転校先は不良(ヤンキー)校!?② 〜匠 蒼介 編〜

ハル

第1話 転校先は不良(ヤンキー)校!?①

「希美(のぞみ)、引っ越す事になったんだけど…」

「…えっ!?」



母親からの突然の言葉。



「…学校も変わる事になるけど…平気?」

「…そうか…。うん、分かった。仕方ないよ」

「ごめんね」

「ううん」



私は、とある高校に転校となり引っ越しをした。




「………………」



「えっと…ここ…本当に…共学…?」



見るからに男子ばかりだ。


そして、手続きに行くものの流石に注目を浴びる。



《チャッ、チャッと済ませて帰ろう!》





その途中――――




ドンッ

誰かとぶつかった。




「きゃあっ!」

「うわっ!」

「す、すみませんっ!」




頭を深々と下げ、顔を上げる視線の先には男子生徒。


ここの生徒と思われる。



「何処見て歩いてんだよ!」

「す、すみません!」



《見るからに不良っぽい…ヤバイ奴にぶつかった!?》



更に取り巻き二人の男子生徒。




とにかく頭を、もう一度下げながら……



「本当すみません!慣れない所で、慌てていたもので…」


「…女?」


「えっ?」



顔を上げると、至近距離に男子生徒の顔。



ドキーーッ


胸が大きく跳ねた。



「うわっ!」



相手は慌てて、のけ反る中、顔が赤い。



「………………」



《えっ…?その反応って…案外…純?》




「何やねん!チューすりゃ良かったのにから!」

「本当〜。しかも蒼(そう)ちゃん、超顔赤いよ〜」

「う、うるせーな!仕方ねーだろ!」



「………………」



「こ、今度から気を付けて歩きやがれ!」

「…すみません…」



そして私達は別れる。



私、棚峅 希美(たなくら のぞみ)16歳。


真面目な雰囲気を漂わせる女の子。


色々と、事情があって、その容姿で過ごしているんだけど――――。



一先ず足早に目的地に向かい、用事を済ませ帰ろうとした、その時だ。



「何してんの?」

「えっ?」

「見かけない子だけど」


「そもそも、女子がいる時点で、おかしいんだけど?彼氏がいんの?」


「いいえ」




《うわー…どうしよう??関わりたくない相手だ》

《さっきの人達とは、また、違うみたいだし》




「じゃあ、何?」

「色々と…用事あって…」

「ふーん。で?用事は済んだの?」

「一応」

「じゃあ、遊びに行こうよ」


「ごめんなさい!無理です」

「どうして?」

「私…こう見えても男で〜」

「えっ!?」

「いやいや、まさか〜!」



《だ、だよね…通用しないよね?》

《でも…やり合うのだけは避けたいし…》




と、その時だ。



「すみませ〜ん。妹に何か用ですか?」

「妹?」




《えっ!?私には…お兄ちゃんいないし!》



振り返る視線の先には、さっきの3人組のようだった。




《嘘…!?何で?》



「うちの可愛い妹にちょっかい出すの辞めてもらえますか?」




グイッ

肩を抱き寄せられる。


ドキッ

胸が高鳴る。



「し、仕方ねぇな!分かったよ!」



そう言うと去って行った。




「す、すみません…。ありがとうございます」


「気を付けた方が良いよ〜」

「…はい…」



そう言って3人は去った。



《わざわざ戻って来てくれたのかな?》

《ま、まさかね…》



そして私も足早に帰るのだった。





転入初日。


私は前で自己紹介をする。



「今日から、このクラスに転入して来た、棚峅 希美(たなくら のぞみ)です。宜しく…」




ガラッ


後ろの引き戸が開いた。




「おはよーございまーーす!」

「お前らは、また、遅刻かっ!?」

「すみませーん。つーか、来ないよりマシじゃね?」

「…まあ、そうなんだが、遅刻しないように来るのが普通だろう?」



「おっ!転入生やん!」

「女の子の転入生も珍しいね〜」



《あれ?あの人達って…確か…》



「それじゃあ、改めて、棚峅、自己紹介を頼む」

「はい」

「棚峅 希美です。宜しくお願いします!」


「じゃあ、棚峅の席は…しばらく、あの3人の席の近くの空いてる席にお願い出来るか?」


「えっ…?わ、分かりました…」



《マジ!?》



私は渋々、席につく。



《ついてない》



「なあなあ、何でこんな所に転入して来たん?」

「えっ?あ、家庭の事情で…」

「女、誰もいてへんやん」

「まあ…でも…共学なんですよね?」

「そうなんやけど」


「ここの学校、男ばかりだから気を付けた方が良いよ〜」


「そうでしょうね…」




そして、長い1日が終わる。



彼等が普通に授業を受けていたのには驚いたけど…





正門を出ると―――――




「あれ?ここって女子いたか?」

「転入生?」



他校生の不良と思われる男子が数人いた。




「………………」




私は相手をしないようにと思い去り始める。




「か〜のじょ」と、行く道を塞いだ。


「今から帰んのーー?」

「前から、ここに通ってた?」



「………………」



「ねえねえ、無視しないでさ話し相手になってよ」

「本当、連れないなぁーー」


「忙しいので失礼します!」




ドンッと割って入るように私はそこから去り始める。



「ってぇーー」

「邪魔です!」



そう言うと去るのだった。



「とにかく最初だから大人しくしておかなきゃ」



ここの高校に通い始めてから、数ヶ月。


今の所、問題は起きていないけど、変な輩に声を掛けられる事が増えた。


他校生の不良にいつも聞かれる3人の声。

私はいつも上手く対応する。




だけど――――



「か〜のじょ、何してんのー?」

「えっ…?」



すると、空席のテーブルに3人が座った。



「!!!」


「一人で、ファーストフード店って、ありえなくね?」

「うるさいな!匠君には関係ないでしょう?」



そう。


私のテーブルを囲むように座っていたのは、彼等だ。



匠 蒼介(たくみ そうすけ)


吉良 優人(きら ゆうと)


木戸 勇真(きど ゆうま)



3人の姿があった。




その時、周囲から聞こえる。




「ちょっと超羨ましいんだけど?」

「カッコ良くない?」



「………………」



「前の学校の友達とか呼んで女子会すりゃええやん」


木戸君が言った。



「みんな彼氏いるから」


「お前だけ置いてけぼりか?」


「悪い!?つーか、いちいち、うるさいな!」




「まあまあ、2人共、本当良く喧嘩するんだから〜」


吉良君が言った。



「仲悪い証拠でしょ?」と、私。


「そうそう」と、木戸君




その時だ。



「へえーー、珍しい光景だねーー」


他校生の不良グループらしき人達が声を掛けて来た。



「女いるぜ?」


「つーか、誰の女?」




「………………」




「失せろ!食事の邪魔!」

「つれないじゃーん。蒼ちゃーーん」



「………………」



「悪いけど、問題起こす気ねーんだ」


「ねえ、ねえ彼女彼等よりも、俺達とどう?」


「何がですか?」


「遊びに行こう!」


「やだ!」


「何、何?良いじゃん!」


「そうそう!」




そう言うと肩に触れてくる。



「や、やだ!離して下さい!」


「良いじゃん!」


「良くないっ!」




触れられた手を離す。




「馴れ馴れしく触んなっ!」

「お〜〜、怖っ!」

「やっぱ、こんな奴等と、つるんでると、そうなるんだろうな〜」


「元々、こういう性格なんですよねーー。つーか、私が誰といようが、あんた達に関係ないでしょう?彼等も関係ないし!それじゃ、さようなら!」




不良グループの間を割って入るようにすると、私は帰り始める。




「おい、おい。そんな冷たくしなくても良いじゃん!」

「そうそう」

「もう帰るなら送ってあげるよーー」

「結構ですっ!」




私は足早に去った。



でも、すぐに追い付かれた。



「つかまえたーー」



私を囲むように道を塞がれた。



「………………」



「付き合ってよーー。アイツらとつるんでるんだし、俺達とも一緒に遊んで♪」


「いーーやーーだーー!失せろっ!」




彼等は、諦める様子がなかった。




その時だ。




「食事の邪魔すんなっ!って言ったのにさーー、マジムカつく!」


「ちなみに彼女は関係あらへんから解放してやれや!」


「本当。用事なら俺達が聞くよ〜」



私は不良グループから何とか逃れ、3人の元へと行く。



「お前は、もう帰れ!」


私に聞こえる位に、匠君が小声で言った。



「えっ…?」


「女がいたら邪魔なんだよ!」と、匠君。


「言われなくても帰るし!」


「悪かったな…早く帰れ!」




私は頷き帰る事にしたんだけど……



彼等は、3人の前から、すぐに退散し、私の元に先回りして来ていた。



「いたいた」

「えっ…!?」

「なあ、あんたアイツらとは、どういう関係?」


「えっ?どういう…って…別にただのクラスメイトだし!」


「ふ〜ん…クラスメイトねぇ~」

「何よ?」

「あんな奴等と、連(つる)むなんて女で珍しくね?」



「………………」



「わざわざ、追い掛けて来るあなた達は、余程、暇なんだね」


「悪いか!」


「そんな事はどうだって良いんだよ!」


「悪いけど私を甘くみないでくれる?私、あなた達に付き合っている暇ないの!それじゃ!」


「おいっ!女っ!」

「何よ!」

「今日の所は大人しく帰ってやるよ!」




そう言うと帰って行き始めた、その時――――


「おいっ!お前ら!逃げてんじゃねーぞ!」


「あー、悪いなー。急用、出来ちまったから、今日の所は大人しく帰ってやるよ!」





そう言って彼等は帰って行くのだった。




「大丈夫か?」と、匠君。


「えっ?あ、うん。この通り全然元気だし!」


「だったら良いけど…。アイツら不良だし何かあったら…お前、女なんだから気を付けろ!」




ドキン…

胸の奥が小さくノックした。





“女なんだから”



初めて言われた



今まで



『男みたい』とか


『お前、強いし男友達感覚』とか



そう言う言葉を良く言われ続けてきた



告白しても


そんな言葉ばっかりだった





「何だよ!」


「えっ?あ…いや…」



慌てて目をそらす。



《ヤバイ…女扱いされて戸惑ってる》




「か、帰ろう!そ、それじゃ!」



私は足早に去った。




「………………」



「何だアイツ」

「…ねえ、蒼ちゃん」

「何だよ、優人」

「棚峅さんって、蒼ちゃんににて純情そうだね?」


「はあぁぁっ!?いやいや、アイツは純じゃねーだろ?」


「そうかな~?…でも…何か…秘めた事ありそうなんだよね〜」


「秘めた事?」


「多分だけど…心の中に何かが見え隠れしてる感じ」



「……………」




そんなある日。


私は久しぶりに前の学校の女友達と学校帰り待ち合わせをしていた。



「久しぶりーー!」と、私。


「久しぶりーー!どう?そっちの学校」


親友の真美が私の元に来ると腰をおろしながら話をしてくる。


彼女の名前は、谷口 真美(たにぐち まみ)。


小・中・高と同じだった。


まあ、高校は途中までだったけど、彼女は親友だ。




「男子校と変わらないよ。その中に不良もいて、何かヤバイんだよね」


「えっ…!?ちょっと大丈夫!?また、戻って来なよ」


「出来るなら、そうしたいって!」


「そうだよね。でも、希美は強いから。でも、無茶したら駄目だよ!」


「うん。今は大人しくしてるよ。例え武術が出来た所で所詮、一応、女の子だし」


「いやいや、一応じゃなくて強くても女の子!」


「そう?」


「そうだから!」




「それで、さっきの話の不良の事なんだけど、その人達の事、良く聞かれて、偶々、一緒にいたりすると同じ目で見られて大変なんだよね」


「えっ…!?それってヤバくない?」


「本当、いつもハラハラでさ。下手すれば私、本領発揮する羽目になって、不良の仲間入りになっちゃうかも!?」


「えっ…?冗談にも程があるから!希美、気を付けなよ」


「うん」






正直 毎日 不安だった


もちろん だったじゃなく


現在進行系だ




今は まだ 


本性を出していない


自分がいる



出来る限り


言葉遣いにも


気を付けているけど………



この間


少しボロが出た程度だったけど


まだ 彼等も


私の事を


気にも止めてる様子なくて


むしろ


気付いていないだけ?


ただ 吉良君に関しては


勘が鋭いようで


洞察力が


半端ないような気がするのは…気のせい…?






そして、友達と時間を忘れる位話し込んでいると―――




「彼女達、何してんの?」


「えっ…?」



声のする方に視線を送ると、ニヤニヤしながら見るからに下心見え見えの不良グループが、5人いた。




《5人!?》




「彼氏と待ち合わせって感じじゃなかったし」



「………………」



《…どうしよう…?》



「さっきから女子トークしてたし」



「………………」



「すみません。うるさかったですか?じゃあ、私達は帰りますよーー。失礼します!」




そう言うと、私達は席を立ち去り始める。




「なあなあ、その制服ってさ……○○高校じゃね?」


「あれ?あそこって女子通ってたっけ?」


「あー、4月から共学になったって話だぜ?」


「へえー…確か不良が沢山いるって話だもんなー。じゃあさ…もしかして結構遊んでる感じ?」




《エロ野郎…頭には、そういう事しか絶対ないんだ》

《真美だけでも逃してやらなきゃ》



そう言って5人は、私達にお構いなく私達抜きに話をしていく。



「…真美、今のうちに逃げて」

「えっ…?でも…」



私達はコソコソとバレないように会話をする。



「私の事は良いから」



真美はゆっくりて去り始める。




そして、私もゆっくりと去り始めた、その時―――




「あっ!おいっ!逃げたぞ!」

「ヤバッ!」



私は店を飛び出すように逃げる。




「うわっ!」


「すみません!」


「あれ?今の…棚峅ちゃんちゃう?」




「希美っ!」


真美が背後から呼ぶ。



「真美っ!」


そう呼ぶと同時に、真美が仲間の不良に捕まった。




「友達確保〜〜」


「ちょっとっ!その子を離してっ!」



そんな私も不良グループに捕まる。





「きゃあ!」


「希美っ!」




私達2人は捕まり、不良グループに囲まれる。



「は、離してっ!」

「遊びに行こうぜ!」

「やだっ!どうせ体目的のくせに!」

「まっさかーーっ!」

「下心見え見えなんだけどっ!」


「おい、おい。冗談、そんな気、更々ねーし!」

「口では簡単だしっ!」

「言ってくれるじゃねーか!」


「やらしい目で見てたくせに!どうせあんた達の頭の中、女=H なんでしょう!?」


「てめー」



殴りかかる勢いで近付いて来る。




《ヤバイっ!殴られる!》




私は目を閉じた。




「希美っ!」



「………………」



《あれ…?》



私は目を開けると、そこには誰かの背中が立ちはだかっていた。




「女に手をあげるなんて、どういう教育されてんだ?てめーは!」


「野郎っ!」


「つーか…匠…蒼介…!?」

「だから何だよ!」




《えっ…?匠…君…!?》




「……や、辞めましょうよ!コイツ手強いッスよ!」


「チッ!女っ!覚えておけよっ!」




「………………」




そう言い放つと解放され私はヘナヘナと座り込んでいく




グイッと腕を掴まれ立たされる。



「おいっ!しっかりしろ!つーか、何やらかしたんだよ!」


「べ、別に…何も…」



安心からか泣きそうになった。




「希美っ!大丈夫?」


駆け寄る真美。



「…うん…」


「大丈夫って感じじゃねーだろ?」



「蒼ちゃん!」


「蒼介!」



「………………」




「…ごめん…ありがとう…助けてくれて…」



私は、そう言うと笑顔を見せる。



「…別に…」



「……………」



「帰ろうか…真美…」

「うん…」

「その状態で帰れるわけねーだろ!」

「へ、平気だし!」

「嘘ばっか言ってんじゃねーよ!」




グイッ

抱き寄せられた。




ドキン

胸が大きく跳ねた。




「何があったかは聞かねーけど前に言ったろ?女なんだからって…」




「………………」



「棚峅さん…無理して笑顔つくらなくても良いんだよ」


「そうやで」


「お前、女一人で心細いのあるかもしんねーけど、もっと俺達に心開いても良いんじゃねーの?」


「意地張らなくても良いから」


「男ばっかかもしれへんけど、もう少し俺達に頼ってもええんちゃう?」




私は涙が溢れた。




「希美、また、いつでも話聞くから連絡頂戴。それじゃ、私は帰るね」


「一人じゃ危険だから送るよ~」



そう言って吉良君と真美は帰って行く。




「ほな!俺もーー」




真美は、2人と一緒に帰って行く。


そして、私は匠君に送ってもらった。



それから私は、3人と一緒にいる事が増えた。


あの日以来、匠君とは相変わらずだった。



そんな私は、気付けば心の中に匠君が存在していた。




「………………」



そして、真美から私の話をした事を聞いた。


私が武術が出来るという事を話したらしいとの事だった。




そんなある日の事。




正門を出た時の事だった。



「か~のじょ」



私の行く道を塞ぐように呼び止めた。


見るからに不良だ。




「………………」



「君の学校に、匠 蒼介っているでしょう?」



「………………」



「…知らない」


「またまた〜。彼を知らない人いないし!」


「へぇ~っ。そうなんですか?私、転校してきたばかりなので分からないんです。それじゃ、失礼します!」




そして、去り始めた時――――



グイッと腕を掴まれ、コンクリート(セメント)壁に押し付けられた。




「君が奴等とつるんでる事くらい情報入ってんだよね?」



「………………」



「ちょっと付き合ってよ!」

「お断りしますっ!!私、そんな暇ないんで!」



押しのけ、去り始める。



「また来るから伝えておいて!」

「知りません!」


「…もうっ!一体、何なの!?……やっぱ…匠君…目立つっていうか…名の知れた不良なんだね…告ったら…やっぱ…フラれるかな…?でも…今の関係から進展したいのもあるけど……色々と問題が生じて来るかな…?」



次の日。


「ねえっ!」

「何?」


「昨日、あんたの事、訪ねてきた人いたんだけど?」

「ふ〜ん…」

「ふ〜ん…って…あんたどんだけの敵いんの?」

「知るかっ!」


「匠っちは、名の知れた有名な不良だから~」


吉良君が言った。



「…だろうね……一緒にいるのもバレる位、私の存在も広がってるみたいだし…」


「じゃあ、棚峅ちゃんも有名人だね?」と、吉良君。


「いやいや、有名になるのは嫌だし!ねえっ!私に何かあったら責任取ってよねっ!」


「はあぁぁぁっ!?取る理由が分かんねーー!」

「…だろうねっ!言った私が馬鹿でした!」




プイッと、そっぽを向いた。



「あ〜あ…棚峅ちゃんがイジケたでーー」

「俺は知らねーぞ!」

「無責任男〜」

「なっ!二人して何だよっ!」



3人は騒ぐ中、私は横で笑う。



《本当、この3人って仲良いな》





その日の放課後、私が正門を出ると、昨日の男の子がいた。



「……!!!」




そして、私に気付くと歩み寄る。




「何ですかっ!?また、あなた?昨日に続き今日も来るなんて余程の暇人なんですね?」





そこへ―――



「おいっ!」



そう言って私達の間に割って入る人影。




「……………」



「女は解放しろ!俺達とは無関係だ!」


「本当にそうとは言い切れねぇだろっ!?」


「本当だ!」




「……………」



「…はいはい。じゃあ従うよ。今回はな?」



そう言って相手は私達の前から去り始める。



「今回に限らず、ずっとだ!」


「珍しい。今まで、そんな事を言った事あったっけ?」



《えっ…?》



「関係ねーだろっ!?」





そして、私達は途中まで一緒に帰る中、別れた後、妙に背後が気になる。


振り返るも誰もいない。




「……………」




《何か…後、付けられてる感じが……》




私は足早に急ぐ中、曲がり角に入ると、眼鏡を外し髪を束ねると、様子を伺う事にした。



「……気のせい…だった…のかな?」





次の瞬間―――――



別の背後から人の気配を感じ、本来の自分の戦闘体勢のスイッチが入り相手と思われる人影に向かって拳が出た。




そして――――




受け止められた。




「…えっ…?」



私の拳が当たっているのは、スクールバッグだった。



「そんな怖い顔して、どうしたの〜?凄いピリピリしてたよね〜?」




「………………」




「…だ…れ…?」




バッグから見えたのは、見覚えある顔。



「……吉…良…君…?」

「何かホッとした顔だね?」

「…えっ…?」

「どうかした〜?」

「…いや…」



「………………」



「吉良君…いつから?…ずっと…つけてた?」

「えっ?」

「あっ!つけてたって言い方悪いよね?」

「つけてたっていうか…見掛けてから、そうは…」






と、その時―――




「…ごめん、ちょっと持ってて!」




トンと、私を軽く押し離すようにしながら、スクールバッグを渡す。




「…えっ…?」



その直後、吉良君は誰かと、やり合っている。




《…嘘……吉……良…君……?》





同じ人間なのに、今さっき話していた吉良君とは思えない素振りの変貌ぶり。



《…強い…》




そして、更に違う一面を垣間見る瞬間を目の当たりに




「誰の命令!?」




口調が普段と違う言い方で、おっとりしている吉良君からは全く想像出来ない怒気を含んだ、ドスのきいた声だった。




「………………」



「答えなよ!」



「………………」



「…良いぜ!但し、交換条件だ!付き合ってもらえれば教えてやるよ!勿論、お前の後ろにいる女もな!」



「えっ…?」


「彼女?何で彼女が関係しているの!?彼女は関係ないでしょ!?」


「関係あんだよ!」



「………………」



「どうする?女一人でも良いけどな?」


「女の子を一人に出来るわけないでしょ!?」


「じゃあ交渉成立な!」



「………………」




私達は渋々、付き合う事になったんだけど――――





とある雑居ビルの廃墟ビルだ。




「………………」



吉良君と私は、後ろ手で縄で縛られている状況だ。





「ごめんね〜。棚峅さんまで巻き込んじゃって〜」


「えっ?あー、良いよ別に。そういう運命だったって事だよ」


「こんな目に遭っているのに前向きだね〜」


「そう?」


「そうだよ〜」




「それより、私達が、ここに連れて来られた理由って何?」


「……呼び出し…かな〜?」


「呼び出し?誰を?」


「……蒼ちゃん」




ドキッ

名前を聞いて胸が大きく跳ねた。



「…えっ!?吉良君は、ともかく、私なんかどうでも良いだろうし!吉良君、私の事は良いからタイミング見計らって逃げて!」


「そんな事したら、俺、蒼ちゃんに怒られちゃうよ〜」


「大丈夫だよ。私が逃げてって言ったから逃げたって言えば良いし!」


「分かってないな〜」


「えっ?」


「蒼ちゃんが、納得しないよ〜。女の子を一人おいて逃げる男、何処にいるの〜?蒼ちゃんは、女の子には優しいから。ただ不器用なだけ。だから、こういう事するのは一番嫌なんだ。もし、これが大事な人に何かあったなら…もっと大変だよ」




その時だ。



「おいっ!どういう事だ!?話しが全くと言って良い程、違うじゃねーか!しかも優人まで拉致ってんじゃねーぞ!」


「良く来たねーー?匠…蒼介ちゃーーん」




「………………」




「……お前は……」



匠君の顔つきが一瞬にして変わった。



「……吉良君……」




私は匠君の反応と良い、表情と良い目が離せず、そのままの状態で話をする。



「……もしかして……あの人…ヤバイ……人……なんじゃ……」




「………………」



「ねえっ!吉良君っ!答えてよっ!」


「……流石…鋭いね……」



そんな吉良君の顔つきが違う。



「…本来なら獄中にいるはずの奴だよ…」



ドクン…

恐怖で胸が鈍い衝撃で大きく跳ねた。




「…えっ…!?……う…そ…で…しょう!?」


「…ヤケにパトカーが、ウロついているとは思っていたけど…その理由が分かったよ…彼が脱獄したとしか考えられないよね……?」




「………………」



「……お前……どうして……?」


「さあ?どうしてでしょう?」



「………………」



「……用件…済ませろ!」


「別にさーー、そんな急がなくても良いじゃーん。蒼介ちゃーーん」



「………………」



「…俺は忙しいんだよっ!そいつ等も早く解放しろっ!」


「じゃあ、交換条件しようじゃん!蒼介ちゃん」


「……交…換……条…件…!?」


「俺達の仲間に入らねーか?」


「……仲間…!?」


「そう!」




「………………」



「そうしたら解放してやっても良いど?もし断るなら分かるよねーー?そ・う・ちゃん」



一人の男の人が来る。



「2人とも殺(や)る…その前に女は、俺達のおもちゃにしようかなー?案外、それもありかなー?」


「ふざけんな!誰が、そんな事…」


「だったら仲間に入りなっ!」



匠君が言い終える前に相手は言葉で遮った。




「………………」



「どうなんだよ!」



「………………」



「…誰が仲間に入るかよっ!!」


「…へえー…そう…。…だったら…」



バキッ



「っ…!」


「吉良君っ!」



吉良が殴られた。



「優人っ!」


「次は女の洋服脱がしていこうかなー?」




「………………」



「交代ずつ、お前の仲間が大変な目に遭うよーー。蒼介ちゃん」




「………………」




「すぐに殺ったら面白みも何もないからねーー」




《あれ…?そういえば…一人…木戸君…》



私は、周囲にバレないように、吉良君に教える事に成功させた。


吉良君は、閃いた様子でウィンクした。




「ねえっ!」

「何だ?」

「トイレ行きたいんたけど!」

「はあぁぁっ!?」

「どうしたんだよっ!!」


「あっ!すみませんっ!いや…この女がトイレに行きたいって言い出して…」


「トイレだと!?」


「もしかして…トイレないの?廃墟ビルでもトイレくらいあるでしょう?まさか…ないの?」


「すみませ〜ん…俺も行きたいかも〜」


「えっ…!?ちょ、ちょっと!吉良君も一緒なんて……やだ!スケベっ!Hっ!」


「ええーーっ!俺は、そんなつもりないんだけど〜」


「あーーっ!うるせーなっ!連れてけっ!但し、一人ずつだ!」


「どっちが先に行く?」


「レディファーストという事で~、お先にどうぞ〜」


「私!?」


「だって行きたいんでしょう?」


「そうなんだけど…口ジャンケンしよう!」


「最初は、グー……ジャンケン…」



私達は口ジャンケンするとジャンケンで勝った吉良君に先に行ってもらう事にした。


一応、私達の計画だ。



トイレに行った矢先、待ち受けていたのは、用を足す時の大変さだ。



「ねえ、縄を解くか、もしくはズボン下げて、俺の大事なモノ持ってくれなきゃ出来ないんだけど?」


「えっ!?」


「早くっ!漏れちゃうよ〜」



相手は迷う事なく縄を解いた。






ドカッ


格闘で相手をしばらく気絶させる。



「おいっ!どうした?」



ドカッ


再び格闘で倒す。



俺は、すぐに身を隠し、警察に連絡。


勇真にも事情を説明し念の為、再び警察に連絡するように言った。


イタズラだと思われないようにする為だ。


ただ、この後の行動だ。


彼女の身の危険だ。


本当は彼女を先に逃すべきだが、転入生であり、奴等の本性を知らない。


蒼ちゃんを仲間に入れる為なら、何でもやる奴だ。


彼女を傷付ける事に、なり兼ねない。


多分、男が逃げた!


そうなるはず。


その時に狙われるのは彼女だ。


縄さえ解く事が出来れば………




「すみません!男が逃げました!」


「何ぃっ!?何やってんだよっ!まあっ!良いっ!女がいる!男を追えっ!じゃあ、蒼介ちゃーーん、そろそろ返事もらおうかな?」



「………………」



「しつこいなっ!俺は仲間に入る気はねぇよ!」


「そう…じゃあ…女の制服脱がし開始だな」



私の制服に脱獄犯の手によって脱がされていく。



「脱がしても良いけど、色気ないよ。それでも良いわけ?」


「色気あるとか、ないとか関係ねぇんだよ」


「えー、そう?やっぱり色気ある女が、やり甲斐あるでしょう?」


「そういう男もいるが、色気、感じる声や顔…女はベッドの上で変わるんだよ!知らねーの?あんたも経験あるでしょう?」


「ないし!だから、全く分からないんだけど!ていうか、男が下手なら感じるものも感じないんじゃないの?あんた、満足させる自信あんの?」




グイッとアゴを掴まれる。



「言ってくれんじゃん!だったら一気に脱がして試そうか?」




「………………」



「ここで?でも、両手縛られてるし解いてもらわなきゃ…」


「解かなくても出来るやり方あるの知らねぇのか?」



言い終える前に言葉を遮ると、私を抱きかかえると足の上に乗せた。



「えっ?ちょ、ちょっと…」


「…おもしれーっ!つーか、口ばっかの女かよ!お前、本当、男とヤった事ねぇんだ?」



「………………」



「図星!?超やり甲斐あるみてぇ。刑務所入っててご無沙汰だからな!?おいっ!縄解いて女を押さえろ!」



「はいっ!」





そして、縄が解かれると同時に私を押さえ、一気に制服を引き裂いた。




「や、辞め…っ!」

「希美っ!は、離せっ!野郎っ!」

「初めての女程、楽しませてくれるものねーよなー?」

「や、やだっ!触んなっ!離…!」



唇がキスで塞がれ大きい手が体に触れていく中、首筋から下へと唇が這う。



「さあ、蒼介、このまま女、抱かせるか?仲間に入るか?答えろよ!」


「蒼介っ!絶対に仲間に入ったら駄目だからね!こんな奴等と一緒にいたら駄目になるよ!私の事は…」



再びキスをされた。



「女は黙ってろ!」



上から見下ろされる視線が冷徹だ。


ヘビに睨まれたように動けない。



《怖い……この人…ヤバイよ……》




「所詮、女は男のおもちゃに過ぎねーんだよ!」



《…この人…》



「…希美を、そういう目で見るのは辞めろ!」



そう言うと同時に相手の胸倉を掴むと殴り掛かった。




バキッ


ドサッ




相手は殴られ、倒れ込んだ。




「ってぇー!蒼ちゃーーん、痛いじゃーーん」



私を起こすと羽織らせた。



「希美は希美なんだよ!お前に好き勝手させねーっ!希美は俺が守る!好きな女は、お前に渡さねーし、触れさせねーっ!」


ドキン



《…えっ…?今…》




「へえー…そういう事か…マジギレして、マジで殴り掛かったわけだ…だったら、俺も容赦なくいかせてもらうぜ!蒼・介・ちゃん」




ナイフを出した。




「離れてろ!希美」

「でも…」


「でもじゃねーだろっ!今の状況見れば分かんだろっ!お前に、これ以上傷をつくらせる訳にはいかねーんだよ!」



ナイフを振り回す相手を交わしながら私に訴えかける蒼介。



「お前は女なんだから、男に守られてりゃ良いんだよ!好きな女くらい守らせろ!」



ドキン…



「…蒼介…」


「その代わり助かったら俺が、お前の全部(すべて)もらうからなっ!」


「さっきからゴチャゴチャと…うるせーんだよ!死ねーーーっ!」



「南波 了(なんば さとる)!そこまでだ!」



彼は逃げる素振りを見せるも、すぐに囲まれ現行犯逮捕で再逮捕され連行された。



そして、2人が現れた。


吉良君と木戸君だ。



「遅くなってごめんね〜」

「大丈夫やったか?」

「そんな感じじゃないみたいだね〜」

「棚峅ちゃんの…セクシーショット…」


「見るなっ!」

「見せねーぞ!」



私を隠すように前に立つ。



「あー……」

「そういう関係に…」

「ふ〜ん…じゃあ…お邪魔虫は退散だね〜」



そう言って2人は去り始める。



「……希美…嫌な目に遭わせて悪かったな」

「ううん…蒼介が無事なら、それで良いよ…」

「でも、お前は無事じゃねーし!」

「えっ…?」



グイッと抱き寄せられた。


ドキン…



「…お前が…好きだ…」



ドキッ



「…蒼介…」




抱き寄せた体を離し、キスをされた。



「…私も…好き…」



私達は、もう一度キスをした。




「あっ!今度は、マジチューしよったで!しかも、2回て……」


「ごちそうさま~♪」


「なっ!ま、待ちやがれ!」




2人はニヤニヤしながら走り去る。


蒼介は、私の手を掴み、2人を追い掛けた。






〜 E N D 〜





















































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転校先は不良(ヤンキー)校!?② 〜匠 蒼介 編〜 ハル @haru4649

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