(二)

「ねえ、あれって加奈江ちゃんじゃない?」

 隣にいた同じ部活の友達が声をかけてきた。

 その声で私ははっと気づいた。救急車の音が徐々に小さくなっていた。加奈江は救急車で運ばれて行ってしまったのだ。

 私は気づくと、人垣を押しのけて昇降口の手前の柱の所へ進み出ていた。

 深刻な顔をした下山先生が腕を組んでいた。

 私は下山先生に駆け寄った。

 私の姿を見ると下山先生は「部活に戻れ」と言ってきた。

 私は「八木さんは大丈夫なんですか」と下山先生の両上腕を掴みながら言った。

 私の剣幕が想像以上に険しかったのだろう、下山先生は少し怯んだ様子で「わからん」と私を見た。

「どこの病院へ向かったんですか!」

「この近くだと、駅前の総合病院だろう」

 下山先生のその言葉を聞くと、私はその場から駆けだしていた。校門の方へ、救急車の後を追って。


(続く)

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