俺が確認したのは、やはり、この部屋に用意されているそれぞれの【勇者】の剣、つまり俺の相棒となる【聖剣】のステータスのことだった。

名前

:エクスカリバー

種族:【勇者魔王】の宝具

ランク:SSS 耐久値 5000/50000 スキルスロット

『全属性魔法耐性(MAX)』【聖剣】の全てのスキルに適用される耐性系スキル。レベルが上昇するごとに耐性値が上がる。また、『魔力回復率上昇』【聖剣】の全ての魔力に関係するスキルに適用されレベルが上がれば上がるほどその魔力量が増加する。【勇者魔王】のみ取得可能な専用効果。【勇者】のみが使用でき魔力を代償にして攻撃力を上げることが出来る【聖剣】の最強必殺技が使用可能になる。

固有武装

:聖剣エクスカリバー:聖剣【聖剣】の中で最強の攻撃を放つことのできる剣。この技を使う場合魔力を消費するので魔力を消費せずに戦うことが出来る【聖剣】以外では使用できない。この技を使用するには所有者の許可が必要で所有者以外の者が使用した場合は自爆し壊れる。【勇者】と【聖剣】の絆により威力が変化する。ただし使用できるのは一回だけ

特殊効果:聖属性魔法ダメージ+100,HP最大値+10000

装備条件:なし

【勇者】:「これが俺の【勇者】としての力だ。どうよ?」【勇者】が自慢げに語りかけて来た。

「まぁ【勇者】だから当然だろうな」

俺がそう返すと、【勇者】は少しばかり悔しそうな顔をした。

「ちぇっ、まぁいいけどな」【勇者】はそんなことを言った後【賢者】に視線を向けた。

「次はあんたの番だよ」

「そうだな」そう返事をすると【賢者】も俺の前にやってきた。

「さて、じゃあ俺の能力を見てもらおうか」そうして俺は【賢者】のステータスを確認していった。その結果。俺の頭の中に流れ込んできた情報をまとめるとこうなる。

【賢者】は確かにこの世界ではトップクラスの強者であり、【剣聖】や【神槍の騎士】と並ぶほどの力を持つ人間だ。

そして、その実力から彼は様々な特権を得ることが出来た。【賢者】は貴族でもなければ商人でもない。しかし、この国においては彼が望むものは大体手に入るほどの権限を有していたんだ。だからこそ、彼は俺と同じ方法でこの世界に呼ばれた。彼に与えられた役目、それはこの国の王となることであった。この国には現在二人の王が居る。それは第一王子と第三王女であった。彼らは仲が良くとても良い兄弟として有名だったが【賢者】は彼らを憎んでいた。そうして彼の目的のために用意されたものが【勇者】だった。そう、この男はこの【勇者】を利用して自分が国王になれるような状況を作ろうとしていたんだ。そのために、わざわざ、【剣魔】が作り出している異空間を利用しつつ、【賢者】は【勇者】に近づいて行った。

それからは、本当に簡単だったそうだ。

この世界で最強の称号を与えられていた男である【賢者】と、異世界から来た【勇者】が組めば、他の連中など相手にもならなかった。

この世界でも有数の強さを持つ【賢者】は瞬く間に【勇者】を仲間にすることに成功した。そしてそのまま、他の王族を味方に引き入れた【賢者】と【勇者】のコンビが、ついに動き始めたのである。そして今回の事件が起きたのだ。そうして現在俺たちの目の前には大量の魔族の死体と、その魔物たちを統率していたと思われる【悪魔将軍】の姿があった。

俺はこの【魔剣魔王】と二人で、この状況の整理を行うことにした。

「とりあえず現状の把握からだな。どうやらこの魔族の集団はこの街に侵攻するために集まったらしい。この数だ、普通に考えてかなり厄介だな。だがこの様子からみて、どうやら俺たちにはまだ気づいていないようだった」

俺がそういうと【魔剣魔王】も俺の言葉に同意したのか首を縦に振った。

「そうだな。このまま放っておいても問題なさそうだ。それよりもお前の方は何か分かったことは無いか?例えばこの国で今起きている事件についてとかな」

俺がそう問いかけると【魔剣魔王】は「ああ」と短く返事をした。

「この騒動は間違いなくあいつらが引き起こしていることだろうな」

俺はそれを聞き「あいつらって誰なんだ」と尋ねた。【魔剣魔王】はその問いに対し少し間を開けてから答えてくれた。

「まずは、あいつらの目的をはっきりさせるべきだ。それがわかれば俺にも打つ手があるはずだからな。おそらくこの国はこれから大きく変わることになる。そしてそれはもう避けられない。ならばあいつらは一体何を求めているのだろうな。俺の推測は、この国からの略奪だ。この世界の力を手に入れるための行動。それは恐らく魔王軍を復活させるために他ならないと思う。だから、俺がここにいるんだろう。奴らに奪われた力をこの俺が取り戻す。だから、そのために必要な道具を取りにこの魔窟に来た。【剣魔】はそのことを知らないが、【勇者】は俺と同じくこの世界に召喚されたんだ。俺が【勇者】のことを知っていたんだぞ、なら【剣魔】が知っていて不思議ではない。【剣魔】がこのことを知らなかったということは【勇者】が言っていない可能性が高い。つまり【勇者】は自分の意思で俺のところに来たということだ。【勇者】の目的は分からないが、恐らく【魔剣魔王】に関係していることだろう。この国が滅ぼうと【魔剣魔王】は関係ないからな。それに、今の状況を見ても分かるように【魔剣魔王】はこの国にとって害悪だと判断されたわけだし、その辺については何も文句を言うつもりはないようだ」

そこまで言うのであれば信じるしかないだろうと俺は判断した。そしてそれと同時にあることに思い当たったのである。それは俺がまだ元の世界に戻れるかどうかの確認が取れていないということであった。まだ魔王からのメッセージを聞いていなかったからだ。だからもし【魔剣魔王】の言ったことが事実だとすれば、俺はまだこの世界で頑張る必要があるということになる。つまり、あの【魔剣魔王】よりも強くなればいいだけだ。そう考えながら、ふと、先ほど確認したばかりの、この部屋の中のアイテムに視線を移した時だった。そこには一つの武器が置いてあった。その武器を見た瞬間に嫌なものを感じたのである。そして、その感覚がなんだったのか、その正体は俺が武器を手にしたことで明らかになった。

名前

:デスカリバー

ランク:SS 耐久値 5000/5000(+1000)/50000(+1500)

スキルスロット

『死魔法耐性(MAX)』【聖剣】が扱うことのできるスキル。【剣聖】のもつ【聖剣術】と【剣聖】が持つことができる【光魔術】、【神弓】の持つ【神術】の効果を併せ持った攻撃が可能になる。レベルが上昇するごとに、威力が増すがレベルが最大になっても攻撃力は上昇し続ける。『魔族に対する攻撃力補正(+10倍)』【聖剣】が相手に与えることのできる攻撃力を100倍にする。

特殊効果:聖闇魔法ダメージ(MAX):聖闇の二属性を同時に使うことによって通常の十倍のダメージを与える。ただし使用者のレベルが低い場合使用することができない。

「おい【勇者】。ちょっとこれを見てくれ」

「んっ?なんだよ、なんかいいもん見つけたのか?」

「こいつは、多分、俺が元いた世界にあった剣だと思う」

「まじかよ!それがあれば俺は最強の力を手に入れたも同じじゃないか!」

そう興奮気味で話す【勇者】を無視して俺は説明を続けた。【勇者】は俺の説明を大人しく聞いてくれた。そうして【勇者】は納得するとこう呟いていた。

「確かにその剣は欲しいぜ。それで俺は【賢者】から王様の地位を奪うことが出来るんだろ。じゃあ別にそれでいいんじゃねーの?俺にはよくわかんねぇけど。【勇者】なんてそんなもんだしな」

「それもそうだな。じゃあその件はお前に任せたよ。でも一つ言っておくけど、この国の人間に迷惑だけはかけるなよ」

【勇者】はそれを聞くと少しだけ不満げな態度を見せたが最終的には渋々了承した。そうしてその後しばらくの間は【賢者】の動向に注意することにしたのであった。そうしているうちに魔族たちが俺達の存在を感知し始めたようで魔族たちの一部がこの場所に集まってきていた。俺はそれを見ると同時に【賢者】に対して攻撃を仕掛けることにした。

「そっちのことは任せたぞ。俺はこいつらを蹴散らしてくる」

「分かったよ。まぁ見てなって」

そう言い終わると【勇者】は剣を構え魔族たちと戦いを始めた。そうして始まった戦闘であったが【勇者】の戦闘センスと、元々のスペックの高さもあって、あっさり終わってしまった。

「これで最後だな」

そう言うと【勇者】は魔族の心臓に剣を突き刺すとそのまま剣を振り抜いた。

【勇者】によって殺された大量の魔族は俺が回収することとした。俺は魔石を拾い上げると【収納空間】にしまう。そんな作業をしていた最中、背後に人の気配を感じ取った。俺は反射的に後ろに飛び退くと、その人物と距離を取るようにして立った。そして相手の顔を見ると俺はその相手が【賢者】であると気づいた。そう、その【賢者】の体から発せられているオーラが俺の知っている【賢者】とはあまりにも違っていたからである。

そのことから俺は警戒を強め、【賢者】に問いかけた。

「貴様が【賢者】か?」

「あはははははは、まさかバレちゃうなんて思わなかったよ。僕の変装も完璧だったはずなのに」

やはり目の前にいるのが【賢者】であるらしい。俺はそう判断した後、目の前の男に話しかける。

「なるほどな。道理で、おかしいと思ったんだ。俺の記憶にあるお前とはあまりにも雰囲気が違いすぎる。だから最初は誰かと思ったんだが、どうやら正解だったみたいだな」

「さすがは【剣魔】、いや今はもうその名前で呼ぶべきじゃないよね」

俺は【賢者】の話を無視しつつ会話を進めることにした。ここで変に会話を引き伸ばすメリットが無いと感じたためである。だから話を続けることにした。

「ああそうだな。今やこの世界における俺の名前は【魔剣】だ」

「僕が【勇者】なら君は今や【魔剣魔王】か。はは、やっぱり運命なのかな?いや違うね。これは君たちのお陰なんだ、本当に感謝しているよ」

【賢者】の口から信じられないような言葉が聞こえてきた。しかし、俺は何も反応せず、無言を貫き続けた。そして、暫くの間、お互いがお互いに沈黙を続けていると【勇者】の叫び声が周囲に響いて行った。

「おっおい、どうなっているんだ。俺には【勇者】の実力はわかっているつもりだったんだが、どうして【魔剣魔王】と戦えるほどの力をもっているんだ」

その言葉に俺が【勇者】の言葉に答える形で答えた。

「俺が鍛えたんだ。この世界に召喚されてから一年間みっちりとね。そうそうこの世界に呼ばれた当初はこの国にいたんだけど色々と面倒なことになってね。それで【剣聖】についていったというわけなんだ」

「この国を裏切ったのか。この国は【剣魔】のことを信じ切っていたが、【魔剣魔王】になったからといってこの国が今までと同じように接してくれるとは限らないだろ。そもそもお前が俺達の敵になることになんのメリットがあるんだ」

【勇者】は俺がこの世界において、魔王軍のトップに君臨するのだから敵対することはデメリットしか生まないだろうと指摘していたのだ。それに対して俺も当然反論をする。

「その辺は、この国の国王が理解してくれたから特に問題は無かったよ。それにもし仮に何かしらの問題が起きてもその時はその問題を解決する方法を考えれば良いだけだ。この世界では何が起こってもいいように備えることが一番大切なことだと思っている。それに、この世界を生きていくために【勇者】は必要だと思っていたんだがな、そういえばこの世界に【勇者】を連れて来てくれたのは誰なんだ?」

俺としては【勇者】の質問はもっともな疑問だと認識していた。だからこそ、その疑問に対しては素直に答えてあげることにする。そしてその問いに対する回答を俺が伝えるより先に【賢者】の方が口を開いた。そうして、【賢者】は自らの【勇者】召喚についての情報を俺に伝える。その内容を聞き終えた後、俺は一つの考えに至った。それは、この【勇者】がこの世界の【勇者】の召喚者であるのではないかということだ。ただ、あくまでもそれは予想でしかない。それに確証もないため、直接確認することにする。

「お前がこの国で勇者を召喚した張本人で間違いないか?」

「そうだよ。僕は【魔王】である君の味方になるために、そして【剣魔】の復讐のために【勇者】召喚を行ったんだよ」

【勇者】が【賢者】を睨むが、そんな視線など全く気にしないといった態度の【賢者】はそのまま俺に対して話しかけてくる。

「それに、僕はずっとこの時を待ってたんだよ。ようやく、この瞬間が来たんだ」

そう話すと【賢者】は俺の方に視線を向ける。

「君が魔王としてこの世界を支配するための力を手に入れる日を」

「なるほど、【賢者】の目的ってところか。つまりこの世界に来て、【勇者】がやってきた時こそがチャンスだと判断したわけか」

俺はそう言いながらもこの二人をこのまま放置することは危険な気がしていたため、すぐに行動を開始することに決めた。そして俺は二人の会話を終わらせるための方法を頭の中で考えた結果、俺は【賢者】の方を指差してこう宣言した。

「俺の目標はこいつを倒すことだよ」

そう言うと同時に俺は【勇者】に向かって叫ぶ。

「【勇者】!俺は今からこの男の相手をすることになる。その間お前には別の仕事を頼んでも良いか?」

「はっ!任せてくれ!俺に出来ない仕事は無いからな!」

「じゃあお前に任せる仕事はこいつらの処理と情報収集を行ってもらうことだ」

俺は【賢者】と対峙する前にまずはこの場に集まっている魔族たちを全滅させなければならないと考えていた。だから【勇者】に協力してもらう必要があった。そして【勇者】にそのことを伝える。

「なっ!こいつら全部倒すつもりか?俺でも正直厳しいと思うぞ」

「大丈夫、お前の強さは俺が一番知っている。安心しろ、ちゃんと倒せるように手は打ってある」

【勇者】が俺の言葉に疑問を持った様子だったが俺はそれをスルーし【勇者】に向けて説明をしたのであった。その後、俺がこの場に集めた魔族たちが全て死亡していることを俺は【収納空間】の中から確認しておいたのであった。そしてその後、【魔王城】で待っている【賢者】と戦闘を始める前に少しだけ情報を整理しておくことにした。【魔王】の圧倒的な力で【魔王】以外の者を殲滅し終えるまでの時間はかなり早くに済んだ。俺はその間に魔族たちの死骸を回収した後【賢者】との待ち合わせ場所であるこの場所へと移動した。

「待たせたな。じゃあ行くか」

俺はそう口にした後【賢者】が返事をするよりも先に【賢者】に攻撃を仕掛けることにした。

「ちょっと待った。まさか戦う前に僕から攻撃するつもりかい?」

俺はそう【賢者】が言葉を口にするが構わずに攻撃を仕掛けることにした。俺と【賢者】は同時に攻撃を仕掛けた。【賢者】は杖を振りかざすと俺の腹部目掛けて振り下ろすが、その動作を見切っていた俺は難なくそれを回避することに成功する。そのままの勢いで、剣を振り抜き攻撃をしたが【賢者】にそれを回避されてしまった。俺は追撃を行うが【賢者】に簡単に避けられてしまう。

「【賢者】、いやもう偽名を使う必要はないな。【賢者の使徒】」

俺は自分の推測が当たっていたことを確認した。【賢者の使徒】とは勇者と同じような方法で異世界の者を連れ出し、自らに仕える奴隷のように教育を施している組織の人間のことである。しかし、【賢者の使徒】には基本的に三つの派閥が存在していると言われている。一つは魔王軍に加担するものたち。二つ目が俺が所属している勇者軍に協力するものたち。そして三つ目が【勇者】の手助けをして魔王軍と対抗しようとする組織が存在するのだ。【賢者の使徒】の中でもかなりの地位を持つ【賢者】はその実力も相当高く魔王軍の幹部にも匹敵するとまで言われている。

「【賢者】って、その呼び方気に入ったからこれから僕のことをそう呼んでくれ」

「分かったよ。お前も俺の事を好きに呼ぶといいよ。俺は魔剣と呼ばれているからそう呼ぶのであればそれでいいよ」

「そうさせて貰うよ。魔剣。僕の名前はまだ明かさないよ」

【賢者】は俺の名前を勝手に使って自己紹介を終えると続けて話しかけてきた。

「じゃあそろそろ続きを始めようか。君はどうやってここまでたどり着いたんだい?魔王城にたどり着けるものなんて普通は居ないはずなのに」

俺はそんな質問に対し質問で返すことにする。俺の方から話しかけることにメリットが無かったからだ。それに質問の答えなんて考えるまでもなくわかっている。だがあえて、その答えを【賢者】から聞くことにすることでこちら側の情報を相手に漏らさないようにすることが狙いだった。

「そんな質問に意味はないよな。【賢者】。それにそんな事を知ってお前はどうするんだ?どうやら俺の質問に対する返答は必要ないみたいだな」

俺は会話の流れを一気に自分側へ引き寄せた。俺の質問に答えられないということも、この会話の内容に意味が無いという風に感じたからである。俺の問いに答えられなかった【賢者】は話題を変えようとしてきた。そして、その言葉は俺が想像しているものとほとんど一緒だったので特に驚くことは無かった。しかし、その口から放たれた言葉が問題なのだ。

「そうだね。確かに君の言っていることは間違っていないね。まぁどうでもいいじゃないか。それより、この世界で僕たちは君のことを歓迎しようと思うんだけどどうかな?」

「どういう意味で言ってるんだ。【賢者】、その言葉をどう捉えればいいのか教えてくれるか?」

【賢者】は自分がこの世界で【魔王】の次に力を持つ存在であると証明するためにこの世界に【魔王】が現れたという偽りの情報を世界に流し、【剣聖】の故郷でもある国に混乱をもたらした。そうして【剣聖】がこの世界に来たことによって【賢者】は自らの目的を果たすことが出来たというわけである。【勇者】召喚を行った【賢者】は自らが【魔王】と同等の力を手に入れることで魔王の力を封印する準備を行っていると予測していたのだが。それが今の発言によって俺の考えが正しいことが分かってしまった。

「もちろん君にこの世界の魔王になる許可を出させてもらうためさ。そのために君が望むのならこの世界の魔王として迎え入れる用意はある」

「その発言には俺が納得できないところがいくつか存在している」

【賢者】はその反応を楽しんでいるようでその表情から感情を伺うことは出来なかったのだ。だからこそ、【賢者】の真意を読み解くことは困難であると判断し、話を続ける。

「そうだね。例えば君の【剣神】への復讐心かな。その目的の為に【勇者】をこの世界に連れて来たんじゃ無いの?」

「俺の目的は【剣鬼】の【勇者】に対する復讐だよ。そのついでにあいつの願いを叶えるためにこの世界にやって来たんだよ」

「なるほど、君の目的は【勇者】をこの世界に連れ出して復讐を手伝うことだったってわけか」

【賢者】は一人で何かを呟くと俺に向けて問いかけて来た。

「ねぇ、君に【勇者】が召喚された本当の理由を教えてあげようか?」

【賢者】が俺に向けて告げた言葉、それは俺が最も聞きたかった情報でもあった。

「お前が何を考えてるのか全くわからない。だからとりあえず聞いておくことにするよ」「そうだね。まず、【勇者】をこの世界に送り込むことになったのは君と同じ存在だったんだ」

【賢者】が俺に対して【勇者】の真実について語り始めた。俺が予想していたことが正解だとわかり少し安心できた。

「なるほど。そう言うことだったか。なら、あの時、俺がこの世界に来て最初に出会った【勇者】と【魔王】の因縁っていう奴が嘘だってことも気づいていたんだろう」

俺は俺をこの世界に導いた女神のことを思い出す。そうして【勇者】に力を授けた【魔王】の正体についても考えていくことにした。

「【魔王】はおそらく女だよ。そしてその正体も分かっている。【賢者】お前、【魔王】が男って言ってただろ」

俺はそう口にした途端、【賢者】の雰囲気が変わるのを感じた。俺の一言を聞いた瞬間、【賢者】の目に動揺が見られた気がした。俺は【賢者】が動揺したことを見逃さずにさらに追い討ちをかけるために【勇者】に授けていた俺の能力について話すことにした。【賢者】にとって【剣聖】が持っている能力を知られたくないだろうと考えたからこその行動である。俺がそう言うと【賢者】は焦ったような表情を見せてきたので間違いないようだ。そしてその態度の変化で俺は確信を得ることができた。【賢者】が【勇者】に与えた能力は勇者がこの世界に転移してから身につけたものであるということを。つまり【賢者】はその能力の恩恵を受けることは無いと分かったのであった。

【賢者】が【勇者】に与えることが出来る能力の限界は【剣聖】が持つレベル1のステータスを上げることができるというだけのものだと言うことだ。これは俺の推測になるが、この世界に転生する際に勇者の体の中には膨大な魔力が存在しているはずである。そして【賢者】は勇者に自らの魂と魔力を分け与えることにより、自分の代わりにその肉体を動かしてもらいたいと考えているのではないかと考える。そうすることにより、自分の意志が宿らない勇者を動かすことが出来るのではないだろうか。

【賢者】は【勇者】に【剣神】に復讐するという命令を与えたのかもしれない。しかしその目的は俺にとっては都合が良いものであると言える。俺の本来の目的の為には、【賢者】を仲間に引き入れる必要があり、それを達成するためには【勇者】に【賢者】を殺すように命令する必要があるからだ。だが、その方法はかなり難しくなっているのが現状である。俺としては勇者に殺されてくれることを望んでいた。【勇者】が俺の思惑通りに動けば俺は【賢者】を殺せるし、【賢者】も殺されるのでお互いにウィンウインな関係になるはずだったからだ。だが今のこの状況を見る限りは、お互い殺し合うことになりそうなので少し面倒だと感じてしまう。俺はどうすれば良いか考える為に、ひとまず時間稼ぎを行うことに決めた。その行動こそが俺が生き残る唯一の道だと考えたのである。

俺は魔王城を目指して移動する。移動中に俺は自分の状況を再確認することにした。まず俺が装備している武器である魔装刀と魔剣は、それぞれ魔導と剣術を扱うことが可能になっているらしいのである。その二つのスキルを使用する為に必要なアイテムは【賢者】が持っていた指輪であり、俺の持つ魔剣の柄頭に埋め込まれた宝石と共鳴することでそれぞれの技を使うことが出来るようになる。ただし、その効果範囲は限られているらしく、どちらか一方のみしか使用することが出来ない。そのため魔王と戦う前にこの二つのスキルを練習する必要があったのだ。そして今、俺は空に浮かび上がりながら【賢者】との戦いを思い出していた。俺がこの世界で得た力は二つ存在するが、俺はまだその二つを完全に使いこなせてはいないのであった。まず【賢者】とのやり取りを思い返す。俺は【賢者】の言葉を聞き流すことにしてその真意を確かめることに意識を向ける。そしてその返答によって俺は一つの仮説を立てることに成功するのだった。

「君には残念なお知らせがあるんだ。実は君に渡した魔道具には一つだけ特別な効果があるんだよ。君はこの世界に来てからまだ一度も魔物と戦ってないよね?それで僕の言いたいことは分かると思うんだけど、この魔石に触れるとこの世界での君の戦闘能力を調べることが出来るんだ」

「そうかよ。それで結果はどうなんだ?」

【賢者】はその反応に驚いたようだったがすぐに切り替えると質問をしてきた。

「君のその反応からして、この世界で戦える力が有れば魔王になれる。その判断は間違えてなさそうだね」

俺は【賢者】の質問に対して答えなかった。

【賢者】は話を続けようとする。

「魔王の力は強いんだ。【魔王】は君たち人間よりも遥かに上位に位置する種族なんだよ。だからこの世界に君みたいな人間がやってくるのは本来ありえないんだ。でもそのあり得ないことが起こってしまった。その原因はこの魔石にあるんだよ」

【賢者】は自分の手の中にある小さな結晶に目線を落とした後、こちらに向かって問いかけてくる。

「君もこの世界に来て色々考えたことだと思う。僕も君のことが心配になってね。だからこそこうして話をするべきだと判断したわけさ。【剣神】の件も、君が考えている通りこの世界で起きている出来事だ。だからこそ僕は君がこの世界にやってきた原因を探る必要があったんだよ。君がこの世界に来るのには必ず何かの意味があるはずでしょ。そしてこの世界にやって来れたというのならばそれは君に魔王の資質が有るからだと僕は考えてる。その事実を確認しようとしたんだけど。その結果はどうだったのか君なら想像できるでしょ?」

「そうか。じゃあ俺からも良い情報を聞かせてやるよ。魔王の力は確かに強力だと感じるが、お前が俺に授けてくれた力で十分対抗することが出来ると思っている。それにお前の目的に利用出来る部分もあった。【賢者】俺の目的の為に協力しろ」

【賢者】は突然笑みを浮かべると、声高らかに話し出した。

「君がそこまで強がるのはなぜだい?この世界には【魔王】の敵となり得る存在が大勢存在しているんだ。そんな危険な場所に一人で乗り込むなんて、君にはこの世界の人間の命を背負って魔王になる資格が本当にあると、君自身そう言えるわけ」

俺は【賢者】の発言を聞く必要は無かった。俺は既に結論に達していたのだ。この世界に存在するすべての魔王を打倒することが俺の願いだと。だからこそ俺は迷わずその問いの返事をすることにする。俺はこの世界に来て魔王達と対峙したが、魔王に勝てたのは俺がこの世界の住人ではなくなったことが原因だった。だからこそ俺は元の世界に戻りたいと心の底から思う。

「俺の最終的な目的を語ってやる。俺はこの世界にやって来たことで魔王を倒す機会を得ることができたんだよ。俺は【剣神】に恨みを抱いているから、あいつをこの手で殺したいんだよ。そのついでにこの世界を魔王の支配から解放することも考えていて、その邪魔になりそうな奴らはすべてこの剣で切り殺す。これが俺の最終目標って奴かな」

俺の話を聞き終えた【賢者】はしばらく呆然としていた。

「なるほど。君ならあるいは、そう思える時が来るかもしれないね。この世界が君のような異物を受け入れる可能性はゼロに近いけれど、もしもの時は手助けしてあげるよ」

【賢者】はその発言をした瞬間、どこかへと転移していった。おそらく俺を放置して一人で魔王城へ向かうつもりなのだろうが、【賢者】の目的はあくまでもこの世界の住民を生かすことだろうと考えてた俺にとっては特に問題になることは起きないだろうと判断していた。それよりも俺は俺のことを【勇者】に命令しなくてはいけなかったんだ。そのために俺は勇者の魂にアクセスしようとするが上手く接続が出来ない。

勇者と接触するのは容易ではなかった。勇者の魂は魔王城の中を彷徨っており、勇者に話しかけることは困難を極めた。勇者を呼び寄せるために俺はこの世界に存在する魔王達に念話で呼び掛け、【勇者】が魔王城に来た場合の対処を依頼することにする。すると、魔王達が俺の指示通りに動いてくれたようで、それからすぐに勇者が魔王城に姿を現したのである。俺の姿を見た勇者が怒りの形相でこちらへ向かって来るのがわかる。俺がこの世界で最後に聞いた勇者の言葉は「貴様だけは絶対に許さない」というものだったが、俺はその言葉を無視したままその場を後にするのであった。

俺は勇者から逃げ回りつつ【勇者】を殺す方法を必死で考えていた。そして勇者に有効な一撃を喰らわせる為に俺は勇者と一対一で戦い、そして決着をつけなければならない。そうしないと、俺の計画は成功せず、結局は殺されてしまうからだ。俺の作戦を完遂させるためにも俺は何としても【勇者】に勝利する必要があった。だが【勇者】の動きが思った以上に早く、俺は追い詰められていたのである。【勇者】の圧倒的なスピードを前に俺は全く反撃の機会を得られずに、一方的に攻撃を受け続けていく。その光景を見て観客たちは俺のことを弱いと思い始めているようで、徐々に罵り声が上がり始めていた。そしてついに勇者はとどめを刺そうと攻撃を仕掛けて来た。しかし俺に攻撃をしようとしたその時、突如として【勇者】の体が硬直し始めて動きを止めたのであった。これはいったいなにが起きたのだろうか。どうにも嫌な予感を感じつつも俺は【勇者】を観察していた。【勇者】が固まってしまったのを確認した俺はすかさず行動を開始する。まず俺は【勇者】の背中に向かって剣を振り下ろし、見事に命中させることに成功した。そして続けて【勇者】の腕を切断した後、胴体に深々と剣を突き立てた。俺はこれで倒せるとは思っていなかったが、それでも一応確認の為に傷口を氷で塞いでおいた。だが【勇者】の反応は無く、既に事切れていることは間違い無かった。そして俺は【勇者】の死体をそのままにしておく訳にはいかないと考え、とりあえずアイテム袋の中に入れておくことにしたのである。

俺は【賢者】を殺すべく、この世界で魔王と呼ばれている者達を集めようとしていた。そして魔王を束ねる魔王と話し合い、俺の計画に協力してもらうように説得するつもりである。【魔王】達は俺と同じような方法でこの世界にやって来たようだし、俺がこの世界で何をしようとしているのかは知っているはずだ。俺はこの世界での自分の目的を達成すべく、【魔王】の力を利用させてもらおうとしているのである。俺は【魔王】がどこに住んでいるかは分からないが【魔装召喚】を発動することで魔王がどこにいるかは探すことが出来ると考えていたため、俺は【魔王】を探し出すことに専念する。

【魔王】達の居場所を探知したところ、彼らは魔王城の近くに居ることがわかったので俺はそこを目指すことに決める。ちなみにこの場所に辿り着くまでに相当な時間がかかってしまい、既に辺り一帯は暗くなりかけていた。こんな時間になってしまったのは完全に【勇者】との戦闘の影響だと言える。戦闘中にかなり派手に動き回っていたせいもあり、周囲に甚大な被害を出してしまい俺はその処理に忙しく、気付けばここまで遅くなってしまっていた。【魔獣】や魔物に襲われないように注意しつつ急いで目的地に向かおうとしていた。

俺は【賢者】に貰った地図を頼りに移動を続けていった。やがて目の前に見えてきた建物を確認してここが目的地だと確信する。なぜならその建物の外観に覚えがあったからだ。それは【賢者】の居城であり【賢者】の私室だったからである。そして俺は【賢者】の扉を開き部屋に入っていく。部屋の中に入るとそこにはいつも通りの姿で椅子に座って本を読んでいた【賢者】の姿があり、俺が入ってくることを知っていたのか全く驚いた様子が見られなかった。そして俺が入ってきたことを確認するとこう話し始めたのだった。

「僕の予想より少し早かったね」

「その口ぶりからしてお前は俺の目的も全部把握してるみたいだな」

俺の発言を聞いた【賢者】は小さく笑うとそのまま俺に話しかけてくる。

「僕の想像よりも君の考えは浅はかで愚かだよ。君の計画が上手くいけば魔王の力を手に入れることが出来ると考えているみたいだけど。魔王達の意思を無視するような真似は絶対に出来ない」

「そうかい」

「それに君がこれから先どんな行動を取るにしても君に待ち受けているのは破滅の道しかないんだよ。【魔王】という存在は非常に厄介なものだからね。だからこそ僕は【魔王】の存在そのものを完全に消滅させたいと考えているんだ。その為に君を利用してね。【剣神】を殺したのだって君のためなんだ。君はあの男のせいで自分が異世界から来たという証拠を残さずに元の世界に戻ることが出来なくなってしまったからね。だから僕としては感謝してほしいくらいなんだけどね。僕はね、この世界のために君を犠牲にすることにしたんだ。もちろん君だけじゃない。僕に協力してくれない全ての魔王も同じようにこの世界から消えてもらわないといけなくなるんだけどね」

【賢者】の話を聞く限りでは全て俺が【賢者】の想定通りに動かなければ世界は【賢者】によって滅びるということになるのだろう。しかし、【賢者】の話を俺が全く信じないと思っていたのか【賢者】の顔には余裕の笑みが浮かんでいたのだが、次の俺の発言を受けて【賢者】の表情が一気に険しくなる。

「お前の言い分は良く分かった。俺に協力する気が一切ないということだな」

【賢者】がこの発言に動揺を隠せないことは誰の目から見ても明らかであった。そしてその瞬間に【賢者】は自分の敗北を悟ったようで悔しそうに顔を歪めていた。だがそんな【賢者】に追い打ちをかけるように俺は【賢者】に向けて攻撃を開始し、その攻撃に対して【賢王】は防御する手段を持たなかったため俺はあっけなく殺すことに成功する。その様子を見つめながら俺の頭に「【剣聖】を倒したからって調子に乗るんじゃねえぞ!」と言った【剣神】の言葉が思い起こされたので【剣神】の方にも連絡をして、すぐに【剣神】を俺のところへ呼び寄せてもらうことにした。それからしばらくして俺の元へやって来た【剣神】だったが、俺はその姿を視認すると思わず絶句してしまった。【剣神】は片腕が切り落とされた状態であり明らかに戦闘を行っていた形跡が見られたからだ。そして【剣帝】も【剣鬼】も同様にボロ雑巾のようになってしまっており、その惨状を見れば【賢者】との戦いが非常に激しいものであったことが窺えた。

「これは酷いね」

俺は【賢者】と戦わなかった【魔王】達がここに来るまで待っていたのだが、ようやく現れたので彼らに事情を説明すると俺はすぐさま【賢者】の討伐に向かった。だが俺はここで大きな誤算が生じていたのだ。それは魔王が俺に協力してくれるものだとばかり思っていたのだが、どうにも【賢者】が魔王達を支配しているという訳では無かったらしく、むしろ【魔王】達こそが【賢者】に従うべき相手であったのだということを理解した。しかし、すでに時は遅かった。【賢者】は俺の攻撃を防ぐこともできず【賢者】は呆気なく殺されてしまう。それを見た俺は【魔王】達が【賢者】に従わず【魔王】同士が殺し合っているということに気付いたのであった。そこで俺はすぐに魔王同士による戦争が始まったことを知り俺は急いで【剣神】を連れて戦場に向かうことにする。その途中【剣帝】と遭遇すると俺は【剣王】について尋ねたがどうにも要領を得ない回答をしてきたため仕方なく俺が【剣帝】を殺してしまったのであった。

そしてついに俺は【魔王】達に包囲される。俺は【勇者】の死体を回収後、【勇者】の死体を【魔王】達に見せることによって彼らを納得させ【勇者】の死体は彼らから奪い取った【アイテムボックス】へと入れた後にその場を去ったのである。その際に魔王が追いかけて来たり、【勇者】の肉体に興味津々といった様子で【勇者】の死体を見ていた【賢者】のような輩が現れたが俺はそいつらも殺した。そしてとうとう俺は【魔王】達の支配地域を突破して、俺の願い通り【魔王】が治める【魔王国】の領土にまで到達することに成功したのである。ここまで長かったがこれでやっと元の世界に戻れる。

俺がそう思うと目の前の扉が開かれるのが分かる。俺はついに魔王の支配する土地にまで足を踏み入れることに成功したようだ。そうして目の前に現れる【魔帝】の姿を見つつ俺は覚悟を決めた。俺はもう逃げないと。そのためにはまずはこの場にいる奴らを皆殺しにしておかなければならないな。そう考えた俺は自分の武器を構えるとそのまま【魔帝】を目掛けて突進した。俺は今までずっと自分を殺すために動き続けてきたが、今度は違う目的を果たす為に動いているため、どこか心の中に違和感を覚えるのだった。しかし、今は余計なことを考えている暇はない。

「お前を殺すのが本来の目的だ。死んでもらうぞ!」

【魔導皇】が放った魔法を避けると俺はすかさず反撃に移る。だが、相手の反応速度の方が遥かに早く、俺が反撃を行う前にこちらに向かってきたため、俺が相手に攻撃を加えられることは無かった。俺はその隙に距離を取りながら魔法の詠唱を行い、【魔力弾】を複数発動させるとそれを全て撃ち放つとさらに接近してくる【魔導皇帝】にぶつけることで回避する。

その後、お互いに牽制を繰り返しながらも俺達は戦闘を続けた。【魔王】達は俺の実力を把握していないようだったので、なるべく俺の強さが分かりやすいように俺は手加減しながら戦っていた。というのも俺の持つ能力が【魔王】や【魔王国】に知られるとまずいことになりかねないと判断したからである。そのため俺はひたすら【魔王】達の力を吸い取ることに専念することに決めた。

俺のスキルには【吸命の魔眼】と呼ばれる強力な力が存在する。【生命強奪】のように相手を死に追い込むという訳ではないが、この【魔眼】の力で対象を死に至らしめることが可能なのだ。この効果によって俺は相手を倒す必要すらもなく一方的に戦闘を終わらせることが可能であるため、非常に使い勝手が良いのだった。俺は【魔王】達を相手にしながらも俺は【魔王】達から徐々に体力を奪い続けていったので【魔王】達は少しずつではあるが衰弱していく。だが、それでも彼らは最後まで戦い続けた。そして【魔導皇】が死んだ直後、その瞬間に俺は【魔王】達が全員死亡したことを悟ると急いでその場を離れることに決める。

俺はしばらく走り続けていたが流石にこれ以上の移動は無理と判断し、その場で立ち止まると周囲に敵がいないかを確認してから転移の門を呼び出しその中に入ることにする。

俺は【魔王】の国【魔王城】の目の前に到着する。そして目の前に広がる景色はまさしく魔王の城にふさわしいものだった。俺は周囲を見渡すと誰も居ないことを確認した後に【アイテムボックス】を発動させて中にあった死体を全て取り出し【無限収納鞄(マジックポーチ)】へと移す。

この中には【魔帝】の身体の一部が入っている。これは俺が今からやろうとしていることには必要不可欠なものだったため俺はこれを回収する必要があったのだ。しかし、俺のやろうとしている行為には【賢者】の力がどうしても必要になるため、俺はすぐに行動を起こすことが出来なかった。なので、この【魔王】の死を利用して【賢者】を呼び出すことにしたのだった。俺は早速【剣聖】の肉体に埋め込まれていた魔晶核を取り出した後、【賢者】から受け取った水晶にその魔晶核と俺の心臓をくっつけた状態で【魔王国】の中へと入っていく。

俺が自分の意思で魔王国に入っていったことにより俺の存在は完全に隠蔽されなくなり【魔王】以外の魔王にも俺はその存在が認知されることになってしまうが、この際仕方ないだろうと思う。そもそも俺は【剣神】を殺した時に自分が異世界から来た人間であることを証明することに成功していたため、魔王国の連中にも俺の存在が認識されてしまうのは想定の範囲内だった。それよりも【剣神】を殺した時に使った剣が俺が元々持っていた【エクスカリバー】ではなく、魔王から奪った【魔王の双剣】という剣を使っていたことの方が問題になるはずだが、それも【賢者】が魔王から【剣神】と【剣鬼】の身体の一部を入手したという情報を伝えれば大丈夫だろうと考えたのであった。

【魔王国】に入ることが出来た俺はさっそく内部調査を開始することにした。この国が一体どのような仕組みになっているのか確認し、どのようにすれば【魔王国】を滅ぼすことが出来るのかを探るためである。そして【魔人族】についてはその種族の特徴が【エルフ】や【巨人】などと異なることが俺にはわかっていたので、この世界に住む一般的な生物との差異を出来る限り調べることにし、また他の生物の生態を実際に見るのが有効だと考えたため俺はそのようにしてみることにしたのであった。

俺はとりあえず一番近くにいた獣人を見かけた俺は声をかけてみる。

「おい、お前ら。ちょっと質問に答えてくれないか?」

「なんだ貴様! この神聖なる【魔王】国の土を踏むとは何事か!」

俺はどうしたものかと考える。もしかしたらこいつは【魔王】に魂を支配されているだけかもしれないと思い俺はこいつらの肉体からその精神を抜き取ってみるとその瞬間、目の前にいた犬耳をつけた男から先程までの威勢の良さは消え失せてしまう。どうやら上手くいったようだ。これで俺はこの国の情報を収集することが出来るようになるなと内心喜ぶと目の前の男に対して再び話しかけた。

「悪いな、俺は少し知りたいことがあっただけだ。別にあんた達をどうにかするつもりはないし危害を加えるつもりもない。ただ一つだけ教えて欲しいんだ。お前らは魔王の加護を受けし者たちで間違いは無いんだよな?」

俺がそう問いかけると【獣王】が反応した。そして【魔導皇】が答える。その口調は冷静でありどこか高圧的な態度をとっている。

「ああ、我々は皆、魔王様に救われて忠誠を誓った存在であり、決して【魔導皇】である私に逆らうような愚行を冒したりしない。まぁ例外もあるがね」

俺は目の前の二人の魔王の眷属が話をしている最中、俺は彼らの背後に【剣聖】の死体を置いて【剣帝】の剣を手に持ちいつでも攻撃を仕掛けられる準備を整える。そんな状況でも二人は一切俺に対する敵対行動を取ろうとしなかったため俺は少し驚いた。だがそのお陰もあって二人からは色々と有益な情報が得られたため、感謝の意味を込めて殺さずに放置することにしたのであった。

こうして【魔導国】の探索を終えた俺は一度【魔王国】を脱出して【剣帝】と【剣神】のいる場所へと向かうことにした。理由は簡単で、俺は魔族の領土について何も知らないからである。【魔王国】では俺は完全に部外者であり、この世界で俺の存在を唯一知っているのはこの二体だけである。つまり彼らからこの世界のことを学ばなければ俺が元の世界に戻る手段を得ることが非常に困難を極めることになると判断したのである。

そこで俺はまずは彼らの肉体を俺の持っているスキルの一つである【蘇生術式(リヴァイヴァラーション)】を使って蘇らせようと考えた。【蘇生魔法】とは似て非なる効果を持つこの能力であれば【勇者】の時と同じく確実に彼らを元の状態へと戻すことが出来るはずなのだったからだ。俺はまず【魔王国】から【魔帝】の領土の反対側にある場所に彼らが存在しているということを知っていたのでその場所へ向かうことに決め、移動すると俺は【蘇生】の呪文を唱えてまずは【剣帝】と【剣神】を復活させてみたのだが。何故か彼らは復活せずに俺に襲いかかってきた。俺は咄嵯の判断で【勇者】の死体と剣を持ってその場を離れたのだったが、その後しばらくして俺は彼らが完全に死んだことを知ることになる。俺がこの国に来て初めて殺した魔族はこの【魔帝】と【魔導皇帝】という魔族の王であったが俺はこの結果には疑問を抱くことしか出来なかった。俺は何かを間違ってしまったらしいが、それが一体何なのか分からなかったのである。そうして俺が悩んでいると、突然背後から何者かに襲撃を受けるのだった。俺はすぐに相手を確認したがそれは先ほど【魔王国】内で俺に戦いを挑んできた【魔導皇】と呼ばれる男の姿があり、俺が奴の存在を忘れかけていたのを思い出したことで、おそらくだが俺は魔族の誰かから監視されており、そろそろ仕掛けてきたのだろうと推測をした。

俺は自分の身を守る為【アイテムボックス】から取り出した【魔王】の武器を使用して【魔導皇】を迎え撃つことに決める。

「ふむ、やはり君にこの姿を見せるべきではなかったようだ。君ならば今の私が全力を出せばなんとか対抗できるだろうと思っていたが、どうもそういう訳にもいかなくなったみたいだ。仕方が無い、本気を出して君を殺すことにしよう」

【魔導皇帝】はまるで自分以外を全てゴミ扱いするような目で見下すと、そう言って俺に向けて攻撃を行ってくる。

俺は相手の攻撃を避けつつ【魔力弾】を放って相手の攻撃を中断させようと考えたが相手が俺の攻撃を全て回避したため攻撃を当てることが出来ずに終わる。俺も【魔眼】による魔力強奪を行おうと試みたがそれも全て回避されてしまう。【剣帝】との戦いで俺の動きにだいぶ対応が出来るようになっていたのであろう、相手の動きにはかなり無駄が無かった。俺の方はまだスキルに頼りきりで実力が足りていないために相手に手玉に取られてしまっていた。

それから俺は相手からの攻撃を受けながらも俺は必死になって戦い続ける。俺の肉体はすでに限界を超えていたが、ここで倒れるわけにはいかないので俺は意識を失うことを許されない戦いに身を投じることになったのだった。そして【魔導皇】との死闘を繰り広げている中、俺はあることを思い出すとすぐさま実行に移したのだった。そして【魔導皇】が次の攻撃に移ろうとしたところで俺がスキルを発動させた。

「【時間遡及】」

すると、【魔導皇】は時間が止まったようにその場で固まってしまい俺は即座に【剣神】を回収したあとその場から急いで離れる。そしてそのまま魔王国の中へと入って行く。【魔帝】と【剣神】が復活していない理由は不明だが今はそれどころではないため無視することにし、俺の足取りは次第に早くなっていった。俺は一刻も早くこの場所から離れるために転移門を発動させてこの国から出て行ったのであった。

俺は転移の門を利用して【魔王城】へ戻って来ていた。流石に【魔王】の肉体の修復が終わっていないため俺は【魔王城】から【魔王国】を抜けることにしたのだった。しかし俺が抜けようとしていることがばれてしまうと俺が何をしようとしていたのかバレかねない。俺はその危険性を考慮してこの国から出る前に俺がやろうとしていた行為を実行する。

「俺に歯向かったお前らへの報復は既に果たした。これからはお前ら魔族どもも俺に服従を誓うことで命だけは助けることを約束する。逆らうのなら容赦なくお前たちを滅ぼすぞ? 俺に反抗する者がいるのかどうか今一度考えるがいい」

【魔人族】たちは全員俺の配下となり、俺の指示通りに動くことになった。そして俺はすぐにその行動を開始することにする。俺は【魔王】から手に入れた情報からこの国にいる魔人たちと話をしてみることにした。【剣聖】の身体は俺の能力によって強化されている。【賢者】の身体も同様に【剣聖】の身体と同様に【賢神】から得た能力の恩恵を受けていてその能力で【魔王国】を俺の支配下に置くことにしたのであった。

そうやって俺は【魔王国】を支配した後、俺はこの国の魔王の住む土地へと向かった。そして【魔人族】の【魔導王】や【魔王】などに声をかけてからその領土内にある全ての街を支配していった。俺はそこで住民から多くの魔人に関する情報を聞き出すことに成功し、そのおかげで魔族や魔人の特徴を大雑把ながら把握することができたのである。この世界で生きる生物と魔人では体の構造に大きな違いが存在し、俺は【魔眼】の能力をフル活用しながらこの世界に住む魔人や魔人の使う魔法を解明していったのであった。またその過程でこの世界に存在する生物の中で人間に最も近い姿かたちをしたものを、俺は【魔物】と名付けることにした。

俺は【剣聖】の死体から奪った【聖剣】と俺自身の肉体のスペックで、この世界の最強種でもあるドラゴンとも互角に渡り合える程にまで強くなっていたため、魔人を討伐することはそれほど苦労しなかった。俺が特に力を入れているのがこの【魔人族】であり、俺はこの国の支配者になるにあたって、この国の民から俺に対して不満を抱いている者がいればそれを罰するということを決めてその処置を行っていた。そして俺に逆らおうとする存在はおらず俺は安心したのだったが。どうやら俺に逆らおうとしている愚か者たちが存在していたらしい。

俺が魔人に対処しつつこの国を掌握している最中【魔人皇帝】と名乗る存在が現れた。俺は【魔眼】の解析によるとその魔人は【魔帝】の魂を持った存在であることがわかった。そして俺はその魔人からの申し出を受け入れることにした。それはつまり俺に力を貸してくれる代わりに、この魔人たちは【魔人皇】に従うということでその条件を飲むことに決めたのである。

こうして俺は新たな【魔王】をこの世界に召喚することに成功した。俺は【魔人皇】の魂を持つ魔人と【魔王国】の支配権をかけて争うことに決定することになる。俺が支配したのは魔国全体ではなくあくまで【魔王領】だけなのだが【魔王皇】は俺のことを魔王であると認識しており、その事実を隠そうとする気配は無かった。そこで俺はまず最初に【魔皇】に命令を下す。【魔皇】は魔国でも屈指の実力者らしく、魔皇に忠誠を誓う者も多く、俺としては【魔帝】の肉体を再生して【魔帝】を復活させてその戦力を取り込みたいと考えていたため【魔人族】の【魔導王】に、魔族たちのまとめ役をしてもらうことにした。魔人族は実力がものを言うようでこの国では一番強い魔人がトップになるというシステムになっているらしいのだ。【魔導皇】もその実力は確かであるらしいのだが彼は【魔帝】と【勇者】との戦いの際にかなりのダメージを負っているらしい。そこで俺が彼に【蘇生魔法】を使うことに決める。これはこの世界における唯一の【蘇生魔法】を使う事が出来る人物を知っているからだ。俺はこの【魔皇】が【蘇生魔法】の使い手であることを知っていたので彼を蘇らせることにした。俺は彼が死んだ原因について聞いてみるとどうやら【魔帝】に負けたことが原因だとわかり、彼の死について責任を感じていた俺は彼を復活させようと思ったのだ。

俺は魔導皇帝が蘇ったことを確認した後にこの場から離れ、この【魔王国】から【剣帝】が治める【剣王国】へと移動することにした。

「陛下、よくぞご無事で。私はずっと心配しておりました。まさかあの【魔帝】と戦って生き延びるどころか倒してしまうなんて。貴方は私にとっての希望そのものです。私の命にかけても、今後何が起きようともこの身をもって貴女をお守りいたします」

俺はそう言って涙を流している女性を見ながら、この【剣王国】に魔素を拡散させていくのだった。そして俺はそのあと【剣王】と話をつけるとすぐに王城を離れ別の場所へ移動した。そこは【魔人族】の領地内にある山である。俺の予想通りならばここには魔人の国へ続く入り口があるはずである。俺は魔素探知を全開にしてその場所を探すが見つからない。しばらくすると俺が【勇者】を倒した場所の近くまで戻っていることに気づき俺はそこから引き返し、俺が【魔人族】の魔人を殺した場所に辿り着く。その付近には【魔王国】にある【ダンジョン】と同じものが確認出来た。俺は念のために魔素感知を最大に使って魔人が存在するかを確認し、それが存在しないことを確認すると中へ入り魔人たちを駆逐しながら【魔剣皇帝】の元へと向かうのであった。

俺はこの魔人の国の奥深くに位置する【魔人皇帝】の住居へと侵入したのであった。

「お主が我が【魔剣皇帝】の肉体と魂を奪い、復活させた【魔王】であるか。我は確かに魔剣として【剣帝】の剣と同化したが、なぜに【剣聖】を喰らうような真似をした? あれは我ら魔族にとっても忌むべき相手だということを知っていての行動であろうな?」

俺は【魔人皇】の言葉を聞いた直後即座に【剣皇】の能力を解放して相手の肉体に【魔力刃】を放ち、それと同時に魔人を殺す準備をしていた。

【魔人皇】の体は【魔剣創造】の力によって創り出されたものであり、この肉体は本体ではないとわかっていた。しかし俺の魔素吸収によって強化されており【魔王神】の力を使ってようやく対等に戦うことができる程度であり。しかも魔剣を使わないと倒すことができないほど厄介なもので、魔剣を使ったとしても一撃で殺せる保証はなく俺の寿命を確実に縮めてくる存在だと言えた。そのため【魔王神】となった俺は【魔王】の力をフルで活用しなければならず、全力を出す必要があったのであった。

俺はその瞬間を逃さずに、即座に攻撃へと移ることにした。【魔人皇】の質問を無視して攻撃に移った理由はいくつかある。その一つ目の理由としてはその質問に答えたところで何も得るものがないからである。そもそもその言葉を発した時点で俺はこの相手を警戒する必要があると感じ取り、俺は最初から【魔王】の力で殺すつもりで戦おうとしていたのだった。その二つ目は、俺が【魔王】であることを知るのは魔王自身と【魔剣皇帝】しかいないのでこの質問をするということは、少なくともその情報を誰かから聞かされたことになるためである。

そしてその三つ目の理由というのが魔族を統率している【魔皇】や、その部下の魔人の口から【魔王】という言葉が漏れることを恐れたからだ。この世界の全ての生命体は【魔族】という種族を一つの種類だと思い込んでいて、それが【魔人族】だということを知るはずがなかった。【魔王国】を制圧するにあたって【魔人族】には、【魔王国】にいる魔人族たちを【魔族】だと思わせることでこの国の平和を手に入れることが出来たのである。この事実を知らないはずのないこの魔人がわざわざそんな質問をしたというのは、そのことについての情報を持っている可能性が高いからこそ、その言葉を口にしたのではないかと考えた。

そのことから、この【魔人皇】は何かしら知っている可能性があると判断したので俺は、【魔剣皇】の攻撃の隙を見て、【魔王神】となった状態で【魔人皇】と戦うことにした。【魔王神】の状態になれば【魔王】の力が使えるため俺はその状態の【魔人皇】の攻撃をなんとか防ぎ、その後反撃に転じた。そして俺は【魔王神】となってこの【魔人皇】の体を粉々になるまで破壊したのである。そして俺はこの空間に存在する魂を【輪廻転生】のスキルを使い【魔人皇】を生まれ変わらせ、再び【魔王国】の支配権を手に入れたのであった。

そうして俺は新たに手に入れた【魔剣皇帝】の能力を使い【魔剣創造】を行い【魔王国】中に自分の支配する魔剣を配置し、そして【魔皇】が復活する前に俺は、この世界から全ての魔物や魔人を消すことを決心するのであった。そうすればこの世界は俺の思うままに支配できるから。そうして俺はこの世界から全ての生き物と魔物や魔人のいない世界を作るため動き出した。俺の願いを聞き入れたこの【魔王国】の全ての国民たちを引き連れてこの世界を回る旅に出たのである。

「【魔人皇】が復活しかけているらしい」

「なんですって!? それで今どこでその姿が確認されてるのかわかるのですか?」

俺は魔導皇帝の質問に対して【鑑定眼】を使用し、この世界で【魔人皇】が復活しようとしている場所の特定を行う。その反応が俺の前に現れた【ステータス】に表示されているためそれを皆に見せたのだった。そしてその結果、俺達は【魔王国】に戻ってきたのである。【魔王国】に帰ってきた俺達は早速【魔人皇】が復活するための準備を進めることになった。その作業は簡単だ。俺達がその準備を整えればすぐにでも【魔人皇】が復活するはずだからである。

「魔素が溢れ出ている場所がわかったよ。場所は魔族の住む国【魔国】の中にあるダンジョン内だ。その場所に膨大な量の【魔素】が集まっているんだ。そこに【魔帝】も一緒にいることを考えると、恐らくそこで儀式を行っているに違いない。だから俺がその【魔素】を吸収して封印を解くつもりなんだ」

「それは危険ではございませんでしょうか。陛下のお身体は我々とは違い普通の人間のものです。【魔皇】に戦いを挑み勝利するのは容易なことではありません。それに陛下がもし倒されてしまった場合には、我々の戦力は大幅に削られてしまう可能性があります」

魔導皇帝の指摘した内容については俺がこの世界で一番懸念していることである。だが俺の【完全再生】の力は一度きりの効果なので【蘇生魔法】のように何度も使うことが出来るわけではない。俺の寿命が尽きてしまったら俺の命はそこで終わりになるのだ。だからこそ【蘇生魔法】が使えない状況に追いやられた場合のことも想定しなければならない。その対策として俺の魂を別の世界に飛ばし、そこから俺の意思が消えても俺の意志を引き継いでくれそうな者を探し出し協力してもらう必要があるのだ。ただその方法はあまりにも難易度が高いためにできればその手を使うことを避けたいと思っていた。

しかし【魔皇】が【魔剣皇帝】を復活させるために行動している以上、【魔人皇】を倒す以外の方法で【魔人族】の弱体化を図る方法はないのだ。そのためこの手段を取るしか他に手立てはなかったのである。俺は【魔皇】の行動を先読みすることでその対策を打つことにしていた。【魔人皇】は、魔人の【魔剣皇帝】が復活させるために、【魔素】が充満した場所でその復活に必要な作業を【魔剣皇帝】と共に行っているはずである。ならば俺はその【魔剣皇帝】を復活させるための魔素を先に回収してしまえばいいと予想し、その作戦を実行したのだった。そしてその俺の予想通り、【魔剣皇帝】の復活のために大量の【魔素】を必要とする魔人皇が、自ら俺に接触を図ってきたのである。俺はそこでこの【魔剣皇帝】を操り、【魔剣皇】の身体を奪うと魔人皇を倒しこの世界の平和を取り戻したのだった。そうして俺は、新たなる【魔王国】の支配者となったのである。

それから俺は魔剣帝国【剣王国】へと移動すると【魔剣皇】の身体を魔王城へと移した。魔王城へと【魔王神】の状態で転移すると俺は、この魔王城と【剣王】が治めている領地を【魔王神化】の能力で完全に支配することに成功する。俺の支配下となったこの場所で俺は【魔族国】に仕掛けた【魔剣創造】の力を開放すると、俺はこの【魔剣国】を俺が支配する魔剣で覆うように【剣皇】の剣の力で【魔剣創造】の剣で巨大な魔剣を作り出す。その魔剣の効果は俺の支配する領域に存在する生物に、その剣の所有者に対する絶対的な忠誠を植え付ける効果のある剣だった。俺はその力でこの国を支配して行ったのである。

【魔剣創造】の力を使ったのは【魔剣国】に、魔剣と対になっている【神魔】の力を使わせることが目的だったためである。そのために【魔剣国】を支配するための力が必要だった。この【魔剣国】には【神魔】の力を持つ魔剣が存在したので、その魔剣を使うためには魔剣がこの国の魔人族を全員服従させる必要があったのである。そのためこの力を使って、魔剣の【神格解放】を行い【魔剣国】に住む全ての魔族を、俺の支配下に置くことに成功した。

【魔族国】を支配したことによって、俺はこの【魔人国】の【魔剣皇帝】と、この【魔剣魔剣魔剣国】にいる【魔剣国】に所属する【魔人皇】を同時に倒すことができたのであった。【魔皇】の体は【魔王】の力で作り出したもので本体ではなかったが、この二つの国で【魔王】の力を存分に使ったので、この二国を支配していた【魔王】は倒されたことになり、これでこの二国は俺の支配下となり【魔剣国】という名前になった。そして魔剣をこの世界に残すという目的で、俺の力で生み出した魔剣の複製である【剣国】の人間たちを俺自身が作ったダンジョンの中に移住させた。【剣聖】は俺が作った国ではなく【魔剣国】の方へ行かせる。これはこの国を作った時に既に考えていたことだ。魔剣使いとしての素質を持った者がこの国に生まれる可能性が高くなるため俺はそうしようと考えたのである。そうすれば俺が死なない限りこの世界が魔剣の脅威にさらされることはなくなるからだ。そうして【魔人国】はこの俺が作り出す【魔国】によって管理されることとなったのである。俺はその後この世界の国々と同盟を結ぶと【魔国】の国主として、この世界の平和を守り続けたのであった。

そうして時は流れ俺は年を取り、もうすぐ100歳になる。この世界に来てからすでに70年近くが経とうとしているのであった。

「魔人族から報告です。またあの忌々しい存在が蘇ったとのことです。場所は、ここから遠く離れた魔人族の国【魔皇】の治める【魔剣帝国】にございます。【魔皇】の率いる軍勢の総数はおよそ1000体。それと【魔人皇】は今回の戦争に備えてか魔人兵と呼ばれる新兵を量産しているようですね。その数およそ20000ほどだと」

俺は魔王城の地下にあるこの城の謁見の間にいた。そこで魔人の【魔人皇】からの定期連絡を受けている。その内容は、【魔皇】が復活し、それに伴って他の魔王たちが復活したということの報告であった。その魔王たちの居場所についてはまだ調査中らしい。俺は【魔剣皇】に、魔王が目覚めるまでどのくらい時間が掛かりそうだとかの、そういう具体的なことを聞かなかった。それは俺にとって、あまり興味がなかったからだ。俺はこの【魔王国】を作り上げるのに全ての時間を使い切ってしまったため、これからこの世界をどうしていくかというビジョンが全くと言っていい程に無いのである。それにこの魔王国が、この世界で一番の大国であり続けていることも俺にとっては大きな悩みであった。俺は自分が支配したこの魔剣と魔法が支配するこの世界で、何かしたいことがあったわけではない。俺は【魔皇】に自分の意志を継げる者を見つけ、俺が死んだ後もこの世界を見守り続けるつもりであった。ただ、この【魔王国】は俺が生きている間だけ守られればそれで良かったのである。

この【魔剣皇】はその【魔皇】が俺と同じ存在だということは分かっている。この世界の【魔王】は代々【魔王神】と同じような存在だと言われていた。しかしそれが本当かどうかは俺も分からないのである。この【魔皇】が、俺と同じように元の地球に帰りたいと強く願っていたことも知っている。だが俺は、元の世界に帰るための方法を探す気などなかった。そんなことよりも俺にはやるべきことがあり過ぎて忙しかったのだ。ただ俺は、自分の子孫を残すことはしたかった。【魔人族】である俺が子を成したらその子がこの世界の人族との間にできた子にどんな影響を及ぼすかもわからなかったため、この方法を取ることも出来なかった。この【魔剣皇】と俺は、お互いが自分の子供を持つことも出来ずにずっと同じ立場だった。だからこそ【魔剣皇】は俺のことを心から信頼してくれていたし、俺も俺なりに彼を大事にしてきたつもりなのだ。

俺と【魔剣皇】の間には【魔皇】と先代の【魔剣皇帝】との因縁のようなものがあり俺も彼もそれを断ち切れずにいた。そのためお互いに一歩引いて距離を置いていた部分があった。だがそのお陰で俺達は上手く関係を築き上げて来られたと思っている。【魔皇】は【魔人族】の種族特性なのか感情表現に乏しい。そのため俺は彼とどのように接したらいいのか分からず戸惑うことが多かった。俺が彼のことを大事な友として大切に思っているようには、彼が俺の事を思ってはいないのではないかと不安に思うこともあったのだ。だが彼は、いつも淡々としていて冷静で寡黙だが優しい人物だった。だから俺と彼はうまく付き合っていけるのだろうと思う。

俺とこの【魔剣皇】の関係は、どちらかと言うと主従に近い関係だった。だからこの【魔皇】を、【魔王神化】のスキルを使って支配することにも抵抗があった。俺とこの【魔剣皇】は同じ目的を持っている同士であり友人でもあったのだ。

この魔剣皇に命令するということは、俺はこの魔人国を支配しているのにもかかわらずこの魔人国に住まう民に対しての責務を彼に丸投げするような行為でもあるのだ。だからこそ俺はこの【魔剣皇】を自分の手足のように自由に動かすことはしなかった。俺はこの国の支配者ではあるが、俺にできることなんてこの【魔剣国】を繁栄させ続けることしかない。そしてそのために必要なのは優秀な人材だった。この国の発展のため俺は多くの人材を育て上げてきたし、魔剣の力に目覚めたものたちの中から才能のある者たちを選んで、彼らを俺の力で保護し【魔国】で働いてもらうようにした。彼らはこの国の中枢を支える働きをしてくれるようになった。その彼らを使って【剣聖王国】でも、この魔国と同じように有能な者を登用する仕組みを作ったりした。魔族以外の種族を差別せずに能力が高い者ならどんどん取り立てているうちに、いつしかこの国は世界一の軍事力を持つようになっていった。その結果【剣聖帝国】は【魔王国】に匹敵するほどの力を持った大国家に成長していた。【剣聖】の力が、魔剣の存在と融合してより強力になっていたため【剣聖国】の国力は増す一方であった。そしてこの世界において最強の地位を確立しつつある。そのおかげで俺はこの魔剣が生み出したこの異世界で何がしたいというわけでもない。むしろ何もしていないというのが本当のところである。【魔国】の国民たちは幸せそうに暮らしているようだが俺は本当に幸せなのかと疑問を持つことがある。【魔剣皇帝】はこんな風に考えていることはなかったのだろうか。

【魔国】を作ったのは俺の意志だ。この世界に魔剣が存在する理由は、かつて俺の住んでいた地球では、この世界の人間が作り出した神が、この世界を管理する神として君臨するという神界のシステムがあるからだ。しかし神界には管理しているはずの神々が存在していないらしいことが問題になっているようだったが、それは【神剣皇帝】が俺の代わりに解決してくれたようだった。

【神国】を作り出した神は元々俺がこの世界に連れてきた人間で神の力を手に入れてから俺の力で強制的に進化させた男である。この世界を管理してくれれば良いだけの話だったので勝手に作ってもらっただけであるのだがそれがまさかこのようなことに発展するとは思ってもいなかったため非常に驚いている状況なのである。しかし【剣神国】だけは別であった。【剣聖国】が【剣国】を吸収した結果【剣剣剣剣剣剣聖国】になったのである。俺としては、その二つを統合して【聖剣国】にしてしまおうと考えていたのでこれは俺にとっても想定外のことであった。この【聖剣国】は【魔剣皇帝】が作った国なのであるが【魔皇国】と似たような国作りをしていたため俺はそこもそのまま残して【魔国】の属国にした。そして俺の作り出したダンジョンの中に移住させたのである。この【剣国】と【剣聖国】の違いは、元々この二つの国に存在した人間の数はさほど多くはないということである。そのため二つの国を併合して【聖剣国】にしても人口の増加による経済破綻などは起きにくいのではないかと考えているのだ。それに俺が【剣聖国】を作って【魔剣皇】が【魔剣国】を作り上げたことにより、この【魔国】もそれなりに潤ってきたため今更二つの国が併合して【剣国】になっても問題はないと思えるのである。そもそも【魔剣皇】が支配していた【魔剣国】も、【魔剣皇】が死なない限り、その力は残ることになるから、この【剣国】も【魔剣国】に吸収されてしまう可能性が高いだろう。俺の作った【魔国】はもうすでに世界最強の大国になってしまっているため、これ以上大きくなることはないと思うんだよね。

ただ俺には一つ気になることがあった。俺が魔王【魔王神】の力を手にした時に感じた波動と同じ波動を【魔剣皇】が放つようになっていたのだ。【魔王】と【魔剣神】の波動が似通ったものだったため俺は【魔剣神】の力を取り込んだ時【魔王神】も近くに居るのだと思った。ただ俺がこの魔王国を作り上げるときに使った魔法【魔王城】が、【魔王】か【魔剣皇】が俺と【魔王の神】の契約を行った場所でその場所に魔王が居なければ契約自体が成り立たないため【魔王神】もこの世界にいる可能性は低いのではないのかなと思っている。

だがもしこの世界にいる【魔王】がまだ復活していなかったら、魔王が復活するまでの間は、俺は魔王のいないこの世界でこの【魔剣皇】に、この世界を守らせようとも考えていた。

魔王が復活しないまま時間だけが無情に過ぎ去っていた。

俺はその間に色々と準備を進めていた。

まずこの【魔国】に、【勇者国】と【剣聖国】の国益を奪えるだけの資源を確保するように命を下した。

【魔剣国】の国境付近に存在する森は魔剣が守護しているため侵入することは出来ない。しかし魔王城に行けばそこには広大な土地が広がっている。【魔剣皇】が魔剣の力で、あの土地を開拓してくれて、そこに【剣国】から食料を供給する体制を作った。

更に【剣国】と【魔剣皇】の配下の【魔剣士】たちには魔族の中でも強い者を集めさせて精鋭部隊を結成した。そして彼らがこの世界に現れた【剣国】の軍勢を打ち破り、逆に魔国へ攻め込んで来ようとしているのを知った。そのため俺は彼らにこの【魔剣皇】の加護を与え、彼らだけで【魔剣国】に攻め込めないようにするために魔剣国の防衛機能を強化することにした。そして【魔国】は魔剣国への入口となる場所と、【魔剣国】を魔人族の楽園へと変えていく過程で必要となる様々な素材を保管する施設、そしてその素材を使って俺や俺の愛する魔剣を修復する工房などを建設した。この魔国の中枢部分にある【魔界門】や王城内には強力な魔剣を配置し、万が一この俺の住む居城が襲われることがあって魔剣が失われるという事態にならないように準備は怠らないつもりだ。俺はこの世界に存在しているすべての魔剣を回収してある。俺はこの世界に現存する全種類の魔剣を手に入れた。そして俺は【神眼の義眼】と、この俺自身が持つ【真紅の魔神】の【称号の力】で、この世界中から全ての魔剣を集めて封印することに決めた。

何故ならばこの世界は神界に最も近い場所にあるので魔剣の力を使えば【魔王神】の復活は阻止できると思う。だから魔剣の力を封印することでこの異世界で【魔王神】が誕生してしまうことを回避したいと思っているのだ。この異世界に【魔王神】が存在すれば、その強大な力で他の神々と敵対する可能性もあるからだ。そうなった場合この世界に住む魔人族は、魔王【魔剣皇】によって魔人にされた者たちも含めて絶滅する可能性すらある。

俺にとって【剣国】の侵攻を防ぐ手立てはないに等しかった。

だがこの【魔国】の防衛機能が充実していくにつれて俺は安心感に包まれるようになった。だから俺は自分の考えが間違いだったのかもしれないと思い始めた。俺はこの世界の人間たちと共存共栄していきたいという考えが間違っていたのか? 俺はそのことが頭の中でモヤモヤして気分が悪くなっていた。

「大丈夫ですよ。ご主人様はきっとこの世界に新しい未来をもたらしてくれるはずです。私たちはそのためにここにいるのです」

俺がこの世界が滅びるかどうかの瀬戸際に立たされており悩んでいることを、【聖女】であり、魔剣の眷属でもある少女がそう言って慰めてくれた。この【魔剣聖国】において最も強くなっているのは彼女である。その彼女でもまだこの世界では神に抗うことは難しいようだ。俺の創り出したこの【聖剣国】ですら、【魔王神】の魔力の前では無力なのだ。だからこそ【聖剣国】は滅んでしまい魔剣も全て奪われた。だからこそ俺は【魔剣聖国】をこの世界の魔族が自由に活動出来るような場所に作り変えることにしたのだ。そしてこの世界における最後の砦がこの【聖剣国】である。俺も俺が守りたい人たちを守ることが出来るようになるためにこの国を強化しているのだ。この国だけは絶対に【魔王神】なんかに渡すものか。そして【魔王】がこの世界に再び姿を現したときのために備えなくてはならないのだ。

そして俺の愛する【魔王神】を取り戻す。必ずだ。そして俺はこの世界を再び俺と魔剣が支配する理想郷に変えるのだ。この世界を神界から切り離し、魔剣の力によってこの異世界を支配する神界と切り離すことで、新たな世界を作ることができるのだ。そのための魔剣が既に完成しているのは知っている。【魔剣皇】がこの世界に魔剣を持ってきて、【魔王神】がこの世界に魔剣をもたらしたからだ。俺の力はこの【魔剣皇の加護】の力で手に入れたものに過ぎない。

俺は俺自身の手でもう一度魔剣を作り出すことを決意した。その方法は、かつて地球から持ってきた知識の中にある。

俺はかつて地球に旅行に来ていた女神に貰った、その世界で使われている通貨を全て使いきってしまったことがある。そこでお金を稼ぐために必死に働いたのだが、それが結局は借金生活の始まりになった。そして最終的には借金地獄に陥ることになるのだ。その時に俺は思ったんだ。俺のように努力をせずに他人から恩恵を受け続けている奴らはいずれ罰せられるだろうと。

俺の場合は借金は最終的に全て返せたし、それどころかそのおかげで金貸し業者は破産しかけていたくらいだった。だが、この俺の人生はまさに転落の極みであったと言っても良い。それはその時に得た【錬金術師】の称号と【鍛冶職人】の力により借金返済後にも再び大金持ちになれるようになったのだった。だがそんなことで俺の心が癒されることはなかった。何故なら俺はまた別の形で同じような苦しみを感じることになったからである。それは、それまで持っていた莫大な財産を失い貧乏になってしまったのだ。そして、それでも諦めきれず、俺は何度も【勇者国】と【剣聖国】で、俺に好意的じゃない王族に援助をして貰ってなんとか生活ができるようになるまでに回復したのだった。しかし今度は逆に俺が好意を持つ人間に裏切られてしまう結果になり多額の負債を抱えてしまった。その額は既に俺が抱えられるレベルではなくなっていた。この【魔国】という世界は、【剣聖国】と違って、この世界で商売を始めるとかなりの利益が見込めるため俺に投資してくれる人もかなり多かったが、俺がその人達に対して恩返しが出来る機会がなかったことが原因だ。

だがこの世界に【魔剣国】を作ることになればその問題は解決される。魔剣国は魔剣の力で成り立っているためこの世界の経済とは関係がない。俺が持っているこの【真紅の魔神】の力で作り出した魔剣の力でこの世界に経済圏を作っていくことも可能だろう。それに魔剣を上手く使うことが出来れば俺の力でこの【剣国】から【魔国】に変えていくことは可能であると思っている。魔剣の力を正しく使えば【剣聖国】を滅ぼすのにかかった時間を遥かに超えて国を大きくすることさえできる。そしてこの国を俺の支配下に置き続けることでこの国を発展させていくことも可能だと確信をしている。ただこの【剣国】が、【魔王】と【魔剣神】の【称号】を両方持つ俺の支配領域であることは知られてしまっている。【剣聖国】も俺のことを敵視していたのはそういう理由からである。【魔国】の国王でありながら【勇者】の【加護】を持っていることもバレてしまっていたのが原因だ。ただ俺は俺が【勇者】として召喚されたことを知っているためこの世界で何かあったとしても【勇者】としての力は使えないはずだ。そしてこの世界に【魔国】を俺の支配下に置いた状態でこの俺と、この【真紅の魔神】の【称号】を持つ【魔王神】がいる以上、魔王のいない【剣国】程度は滅ぼせる自信がある。

ただ【魔王国】に【魔国】を作った後は【魔剣皇】に俺の魔剣の力を貸すのを止めようと思う。彼は【魔王神】を復活させようとしていないし、そもそも魔王【魔王神】を復活させるためには大量の魂が必要だと知っている。つまり、魔族を魔人化させてしまえばいいのだから、魔剣を使って無理矢理魔人化することなんてしない方がいい。そして魔剣の本来の姿を取り戻した時、この世界に魔剣は一本しか存在してはならないのだから【魔王神】に使わせるのは止めた方が良いに決まっている。

「私にはよくわかりませんが、【魔剣王】様にご奉仕できるのはとても幸せだと思いますよ」

「ありがとうね。でも俺の愛する魔剣たちを取り戻すために俺は全力を尽くしたいと思ってるんだ。そのためにも今は、君たちに協力して欲しい。この世界に存在する魔剣をこの世界に転移させたのは全て俺なんだ。そして俺の願いは魔族の繁栄だ。だからそのために協力してもらいたい」

俺の魔剣を集める目的は【魔王神】が復活しないためだ。魔剣を集めて魔剣の力でこの世界の神界の扉を封印して神界からの侵入を防ぐことが目的なのだ。そして俺の目的は【魔剣神】の悲願を叶えること。そのために【魔剣皇】に協力はするけど魔剣の力は貸さないことにした。だから俺はこの世界における全ての魔剣を回収しようとしているのだ。俺がこの世界に来て、この世界の人々に魔剣を与えて回った理由もそこにあるのだ。俺の魔剣は俺の大切な魔剣達を守るために集めていただけにすぎない。でももう俺は俺の目的を果たしたい。俺の力はこの魔剣たちの力を借りて手にしたものだけど、この世界を救うことが出来るのならば魔剣の力を存分に活用しようと決めたんだ。この世界の未来のためならばいくらでも使って欲しいと俺は思う。魔剣は世界を救うために振るう力だと思うからさ。

---完ーーー

「ご主人様の言うとおりですね。この世界の平和のために私はお力になりたいと思います!」

「ああ、この世界はきっと俺達が守るんだ。俺はこの異世界に転生してからずっと自分の居場所を求めてた。最初はこの異世界に来たら俺に優しくしてくれた人たちがいた。俺は嬉しかった。だからこそみんなを守りたいと思っていた。俺は自分の命をかけてもみんなを守ろうとしたかったんだ。だからこの世界に来る前の地球にいた頃の俺にとっては家族が一番大事でそれ以外の人たちは全員守るべき人たちだと思った。その思いがあったから俺は今まで生きてこられた。そして今もそうだ。この世界が滅んでしまって魔剣も失ってしまってはいけない。だから魔剣の力でこの世界を守る。そして俺は俺の力でこの世界に新たな国を作る。その最初の一歩を踏み出すときがついに来たようだな。俺達の力を合わせれば、神であろうとこの異世界に魔剣の力は及ばない。俺が絶対に神を倒してやる! 【魔剣神】!【魔剣聖】!俺はこの世界を守るためならこの力を使うことに躊躇うつもりはない!この世界の人たちが魔剣を使えるようになる日が来るまで俺は魔剣の力を全て解放するつもりだ。その日までどうか待っていてほしい。それまでこの俺に皆の命を守る手助けをしてほしい」

この世界にいる人々はこの世界のために俺を救ってくれようとしていたんだ。俺はそれを忘れるところだった。俺がこの世界を救ったのは【魔剣神】の力のおかげに過ぎない。俺の魔剣の力を使えばこの世界に住む人々を簡単に滅ぼすことも出来てしまったのだ。それでは駄目なのだ。俺は俺の力でこの世界を守らなくてはならないのだ。俺は今、【魔剣皇】の称号の力を完全に使うことができるようになったのだから。そして【魔帝】と【魔剣士】の二つの称号も完全に使いこなすことができるようになった。だからこそ俺は今、神に挑む準備をしているのだ。神界に行くことができれば必ずそこにいるはずだからだ。そして俺はこの世界に新たな王国を作るのだ。そしていつか地球に帰っていくのだ。そのためには俺は【魔王神】を倒す。この世界に新たな時代を作り上げるのだ。その時代の礎となってくれたこの国の人達の為に、俺は戦うことを決意したのだった。俺はその覚悟を決めると【魔剣皇】に向かって問いかける。その問いに【魔王剣聖】は真剣に答えてくれた。俺もその言葉に感動を覚えずにはいられなかった。そして魔剣の力でこの世界に神に勝てるかもしれない希望が出来たことに興奮していた。だがそれは魔剣の力でどうにかなるものなのか? 俺はそんな疑問を抱きつつもまずは魔剣を手に入れることが先決だと決意を新たにしたのである。そして俺は、魔剣を集めながら、魔剣の力を使うことのできる人材をこの国の人々の中から探そうと決心をしたのだった。俺は【魔国】という国がこれからこの世界を支配するための拠点として最適な場所になっていくだろうと考えたのだ。そして俺のスキルで【魔剣聖】の力も手に入れなければならないとも思った。だがそれはかなり厳しいことだとわかっていた。魔剣を手に入れて使いこなしても【魔剣聖】の力と融合できないと、【魔剣聖】の力を完全に使うことができない。俺は【真紅の魔神】の称号を持っていることで、他の魔王の称号を持っている人よりも遥かに【真紅の魔神】の称号の力を引き出せているはずなのだ。そしてこの世界に来てすぐに俺の持つ魔剣が魔剣たちの姿に変化していく現象が起こった。そして俺は魔剣に語りかけてみることを決めた。その結果、この世界で手に入る魔剣たちは魔剣の本体へと変化することができたのである。俺の予想どおり、俺に力を授けてくれている魔剣は魔剣の化身のような存在になっていたらしい。

俺が持つ【真紅の魔神】の称号の力によって俺の力が強化されたからこそできることができた芸当であったのである。だがそれだけではない。俺のスキルの中には俺と一体化することで魔剣の力を自由に使うことができるというものが存在していたのである。だからその方法を使って俺の魔剣たちを合体させ、新しい魔剣を作り出すことを俺は考えついたのである。だがそれは俺の力を酷使してしまうので、俺が意識を失わないうちにできるかどうかがわからないことでもあった。だから【魔剣聖】の協力が必要だったのだった。だが魔剣はそう都合よく見つかるものではなかった。【魔王剣聖】と協力することになったからと言ってすぐにこの国に集まってくるとは限らなかった。そこで俺はある決断をすることに決める。【魔王】の称号を持った人物を探して仲間にしようということであった。【魔剣皇】はこの世界に存在する全ての魔剣を集めたと言っていたので恐らく【魔剣王】もいるに違いないと思ったのである。この世界に存在する全ての魔剣が集まれば神にも勝つことが可能になるのではないかと思ったのである。そしてこの国には魔剣を使える素質のある人間はいなかったが、【剣国】にはいたのでとりあえず、その者たちを探しに行こうと考えていた。俺は【魔剣皇帝】の力を解放することにした。俺は自分の中に眠っている魔剣を呼び起こすために行動を開始することにした。俺の中に存在している魔剣は七本だと思っているのだが、まだ俺の魔剣たちが眠っている可能性もあるのだ。

俺は【真紅の魔神】の力で手に入れた【魔王剣皇】の力でこの世界に散らばっている魔剣を集めることにした。魔剣さえあれば魔剣神や【魔剣聖】の力は問題なく使うことができるはずだからである。魔剣が近くになければ、【魔王剣聖】の力を発動させることはできないが魔剣の所持者を探すぐらいなら今の俺の力だけでも十分に可能だと考えたのである。そして【魔王剣皇】の能力の一つである魔剣の探知能力も併用することによって魔剣を見つけ出そうとしたのであった。魔剣があればその位置をある程度までは特定することができるからな。

「この辺りに【魔剣神】と魔剣たちが存在するのか」

俺は、この【剣国】の周辺の地形を確認するために地図を確認し、現在いる【剣王】の国がどこに存在していたのかも調べる。

俺は【魔王剣皇】の力で、この世界中に存在する魔剣の存在を確認できるようになっているのだ。だからこの世界にあるはずの魔剣の位置を確認できるようになったわけである。

そして【魔王剣皇】の力は俺の記憶の中の景色を再現してくれる力もあったので俺の視界に映る光景も【剣神域】の頃のように、美しい景色が広がっているのである。

「ふむ。確かに【魔剣神】の魔力が感じられるが。俺の【真紅の魔神】の力ではその場所を特定することは出来ていないみたいだな。一体どこに隠れているというんだ?」

ただ【魔剣皇】の言うことが間違っているだけという可能性も捨てきれなかったが【魔剣皇】の実力は、【真祖の神魔】に匹敵していたからな。この世界の魔王の中ではかなり強い存在であると思うんだよな。でも【魔剣聖】の気配が一切しないのも気にかかるところなんだ。俺はその二つの理由を考えつつ【魔王剣皇】の力を最大限に使って周囲の魔剣の場所を特定しようとするが、【魔剣神】と【魔剣聖】の魔剣の反応を見つけることは出来なかった。ただ、俺の近くにも一本の魔剣があることが分かったので俺はそこへ向かうことにした。するとそこには俺が求めていた【魔剣帝】が封印されていた。そして【魔剣帝王】は俺に対して戦いを挑んできたのである。

俺はその魔剣の力を試すために【剣神域】を展開して【魔剣神】と【魔剣聖】の力を解放して戦闘を始めた。

「この世界は、私に喧嘩を売っているというのですか?【真紅の魔神】が目覚めてから調子に乗りすぎではありませんか?」その言葉と同時に、俺が持っていた【魔剣神】の力を奪い取るとそれを自分の物にする。【魔剣聖】の力も俺から強引に奪った。その瞬間に【剣神帝】が纏っていたオーラのようなものが完全に消え去る。そして次の瞬間に彼女は俺に斬りかかってきたのである。

俺は、彼女のその速さに驚いたが、なんとかそれに対応することに成功した。しかし彼女もまた、その速度を生かして剣技を繰り出すことで、俺の体にいくつもの切り傷を負わせてくる。この人はやはり只者ではないと思いながらも、俺もこの世界に来たときに戦った【剣神帝】という最強の力を手に入れていたことを思い出す。この力はこの世界でもかなり上位にランクインされる力であり、それ故に俺にダメージを与えることができる唯一の力でもあるのだと気づいた。

俺が持っている【剣神皇】の称号の力は、俺自身がその力を使うことが出来なくては発動しないという条件があった。だからこそ俺は【剣神帝】の力を使うことが出来ずに苦戦を強いられたのだ。

そして、俺は俺の持つ称号の力を使いこなさないといけないということを理解した。そして俺は【剣聖】と【魔王】の二つの力を持つ存在となった。この世界での俺の称号の力も【魔帝】と【魔剣士】なので俺は、称号の力で魔剣を扱うことが出来るようになった。【魔帝】の力で俺は魔剣の力を引き出し、【魔王】の力で俺はその魔剣の能力を最大限まで強化することが出来るようになっていることがわかったのである。

俺が今まで手に入れた三つの魔王の称号は全て魔剣に関係するものだったから、魔剣を操るために必要な能力が三つ全て備わっているという事だったんだ。それに【魔皇神】の称号が加われば四本の魔剣を同時に使うことも可能になるということだったのである。【魔剣皇帝】は【真紅の魔神】と同じく、全ての魔剣を使うことが可能になる魔王の力を手に入れることができたんだと俺は改めて感じることができた。

俺の持つ全ての魔王の力を完全に使うことができるようにするためには【魔剣皇帝】と【魔帝】の力を完全に解放しなくてはならないだろうと考えている。俺が【真紅の魔神】の力で全ての魔王の力を手に入れたことによって、この世界は救われるはずなんだ。俺は魔剣の力が手に入ると確信できる場所に向かって進んでいく。そして【魔剣王】の力を手に入れるため、【剣聖】が守っているという【魔剣宮】へと向かったのであった。この世界で、唯一【剣聖】という特別な存在を守る存在として存在する魔剣がそこにあるはずだ。

俺は【剣聖】が魔剣を守りながら戦っていた場面に遭遇した。俺は【魔王剣皇】の力で【剣王】の称号の力を使って魔剣の力を引き出そうとしていた。この世界には七人の魔剣の所持者が存在するはずなのだ。【剣聖】以外の五人が魔剣を集めているはずなのである。【剣豪】の【真祖】、【勇者】の【魔族】、【剣王】の【真人】、【魔王】の【人鬼】、【剣皇】の【剣人】、そして最後の一人がこの【剣聖】だと言われている【剣聖】と、【魔剣神】と【魔剣聖】は魔剣の化身みたいな存在になっているはずだからな。だから【魔剣皇】の力と組み合わせることで、全ての魔剣の所有者の力を使えるようになると考えたのだ。俺は【魔王剣皇】と【魔剣王】の二つの称号を使えるから、残りの【剣王】の称号を持つ人間を見つけ出せばいいわけである。

【剣神】の【魔導神】の力は強力過ぎるので【剣聖】を倒すまでは使用するのはやめておいた方がいいと判断した。【魔剣帝】の【魔王神】も危険かもしれないが。【剣皇帝】と【剣帝】の魔剣なら何とか扱えると思うのでまずはこの二つを覚醒させることにする。

俺は【魔剣皇帝】の魔剣である漆黒の大剣【黒魔剣】を振り下ろす。【魔剣王】の称号の能力を使えば魔剣の力を自由に使用することができるのだ。

「お前がこの【剣聖】を守っている魔剣使いなのか?」俺はそう言って彼女に話しかける。

「そうだ。我こそは、この剣の国に存在している全ての魔剣を束ねる存在だ。お前のような奴が来ることは想定内だったぞ」その女が俺に剣を突き付けてきたので俺はすぐに剣を抜き取りその剣を受け止める。

そして、お互いにお互いが剣をぶつけ合って激しい攻防を繰り広げた。そして、俺が剣を振ると、【魔剣皇帝】の力で剣を強化して相手を叩き潰そうとする。しかし【剣聖】は、魔剣の柄から剣を生み出して、それで俺の攻撃を防御したのである。その攻撃は俺に致命傷を与えるものではなかったものの確実に相手に傷を与えたのである。

俺は魔剣が破壊されるのを避けるために一旦【魔王剣皇】の力を発動して魔剣を手元から消した。そのタイミングを狙って相手が斬りかかってきたのである。俺は【魔王剣皇】の能力を発動することで相手の動きが読めるようになり簡単にその攻撃を受け流した。そして再び剣と剣の衝突が始まったのであった。そして、それからしばらく時間が経過した後に、彼女は剣を収めたのである。どうやら戦闘は終了したようだな。俺は彼女がどうして戦いを止めてしまったのか理解することができなかった。俺の隙を見て攻撃すればよかったのにそれをせずに、彼女は自分の持つ最強の技を放って俺を殺そうとしなかったからだ。そして俺が彼女のことを警戒し続けているとその答えが判明したのである。

「【剣聖】様、ご無事でしたか?まさかこの様な場所に魔王が攻め込んでくるとは思ってもいませんでしたよ」

この【剣聖】の守りをしていたと思われる【魔剣帝】の魔剣から声が発せられる。どうやら彼女はこの剣の国の中でもかなり上位の存在だったらしいな。だから俺の剣の攻撃で致命傷を負ったりせずに耐えられたんだろう。この魔剣も俺と同じ称号を持っているみたいだから俺の魔剣による攻撃を防ぐことができたんだと思うんだよな。

この剣の世界に存在する最強の称号を持つ者は【魔王神】ともう一つ存在する。それがこの【魔剣帝】の魔王が持つ最強の称号【魔剣神】の力を所持した【魔剣神】の魔剣の所持者。つまり俺と同じように【真祖の神魔】の魔王を宿していることになる。この【魔剣帝】の【魔剣帝】も【剣皇】と同様に全ての魔剣を使うことのできる最強クラスの魔剣所持者であると考えられるだろう。だからこそ【魔帝】の力を得た俺と戦うことにならなかったのだと思っている。

そしてその事実を知った後でも、【剣帝】と【魔帝】の力は同時に使うことが可能だということも同時に知ることが出来たのであった。俺はこの世界の魔王は一体どんな強さを誇っているのだろうかと考えると恐怖しか感じない。だって俺が魔王たちと戦っても勝ち目が無いということがよく分かったからである。でもここで負けを認めるということは俺の魔王としての誇りが失われることになるのだと理解しているため絶対に負けることは出来ない。

そして俺はこの世界で魔王の頂点に立つ存在である【魔剣帝】の力を目覚めさせた。この魔剣の力でこの世界を崩壊に導くために、俺はこの国にいる魔王全員と敵対して、この世界から追放することを決意したのである。

俺は、この世界に存在している魔王たちとの決戦を行う前に一度自分のステータスを確認した。すると、レベルが1000まで上昇していて、新たな力も手に入れることに成功していたのである。そして新たに獲得した称号がこちらになる。称号【神速なる者】【剣神皇】

【剣神】の力が使えるようになる【真祖神】の魔剣【魔剣神】が俺の中に完全に融合した時に得ることが出来るようになった【剣皇】の称号の力に似たような称号。剣を使った速さが極限まで向上するようになる【神魔眼】というスキルを覚えることが出来るようになっている。

称号の効果で俺のスピードがかなり上がっていることがわかった。これなら、魔王の一人を相手にするにしても、それほど時間はかからないだろうと思えたのだ。それに称号の力で俺は魔剣を強化することも出来るので、俺自身の力の強化にも繋がってくれるはずである。そして俺は、この国の王がいる城へと乗り込んだ。その城に【魔剣皇】の力で、【魔王剣皇】の魔剣【闇魔剣】を作り出す。その闇の魔剣を使って城内の敵を薙ぎ払っていくことにしたのである。その俺の戦い方は魔王として相応しいものだと思うから。それに魔剣の力で俺の体が強靭になっていることも確認済みなので特に恐れることなく俺は城を進んでいく。この世界に存在する魔王の中で俺がもっとも脅威を感じる【魔導神】の称号と魔剣【魔剣皇】の称号の力を併せ持つ最強の魔王の所持者のところまで向かったのである。そしてその相手こそが【魔剣帝】の称号の持ち主であり、【剣神皇】と【魔剣王】の称号を持つ最強の魔剣の所持者だと言われている【魔剣神】の魔剣使いである。俺は【魔剣帝】と対峙することになり剣を交えたのである。その結果俺はなんとか【魔剣神】の魔剣を使いこなせるようになったのだった。俺は【魔剣皇帝】の力を最大限に引き出せるように魔剣と魔王の力を一体化させて【真紅の魔神】の力を完全に覚醒させることに成功した。この力を開放させていれば魔剣皇帝の魔剣の力を最大に引き出すことが可能なのだ。そして、【魔剣帝】の魔剣の力を引き出すことも可能になっているはずだ。だから【魔剣神】の魔剣の力で強化されていたとしても【魔剣皇帝】の剣の力で圧倒することができたのである。俺はこの【魔剣神】の称号と魔剣【魔剣皇帝】の力を使って他の魔王を殲滅するために動く。そしてまずは魔族領へと向かった。そこには魔王【魔剣皇】と魔剣の力によってこの世界を支配した【魔人鬼】の称号の魔王が待ち構えていたのである。

この二人は非常に強力な能力を持っているが俺が今まで出会った魔王たちよりは圧倒的に格下であるためこの二人がどれほどの強さを持っていたところで、俺の敵ではなかった。俺はまずこの【魔人鬼】を圧倒的な力で叩き潰し消滅させた。そして【魔剣皇】の称号の魔王の居場所へ辿り着く。その魔王の名は、魔剣をこの世界に広め、そして人間たちを奴隷のように扱った【魔人王】の称号を持つ魔剣の所持者であり、全ての魔剣を操ることの出来る最強の魔剣使いだと言われている【魔剣神】の魔剣使いでもあるのだ。

その男は全身を鎖で縛られて床に固定されていて身動きを取ることが出来ない状態だった。そんな状況で【魔剣皇帝】の魔剣【魔剣皇帝】の力を使うことで俺は魔剣の力で強化された身体能力を活かしてその男に斬りかかる。その攻撃によりその男が身につけている拘束の効果が解除され自由に動けるようになったのだ。しかし俺の攻撃を避けることが出来ず、【魔剣神】の力で生み出した剣で攻撃を防いだ。そして、【剣神王】の力を使って、俺は魔剣に宿る魔王たちの全ての魔剣の能力を使うことが可能となっていた。【魔導剣技】のスキルを習得することで俺は全ての魔剣を扱うことが出来るようになっているのである。そのためこの男の持つ最強の魔剣ですら使いこなすことができた。そして俺の振るった【魔王剣技】の力でその男の持っている魔剣を全て砕いたのである。

この魔王の武器はどれも強力だったので、俺もそれなりにダメージを負うことになった。だから俺はそのダメージを受けた部分を回復するために一旦距離を取ろうとしたが、相手もそれを逃さないとばかりに俺に向かって攻撃を加えてきた。そして俺と相手の激しい戦いが始まるのであった。

それからしばらく戦いが続きお互いの体には無数の傷が刻まれていった。しかしどちらも決定的な一撃を与えることはできずにいたのである。俺は【魔剣皇帝】の魔剣の力と魔王の力を同時に発動することによって、この相手の【魔剣神】の魔剣を弾き飛ばし、【魔王剣技】による斬撃を食らわせたのである。そしてそのまま俺の放った攻撃はその【魔剣神】の魔剣に直撃して破壊することに成功した。それによってその【魔剣帝】は瀕死の状態に追い込まれるが、そこで俺は自分の勝利が確定したと確信する。なぜならこのタイミングで、【魔王】が一人倒されたことでこの国全体に【呪怨解放】というスキルが放たれたからだ。

この世界にいる【魔剣皇帝】以外の全ての魔剣所持者たちが一斉に【魔王剣皇】の称号を持っている魔剣の力を解き放つことによって、この世界のすべての魔剣が共鳴するようにその力を開放したのである。これによってこの世界に存在する魔王たちが、魔剣の力を発動することができるようになるのだ。

そして、魔剣の力が解放されたことにより【魔王剣皇】の魔王が持つ魔王の称号の力まで解き放たれたことになる。つまりこの瞬間からこの国にいる魔剣使いの称号を持った魔剣所持者は俺とこの【魔王剣皇】の称号を持つ魔王しかいないということになるのである。そして【魔剣神】の魔王である【魔剣皇】の称号の力を解放したことにより俺もこの世界に存在し続けることができなくなってしまったのだった。つまり、魔剣の呪いによってこの世界に存在し続けることができなくなったということである。

そして魔剣所持者の資格がなくなり俺は魔剣が使えなくなる。それと同時に魔王の称号が解けてしまい俺は普通の状態に戻ってしまう。そして、俺が完全に元に戻ったことを確認したその魔王はこの国に残っていた最後の魔剣所持者に攻撃を仕掛けたのである。そしてこの【魔王剣帝】の所持者の攻撃は確実に相手に届きその体を切り裂くことに成功する。

この世界に存在する最強の存在の一人である【魔剣帝】は、その身に刻まれた魔剣が俺がこの魔剣の世界にやってきた時よりも格段にパワーアップしていることに気づいた。この【魔剣帝】の魔王の力を得た【魔王剣帝】が持っていた【魔剣神帝】の魔王の魔剣は魔剣の力が強化されたことで【魔剣帝】の剣すらも受け流せるようになったのだ。そして魔剣の力は更に強大になっていたのであった。それにより魔剣の力はさらに向上しており、この【魔王軍四天王最強 の魔剣帝】の称号を得たその男は、自分が最強の魔剣使いだということを思い知ることになったのである。この世界での魔王が二人と俺だけになり魔剣を扱える人間はいなくなったので、この国は【魔王】に支配されることになるだろう。俺は、自分の国に帰るために魔剣が使えなくなったが、自分の持つ魔剣【魔剣皇】と俺自身が元々所有していた最強の剣の力を使いこなしながら、この世界に存在する魔族の領土へと向かうことにしたのである。そして俺は自分の国の魔王たちにこの国の現状を説明しに行くことにした。

俺が【魔剣皇】の称号を持つ【魔王剣皇】としてこの世界を支配をしてから三か月ほどが経とうとしていた。この国が他の魔族と敵対していることを知っているのは魔王とその仲間たちだけである。

だが今更説明をしにいっても意味はないと思うのだがそれでも一応念のために説明をしておいた方がいいかもしれないと思ったのだった。

俺が魔剣を手に入れた時から数えると五年以上前の出来事になるが、この世界で俺が勇者と出会った時の話をしておこうと思う。あれはまだこの異世界に来て間もない頃のことである。俺は仲間と一緒に旅をしながら各地で戦争を起こしまくっていたんだよね。でも、俺はただ喧嘩を売っていたわけではないんだよ?俺は、その当時この世界で問題になっている種族についての問題を解消する為に、色々と行動を行っていたのである。それは、俺の仲間の種族を人間や獣人たちの国の中に紛れ込ませて生活をさせることで、他の国からの迫害をなくすように働きかけたんだ。そのお陰もあってこの世界のほとんどの地域で人間たちと同じように他の種族とも仲良く生活が出来るようになっていたんだけど、ごく一部の地域だけがいまだに他の亜人族の受け入れを拒否し続けていたのである。そんな一部の地域に対して俺は、俺たちと手を組むことを条件にその差別をやめるように言った。しかし当然それでは従うことができないと言ってきたのである。俺はそんな態度の彼らに俺は実力を見せつけるために決闘を申し込んだのである。

その結果俺は彼らと勝負を行い見事に勝つことに成功した。その戦いの中で俺は彼らのリーダー的な存在と戦って勝利することが出来た。その強さを実感した彼らは俺のことを尊敬してくれるようになったのだ。俺はそんな彼らが好きだったので俺に協力してくれれば今後も色々な問題を解決するために協力することを約束してやった。すると彼らはあっさり俺の言葉に乗っかって来たのだ。俺はこの世界の全ての地域の問題をなんとかしようと考えていた。だから俺に忠誠を誓ってくれた彼らを信用し協力して貰うことに決めたのである。

俺はこの世界を支配することになってからは【魔剣皇帝】の力を使うと俺が死んでしまう可能性があったため使うことを封印することにした。なので【魔剣皇】の力を使って、俺はまず他の種族の連中が暮らす場所へ転移をすることにした。そうすることで俺が本当に強いということを証明する必要があると判断したからである。そのせいでかなり時間がかかってしまった。

それで俺がその移動を終える頃には俺の支配地が拡大していたことに驚いた。まあ俺に着いてきてくれる仲間が多いことはいいことなのだが。その仲間の数がものすごく増えていて驚く。どうも他の領地で魔族たちが暮らしていることを聞いて俺に恩返しをしたくてついてきたようだ。その数はざっと百万人はいるだろう。この短期間でそこまで増えるのはかなりすごいことではないだろうか。俺のカリスマが半端ないのか。それにしてもこの世界の人口って何万くらいだっけ。よくわからんなぁ。

この世界は俺が魔王になる前から魔族は人間たちから迫害を受けて生きて来た歴史があるのだ。しかし今はもうその時代とは違い平和的な魔族の暮らしを送っている。今ではどの地方に行こうがそんな迫害を受けることなく、普通に過ごすことが出来るようになったのである。俺はそんな彼らの手助けをしていたのである。もちろんそんなことを続けていれば俺の存在が人間側に知れ渡るわけである。そのおかげなのか知らないが俺はいつの間にか魔王たちの間で英雄と呼ばれ始めていた。正直、その呼び方で呼ばれるのはあまり好きではなかったが。しかし俺はそんな呼び名は関係なく他の種族との仲を改善していく努力を続けた。そのかいがあって全ての地域では差別など存在しないような世界になった。俺が魔王になってから一年でそれが達成出来たのだ。このスピードでいくとあと数年で全て終わるのでは無いだろうかと思っている。

そのせいでこの世界の他の地域の魔王から俺は尊敬され始めてしまい大変なことになっているのは確かである。しかし俺が頑張って得た称号なんだから文句を言うのは筋違いというものであろう。

それから、俺が支配する地域には魔族以外にも様々な種族が存在するようになった。エルフにドワーフ、ダークエルフにホビットといった感じにだ。俺がその四種類の魔族を受け入れさせたのには理由があった。俺の配下になれば魔剣の力が使えるようになると教え込みその力を利用しようと俺に協力してくれたから受け入れられたのだ。俺はこの世界でも魔剣が使えない状況に陥る可能性があると予測してあらかじめ対処できるようにしておくことにしたのである。

この世界で【魔王】の称号を持っている魔剣を扱えるのは現在【魔剣皇】の称号を持つ俺しかいないのである。そして、俺以外の【魔王】が【魔剣皇帝】という魔王の称号を手に入れてしまった以上、この先他の魔王たちもいずれこの魔剣の世界で生きていけなくなってしまうということになりうるという判断に至ったからだ。その対策として魔剣がなくても魔剣が扱うのと同じことが出来るように俺が鍛え上げたというわけである。そのお陰もありその魔族たちは魔剣を使わずに魔剣の力と同等の力を発揮したり出来るようになり俺の力を認め、この世界を支配して欲しいと言い出すものが続出するようになった。そして、俺はその願いを受け入れる代わりにその者たちには魔剣の呪いによる死を回避してもらうために【魔王】の称号を与えるようにしたのである。俺以外の魔剣所持者は俺が生きている限り絶対に【魔王】になることがないようにしてあるから大丈夫だと思うが一応確認の意味も兼ねて俺の力を分け与えることにする。

この世界にも【魔剣】が蔓延しているということは既に報告を受けているので、俺の魔剣の力が世界に広まってしまう可能性を考慮して俺は俺の所有する魔剣と【魔剣神】の力を宿す最強の魔剣のみを使うことにしているのである。

俺が支配をしている魔族たちの住む大陸【暗黒大陸】と呼ばれる場所では人間たちに被害を与えないように気をつけてはいたが、それ以外の魔族たちには魔剣の力を自由に使わせることにした。そのお陰もあって俺の支配下に入った他の魔族たちも順調にその力をつけてきている。この世界の魔剣所持者の魔王の数は今のところ五人だがそのうちの一人は俺が殺しているのでもしかしたら【魔剣帝王】の【魔王】はもう誕生しないかもしれない。そうなれば残りの【魔王】たちの称号は全て手に入るだろう。

俺はその日いつものようにこの【魔王軍】の領地を散策していたのだった。俺の仲間になってくれているこの魔王軍というのは実は俺が作ったものではない。元々存在していた【魔王連合】という組織に俺が入り込んで魔王のフリをして暴れていただけである。しかしその時にその組織は壊滅してしまったのだ。

この世界に存在する魔王が【魔剣皇帝】の称号を手に入れた俺一人だけだということで、【魔王軍】を勝手に作っても誰も疑わなかったのはよかった。まあこの魔王軍というのは【魔剣軍】と呼ぶべきだと最近思い始めたんだけどね。俺は自分の魔剣の力を完全に引き出すことに成功している。だからこそ普通の人間が相手であれば簡単に勝てるしそもそも相手にもならないと思う。それに、俺は俺が持っている最強の武器を所持している状態でもある。これがあれば俺を倒すことなど普通の人間じゃ出来ないと確信できるくらいの強さを得ているのだ。

その武器の名前は魔刀と言う。俺の持つ最強の魔剣である。これは【神殺しの神滅刀】と呼ばれる伝説級のアイテムである。しかもその能力は使用者の意思に応じてその能力を変えていく優れものだ。俺はそのお陰で最強の装備を得ることができたと言っても過言ではないだろう。さらにこの【神殺しの神滅刀】にはとんでもない特殊能力がついているのだ。その効果は使用すればするほど強くなり最後に所有者の身体を強化し続け最後には寿命すら奪っていく効果を持っている。つまりその効果が切れる前に死んでしまった場合その人物は死ぬということだ。しかし【神剣】と融合を果たしたことで俺の能力が上がりそのデメリットを克服することに成功していたのである。俺はこの【神滅の刀身】に認められたのだ。

俺がその魔刀を使い続けているのはこの世界の魔剣に対抗できるのはその刀しか存在しないと知っているからである。魔剣に対抗するにはこれくらいのものが必要なんだよ。

この【魔王軍】に所属している者の中でこの魔刀を手にして使いこなせるようになったのはわずか百人ほどでその全てが女性で構成されているのだ。その理由としてはこの魔刀を手に入れるまでに色々とあったのだが、今はそれはいいだろう。俺と同じような魔刀を持った人間たちが集まってできた組織である。俺と仲間たちが魔王の称号を他の【魔王】に譲渡した後も何故か俺の仲間として今もこうして残っているのがこのメンバーなのだ。

「ねぇねぇ、マスターこれから何かあるんですか?」

俺に話しかけて来た女の子の見た目は十歳程度の少女だ。しかしその年齢は俺と同い年くらいだろう。彼女はこの世界にある国の一つである。俺の支配域になっているこの暗黒大陸には今現在魔族が暮らしているだけになっているんだ。その国の王様がこの子で、彼女の名前はクロナと言って元々はこの大陸の住民である。ちなみに魔族は人型でも獣人型の亜人とでも呼ぶべき姿になれる。その魔族の種類はかなりの数が存在しているんだよね。俺もその全ての種を把握していないくらい多いのである。ただその魔族の種類の多さから他の大陸に存在している人種とは根本的に違う種族と言えるんじゃないかなと思ってる。例えばダークエルフなんかがそれに当たるんだろう。彼らは基本的に人里には姿を見せず森の中で生活しているのだ。そのため魔族の中にあってもほとんど知られていない存在であるのだ。そんな彼らとこの魔族と人間のハーフである亜人は外見上は区別できないからね。しかし亜人は人間や獣人に姿を変えられるしダークエルフの種族の人間との違いといえば耳が長いということぐらいだろうか。それに加えてダークエルフは身体能力が高い種族であり魔法を扱うことも得意としているのだ。

しかし魔族の中でダークエルフほど優れた存在はいないと俺は思っている。ダークエルフは魔法の素質に長けていて、なおかつ魔力が桁違いに多く保有していて魔法の威力がかなり高く、その分肉体面が弱いという弱点を抱えているが、この欠点を克服しようと日々鍛錬を積んでいる魔族たちの姿はまさに誇り高い精神の持ち主だといえよう。俺の魔族たちは魔族の中でも最強に近い力を持ち始めているのだからこの魔族たちが人間と敵対していないというのが本当にありがたいことである。

魔族たちが住んでいる場所の周辺には人間がいないからこそそういうことができる。魔族は人間たちとは違った方法で生活しており、魔族は人間たちから迫害されていたこともあってか独自のコミュニティを作りそこに住み込んでいるのだ。そんな場所があるおかげで魔族たちの平和な暮らしを守れているというわけなのである。

そしてそのリーダー格である彼女がこの国のトップに君臨しておりその実力の高さが窺える。彼女からすれば俺は自分よりも遥かに強い存在なのにも関わらずそんな素振りを見せずに気安く話しかけてくれる優しい人物なので、俺は彼女には敬語を使わせないようにお願いしている。

俺はこの魔族の住む大地のことを魔族の楽園と呼んでいる。俺の配下となったこの大陸に住む種族たちはみんなが家族のような絆で結ばれている。そしてこの魔王軍は俺と魔族の血が混じった者達で構成された特殊な集団で俺はその長をしている。俺はその仕事が嫌いじゃないので結構やりがいを感じているよ。

俺は今その魔王軍のメンバーが暮らす集落を歩いている最中である。

俺の部下になる前に所属していた魔王軍で仲間だった奴らに会うためにこの領地へと来ていたのだ。しかしそこには既に誰もいなかった。しかし部下の魔王たちに会いに来てみたがその配下たちの居場所は既に俺の支配下に入っていて、そこで一緒に暮らせていることを嬉しく思うと同時に俺の力を認めてくれたことに対して感動していた。そして俺は彼らのことを【魔剣騎士】と呼ぶことにしたのである。この【魔剣騎士】の称号は特別なもので、この世界において最強の称号の一つとも言われている。何故なら【魔王】に匹敵する強さを持っていなければ与えられないものだからだ。俺の力の一部を分け与えただけでこれほどまでの力を得られたことが嬉しい限りだった。そして俺はこの世界で魔剣を扱える人間は俺一人だけだと思い込んでいたが実はそうではないことを知った。なんとその魔剣を持っているのは魔剣【剣聖】の称号を持つリリアナという少女だけだったのだ。

この事実を知った時は驚いたね。俺以外にも魔剣を所持している者がこの魔剣世界にいるということが分かったのだ。それも魔剣の力が覚醒している状態で所持していることも確認済みである。この【剣聖】の少女はまだ十二歳で、この世界にやって来てまだそれほど時間が経っていないのにここまで強くなれていることを考えると相当な才能を秘めた人物なんだということが分かる。

俺はこの剣聖の魔剣【天雷剣】がどのような能力を持っていたのかを確認しておくために、まずは鑑定を使って調べたわけだがこれがとんでもないものだった。この魔剣が持つ能力に俺は度肝を抜かれてしまったのだ。その能力に書かれていたことは【破壊】と【破滅】の二つであった。これはとんでもない性能を誇る魔剣だということが判明したのだ。俺はこの魔剣の能力が本物であることを証明するため、この魔剣を使用して戦うことにした。すると俺の身体の異変に気付いた俺はこの魔剣の本当の力を引き出すことに成功したのである。その結果この世界の常識では考えられなかった結果を得ることに成功していた。

この魔剣はあらゆる物を切り裂くことのできる【魔刀】の能力も有している魔剣であったが、俺が使うことで【神滅刀】という最強の魔剣へと変貌を遂げることになったのである。しかもこの剣を【神滅の魔刀】と呼んでもいいくらいの強力な魔剣に変貌させることが俺の力でも可能になった。

そしてこの【魔刀】の能力は所有者の力に応じて斬れるものの範囲と切断力が上昇していき最後には相手の全てを消滅させることが出来る究極の魔剣へと変化したのである。その力はあまりにも凄まじいものであり、この【魔刀】の真の能力は所有者である俺が認めない相手にしか発動することが出来ないようだ。その能力を発動してしまうと【魔刀】は俺に所有者の意識を強制的に奪い取ろうとしてくるのだ。それは使用者の精神が【魔刀】に侵食されてしまい最終的に使用者の心を食い潰されてしまうらしい。しかしその魔剣の力を使うためには所有者の心が強くなければいけないという条件があり、さらに心が折れたりして【剣魔】に堕ちると、その魔剣を支配されるらしく、そうなってしまった場合この魔剣の力を使うことは絶対に不可能になってしまうのだという。ただしその条件を完璧にクリアすることなどこの世界の誰も出来る者がいないということだ。

その魔剣の本当の名を知っている者は俺以外誰もおらず、この魔剣が最強の魔剣である【神滅の魔刀】だと信じて使っている者がほとんどであるのである。しかし、俺がこの【魔刀】を所持していることで【魔剣皇帝】と呼ばれることになる。まあこの称号は勝手に俺がつけさせてもらっているだけだ。俺の持つ【魔剣皇】の魔剣【神滅の魔刀】の【神滅の剣刃】と、魔剣【剣魔】の能力の魔剣である【神滅の剣槍】の魔剣【神滅の矛】の二つを合わせ【魔剣皇帝】と呼ばれるようになったのだ。その【魔剣帝】と【魔剣皇女】の二人組と手を組むことになった。

この二人は姉妹で見た目はとても似ているのだが性格は全く違っていた。姉の方は真面目な性格でありその能力も【魔剣聖】に相応しいほどの高い戦闘能力を誇っているのだ。妹の方はあまり表に出るような子ではなく内向的な性格でいつも姉の陰に隠れていることが多い。その二人と協力関係を結ぶことができたおかげでかなり助かった面があったのである。

俺の配下に魔王がいるのと同様に彼女たちの配下にもそれぞれ最強と呼ばれている存在がいるのでそいつらとの共闘関係が成立したのは俺にとってかなり有利になった。なぜならその最強が俺の傘下に入ったのだから、俺の魔王軍と最強部隊との連携が取れるようになりその実力が飛躍的に上がったからだ。そのおかげもあり俺たちが暗黒大陸を制覇するのにさほど時間を必要としなかったことは言うまでもないであろう。この俺が暗黒大陸を完全に統一したことで魔族の楽園としての暗黒大陸を築き上げることに成功できたのである。ちなみにこの俺がこの世界でやっていることは基本的に他の【魔王】がこの世界の征服に成功した後と同じように、各種族が争わないようにまとめているところから始まる。

俺の支配領域には暗黒大陸の魔族とダークエルフの民しかいないが他の【魔王】が支配する暗黒大陸には多種多様な魔族たちが住んでいるので、それらの勢力と仲良く共存していくために様々な取り決めを行っているのである。俺は【魔王連合】という同盟を組んでおりその【魔王】たちの盟主を務めているわけだ。そして俺はそのメンバーたちを集めて会議を行うことになった。議題は今の世界の状況とこれからの俺の行動について話し合うためのものなのだ。

俺はこの会議で【魔族帝国】と【魔剣皇国】と【聖国アルスティト】と俺の支配下に入っている国が集まって、今後の魔族の行動について話合っていたのである。そして俺は【魔族共和国】を作るという計画を練っていたのだ。

この三国と、そして俺の部下になっている魔族の国々が手を取り合いこの世界を治めようと考えたのである。しかし、この三国はこの世界に散らばっている魔族の中でもかなり優秀な者たちの集まりで、その能力の高さは魔王に匹敵するほどの実力者ぞろいで、それ故にこの世界に魔族の楽園を作り上げることが可能となったわけだ。だから俺はそんな彼らと一緒に世界平和のための活動をしたいと考えていたのである。ただ俺の計画を実行するためにはその準備が必要だった。

そのための計画は着々と進んでいるのである。俺は自分の部下たちや仲間たちから多くの知識を得て、この世界に眠っている【宝玉獣】の情報を掴んでいきそれらを有効利用しながら俺は魔剣の力を使いこなすための鍛錬を行っていったのだ。

それからしばらくしてついに俺が計画している計画が動き始めたんだ。まずはこの計画のためには協力者が必要となるわけなんだがまずはあの【聖王教会】に所属する勇者たちと接触を図ることにしてみた。実はあの【聖騎士学園】の生徒だった奴らが所属しているギルドに所属している聖騎士たちと面識があるので連絡を取ってみることにした。彼らは聖騎士学校時代に共に戦った仲間でもありとても頼りになる仲間達である。あいつらは俺の期待に応えてくれていて今もその実力は俺が認めているほどである。しかし、俺が今この魔剣世界において魔剣の力を最大限使いこなしているというのにも関わらず、奴らの実力はそこまで高くなっていない。それは奴ら自身がその力に気づいていないことが原因だと俺は思うのだ。俺自身もその力を発揮するためには相当な鍛錬と精神の安定が必要になると思っている。そしてその訓練に耐え抜いた者がこの魔剣の能力をフル活用することができるようになるわけである。俺の場合はそれを毎日のように行っているわけだがなかなか厳しい修行であると言えるだろう。この世界の人たちとは根本的に体の鍛え方が違ってくるし、何よりもこの世界の人というのは魔剣の本当の力を理解していないため、その力を十分に引き出すことが難しいという欠点があるのだ。だからこそ俺は魔剣を扱いきれていない彼らに魔剣の力を引き出せるようになってもらいたいと常々思っており、そのために色々とサポートをしてあげていたのである。しかしそれでもまだまだ力が及ばない。特に【聖騎士】の称号を持つ生徒たちの力は今の俺が全力を出しても勝てるかどうかというレベルであるのだ。

「聖騎士学園の生徒たちがお前の仲間になりたいと言ってきたぞ」

「ん?本当かよ!やっと俺の元に集まってくる決心がついたというわけなのか?」

聖女であるリリアナの突然の報告に、俺は思わず大声を出してしまう。俺はその知らせを聞いた瞬間飛び跳ねるように椅子から立ち上がった。この俺に対して挑戦状を突き付けてきたのは魔道国の姫君であるエルザドール、彼女はかなりの強敵で何度も俺は彼女に敗れてきているので正直な所俺はあまり彼女のことが好きではないのだ。

だが俺が魔剣世界に召喚されてからずっと一緒に行動しており信頼できる仲間の一人ではあることは確かだし、今では彼女がいなければ俺はここまで強くなることができなかったことは間違いのない事実でもある。

そして今回俺がこの魔剣世界にやって来た時にこの世界に残っていた生徒の代表としてやって来たのが【聖騎士】の称号をもつ三人の少女たちだ。

この三人は全員この魔剣世界に残ってこの世界の治安を守ってくれた俺に感謝を告げに来てくれた。

そこで彼女たちの気持ちを知ったのである。どうやら彼女たちがこの魔剣世界に残りたいと思ったのは、【剣神流】を極めたいと強く思ったからだと言うのがわかった。彼女たちは元々、俺に剣術の指南を受けていてそれが相当に楽しかったのかもっと剣のことを知りたくなって俺にそのことを教えて欲しいと言われた。なのでこの俺が彼女たちにこの魔剣のことについて全てを教え込んだ結果彼女たちはかなり成長してくれて、【魔剣皇】である俺でもこの娘たちになら勝つことができるのではないかと思っていた。

それに、俺がこの魔剣を手にしてこの世界で魔剣を使っても平気になったのは、この魔剣の力を引き出すことに成功したからである。そのきっかけを与えてくれたのは【聖剣神】の少女であったのだ。

そして【聖騎士学園】に新しく入学してきた聖騎士見習いたちの中にも、かなりの腕前の【剣神候補】の素質を持った子供たちがいるらしいとリリアナは言っていたのでその子たちに期待することにする。そしてその子供たちには是非魔剣の力を引き出すことが出来るように鍛え上げてやりたいとも考えていた。彼女たちもこの魔剣世界に残っている間は俺たちに指導して欲しいと言っているので、その希望通りにしてやるつもりではある。俺が教えることによって少しでもその実力を伸ばすことが出来ればそれだけこの世界がより良く発展してくれることになるかもしれないからだ。この世界の人たちにも魔剣の力の使い方を覚えてもらって魔剣の世界を良い方向に導けるようになればそれでいいのである。この魔剣世界で暮らしていられる時間は長くはないと思う。だからこそ出来る限りの手助けをこの魔剣世界にいる者たちにはしてあげたいし、俺に協力してくれた仲間たちの子供達が大人になったとき、彼らの世代が中心となって魔剣世界をより素晴らしい国に出来るように、魔剣をうまく使えるようにしてやることが大事だと考えた。その手伝いをすることで俺がいなくなった後のこの世界の平和を維持することに繋がればいいと考えているわけだ。

まあ俺が死んだあとは魔剣は新しい所有者が現れるまではこのまま放置することになるのでこの魔剣が他の人に扱えるようにならない可能性の方が高いと俺は考えている。まあそれでも魔剣は俺が持っているだけで魔剣世界に住む魔族の人たちは魔剣を手に入れるために戦い続けることはなくなるだろうとは思っていたのだ。そうしないとこの魔剣の世界がいつまでも争い続けて誰も幸せになれないから。魔族たちも魔剣を手に入れようと必死になっているらしいのだがこの魔剣が簡単に手に入るようなものじゃないということは理解できているようで、最近はその数もかなり減ってきている。しかしそれも俺の狙い通りでもあったりする。だって魔剣を手に入れたいと思っているのが俺じゃなくて魔族の民だということがわかったからだ。その証拠に俺の所にその魔剣の情報が流れ込んで来ているのだ。

この俺がこの魔剣世界に来る前は【剣聖王国】が魔剣を管理していて俺とこの魔剣の持ち主の女の子との戦いを見ていたらしい。その時の映像を見させて貰ったんだけどこの俺と剣で互角に渡り合えている女の子を見た時はびっくりしたね。しかもこの俺の攻撃を受け流しやがったし。その後で映像は終わってしまったんだけれど俺の記憶の中には鮮明に残っているわけだよ。この俺の攻撃を全て見切って完璧に受け切られたという事実が残っているからこそ、この俺の配下である【聖剣使い】がどれだけ頑張っても魔剣の力を引き出せていない現状が歯痒かったんだよね。だからこそ俺はこの魔剣の力を引き出せるようになってもらうために、【聖騎士】の彼女たちの特訓を手伝っていたという訳なんだ。その甲斐もあってなんとか彼女たちが俺と同じように【魔王】級の強さになることができていたから俺は安心していたんだよ。そして今回の魔剣世界での戦争が終わった。これで俺は魔剣世界にこれ以上用事はないのでこの魔剣世界を離れることになった。魔剣の勇者と魔剣の勇者の仲間が魔剣の力の引き出し方を教えることが出来たので俺としては大満足である。

後はこの魔剣世界に残ってくれる子たちが俺の後をついでくれさえすれば問題ないと思っている。その前にまずはこの世界をどうにかしなければならなくなってしまったけどね。この世界に巣食う【魔人族】たちは【魔王】級以上の強さを誇っている奴らがいる。だからこそそんな奴らが【魔人族】の奴らに負けてしまった場合のこの世界の平和なんて俺には守れるはずがないからさ。だから俺としてもこの魔剣世界にもうしばらく滞在したいという想いがあるんだ。しかしそれでもこの魔剣世界に滞在し続けることができない理由はあった。その理由とは暗黒大陸の魔物が暴れ出したことだ。こればっかりは俺でも手に負えないほど厄介な魔物だったから、俺の仲間たちも苦戦を強いられていたのだ。その魔剣の力を最大限に使って何とか封印することに成功したがそれでもまたいつ復活するかわからないという状況に陥ってしまった。

そのため俺も【魔境樹海】に戻って色々と準備を進めることにしている。そのため魔剣世界での最後の時間を有意義に使おうと思って行動を開始することにしたのだ。まずは魔族たちを束ねて国を作ろうとしている。俺の部下である魔族は【魔剣帝国】に所属しているのでその力を利用するためにまずは【魔都バルバトス】を手始めに俺は魔剣の力を使い【魔境樹海】で暮らしている魔族の種族たちを集めていった。その中には魔人族も含まれているので戦力的にはかなり頼りになりそうな予感がしている。この魔剣世界に【魔境帝国】という国家を作ることができれば、今後この世界に平和が保たれることになると俺は確信しているのである。魔剣使いの子供たちもこの世界にいればきっと魔剣の力を自由に引き出すことが出来るようになるはずだと確信しているためだ。

この魔剣世界はこれから先【魔剣皇】の【剣神帝ロードカイザー】によって統治されることになる。

【剣王】、【剣聖】の称号を持つ二人の少年少女も、いずれこの【魔剣皇】として俺が召喚することになった。

魔剣の力を持つ俺が、魔剣の力でこの世界を管理する。それがこの俺が選んだ道であり、俺にしか出来ないことだと思うのだ。そして俺は【聖騎士学園】の少女たちが、聖騎士見習いたちの特訓に付き合いたいという申し出を受け、それを承諾することにしたのである。

魔剣の勇者:今日からお前たちに剣術を教えることにするからしっかりとついてこいよ?聖女リリアナ

魔導の勇者:よろしく頼む

リリアナ:ああこちらからも頼んでいる身だからその頼みを聞いてくれることに感謝をしているぞ。魔導師エルザドール

魔道の賢者:私からも改めて感謝を申し上げます

リリアナ:いやなに。私がもっと魔剣の力を制御しておけばこの世界の人達を救えたのだ。ならば当然のことをしたまでだ。聖騎士リディアーヌ

魔導の姫騎士 :この度私たちが指導して貰えることを本当に嬉しく思い、ありがとうございます。聖剣使いの皆さま方

魔導の剣士 :私たちはもっと強くなりたいです。聖剣を扱えるようになったので、是非その強さを身に付けて魔導の賢者のような強者に少しでも近づけるようになりたいと考えています。魔導剣士ミレーア 【聖剣騎士】の少女たちがそれぞれの自己紹介をした時にその少女の一人を見て驚いたのである。それは以前【聖剣】の勇者であるレイラに魔剣の力を引き出せる方法を教えて欲しいと言われて教えようとした際に現れた女の子であったからだ。そしてこの【剣皇王国】を魔剣を使って壊滅させようとした魔族を俺の配下の【黒死騎士団】が滅ぼしたときにも姿を現しており俺の配下となった。そして彼女は俺に言った。この【魔剣皇帝陛下】に仕えさせてくれとお願いされたのだ。俺はこの子がどうして俺にこだわるのか不思議で仕方がなかったがその願いを聞き入れ、彼女【魔剣使い】のリリスは俺の臣下に加わったのである。

リリアナは彼女に魔剣使いになった経緯を聞くと、彼女の父親は俺の剣に斬り殺されてしまい魔剣に魂を奪われてしまったらしい。それ以来リリアナはずっと父親の魂を取り返すために修行して、父親から譲って貰った剣と共に戦い続けているのだという。そしてリリアナ自身も自分の父親が魔剣に取り付かれた理由を知っているような素振りを見せたことから俺は気になってリリアナにそのことを聞くとリリアナは語り始めたのである。

リリアナの話によればこの魔剣はかつてこの世界に存在していた【聖神王王国】に敵対する組織があった。その背後に【剣聖神】と敵対している組織が存在していて、聖剣の力を利用して悪さをしようとしていた組織の長の娘こそがこのリリアスであった。この魔剣を扱っていたのがこの国の王妃様の母親である王女だったらしい。そして魔剣を手にした王女は聖剣使いとなり、聖剣を振るい続けたそうだ。だが結局は娘の方が強かった。だから娘は魔剣に取り込まれてしまい、それを止めるために立ち向かっていた父親を娘の母親は容赦なく殺してしまった。その結果娘が持っていた魔剣だけが残りそれから数百年の時が過ぎていったのだと話すことになる。その間も娘の体は眠りについたままだったが、その体が突然覚醒したのであるという話を聞いた。そのきっかけというのが、今この世界で起き始めている現象と同じことが起きているという。

俺は話を聞いていたらある疑問を抱いた。それは何故その王女の娘である女性が魔剣の力を使うことができたかということについて。普通なら聖剣の力は使えても魔剣の力を使うことなどできないはずなのだ。しかしこの世界では違う。何故か魔族の民は聖剣ではなく魔剣を使っている。魔剣に意思が宿り、その意思に魔剣が取り込まれるとこの世界にいる魔族の民の誰もがその強力な能力が使えるようになるのだ。そう考えるとこのリリアスの母親が聖剣を使わずに魔剣を使ったからこそこの世界に【邪鬼】が現れて、そして魔剣と聖剣を扱えてしまえる【聖魔剣士】が生まれてくることになったのではないだろうかと思わざるを得なかった。

まぁ俺としてはその辺については深く追及するべきではないと考えているのでこのリリアスがどうやってこの魔剣を手にいれたのかは気にしないことにした。それよりも俺の質問に答えてくれたのだ。俺の質問に対して答えてくれるということは、それなりに信用できる存在だと判断しているという証でもある。だから俺が信頼を置いている人物だということで、俺は彼女が信頼できると思ったのであった。

リディア:それでこの私にどのような用事があるのですか?聖剣使いのリディア殿

リリス:はい、魔剣使いであるリリアスに聞きたかったことがあるのです。貴方はどうして魔剣を扱うことができるのですか?それにこの剣は普通の武器とは少し異なる感じがしています。まるで生き物のように脈を打っていますし

リディアス:その話は長くなりそうなのでしょうか?私の時間はまだありますので大丈夫ですよ

リディア:わかりましたリリアナ:私もその話は興味があるから聞かせてもらうことにしよう。私は【剣王国】の【騎士王】だからな こうしてこのリリアスという魔剣の少女は、なぜ自分が魔剣を操る事ができるかを語り始めるのだった。

魔剣使いのリリアスの話によれば、この魔剣は元々【魔剣王国】に古くから伝わる秘宝の一つだったという。

【魔剣王国】はその当時、魔剣の使い手である勇者によって治められていたが、この【剣王都市】の王族たちが魔剣の力を利用しようと考えて【魔剣帝国】の人間たちに襲わせた結果【剣神皇】という称号を持っている一人の男が勇者を倒して【魔剣帝国】の国を奪ったというのだ。そしてその際に【魔剣皇ロードカイザー】と呼ばれた魔王の【剣帝級】は自らの魂の一部を【魔剣】へと封じ込めてしまったのだという。それがこの世界に残されたたった一つの【魔剣】であるらしい。

しかし当時の国王であった男は自分の妻との間に生まれた子供が魔王になるのではないかと心配した。

そして生まれたばかりの子供を密かに殺害しようと画策するがそれは叶わなかった。

しかしそれでもその子供の中に魔王の血が流れているのは確かなようでその力は凄まじかった。しかし、【剣聖皇帝】がその子供の暗殺を企てるが、その力に阻まれて失敗に終わり、最終的には魔王にその子供を殺そうとしていた事実が発覚したことで、その男は投獄され処刑されることになった。

しかし【魔剣】は未だに生き残っており、そしてその魔剣を操れる者は【剣神帝国】の血を引くものだけらしい。

魔剣は所有者を選び、選ばれたものはその魔剣を扱えるようになるのだという。

その力が魔剣に選ばれなかった者に継承されると、この世界に【魔人族】が現れるのだと魔剣に記されていたとリリアスは言う。そしてリリアスの一族は代々その魔剣を扱えるように鍛錬してきたのだという。

リディア:なるほど。そういうことだったのか 魔剣の力を制御できなかった者がこの世界の人類を滅ぼしかねない事態になり得るのか。

俺はそんな事を考えていたのである。するとここでリリアナが口を開く。

俺達はとりあえず自己紹介をしただけでお互いに詳しい素性を話したわけじゃないが、どうもお互いが聖女や賢者といった肩書を持った者たちであり聖女がこの【剣皇王国】を統治する者であると言うことは知っている様子であったから俺は敢えて何も言わないでおいたんだ。でも、魔剣使いとしてこの世界に現れた【リリス】だけは俺が【聖魔皇帝】であることを知らないから、この国に来た理由はリリアスが【聖魔皇帝】であると知り、この世界を支配しようとしているのではないかと思っていたようだったがリリアナの「この人は魔剣を扱っているけれどこの世界を支配なんて考えていない」という発言により安心したらしくて、リリアナのことを信頼するようになっていく。

そして俺はこの国の姫と話をすることになったのである。

リリアス:あの魔剣がこの世界の人たちを滅ぼそうとする存在なんですね。私はリリスと一緒に旅をして来ましたがリリアナさんがこの国の聖剣を管理していたのに驚いてしまいます。そしてリリアスの口から衝撃的な真実を聞かされることになってしまった。

俺はこの世界に来てからずっとこの国に保管されていた聖剣を、俺の部下が魔剣に変えたという事実を知り、驚きを隠せないでいたのであった。そしてこの国の【騎士王国】が魔族の手によって滅ぼされてしまった理由を知った。【魔剣王国】の民はこの国の【剣王国】を滅ぼしたのである。しかもこの国の王家を根絶やしにしてこの国を乗っ取り、聖剣と魔剣を奪い去ったのだという。その目的は魔族にとってこの【聖魔皇帝国】と【剣聖国家】の二つの国は邪魔だったのだろう。だからこそ滅ぼすために魔剣の使い手たちを利用したのである。この世界に突如現れた魔剣と聖剣と魔剣。それは俺達がこの世界で生きる上で絶対に欠かせないものだと言ってもいい。何故ならこの三つの剣がなければ俺がこの世界を支配することができないからである。そして俺はこの世界で手に入れた力でこの世界での俺の敵を排除しなければならない。そうしないと俺の夢は達成できなくなる。俺の理想の世界を作るために必要な力だからだ。俺はそれを叶えるためにも【聖魔剣皇帝】としての責務を果たす。そのためにはどうしても【魔導大国アルテリス】とこの世界の魔剣を手に入れる必要があった。そのために俺は魔剣を使い魔剣を集めることを決める。だがリリアナの話によれば魔剣がこの世界から消えているかもしれないと言っていた。

俺はその理由を聞くことにした。そうしなければいつまで経ってもこの【魔剣使い】の少女たちの力を借りることができないからだ。彼女たちをこの【剣王国家】に連れてきた理由というのは、魔剣を扱いこなせるようにする訓練と、もしもの場合に備えて仲間に引き入れるためでもあったのだから。そして俺の言葉を聞いた少女は俺の目を見て答える。

リディア:私達の世界に今この世界にいるような魔族は存在していません。ですが、この剣は私たち一族の物だったのです。しかしある時にその魔族たちは現れてこの魔剣を持っていき、それを取り戻す為に戦っていたら、気が付けばこの世界の人々に被害を出していました。私達が魔剣を回収した後は、この剣の力を使ってどうにか倒しました。

魔剣の力を利用して悪さをする魔物を退治したりして魔剣を回収する仕事をしているリリアス達だったが、ある時期を境にリディアはリリアナの魔剣が魔剣の力によって暴走していることに気づき、魔剣の力を抑え込む術を身につけたのだという。その方法はこの世界にある魔石を利用して行うのだという。そしてリディアは魔剣の回収の仕事を始めたのだそうだ。

リリアナはリディアスの魔剣は【聖魔剣リディスラリスティア】だと説明した。聖剣リディアの力を引き出してその魔剣を扱えた。だからこの世界からリディアスの魔剣がなくなってしまえば聖剣リディアの本来の能力を使うことができなくなってしまうのだそうだ。リディアが持っている魔剣の能力は【空間転移】と【魔剣士】【魔導士】そして【回復】【聖剣技】などなど。リディアスの魔剣がなくなったことで【魔剣士】しか使えなくなってしまったのだとか。それにリリアスの持つ魔剣の本当の能力とは、【時間操作】の能力なのだという。だから時を操ることができたのだろうと俺は考えたのであった。リリアナの場合は、自分の魔力を使用してリディアに干渉することで一時的に彼女の体を動かすことができた。そして魔剣リリスは【魔装召喚】というものを使ったらしいのだがその力は凄まじいものだった。そして魔剣リリアスに【剣帝】の位を与えたらしい。

ちなみにこの二人は双子であり、この剣を代々受け継いでいるのだという。

リディア:リリアスの持っている聖剣は【聖剣エクシードシスティナ】だと思います。リリアナさんが聖剣を持っているということも驚きました。この聖剣は【剣神皇】の持っていたもので、今は私の先祖が所有しています。リリアナさんの話では聖剣の力が魔剣によって失われることはないみたいでしたがリディアさんの言うようにもしこの剣を扱える者がいたとしたならば聖剣の力を利用できますね。この魔剣も元々は普通の魔剣でした。しかしこの世界の何処かに【聖魔剣アルティスライト】と呼ばれる魔剣が存在するという話を私の父から聞いたことがありました。しかしその存在は確認されていないようです

リリアナ:リディアはお父さんとお母さんに愛されて育てられたんだな。リディアの話を聞いていて私にはわかる。私達はリディアのことが大好きなんだってな 俺がリディアにそのことを質問したところ、リディアは嬉しそうな表情をしながら答えてくれるのであった。どうやらリリアナの両親と、リディアの両親が仲良しだったらしく、リリアナはその二人の娘だったのだという。だからこの二人もまたお互いに深い絆を持っているらしいというわけだ。俺はそんな話を聞きながらこれからの事について考えていたのだ。まずはリリスを探し出す必要があるだろうと考えた俺はリリアスに頼んでみることにする。

するとこの世界にも魔王が現れたことがあるようでその時に活躍した勇者がいたらしくてその子孫を捜索することにしたらしい。

俺もリリアナも一緒に行くことを了承してくれたから俺は魔剣使いたちと旅に出ることに決めるのであった。しかし魔剣を扱えるようになるまでは時間がかかり、それまでの間はリリアナの作った異界で暮らすこととなったのである。

それからリリアナの異界の家で過ごすことになった。しかしリリアスとリリアナの家は魔剣の保管場所になっているようでリディアとリリアナの部屋以外にもう一つ、【魔導工房】という特殊な部屋が存在していた。そこで俺は魔剣を使えるように訓練をすることにしていたのである。しかし俺には【神龍眼】があるので、リリアナの聖剣を扱うことができるようになりたいと思ったんだ。そして【魔導具作成】の力で【リディア】という【聖魔剣リディアスライム】を作り出しリディアを魔剣化させた状態でリディアの体を【神龍刀】で斬ることで【聖剣リディアルスライム】を生み出したのである。そして俺はリリアナと同じようにこの世界に存在していた【リリアナ】の魔剣を【リディア】に与え、その力を制御できるようになってもらうために修行をしてもらう事にしたのである。俺が生み出した聖剣は、魔剣からリディアを守ることもできるが、このリディアの体に【リリス】が乗り移ることによってリディアは戦う力を得ることができるようになるんだ。

こうしてリリアスとリリアスの仲間がこの【剣皇国】から旅立ち、俺とリリアナとリリアナの妹であるリディアの三人がこの国に残されたのである。

このリリアナが作り出したリリアナ専用の異界の家とリリアナの実家に別れて俺は魔剣を操れるまで特訓することにして過ごすことになるのだった。

【魔道王国】の【賢者王】が治める国は、この【剣王国】と同じく王政を行っているようだ。しかしこの【賢者王】の国では賢者を優遇するという制度が取られているようである。この【賢者王】の城には賢者のみが出入りすることができ、また賢者以外の者が立ち入ることは一切できない決まりとなっている。そうしてこの城の地下に【魔法図書館】があると言われている。その地下へは【勇者王】の特権として立ち入りができるが俺がここに足を踏み入れる機会が訪れるかどうかは不明である。しかしここには貴重な文献が残されているという情報が存在しており、この国に【魔剣】が存在していると【勇者】である【剣皇姫リーシャ=アイヴィレッド=グランシア】の口から聞くことが出来た。彼女曰く、【聖魔皇帝国】には存在しないとされている魔剣が存在し、その魔剣がこの【賢王】国にあったと【魔剣使い】の少女が話してくれていたのだそうだ。だから彼女はそれを求めて【魔剣使い】の少女と共に行動をしていた。

リディアとリリアナがリリアナが作り出してしまったリディア専用のリディアが使う魔剣。そのリディアの力を使えば魔剣を作り出すことも出来てしまうのかと聞いてみたらそういうわけではないそうだ。魔剣は魔剣に込められた魔力を使用する。そしてその魔剣から放たれた魔剣の力は【剣神】が振るう剣と同等の力を持つ。だから俺の持つ【原初の聖剣リゼリアセイバー】は【剣聖】が持つ聖剣に匹敵する程の力と魔力を保有しているのだから、リリアナが【魔導皇帝】の魔力を利用して作り出した【聖魔皇帝剣エクスカリバー】は相当なものなんだろうと理解することができた。そう考えるとリリアナとリディアの姉妹の二人が、魔剣を使って魔剣の力を引き出して戦えばかなり強力な力になるはずだと考える。そして姉妹が持っている聖剣と魔剣がぶつかり合えばどちらが強いのか、そして俺の作る魔剣の力と【魔剣使い】の力がどの程度の力を持っているのかわからなかったけど、少なくともリリアナは魔王軍の幹部と渡り合っていたのだ。この世界に現存する【剣皇剣技団団剣皇騎士団長兼帝国騎士団総隊長】である【聖魔剣皇女レイカ=グランシュタット】よりも確実に強いということはわかっている。それにリディアがいれば、【聖剣使い】の力も使うことができるようになるからな。

そんな事を考えながらもリリアナの案内によって城内に入り込みそのまま奥にある巨大な書物のある部屋にたどり着き、そこにリディアがいることを確認した俺はすぐにリリアナに事情を話してリディアの元に案内をしてもらうことにしたのであった。

俺は、魔剣士のリディアを魔剣化させて魔剣を振るえるようにするためリディアがリリアナの体を借りてリディアの意識が戻るまでの間だけこの世界で活動することに決めた。魔剣士が聖剣を使うことは絶対に不可能だが、聖魔剣ならば扱うことが可能だと考えられる。しかしリディアの魔力で生み出されているため、聖剣のように聖剣の本来の力を使うことはできない。その聖剣の本来の力がどれほどのものなのか俺にはわからなかったが、リディアスと聖剣を使って戦ったときに感じたのは間違いなく本物だという感覚だ。

聖剣リディアスライムを生み出してしまったことで聖剣を使うことができなかったリディアに聖剣を扱いこなせるようにするための練習をしてもらおうとしたのだ。そのために魔剣士が扱えるという【魔導剣術】を身につけさせる必要があったのだ。

俺もリディアも、まだ自分の本来の力を扱えていない状態であるために、これからはお互いのことを鍛え合う必要が出てきたのだ。そのためにもリディアが目を覚ますまでの間にこの国の情報を集めなければなと考えていたのだ。

そういえばこの世界に召喚されてからこの世界での俺はまだ一度も食事をしていないことを思い出したので俺はこの城の厨房に向かうことにしたのだ。リリアナにお願いしてこの城を探検することになったのだが、俺はリディアと一緒に行動することになるのだった。

そしてリリアナにこの世界で使われているお金を渡され、この城の中にある施設の利用も許可してくれたのである。俺はこの世界の通貨を手に入れることができて少し嬉しかったのでこの国の硬貨を見ることにした。そして金貨を手に取って確認するとそこには【剣皇】と書かれていることが分かりこの剣王の城の城主の名前がわかったのだ。この【賢者王】はこの世界の剣の頂点にいる存在だということだろう。そしてこの城はこの【剣王城】と呼ばれており、この場所に存在する【魔法図書館】の文献の中に魔剣の情報が記載されているらしいのだ。なので俺はまずはここの【魔導図書館】に目を向けることにする。

「この剣が魔剣ですか? でもこれは普通の魔剣じゃないですよね?」

俺の作ったリディアに持たせるための魔剣。それを興味深そうに触るリディアは俺が作った剣をじっくりと観察している。この魔剣は見た目こそ普通の魔剣に見えるがその力は普通の魔剣とは比較にならないほどに強大になっている。それはリディアに渡すためだけに作った特別な剣だからである。そして俺はこの【聖魔帝剣エクシードデスタリア】を魔剣化させると、俺は【リリアナ】の姿に戻るためにその魔剣を振ってみた。

すると【リディア】は俺からリリアナの姿に戻っていたのだ。そのことにリディアは驚いた様子でいる。しかし魔剣が光り出すと、【リリアナ】の魔剣である【聖魔剣リゼリアセイバー】が【魔剣リリアナソード】に変化して【剣神】と同じ力を持つ【剣神モード】を発動させたのである。リディアは、この【魔剣リディアナソード】を握りしめると、魔剣から溢れ出てくる力に驚くことになったのである。

リディア:この剣は私のために作られたものなんですね どうやらこの【聖魔皇帝剣エクスカリバー】の【聖魔剣モード】には、聖剣の本来の力とは別に俺がリディアの為に作り上げた魔剣の能力を追加することが可能なのだ。そしてこの魔剣を作り出した時に【リディア専用魔剣製造機】という機械を作ったことによって、この魔剣の能力は俺の作った【複製剣】の力をコピーする能力が付与されることになったのである。これによって俺は複製された【魔剣リディアソード】を作ることが出来るようになったわけだ。そのリディアは、自分が持っている聖剣に目を向けた後にその剣を鞘に納めてから俺に向かって話しかけてきたのだ。

リディア:ありがとうございますマスター。これでこの国を守ることが出来ます リリアナの体を使っているからなのか、口調が若干違っていたけれど気にしないことにした。ただこの魔剣の威力は確かにリディアに試して貰う価値はあると思うんだ。魔剣の力で【聖剣】を使えるようにすることができるかわからないが。とりあえず魔剣を扱うことだけは可能になるんじゃないかと思って、【賢者王】に会いに行くまではこの城に泊まることにしたのであった。リディアもこの城の地下に眠っている文献を読みたいといってきたし。そうしてこの【魔道図書館】と呼ばれるこの【賢王城】の書物がある部屋に案内してもらうと、そこにあった本の量がとてつもなく多く俺は驚いてしまうことになるのである。この世界の文字についてはこの国の言葉を覚える過程で覚えたのでこの部屋の中に入ることが許されたのである。

俺はリディアに本棚を一つ任せて、その間に俺はリリアナの姿になってこの部屋に置かれている本を適当に読んでいく。この本が本当に読めるかどうかわからないけど、もし仮にこの世界に文字が書けない人がいても、自動翻訳機能が作動してくれるはず。しかし、そんな心配はなかった。

【剣皇姫リーシャ=アイヴィレッド=グランシア】は、魔導学園の教師でもあるが【賢者】の称号を得ていることから、リディア同様に魔法の使い方に長けていた。だからリディアが魔法を使おうとしたときに補助的な役目を果たすことができるのだそうだ。

ちなみに彼女は俺に対して普通に接することが出来たので良かった。それにこの国に来てからも何度か彼女に会いに行ったりした。彼女の話では、俺が異世界人だと知っていて、【剣王国】が勇者が不在のまま魔王軍と戦闘状態に突入したことを知っていたため、俺のところに相談に来たのだというのだ。それで俺は、勇者と魔王軍が衝突することを避ける為に俺はこの【剣王国】に訪れたのだと説明したのであった。そして勇者召喚の儀を行うという情報を得て俺は、俺自身が【聖魔皇帝剣エクスカリバー】に宿ることを選んだということを伝えたのだ。

そうすると【剣王】の一人娘で【魔剣使い】として【聖剣騎士団剣皇騎士団副隊長兼剣魔軍】の副隊長である【魔導剣皇女】は、その説明を聞いて協力してくれたのである。

「貴方があの魔王軍を討伐した張本人なのか。私は、魔剣を使うことが出来ない。だからこそ魔剣士である私が魔剣を持つことができたなら、もっと早く【聖剣使い】になれていたというのに、くそ!! だがそんなことを言ったとしても何も変わらない」

そんな風に文句を言いながらも俺に協力してくれた。彼女が魔王軍の関係者であることを知っている俺は彼女を疑ったりすることはなかったのだった。

リリアナ:リディア、そろそろ戻らないと駄目 そんなことをリリアナの姿になっている俺がリディアに話してリディアを魔剣に返すように促すのだが、何故かリディアがそれを拒否するかのように首を振るだけだったのだ。

「もう暫く待ってくださいマスター様!もう少しだけ調べたいんです!」

そう言いながらもリリアナの体はどんどん透けていく。恐らく時間切れが近付いてきているのであろう。リリアナは俺に迷惑をかけないように必死になっているようだった。それにリリアナには、俺の秘密を打ち明けたこともあり、俺のことを信頼して本当の姿を見せたのかもしれない。

そう思いながら、リリアナと俺はこの【剣王国】でのんびりと時間を過ごしていたのだ。そうすればこの国の民達は幸せに暮らしていけるとリディアは言うのだ。なので俺もそれを信じて行動することにする。そうしなければこの国は滅びてしまうと俺に告げてくるのだ。リデアはこの国に愛着を持っていたようで俺にお願いをしてくる。

『私のことはいいですからどうかこの世界を救ってくれないでしょうか?』そうリデアは言って俺の前から消えようとしていたのだが俺は、この【魔眼】を発動させると、そこには、リディアの姿が見えたのだ。そして俺と会話をしていたのである。そこで、リディアにリディアの体にリリアナを戻すようにお願いをしてみた。すると、リディアは、自分の体に戻るようにリリアナを説得してくれていて。俺の頼みを聞くことを了承したのである。リディアは俺のことを心底信用しているらしく、俺のお願いを聞いてくれたのだ。そして無事にリディアは体を取り戻したのである。

俺は【聖魔皇帝剣エクスカリバー】を鞘に仕舞うと同時に、リディアに体を返したのだ。その瞬間にリディアは自分の意識が戻ったのか、驚いた様子でいたのである。そして、すぐに自分の体を確認するように触れ始めたのだ。その光景を眺めていた俺は、何が起きたのかわからず唖然としてしまったのである。

そして、しばらくして落ち着いたところで俺はこの国の【剣神モード】の力について話すことにした。するとリディアも、剣神様の姿が見えるようになりたいとリディアも俺と同じように願ったのである。そして俺は剣神様の姿に【変化】することにした。リディアの願いを叶えるにはこれしか方法がなかったからだ。

「あ、あれは剣神様。なんとお礼を言えば良いか分かりませんが、私達を救ってくれるおつもりですか?」

リディアがそういうと、剣王様はゆっくりと立ち上がり俺の前に来る。

そして、リディアに俺の正体を告げると、この世界の救世主であり、リディアの旦那さんでもあると告げた。そうしないと俺の目的であるリディアの強化ができないのだからね。そして俺は、リディアの魔剣を強化させる為にやってきたと告げる。しかし魔剣を強化しても、俺自身のレベルが上がるわけではないんだよな。

そう思ったらリディアが、

「そうですよね。マスターのレベルを上げなければ強くはなれないものね。だからリディアに【聖剣使い】になってもらう必要があるのですよね?でも、それはどうしてでしょうか? 今の【聖魔剣使い】はリリアナ殿ではないですか。そしてその力を受け継いでいる。でも、リディアにそれができると仰られるのですか?そもそもリディアは剣を扱うことができない人間でした。それはご存じのはず。一体どういう意味だと思いますかマスターよ?」

そう言われたので、俺は魔剣に力を注ぐことによって剣に眠る【聖魔魂】に語り掛ければ剣に眠っている力が開放され【聖剣】を使うことができるようになると説明する。それをリディアに伝えた後、リディアは【賢者モード】になる。そして剣を構えてから何か呪文のような物を唱え始めて魔剣の剣身から光が溢れ出てくるのである。

するとどうだろう。【魔道帝モード】に変化していたリディアの魔道皇帝剣エクセリアソードに変化が現れ始める。そして剣身が青白い色に変わり始め、そこから更に魔剣の色が変化して黄金に光り輝き出したのである。そして剣身の色が徐々に薄くなっていき魔剣の刀身に美しい模様が浮かんできた。そして剣が光り輝いて眩しくて目を開けていることが困難になり始めたのだ。俺は、魔剣の変化を食い止めようとしたがどうすることもできなかった。しかし、それでもなんとかして耐えきろうと必死になっていたのだ。そうすれば次第に眩しい光は徐々に収まり始める。

ようやく俺達が目にしたのは、【魔道剣姫リディア】だった。彼女は剣聖の服を着ており、背中からは翼のように見えていた六枚の光の羽が展開されていたのであった。リディア自身も自分が変わったことに驚き戸惑っている様子だったが、とりあえずこれでリディアの強化が終わったのであった。これで【賢者王モード】と【魔導王マモン】の二つの加護を持つ魔道帝国の騎士リディアが誕生することになる。

これで魔導王国の力は大幅に強化されたはず。そう思えば俺は満足したのであった。

魔導皇帝:ありがとうございます我が主様。この魔剣の力でこの世界を救うことに貢献してみせます!! そして、俺は魔剣を手にとってリリアナの時と同様にこの世界を救うために協力してくれないかと問いかけてみるとリリアナの時のように抵抗することなく受け入れてくれた。俺は魔剣に魔力を送り込んでみると、やはり抵抗はなく、あっさりと魔剣は【聖魔剣】に変化することに成功する。その魔剣は今まで見たことも聞いたこともない形をしていたのである。まるで巨大なドリルのような形で刃の部分が半円球型をしているという魔道具みたいな見た目をしていたのだ。ただ魔剣としての機能はしっかりと備えられていたので俺としては問題はなかったのである。しかし、この世界に存在している全ての【魔導剣】を調べても、【剣皇】や【賢者】の称号を持つ者達は、この形状をした魔導剣を使うことで【魔導皇帝】のスキルを得ることが可能になるのだとわかった。

ただリディアだけは魔剣の形状を変えることができるようになったが、まだ魔導皇帝の力を扱えないようだった。その為、この国を守る守護者という扱いになったのである。ちなみに俺とリリアナとで、この魔剣の性能を確認していくと、リリアナの方が遥かに優れた性能であることが判明する。

そうすると俺はこの剣を、魔剣【聖魔皇帝剣エクスカリバー】と名付けることにした。そうすれば、リリアナとリディアが反応してくれると思ったからである。そうすることでリリアナは魔剣の本当の姿を見ることができるようになって【魔眼】を覚醒させたのだ。そのおかげで魔剣の名前をつけることができたわけである。

それから俺とリディアは魔王を倒すために行動を開始することになったのである。その前にまずはこの国の守りを固めなければならない。俺はこの国の人達に俺のことを信頼してもらえたので、俺の能力を全て見せると俺を【剣神】だと認めてくれたのだ。

剣神:私はこれからこの国に蔓延っていた【悪魔】を倒しに行くことにする 俺の【神速移動】とリディアの飛行の能力を融合して一気に上空に移動すると、【神速飛行】を使い【悪魔族領域】へと急いだ。そして、【原初の大森林】から少し離れた所に存在する小さな村が【悪魔】によって滅ぼされてしまったのでそこに現れたのだ。そして俺はそこで【聖剣】を取り出す。

するとその【聖剣】をみた村の住民が、俺に襲いかかってきたのだ。しかしそんなことで俺は怯むこともなく襲い掛かってくる村人を次々と切り殺していく。そうしているうちにこの村を支配していた村長が姿を見せたのである。

「お前達は一体何者なんだ!なぜ私達を殺す!」

そう言いながらも俺に斬りかかってくるのだが、そんなことは無駄なので剣を抜き放ち一閃すると一瞬のうちに絶命させてしまった。そして他の場所にいた奴等も同じように処理していく。そうすると生き残りはこの【原初の森】の中に避難していることを発見するが、この森の中に【魔人】と呼ばれる種族が存在していてこの村に攻撃を仕掛けて壊滅に追い込んでいたらしい。

俺は【聖剣使い】となったリディアに【魔人】達を倒せるように指示を出す。するとリディアは魔剣を構えると同時に【聖魔法剣】を使う。するとリディアが構えた魔剣から白いオーラが放出されて魔人を包み込んだかと思うと次の瞬間には魔人が一斉に消滅したのだ。そういえばこの技は【勇者勇者】が使っていたのと同じものだったよな。そう思って俺はその事をリディアに聞いてみる。

リディアが使ったのは【聖なる剣】の技で剣に宿る女神の力が発動して相手を消滅させる技なのだそうだ。これはリリアナも使えるようで魔人の弱点である闇属性の力を持つ相手に有効打となるのだと説明をしてくれた。それを聞いた俺は、俺も使ってみたいとリディアにお願いするのだけども、どうやら俺は闇の力も有しているらしく俺にも使うことができるようだ。しかしそれはあくまでも俺の意思で自由にコントロールすることができない。だから俺はリディアと一緒に行動する時にだけ使うことに決めたのであった。

こうして俺とリディアはこの世界で【原初大迷宮】の【悪魔の城】に出現した【悪魔の尖兵 悪魔戦士 】の討伐に向かったのである。

俺とリディアとで【悪魔】が支配していると思われる【悪魔の城】に辿り着くとそこには大量の【魔人】が存在していた。その【魔人】の中には以前倒した【魔神王サタン】がいたのである。そういえばあの時も魔族を仲間にする為に【魔王城】に来ていたんだったっけ?でも今目の前にいる奴らは違うよなと思い、魔剣を構えてから、剣気を解放する。すると【原初の悪魔ベルフェゴールデーモンロード】が出現し、俺を睨んできた。俺はその威圧を受けて冷や汗を流しつつも冷静な気持ちを保つことにした。

俺は魔道皇帝に進化したことで、全ての耐性を手に入れたはずだけど、それでも俺の心の奥底にある感情は恐怖心でしかなかったのだ。

そして俺はすぐにリディアに声をかけて、リディアに俺の強化をしてもらうことにしたのである。俺は聖騎士の力を手に入れているので【聖剣】を使用することが出来るようになっていたのだ。しかも魔剣よりも強力な力を使用することができるのである。その力で【悪魔の尖兵 魔剣士 】と【魔剣使い 剣豪】を倒した後で、この城を制圧するために動き出すと、俺はリディアに合図を送る。

リディアは俺の指示通り魔剣の刀身に魔力を集中させると【魔導剣使い 剣姫】へと変化していった。その姿を見た【ベルフェゴウロット】と、【ルシファー 悪魔公爵 悪魔将軍】が驚愕の表情をする。そうしてこの城に君臨していた【七十二の魔導将魔皇帝】のうちの三人の配下が倒されたことによりこの城は俺とリディアのものになった。

この【原初の魔導王国アメリア 魔王城の魔導宮】の管理者権限を持つ俺と、魔剣の守護者となり、その剣身と融合した【魔道帝 リディア】の二人が、この国の支配権を手にすることに成功したのである。

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(おまけ)魔道士のステータス紹介です。

ー称号:【賢帝】を取得しました。ー 【称号】【賢帝】

賢者の称号を持つ。様々な魔術を使用可能になるとともに賢者に進化することが可能。

【聖女】

聖の女神様から認められた存在。

【剣聖】

剣術において最高峰に上り詰めたものに送られる称号 【魔道帝 リディア】

魔道を極めた者に贈られる称号 【原初の悪魔ベルフェゴール】【原初の悪魔ルキフェル】【原初の悪魔ベヒモス】

魔界最強の三柱。魔皇帝が【原初の大森林】に出現していた為、その存在を秘匿されていたが今回の侵攻で、この世界に現れることになる。

「この世界の全てを手に入れるために力を貸して欲しい。この国を守る守護者という役割を引き受けてくれるかな?」

俺はリディアに対してこの国を守って欲しいことを頼むことにする。彼女はこの国を守りたいと思っているようだったので、この国を俺にくれることを条件にその依頼を受けることにした。

俺はリディアと、この国の守護者としてこの国に暮らす人々を救っていくことを決め、早速行動を開始した。まずこの国では【魔道具】の生産が盛んであり、武器だけではなく日用品に至るまで、生活水準が高いことがわかったのである。俺がこの魔道具を使って、何か出来ないか考えていると、魔道具は魔力を注ぎ込むだけで使用できることが分かり、この国は、魔道具の量産をすることで発展してきたのだとわかった。

俺の考えた案とは簡単に言えば、魔力で動いている物を、動力として使用するというアイデアだ。魔力は空気中に含まれていることから、この魔導王国で生産されている魔導石を利用することでこの国の人々の生活を豊かにしてあげられると思いついたのだ。この国が発展した最大の理由は、豊富な鉱山から産出する高品質の魔導石をこの国から他国に輸出し、莫大な利益を産み出しているのが大きな要因になっている。

俺は魔導国で、俺が作り出せる最高の品質の魔導剣をこの国で販売することを提案した。魔導国には良質な素材があるし、俺自身も生産系の技術を持っているため最高級の魔剣を作り出すことが出来たのだ。

この国には俺が作った剣が大量にあるが、魔剣の数が少ないこともあり、それを全て売ってしまうとこの国が無くなってしまう可能性が高いと考えたのだ。そのため魔道具と同じように、この国の人々が自分達で作った方がいいと助言をしたのである。

そして俺はリディアに頼みごとをしていた。この魔の国を守護するために存在する【魔族軍 四天王】について教えて欲しかったのだ。リディアは快く答えてくれたのである。俺は【剣聖】の【鑑定眼】の能力を使用して彼女達のことを調べると驚くべき事実が発覚した。それはなんとその四人のうちの一人は既にこの国に滞在していてしかもリリアナとリディアの友達だというのだ。そんな情報を聞いてしまった以上無視することはできないだろう。

そう思い俺はリディアと一緒にこの【悪魔の尖兵 剣豪 】がいると思われる場所へと向かった。そしてその【剣豪 剣王】は女性だったのだ。リディアはその剣王に話しかけて、なぜここに来たのかを尋ねる。

剣王の名前は、レヴィアタン。そしてその隣には【魔人】の剣王として存在しているリリスが控えていた。

リディアはこの二人になぜこの場所にいるかを聞いたが、特に明確な目的はないとのことだったが、その言葉の裏には俺達が探しているという【悪魔 大悪魔王ソロモン】についての情報が知りたいという意図があったようである。そこで俺が、【原初の大森林】にいた大悪魔王について尋ねてみたが何も知らない様子であった。そんな話をしている時に突如上空より何者かが現れ、俺達に攻撃を仕掛けてきたのだが、それは剣神である【勇者勇者】の姿であったのだ。剣神と剣聖の戦いが始まるが俺がリディアに合図を送り剣神を助けるように指示を出す。そして剣神と剣王が戦うことになったのだが俺は、この二人のレベルが俺よりもかなり上であることを知り驚いていた。

俺はこの世界で、剣の腕においては負けることはないと考えていた。なぜなら俺の持つ能力である【剣聖】は、そのスキルを使う事で、俺のレベルを上げることができるからである。さらに剣神のステータスは異常すぎるくらいのレベルで表示されていて剣聖の剣技は、剣聖が放つ技と剣王のみが使うことができる奥義によって強化されていることがわかる。だがこの技にも限界はあり、剣聖は剣聖でしか使うことのできない技を使うことができなくて、剣王は剣王でしか使えない技が使用できなかったのだ。

だから俺の場合は相手の能力を無効化して、弱体化させてしまえばいくらでも戦える相手なので、俺の方は余裕を持って戦う事ができたのだ。それに剣技だけに関しては、俺の方が遥かに上だったのだ。

こうして俺も戦闘に参加して二対一の状態で戦うことになった。剣王はどうやら自分の力を封印する結界術を得意としているようでなかなか攻撃に転じようとしなかったのだ。しかし俺の攻撃で剣王が纏っていた結界を破り、俺は【原初の悪魔ベルフェゴール】に進化している状態の剣王の身体を切り裂き致命傷を与えた。俺の【剣魔闘法】による一撃を受けて、剣王は絶命したのであった。

その後俺達はこの【悪魔の尖兵 悪魔の尖兵 悪魔戦士】達と戦っている者達を援護するために動き出すことにした。リディアは剣姫となって俺と共に【魔導剣士 魔道士】と【魔法剣士 剣士】が交戦をしている場所へと向かうことにした。

【原初の悪魔ベルフェゴール 悪魔皇帝 悪魔公爵 悪魔将軍 魔道皇帝 剣帝】に進化したことで、リディアも全ての耐性を得ることができたので、俺と一緒に行動する時はリディアの好きなように動いてもらうことにして俺自身はリディアの護衛役になることにしたのである。俺はリディアを守るために全力で護衛をすることにしていた。リディアを危険から遠ざけるために俺の持っている全てのスキルを使用出来るようになっていた。

まず俺は魔剣であるリディアに【空間転移】の【固有能力】を付与していた。この【空間跳躍】を使えばどんな距離でも移動できるのである。ただしこれは【剣聖】の時と違って魔剣の力を使わなければ発動できないのだ。しかも使えるのはこの城の中でだけであるのだ。それ以外の場所で、リディアを【空間収納】から呼び出すことは不可能となっている。

次に俺は魔道剣に【全方位探知】と【絶対切断】を付与していた。この【剣聖】と【魔導剣士】の力を同時に使えばどのような強敵が相手であっても必ず勝利すると確信しているからだ。しかもこの魔剣には常に魔力が注がれているため俺の意思とは無関係にこの【原初の悪魔ベルフェゴール】の力で、俺を補助してくれる仕組みとなっていたのである。そしてリディアと【魔導剣士 魔道士】が戦っている場所に俺も参戦し【剣魔闘法師】の称号を、獲得した状態で、リディアと共にこの場を制圧していったのである。

そうして【剣豪 剣聖】と剣神と剣帝を討伐したことでこの国の防衛力はかなり向上したはずだと俺は思ったのである。これでリディアに何かあればすぐに駆け付けることが出来る。リディアに万が一のことがあったらこの国を滅ぼしてやるつもりである。そうしてこの国の平和を脅かす者を全て滅ぼし俺の目的を果たすために動き出したのである。

【剣豪 剣聖】の【称号】を持つ剣豪を俺の魔剣【原初の魔剣リディア】で討伐することに成功した俺は、【魔道帝 リディア】となったリディアの友でもあり剣の使い手でもあるリリシアントを仲間に加えたのだった。彼女は【剣魔闘士】の称号を持ち、【剣鬼】の称号を持つ【剣豪 剣皇】をも上回るほどの実力を持っていたのである。

リディアはこの国にある鉱山の一つの所有権を手に入れていて、その鉱山では、大量の魔導石を採掘することができ、それを使用した魔道具がこの国に発展を促していることは知っていた。その鉱山から産出された高品質の魔導石を利用してこの国の人々の生活を向上させていたのである。

この国の産業を支えているのは、その鉱山からの産出物だとわかっていた。だからこの国を魔王の手に委ねるのはどうかとも思っていたのだ。だからリリシアントと二人で話し合った結果、【剣魔闘士 リリシアント】と、【原初の魔剣士リディア】は、この魔の国を守ることを魔王ルキフェルと約束をしたのだった。そして俺の仲間に加わった【リリシアント】と【リディア】は俺のために、この国を豊かにしていこうということになりこの国の守護者として活動することになったのだ。

そして俺は【原初 大魔王】に変化した。この姿に変化したことにより俺は、魔の波動が周囲に漏れてしまい、その影響で多くの者が気を失ってしまったのである。俺は【傲慢】という新たな称号を獲得したことによって、俺自身が、この世界の創造主のような存在になってしまったのだ。だから魔導国は、俺の庇護下に入りこの国で暮らす民は全て俺の支配下にいることが決定したのだった。俺の部下になった者には俺と同じ【称号】が付与されるようになっているので、【悪魔大元帥 リディア】が魔導国を支配しているという設定に書き換えたのだった。

俺と、リディアと、【剣魔師】と【剣魔導騎士】の勇者【勇者剣王】そして、【賢者 賢者 賢者長】の勇者が協力して魔族軍の残党を狩りつくし完全に殲滅させたのである。魔族の国を支配していた魔王とその側近達が、全員死んでいたことでこの国は再び平和を取り戻すことに成功したのだ。俺達五人は、お互いの功績を称えあった後俺の仲間たちを集めて、リディアと、リリシアにこの国の統治を任せることにして魔の国から去っていくことに決めたのである。

この国にいる【剣神】は【剣聖】である剣王との戦いに敗れ死亡してしまったのだ。この国はこのままこの三人に管理させてもいいと思っていたのだが、俺はこの国の未来を少しでも明るくするために新しい指導者を用意することにしたのだ。俺は新たに作り出した【悪魔 悪魔貴族悪魔将軍 魔王】が治める領地に住む人間の中から一人だけ選抜した。その候補者は俺の【原初の悪魔ベルフェゴール】の能力を使用して俺に忠誠を誓うように強制したのだ。俺の忠実な部下にするためである。そしてその者にこの国がこれからどういう風に発展していってほしいのかを聞き出し俺はこの男に魔族軍を率いさせていただくことにしたのである。

その男は、この世界には奴隷制度が存在していることを知っておりこの制度を無くしたいと考えているようでこの奴隷制度は、一部の貴族の収入源になっているのでその貴族を取り押さえたいと言っていたのだ。俺はそんなことはしなくても、もうすでに奴隷なんて存在してはいないことを説明したのである。それでもなお奴隷がいて、酷い扱いを受けていると思っているようなのである。それでそんな状況を憂いているようだったので、魔族の方でも奴隷制度を廃止しようという計画が進んでいるということを話してあげた。

そして奴隷制度がなくなれば、人身売買などが行われることもなくなるだろうから安心して欲しいと伝えたらすごく喜ばれて、さらに自分が、俺の為に働けばいいんだと言ってきたので、俺はこの者に任せることを決めたのだ。この者の名前はアモンと言うらしく、元魔族の将軍であり、今は魔王軍で【魔導戦士】をしているそうだ。だから俺の側近の一人として働いてもらうことになったのだ。俺は魔剣に魔族や魔人の力を与える能力があるので、魔族は勿論のことだが魔人とでも契約できる。

俺の新しい家臣に【原初の魔剣 魔剣原】を与えたところ、剣に埋め込まれている赤い宝石の中に俺と瓜二つの姿が写し出されていたのだ。どうやらこれは、原初の悪魔ベルフェゴールの力の結晶体みたいなものだったので、俺が所持することで、その力を使うことができるようになった。これは魔剣が進化する際に起こる現象だったのだ。

魔剣は魔獣を倒すほどにその力を増していくのだ。つまり魔獣とは、この世界に生きる魔物達のことで、魔の森や迷宮などに棲息している魔の生物のことを指すのだ。俺は魔境樹海と呼ばれる森を支配下においているため魔獣を大量に狩ることが可能なのだ。

この世界に存在する全ての魔素を含んだ鉱石から、武器を精製することが可能なので俺は、この世界の最強装備を作ることが可能なのである。まぁ【原初の魔剣 魔剣原】を加工することは不可能だったから作れないけどね。ただ魔道具を作る能力はあるからそれを利用して強力な防具と、魔剣を量産してこの世界で、最強の軍隊を作り上げることにした。俺が作り出せる武具の中には、俺自身も含まれているので俺の戦闘能力を向上させることもできるのである。それに俺の配下になれば、ステータスが上昇するスキルを付与してくれるのでこの世界を統一する為の軍を強化することができるのだ。

こうして俺は新しく手に入れた力を使って俺自身の力を高めることにし、この世界の国々を支配することにして行動することにしたのである。

俺が新たに仲間にした剣豪の【剣聖】と剣王の二人に俺の配下になってもらったのである。この二人の他にも魔剣の力を使ったり【原初の悪魔ベルフェゴール】に進化したことにより【剣神 剣帝】の称号を持つ者にも勝つことができ、俺の戦力も強化することができたのであった。

そして俺はこの世界に来てからずっと探し続けていた仲間と再会を果たして共に過ごすことができたのだった。俺の仲間になった者はみんな俺のことを兄として慕い信頼してくれるのだった。だから彼らから、頼られるような俺になる為にもっと頑張らないとダメだと思ったのである。

「さてと、そろそろお腹が減ってきたな、この近くに美味しいご飯のお店ってないかな?リリシアント?」

リディア:リリシアントは食事より戦闘訓練ばかりしていたじゃない!私が知ってるよ!! 剣豪と剣王がこの国で生活を始めた。まずは剣王と剣聖はリディアと、魔導士と賢者がリリシアントと一緒に暮らしてもらうことになった。リディアが剣聖に対して何か言いたそうだったのだが、結局何も言わなかったのだ。多分またいつものように口喧嘩をしていたのだと思う。剣王はそんな二人を見て楽しそうに笑っていて仲が悪いわけじゃなさそうだった。むしろお互いに意識していて、良いライバル関係になっていたと思う。

俺は魔剣である【原初の魔剣 魔剣原】の【称号】である《魔剣士 魔道剣師》の効果で【魔道剣士 魔道帝】の称号を得たのだ。この称号を得ることによって俺の魔法に関するスキルのレベルが上がりやすい効果を得られるようになる。そしてリディアの持つ魔剣【原初の魔剣 魔剣原】が魔剣の中で最高峰に位置する剣になったので俺は魔剣の力で、俺自身もパワーアップすることができるのだ。だから魔剣士の称号は手放すことはできない。なぜならこの魔剣を使えば俺自身の強さを大幅に上げることができるからだ。

俺は新たに仲間に加わった四人を連れて魔国を後にすることにして旅立ったのである。この国にいた魔族たちも新たな指導者が魔族軍の将軍になることに喜んで受け入れてくれた。魔国の住民にとって魔族こそが支配者であり魔族は魔族以外の種族から見下されることが多い存在でもあったのだ。そんな魔族たちが俺達のような異世界からの転生者が魔国の指導者となってくれることをとても歓迎してくれたのである。

この魔国は魔族が支配する魔国といっても元々は、人間が住んでいたのだ。俺と魔剣は魔王に頼まれたことがあり魔王城がある場所に封印されていると言われている『始まりの魔導書』を手に入れなければならないと思っていたのだ。そして俺は魔国を拠点として活動することに決めたのである。俺はこれからこの世界にいる勇者や魔王を殺す為に動き出すことになるのだ。そして俺には、勇者を召喚したという【創造神】アーシャリアとの約束があり勇者を抹殺しなければいけなくなったのだった。俺はこの世界に俺の仲間であるこの国の魔族たちを住ませることにした。この国はもう俺の庇護下にあるので魔国を俺の国に変えることにしたのだ。

俺はこの国に魔剣に埋め込むことのできる鉱石と剣をいくつか置いていったので、これでこの国は俺の支配下になったということになるのだ。そして俺はこの国を【魔導国】と名付けて魔国に住む全ての者に【魔導】の能力を与えることにして、魔導学園を作りそこに通える年齢の者たちには【固有技能】と【称号】を与えることにした。俺にはその資格があるので、魔導学園の教師たちにも【加護】を与え教師たちのレベルを上げたのである。

そしてこの魔導国に住むことになった俺の新しい仲間たちには、この国が豊かになるように協力して貰う事にした。俺達は新たな拠点として新たな国を創り上げたのだ。

【魔導王】である俺は、俺がこの世界に来る前に【創世の魔導王アルサーディス】が残していったと言われる、この国の地図を手にしこの国の周辺にある迷宮を次々に攻略していき、迷宮の最下層まで辿り着いたのだ。そこには大きな祭壇がありその先には、古びた一冊の本が存在したのである。

この【原初の魔剣 魔剣原】は魔族や魔人などにしか使うことができない。この魔剣の力は使用者の力を格段に上げてしまう。だから俺はこの世界に来る前は人間であったがこの魔剣を使うために今は【魔人】になっているのである。魔族と人間の力を持った魔人である。人間である俺は人間のままなのだ。俺は人間として、人間と魔族の架け橋になろうとしている。それが、俺がこの世界に連れてこられた目的であり俺の目的でもある。だからこの世界の住人を全員俺の味方にしなければならないのだ。俺が魔剣の【所有者】になると自動的に【原初の魔剣 魔剣原】の能力が使えるようになり俺も俺の配下の者達も強くなることができる。

俺が今向かっている場所が俺の新しく作る拠点になる場所で、これから行くのは魔国の近くの魔都になるので俺は、新しく仲間にした魔族たちと、一緒に移動している。魔族は人の姿から様々な獣や爬虫類に似た魔獣に変化させることができるのである。この世界の生き物の殆どの見た目はその動物に似ている。

この世界の生物たちは全て魔獣と呼ばれる魔物に分類されるものらしいのだ。俺は新しく手に入れたこの世界の生物の特徴を理解した上で、新しい拠点の造り方を思案しながら、次の目的地に向かったのである。俺はこの世界に俺の眷属たちを残してこの世界にきたのだ。この世界に元々住んでいた【精霊】や【亜竜】なども眷属にする為に連れて行く。



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神界、無限増殖系ダンジョンで埋め尽くされる。 あずま悠紀 @berute00

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